「うーん」
デスクの前で小さく唸る。仕事の手が止まるが、どうせ集中できていない現状。無理にこなしたところでまたリンちゃんからリテイクをもらってしまうことだろう。
頭に思い浮かべるのは恋人であるノア。ここ数日、なんだから様子がおかしいように感じるのだ。
勉強も、セミナーの仕事も問題なくこなしてはいる。その様子は実際に見たし、ユウカから見ても問題はなさそうとのことだった。
けれど……私にはどことなく気もそぞろになっている時がある気がするのだ。なにか別のことに意識が持っていかれているような、かすかにズレが起きている起きているような違和感。
普通であれば気のせいで一蹴しているかもしれない。しかし、相手がノアとなれば、足蹴にしてしまうにはその違和感は大きすぎた。
「とはいえ、できることもないんだけどね……」
当のノア自身がなにも言ってこない以上、無暗に突っ込むのも気が引ける。ノアは恋人である自分を相手にどうしようもなくなるまで何も吐き出さない子ではない。ここは彼女が動くまで待ちが正解だろう。
つまり、今こうして仕事をさぼっている意味はまるでないのだが、待とうと決めたとはいえ、気になるものは気になるのだ。これは仕方のないことだろう。
なにせ普段のノアは年齢以上に精神的な成熟を感じる子だ。大抵のことでは余裕を崩さないし、むしろ大人であるこちらを手玉に取るほど……いや、これは関係ないな、うん。
とにかく、そんなノアが気づくのが私だけながら平時の態度を崩しているのだ。気にならないわけがないだろう。一体何に対して……実態もわからぬ存在への興味は尽きない。
とはいえ、そうして仕事以外のことを考えているということは、集中力が欠けている証左なわけで――
「くあ……」
喉奥からこみ上げる圧に耐え切れず、あくびを漏らした。昨日もほとんど徹夜だったせいで寝不足だ。おかげで文字通り山を作っていた書類を崩すことに成功したとはいえ、この眠気は結構きつい。ソラのところで買ったエナジードリンクも効いている気がしない。カフェインよ、もっと頑張ってくれ。
なーんて胃、あるいは腸にいるはずの液体に念じたところで、意思なき一成分が覚醒するはずもない。もはやカフェインは眠気を押し留める要因にはなり得ないらしい。
「よし……ちょっと寝よう!」
ということでここは……あえて寝る! こういうのは無理に眠気を抑えつけても効率が悪いだけだ。仮眠を取ることで結果的に効率が良くなる。え、それなら毎日のように徹夜で仕事をするな? それはそれ、これはこれ。こういうのは心に棚を作ることが肝要なんだ。
幸い、残っている書類は多少期限に余裕がある。まだお尻をあぶられている程度といったレベルだ。
それに……今日はノアが遊びに来る。せっかくの二人きりの時間。寝不足で無駄にはしたくない。
もう一度こみ上げてきたあくびを噛み殺しながら、仮眠室へと向かう。備え付けの簡易ベッドに身を投げ出すと、マットレスの心地よい反発と布地の柔らかい肌触りが頬を撫ぜる。
同時に感じる、意識が流砂に飲み込まれるような感覚。
「――――」
抗う間もなく、眠りの砂底へと落ちていった。
「ぁ……っ」
最初に感じたのは触覚。下半身から広がる心地よい痺れに、喉奥が小さな音を鳴らす。
次に感じたのは嗅覚。匂いに砂糖でもまぶされているのかと錯覚するほどの甘ったるい匂いが鼻孔をくすぐる。
「ぁっ、ん、んんっ……先生……ぁあっ」
そして聴覚も機能してくる。近いような遠いような。まだ意識がはっきりしないゆえに距離感が掴めない大きさでノア甘い声が――甘い声?
