突然だけど、私は今正座をさせられている。
目の前にいるのは恋人であるノア。けれど、その表情は隠す気のない不機嫌一色。多分恋人じゃない頃ならよく見る圧のある笑顔を向けられていたことだろうことを考えると、なかなかにレアなものを見た気持ちになる。
「……なんでちょっと嬉しそうなんですか」
「いや、なんでもないよ」
珍しい姿が見れたことで無意識に口角が上がっていたらしい。じとっとした目を向けられて、慌てて誤魔化した。
さて、なぜ私は正座をさせられているのか。それはいつも通り私の元おかずフォルダを漁っていたノアが見つけた一枚の写真が原因だった。
被写体は彼女の後輩にして特異現象捜査部所属であるエイミ。彼女の買い物風景。それだけなら彼女も微笑ましく眺めるに留まっていただろう。
購入しているものが下着でなければ。
ノアの不満も尤もだ。付き合う前とは言え、恋人が異性の下着選びに付き合っていたと知れば気分も害すというものだろう。ここは彼女の機嫌が良くなるまで謝り倒すしか――
「先生、そんなに女の子の下着が好きなんですか?」
「誤解だよ!?」
あまりにも変化球な問いかけに、思わず否定が入った。こればかりは仕方がない。流石にそれを認めると私の尊厳が底値をぶち抜いてマントルまで行き着いてしまう。
「けれど、先生はゲヘナで女の子の下着の匂いを嗅いでいたとヴェリタスが言っていましたが」
「本当に優秀だね、あの子達!!」
そして絶対敢えて情報の一部を隠して報告したでしょ! 私が嗅いでいたのは下着に染み付いたトリュフの匂いであって、決して下着そのものの匂いを嗅ぐ変態ではない! 変態と揶揄されることがままある身ではあるけれど、意図しない変態認定は流石に否定しなくてはならない。これだけは真実を伝えたかった。
「まあ……先生が変態さんなのは今に始まったことではないですものね」
「無理やり納得しないで……不本意! 不本意です!」
情けなくも当時の状況と身の潔白を説明したのだが、なぜか逆にちょっと引かれてしまった。なぜ……トリュフの匂いがするって言われたら嗅ぎたくない? いいかいノア? 大人になったからって、そうそう世界三大珍味は食べられないんだよ?
まあ、結果的に不機嫌モードは解かれたみたいだからそれはいいんだけど、私の変態扱いがむしろ悪化した気がする。ここはもっと根気強く説明をしなくては。
「それなら……先生は私の下着には興味がないんですか?」
「それは普通にある。すごくある」
どうすれば私がノーマルだと納得してくれるのかと考えを巡らせていたのに、シャツをたくし上げておへそを見せながらそんなことを言われたせいで全部吹き飛んでしまった。
それとこれとは話が違うんじゃない? 恋人の下着とトリュフの匂いに包まれた下着はまったくの別物じゃん。これが国語のテストの回答なら迷わずペケをつけているところだ。
しかし、これは現実。白い透き通るような肌を見せられて、論理的思考など立てられるはずもなかった。
「ふふっ、素直な先生にはご褒美をあげないといけませんね」
私の思考などお見通りなのだろう。怪しく微笑んだノアはぷち、ぷちとボタンを外し始める。
上着を脱ぎ捨て、ネクタイをするりと外し、今度はシャツのボタンに手をかける。身に付けているものの多さからなかなか肌が見えない状況が、まるで焦らされているようだった。
しかし、それもようやく終わる。上から小さなボタンを外す度に肌が露出していく。綺麗に浮き出た鎖骨が、柔らかいことを知っている胸が。
そして、最後の砦である布地が。
「ど、どうですか?」
ノアの声にはっとする。どうやら随分と魅入っていたらしい。いつのまにかシャツどころかスカートやタイツも脱ぎ去り、上下の下着がかろうじて大事な場所を覆い隠す状態になっていた。
レースがあしらわれた純白の下着姿。流石に水着とは勝手が違うのだろう。その顔に浮かんだ年相応の恥じらいの表情も加わって、思わず息を飲んだ。
「綺麗だ……」
「そ、そうですか……」
自然と出た感想にまたノアが言葉をどもらせる。珍しい表情についつい凝視していると、不機嫌そうに恥ずかしがるという器用な表情をした彼女が距離を詰めてきた。
「わぷっ」
「もう! 私の顔ばっかり見なくていいんです!」
そのままソファまで引っ張られたと思えば、豊満な胸に顔を押し付けられる。しっとりとした肌が頬に吸い付いて、甘い匂いが肺を満たす。
どうしてノアはこんなにいい匂いがするのだろうか。香水ともまた違う、ノア自身の自然な香り。嗅いでいると落ち着く。
それと同時に、興奮もしてくる。
「そうです。先生はそうやって、私にドキドキしていればいいんです――あんっ」
露出している乳房に吸い付くと、可愛らしい声が漏れた。それに気を良くして、何度もキスの雨を降らせていく。
「んっ……先生は本当に、おっぱいが好き、なんですね」
そりゃあ男ですから。目と鼻の先どころかゼロ距離に恋人の胸があるなんて魅力的な状況で抗えるはずもない。
唇で柔らかさを楽しみ、舌でちろりと柔肌を舐めてみる。米菓のようなほのかな甘さを感じる気がした。
「あっ、もう……下着の意味がないじゃないですか……んんっ」
極上の感触。けれど、その先を既に知っているから、そこで満足はしなかった。
ずり、と下着を引き上げ、隠れていた乳房全体を外に晒す。そして露わになった桃色の突起に迷わず吸い付いた。
