「ちゅ、ちゅむ。は、ん……」
唇を触れ合わせて離す。かすかなリップ音を響かせるだけなのに脳の芯がふやかされるようだ。
まどろみすらしそうな感覚に目を細めながらノアの腰を出し寄せる。互いの身体が密着して、ノアの柔らかさが、熱が伝わってくる。意識を集中させれば、彼女の心臓の鼓動まで感じられそうだ。
「ん、ぁ……はむ、っ、んん……」
それにしても、相変わらずノアの腰は細い。別に食事制限をしているわけでもなく、むしろ付き合いだしてからはそれなりな頻度でスイーツを共にしている。それなのにこの細さとは。女の子の神秘というやつだろうか。それとも若さ? 私の学生時代はこんなに細くなかったことを考えると前者だろうか。
「んー、れろ、ぬろ……ぴちゅ、じゅ、るる……っ」
自分から意識が逸れていることを感じ取ったのだろうか。かすかに開いた隙間からぬるりと熱い舌を滑り込ませてきた。反射的に自分の舌で迎え入れる。
パチパチと、味覚を感じ取るはずの器官が別の何かを感じ取り、視界が弾けた。まどろみをかき消すスパークが全身を駆け巡っていく。
それがまるでスイッチであるかのように、体温が急上昇していく。そんな気配それまで感じさせていなかったはずなのに、上がった熱が集まろうとしているかのように下腹部が熱くなってくる。
その結果がどうなるかなんて分かりきっている。そしてそれを密着している彼女から隠す術もない。
「ぷはっ……ふふ、先生のここ、準備万端ですね」
まあ、元より今日はそういう日なのだから、別段隠す必要もないんだけど。
太ももで固くなってきた股間をぐりぐりと甘く刺激され、一瞬腰を引く。けれども抱き合っている状態で逃げ切れるわけがない。
そもそも柔らかい太ももの魅力から逃れることなどできないのだ。なすがままに柔肉に海綿体が沈み込む感触を甘受する。
「先生って、本当に脚が好きなんですね」
「んぇ?」
ズボン越しの刺激に腰を跳ねさせているとノアからそんな言葉が飛び出してきて、感じながら首を傾げるという器用なことをすることになってしまった。
いや、確かにノアのことは足の先まで好きだけれど、特別足が好きなんて言ったことはないと思うけれど……。
「カリンちゃん、アビドスのセリカさん」
「そ、それは……!」
心当たりが、心当たりがありすぎる! 特にカリンに関しては言い訳のしようがない。確かにあの時、私は足フェチに違いなかった。いや違うんだ。あれは興が乗ってしまったというか、悪ふざけの一種というやつで。セリカに関しては彼女側の事故だし……。それがどちらもフォルダに入っていた時点で言い訳のしようがない? それは……そうなんですが……。
反論できない私にノアの目が細くなる。笑っているようにも、非難しているようにも見えて、少し居心地が悪い。
「なるほど。となると、あの噂も本当みたいですね」
「あの噂……?」
「先生が公衆の場でゲヘナ生の足を舐めたという」
「それは誤解! 事実だけど誤解!」
あれは人命救助のための強硬策であって、決して……決して性癖に従ったとかではない。もうあの時は無我夢中だったし。これだけは真実を伝えたか――え? その後の擁護できないイオリいじり? それは……そうなんですが……。
いやけど、あの場の行動は使命感だったのは事実だから!