「のあ? ――え、ノア!?」
のろりと重役出勤で稼働を始めた視覚が捉えたのはあられもない姿になった彼女の姿で、半分眠ったままだった頭が急速に覚醒する。
「んんっ……あ、先生、起きちゃったん、ですか……?」
簡易ベッドに仰向けに眠っていた私の上、馬乗りの形になったノアはジャケットとシャツのボタンを外し、普段はぴっちりと覆い隠されている胸元を曝け出していた。紫のブラと赤らんだ柔肌のコントラストが暗がりでもやけに映えて見える。
スカートは脱ぎ捨てられ、ストッキングに包まれた下半身を露わにしている。そして自身の秘部にズボンから取り出された私の起立を押し付け、絶えずカクカクと腰を動かしていた。最初に感じた快楽の原因はこれだろう。
端的に言えば、私は現在進行形でノアに襲われていた。
「なんで……」
思わずついて出たのは疑問。いつものノアらしくない行為。どろりと瞳を情欲に濁らせ、だらしのない表情を晒した恋人の姿は、あまりにも自分の常識と違いすぎて、興奮と同時に困惑が湧いてしまう。
そんな私にノアはこきゅ、と喉を鳴らすと、包み込むように覆いかぶさってきた。視界が彼女で完全に埋まり、垂れ下がった白銀の長髪がさらりと肌を滑る。
「……私、変、なんです」
「変?」
「体育倉庫で、先生に後ろからしてもらってから、ここ、切なくて……」
「っ――!」
円を描くように亀頭の先端に恥丘が押し付けられる。じっとりと湿った低デニールのきめ細かい生地が甘美な刺激を走らせ、思わず腰が跳ねた。
「あぁッ!」
それはつまり、ノアの隠された淫土手に肉棒を突き立てるということなわけで、ぬかるみに浅くめり込んだ感触と共にノアが嬌声を溢れさせた。ぐちゅりと淫靡な水音が二人しかいない仮眠室にいやに大きく響く。
さらけ出されたおとがいの白に不思議と喉が鳴る。
生唾を飲み込んだ音が聞こえたのだろう。息を荒くしたノアは妖しい笑みを浮かべた。
「だから……もう、いい、ですよね? 先生のおちんちんで、私の大事なところ、慰めても、いいですよね?」
「ノア……」
瞳に捕食者のそれをまといながらも懇願してくる彼女の姿に、拒否をするという選択肢は残っていなかった。
いや、そもそもこの状況で私自身が我慢できなかったのかもしれない。ただただノアの双眸を見つめ続ける。
視界のノア以外映らない中、び、びび、と下腹部付近から薄い音が響く。
音が止むと、肉棒を掴まれる。いつもよりもどことなく荒い手つきに感じるのは、それだけ手の主が興奮に焦れているからだろうか。
「んっ――!」
彼女の手によって位置を調整された先端が再びぬかるんだ土手に触れる。けれどその感触は、先程とはまるで違っていた。
きめの細かいストッキング生地がない。最後の砦であるショーツの感触もない。
純潔を守るものはなにもなく、女陰に直接触れている。その事実に、ビキリと肉棒がさらに硬さを増した気がした。いや、実際に硬くなったはずだ。
それは肉棒を握っている彼女にも伝わっている。
私の興奮を直に感じ取ったノアはその表情を蕩けさせた。
その甘い顔に見惚れている間に、女陰にあてがわれていた肉棒に体重がかけられる。
「ああぁっ! 入って……っ」
「ぐっ」
熱い。そして狭い。ぐっしょりと濡れそぼった膣肉が、痛いくらいに締め付けてくる。痛いくらいと言いつつ、感じるのは今まで覚えたことのないレベルの快感。目の奥がかすかにチカチカと明滅して、気を抜けば思いっきり肉穴に欲望の限りを尽くしてしまいそうだ。
暴れまわりそうなくらい膨れ上がる獣欲を必死に理性で押し殺す。逆にノアはずぶ、ずぶ、と少しずつ男根を腟内へと受け入れていく。閉じた穴をかき分けていく感触が敏感な亀頭を何度も襲ってくる。
「っ……入り、ました、ね……」
呻くような声が二人分響く、悠久にも感じられる時間。けれどそれは間違いなく有限で、やがて先端が柔らかい壁に密着する。身体の中から押し上げられたからかビクリと大きく身体を跳ねさせたノアは、目尻に涙を浮かべながら微笑みかけてきた。
それがなんだかとても愛おしく感じられて、彼女の後頭部に手を回す。
「ん、ちゅ、ちゅる、れろ……っ」
どちらからともなく舌を絡ませる。重力に従って落ちてくる唾液のミックスジュースに喉を鳴らした。食道を通る液体がやけに熱を持っているように感じるのは、私がそれだけ興奮している証左だろうか。
せめてもの抵抗としてなだめるように彼女の頭を撫でてみる。まあ、そんなことをしたところで、私が興奮している様は密着した下半身が余すことなく伝えているのだが、時として内心より行動の方が大事なときもあるものなのだ。
だから、視界いっぱいに映るノアの目が笑っているように見えることからは全力で意識を逸らす。
「ちゅ、ちゅぷ、れ、ぁ……ふふ、先生、ありがとうございます」