既に固く尖っている乳首を上下の唇で挟み、口の中で舐め転がす。出るはずがないのに、まるで母乳を求める乳飲み子のように喉を鳴らして吸い続けると、その度にノアの口から甘い声が溢れて、鼓膜を優しく震わせる。震えがゾクゾクと背中を伝って、全身に広がっていく。喉奥や下腹部に熱が溜まっていくのを感じる。
「んぁっ、ふっ……あ、先生も、興奮しちゃってるんですね」
それを目ざとく察知したノアが手を伸ばす。その先にあるのは既にテントを張りつつある私の股間。優しく触れられると、久しぶりの細い指の感触にピクリと腰が跳ねた。
「苦しそうですね。外に出してあげますね」
じ、とチャックが下ろされ、押し込められていた肉棒が外に飛び出す。甘く天を向いたそれの先端が手で覆われ、くすぐるように刺激してきた。
「しーこしーこ、しーこしーこ……」
口や顔で味わう胸の感触に男根で味わう手の感触、そこに綺麗な声で紡がれる淫猥なオノマトペが加わって、身体の中の熱が余計に増していく。
それに、この体勢は……。
「ふふっ、知ってますよ。これ、授乳手コキって言うんですよね?」
乳を吸いながらいいように局部をいじられる私に、ノアの楽しそうな声が降り注ぐ。
授乳手コキ。赤ん坊の行為と大人の性欲が同居したインモラルなそれに羞恥心が顔を覗かせる。それでも快楽には抗えず、口は離さない。上と下から与えられる気持ちよさを感受する。
「んんっ、そんなに必死に吸って、本当に赤ちゃんみたい」
時折身体を震わせながら、ノアの身体が前かがみになる。顔への密着感が増し、耳元に荒くなった息遣いが聞こえてくる。
「先生、おっぱい、美味しいでちゅか?」
「の、のあ、それは――んぶっ」
「だめでちゅよ? お腹いっぱいになるまで、おっぱいちゅーちゅーしまちょうね?」
突然囁かれた言葉に思わず口を離そうとするが、後頭部を抑えられて叶わなかった。再び口の中に乳首を入れられ、反射的に舐めてしまう。
まるで本当に赤子を相手にするような口調を続けるノア。しかし、その声色にはエロティカルな艶が孕み、左手は変わらず怒張を刺激し続けている。
「ちこちこ、ちーこちこ。先生、おちんちんは気持ちいいでちゅか?」
「――――っ」
「ふふっ、よかったでちゅね。もーっと気持ちよくしてあげまちゅからね?」
赤ちゃん言葉で囁きながら肉棒を扱き上げられる。倒錯した状況に脳みそが溶けそうなほど湯だつ。思考が曖昧になっていく。
状況に抗うという選択肢を溶かしきった私は、ノアの腰に抱きつくように腕を回すことしかできなかった。甘えるようなその行動に気を良くしたのか、彼女の喉がかすかに震えたのが聞こえた。
「いいでちゅよ先生。気持ちよくなってくだちゃいね」
知らなかった。手コキは以前にもされたことがあるのに、状況が重なるだけでこんなにも快楽が増幅されるなんて。こんなもの、そもそも抗うことなんて不可能じゃないか。
「おちんちん、もうすごく濡れちゃってまちゅね。もうぴゅっぴゅ、しそうでちゅか?」
いつの間にか溢れ出た先走りがノアの手で撹拌されてぐちゅぐちゅと水音を響かせる。手の上下運動も激しさを増していき、抑えられなくなった腰が何度もカクカクと震えてしまう。
察しの通り、既に私の我慢が限界だった。むしろ刺激が強すぎて限界かどうかもよくわかっていない状態ですらあった。
そんな状態の私にノアが手心なんて加えるはずもなく、激しさを緩めることもなく肉棒全体に快感を与えてくる。
「ちこちこ、くちゅくちゅ。出ちて。せんせ、ぴゅぴゅーって出ちてくだちゃい!」
決壊するのは当たり前の話だった。
「――――ッ!!」
「あっ、すご……っ」
――ぴゅるるっ、どぷっ、どぴゅぴゅぴゅっ!!
腰をガクガクと震わせながら、精液を吐き出す。全身を駆け巡る痺れに耐えようと咥えた乳首を甘く噛んでしまい、ノアの身体がびくりと跳ねた。
ゆっくりと竿を撫でられ、尿道に残っていた残滓を吐き出してようやく口を離す。ずっと吸い続けたからだろうか。触れていなかった方に比べて、乳輪から先の色づきが濃いように見えた。
水音も言葉もなくなり、残ったのは二人分の荒い息遣いだけ。
「ん、ちゅ……」
そんな互いの音に自然と顔を見合わせ、どちらからともなく口づけをする。密着した口の中で、熱い呼気が混ざりあった。
「ん……先生、気持ちよかったでちゅか?」
「…………」
頬を上気させた彼女の問いかけに、無言でこくりと頷く。
確かに気持ちよかった。それは間違いない。今もまだ少し頭に靄がかかったような気分だ。
けれど、これだけは言っておきたい。
「その話し方は、禁止……」
「えー、どうしてでしょう?」
だってあまりにも倒錯的すぎる。ハマってしまったら取り返しのつかないことになりそうな危うさがあるのだ。だから赤ちゃん言葉は今回だけ。二回目はない。二回目なんてあってはならない。
必死に禁止を言い渡す私をじっと見つめてくるノア。やがてわかってくれたのかニコリと微笑んで――
「けど、先生のおちんちんはうれちいみたいでちゅよ?」
「~~~~っ!!」
まったく理解していなかった。否、理解した上で踏み倒してきた。左腕を背中に回してきて、白濁に汚れた右手を再び肉棒に伸ばしてくる。ぐちゅ、と再びいやらしい音が部屋の中に響いた。
ここから先の出来事を語るつもりはない。私の尊厳がボロボロになった、とだけ記しておくことにする。