「それじゃあ、先生は興味ないんですか? 私の脚」
「それは……興味あるに決まってるじゃん……」
その質問は卑怯じゃん。そこで首を縦に振らない選択肢ないじゃん。
ぼそりと漏らした肯定に気分を良くしたのだろう。ふふ、と喉を震わせたノアが再び口づけをしてくる。肩に置かれていた手が背中に回ってきて、最早隙間を探すほうが難しい。
「ん……っ」
それは、先程以上に彼女の責めから逃れられないということでもあり、ぐりぐりと押し付けられた膝や太ももが肉棒を、その付け根にある睾丸をいじめるのを甘んじて受け入れるしかなかった。
「ぺちゅ、れりゅ、ん、はみゅ……先生、気持ちよさそうですね」
舌ごと、唾液ごと、溢れ出る嬌声がノアによって吸い上げられ、飲み込まれる。まるでそれを免罪符にでもするかのように、声を抑えることができない。
太ももという大雑把な責めしかできない部位での刺激でここまで興奮してしまうとは……ひょっとして私は相当クソ雑魚なのではないだろうか。いや、これはきっとノア限定だ。相手は恋人なのだから、恋人に弱いのは仕方ないことだろう。
快感に呑まれて自分でもよくわからない思考を頭の中で巡らせている間に、男根はズボンを突き破りそうなほど固く起立してしまっている。狭い布の中に押し付けられて、もどかしい快感がじわりと広がる。腰が動くのを抑えられない。
そして、それを見逃すノアではない。
「ふふ、先生。もっと気持ちよくなりたいですか?」
そんな、分かりきった質問をしてくる。敢えて意地の悪いことをしてくる。それにぞくりと背筋を震わせている自分がいる。
「うん。気持ちよくして、ほしい」
情けない懇願を、我慢できない。
「はい。それならベッド、行きましょうか」
上気させた顔を楽しそうに歪めながら、身体を離した彼女は私の手を引いてくる。
それに、大人しく従うのだった。
「さ、先生。ズボンもパンツも脱いじゃいましょうか」
ベッドの上、促されるままに下着ごとズボンを下ろす。下だけ裸になるという格好に気恥ずかしさを覚えるけれど、今はそれ以上に気持ちよくなりたいという思いが強かった。
下半身を露出してベッドの縁に腰掛ける。てっきり隣に座るものと思っていたけれど、私が座るのを確認したノアはベッドの上に乗り、視界から外れた。
どうするつもりなのだろうかと消えた姿を追おうとしたとき、背中にぴたりと柔らかい感触が広がる。それが何かは言うまでもなく、しかしこれからどうするのか分からずに身を強張らせた。
「それじゃあ先生、私の脚、堪能してくださいね?」
困惑する私だったけれど、両脇からタイツに覆われたノアの脚が伸びてきて、何をやろうとしているのかを理解する。ただでさえ天を突く勢いだった男根が期待にぴくりと跳ねた。彼女より一回りは大きい私の背中でその様子は見えていないはずだけれど、後ろから楽しそうな笑い声が聞こえる。いや、これは同時に生唾を飲み込んだ音が原因だろうか。
私の胴に巻き付こうとするように膝が曲げられる。けれどそれが腹に回ることはなく、両足が膝の上に乗せられる。少し蒸れたタイツの感触がこそばゆい。それがすす、と肌を滑るのだから余計に、だ。
「ん、そろそろでしょうか?」
もぞり、もぞりと男のごつごつした内ももをきめ細かいタイツが撫ぜながらゆっくりと上ってくる。焦らすような動き――実際には見えていないのだから、単に手探りというか足探りしているだけなのだろうが――にくすぐったさが相まって、快感と誤認してしまいそうだ。
興奮のあまり呼吸すら忘れてしまいそうな中、ゆっくりと近づいてくる足をただただ見つめて待つ。心臓が痛いくらいに鳴っている。きっとこの音も後ろから抱きついている彼女には丸聞こえだろう。
「――あ、ここですね?」
そしてようやく、待ち望んでいた刺激がやってきた。両足の側面で肉棒を挟まれる。
手指よりも幾分硬さがある、しかし十分に柔らかいそれに喉から情けない声が漏れた。慣れていないゆえの不規則な動きだけれど、するすると滑るタイツのおかげでむしろ予測不可能な新種の快感へと変貌している。
「ん、しょ……難しい、です、ね。先生は気持ちよさそうですけど」
足の感触と私の反応だけが頼りなのは流石に大変そうだ。とはいえ、お察しの通り私は十分に気持ちいいのだが。
しゅ、しゅり、すり。ナイロン繊維が擦れる音が前から、ノアが懸命に足を動かすために発する喘ぎ声にも似た小さな声が後ろから聞こえてくる。ノアのいやらしい声にすら未だ余裕で興奮するというのに、そこにプラスワンされているのだ。ソレだけでもゾクゾクと身体を震わせるには十分な代物。
「よっ、ん、ぁ……こんな感じはどう、でしょうか」
それに、相手はキヴォトスでもとびきりの記憶力を持つ生塩ノア。拙かったはずの足の動きもどんどんと洗練されていく。ついさっきまで足を肉棒に当てて滑らせる程度だった動きは、いつの間にか明確な意図のあるものへと変貌していた。
足裏の柔らかい部分で竿の輪郭をなぞるように擦り、もう片方の足は指で摘むように亀頭を覆ってくる。
足蹴にされているはずなのに、そんなことを一切感じさせない優しく慈しむような刺激。視覚情報では明らかにアブノーマルなことが行われているはずなのに、目と触覚がギャップを起こして頭がくらくらしてくるようだ。
「ん、ふ……ぁ、先生、気持ちよくなっているんですね。ガマン汁、出てきてますよ」
「うん、気持ちいいよ……っ」
乾いた音だけだった摩擦音に水音が混じる。先端からにじみ出た先走りが亀頭を覆っていた足を濡らしたのだ。
ノアが足の指を閉じたり開いたりするたび、粘度の高い液を吸ったタイツがぐちゅ、ぐちょ、といやらしい音を立てる。私の興奮の証がタイツをより濃い黒へと染めていく。
彼女からは見えていない光景。一方的に責められた結果のはずなのに、逆にノアの日常を私が侵してしまったような背徳感に呼吸が荒くなった。
「すごい音……ずいぶんと興奮しているようですね。やっぱり、先生は足フェチなんじゃないですか?」
「ぐ……っ」
そんなことはない。そう言いたいのに、否定してしまえばこの気持ちよさが終わってしまいそうで何も言えなくなってしまう。そうこうしている間もノアは二つの足を肉棒の上で這い回らせる。
乾いた左足がしゅるしゅると滑り、濡れた右足がぐちゅぐちゅと亀頭全体へ快楽液を広げていく。両極端な感覚に脳がバグってしまいそうだ。
こんなに感じているのだ。別にもう足フェチと認めてもいいのではないだろうか。
「ふふっ、えっちな声、もう我慢しないんですね」
「だ、だって……あぁっ」
我慢しないというよりも、最早出来ないが正しい。既に腰には禄に力が入っていなくて、ノアに抱きしめられていなければそのまま仰向けに倒れてしまいそうな状態なのだ。
そして身体を預けているから、密着した柔らかい身体の感触もよりはっきりと伝わってくる。触覚だけでも全身をノアで覆われた状況。耐えられるはずもない。
「ひょっとして、もう限界だったりします? それなら、ラストスパート、行きましょうか……えいっ」
「ぅあ――っ」
ぐちゅり、と一際大きい音が鳴る。それまで別々に動き回っていた彼女の足が貝合せをするように足裏でくっつけられたのだ。土踏まずで出来たスペースにいきり立った男性器が挟まれる。
「先生……私の足オナホで、たくさん
肉棒を挟んだ足のサンドイッチが上下運動を始める。正しくオナホで快感を求めるような動き。先走りをローションにして、根本から亀頭まで大きなストロークを繰り返す。
足裏を合わせ、既に先走りの濡れ広がった亀頭にも足を届かせたことで、しゅりしゅりと乾いた音を立てていた左足にもいやらしい染みが広がる。ぐちゅぐちゅといういやらしい音が倍になる。
「ん、っしょ、ふ、ふっ……」
体勢のせいか、足を上下させるたびに後ろから熱い吐息が聞こえてきて、首筋を撫ぜてくる。今はそれすらも快感のピースでしかなく、男根を何度も跳ねさせた。とぷ、とぷと快感の証が先端から溢れ、すぐにタイツの染みとなって肉棒全体へと行き渡っていく。
「あぁ……また固くなりました。もう出そうですか? 私の足でいじめられて、気持ちいいお射精、しちゃうんですか?」
亀頭を土踏まずでぐりぐりと擦りながら熱の孕んだ声が耳を犯してくる。もうまともな言葉すら発することはできなくて、コクコクと首肯することでしか反応ができない。言葉を発しようとすれば、そのまま果ててしまいそうだった。
それはノアも理解しているのだろう。楽しそうに喉を震わせると、再び根本まで足を落とす。小指が睾丸をかすめる感覚にすら、快感電流が走る。
上へ、下へ。時折アクセントをつけるように足裏をすり合わせ。また上へ、下へ。ワンテンポごとに竿の付け根で果てる準備が進んでいく。
「も、もう……
「いいですよ先生。
一際勢いよく足がずり下ろされる。
それが合図だった。
――びゅるるるるるっ! どぷっどくっ、びゅりゅりゅっ!
「あ、アツ……おちんちん、びくびくって……っ」
足裏で感じる脈動に驚きながら、根本で細かく足を動かし、一滴の残滓も残さないように吐精を促してくる。ゼリーのような塊が竿を伝い落ち、ぐじゅ、と大きな音を立てながら黒タイツに新たな染みを作り上げた。
「うわぁ。タイツ、先生のえっちなおつゆでぐしょぐしょですね」
やがて長い射精が終わったあと、先走りや白濁で汚れた自分の足を目にしたノアが熱い呼気と共に呟く。飛び散った精液がふくらはぎの中ほどまでかかったタイツは、跡になってしまいそうなほどくっきりと異性の染みを作り上げていた。
「ふふっ、これじゃあまるで、先生が私の足をいいように使ったあとみたいに見えますね」
「む……それは事実誤認だ……」
思わず頬を膨らませる。事実として、これはノアが責めてきた結果であり、私はなすがままだった哀れな被害者に過ぎない。
ただまあ、結局快感を受け入れてなすがままだったのも事実なわけで。
「ん、ちゅ、んん……」
身体を反転させて揃ってベッドに倒れながら、唇を触れ合わすに留めるのだった。