「なんのこと?」
「私のペースに合わせてくれていることです。本当は早く気持ちよくなりたいでしょう?」
「……それくらいの甲斐性は見せないとね」
実際、何度も腰が動きそうになっている。けれど、好き勝手気持ちよくなるだけなら交わる必要なんてないのだ。相手のことを考えない交合ほど虚しいものはないと思う。
なんて、随分と青いことを考えていると、ノアの腰に力が入る。最奥まで飲み込まれた肉棒が少しだけ抜き出された。愛液にまみれた竿が外気に冷やされ、思わず小さく身震いしてしまう。
「ん、く……っ」
「大丈夫?」
「ぐ……ええ、大丈夫、です。ちょっと、難しい、ですけど……すぐに、覚えます……」
ぎこちない動きでようやくと言ったふうに半分ほど竿を抜き出したノアは苦悶の表情の中で笑みを浮かべる。そのいじらしい姿にどきりと胸が跳ねた。
「あんっ!」
「あ、ごめんっ」
同時に、堪えきれずに男根も跳ねた。引き抜いた分がまた半分ほど熱い穴に埋まってしまう。
「大丈夫、です……けど、あまり動かないでくださいね。私が、気持ちよくしてあげるん、ですから」
ゆっくりと、短いストロークが始まる。普通に生活をしていたらやらないであろう動き。それもノアはあまり運動神経がいい方ではない。なかなかに苦戦しているようで、その動きは少々もどかしい。
けれど、今はそれがちょうどよく感じる。自身の上で恋人が賢明に腰を振っているという光景だけでもかなり刺激が強いのだ。これで最初からクライマックスとばかりに男根を擦りあげられていたら、三擦り半程度であっさりと果てていたかもしれない。
「んっ、ふっ、ぁっ、く……」
腰が上下に動くたびに、ノアの喉から小さな音が溢れる。そのたびに無数のヒダに覆われた膣壁がきゅ、きゅ、と締まり、ぞわりと侵入者を拘束する。拘束とは言っても、愛液によって水浸しになっている膣穴はウナギの掴み取りでもしようとしているように扱き上げてきているだけなのだが。いや、それがね、気持ちいいんですよ。多分これだけぬるぬるになっていなかったら、流石に痛さの方が勝って静止の声を出していたと思う。
ぬるり、ぬるり、ぞわり、ぞわりと細かい動きで送り込まれてくる快感を腹に力を込めて耐える。気を抜けて我慢できず、というよりも身体が反射的に射精のために自ら腰を使ってしまいそうになるが、それではこの心地よさが終わってしまう。今はこの時間をじっくりと楽しみたい。
「ん、く……むう。先生、余裕そうですね」
「そんなことはないけど?」
しかし、どうやらノアにはそんな私の態度が余裕の表れに見えたらしい。熱に蕩けた顔のまま不満そうに瞼をじとっと下げてくる。弁明してみるが、あまり効果はなさそうだ。
まあ、確かにこれまでの散々攻められてきたことに比べれば、まだ余裕はある方だろう。けれど、それは手コキだのなんだのといったこれまでの攻めに比べて、騎乗位での腰振りがあまりにもノアの知識や経験が役に立たないものだからに過ぎない。むしろそれでも懸命に私を気持ちよくしようとしている姿がかなり股間に悪い代物となっている。
だが、彼女としてはもっと私の反応を見たいらしい。そんなに恋人の情けない姿が見たいか。むしろ今まで見せすぎって話だな?
「……仕方ありません。別のアプローチもしていきましょう」
「え? ぁ……」
小さくため息を漏らした彼女の言葉に首を捻っていると、ノアが自身の背中に手を伸ばす。
そしてプツ、とかすかな音が聞こえた瞬間、形よく胸を支えていた紫のブラが緩んだ。そのままサポーターの役割を終えた布をずり上げれば、隠されていた二つの肉実ごと柔らかな双子山が露わになる。
抑えつけられていた反動のようにハリのある胸がぷるんと弾力を主張する。柔らかいのに型崩れしないという奇跡のようなバランスを実現している部位はノアが動くたびにぷるぷると蠱惑的に揺れ、まるで猫じゃらしを向けられた猫のように視線が吸い寄せられた。
「ふふ、本当に先生は私のおっぱいが好きなんですね」
「うん。好き」
おっぱいというだけで男は興味を示してしまうものだが、それが好きな相手のものともなればなおのこと。こんな魅力的な柔肉を前にしては、草食系だって肉食系になってしまうことだろう。
私の目が揺れ動く胸に釘付けになっている中、ノアが私のシャツのボタンをぷち、ぷちと外してくる。あっという間に前を全開にしてしまうと、インナーをめくりあげてきた。
「んっ……!」
「先生は、自分のおっぱいも大好き、ですもんね。いっぱい、感じてください……!」
はだけた胸、その先端ノアの指が転がしてくる。すっかり開発されてしまった私の乳首は快楽信号を容易に走らせてしまい、ピクピクと身体が震えてしまう。
「くりくり、くーりくり……ちゅ、れりゅ、ちゅぷぷ……っ」
さらに、片方の乳首に吸い付いて来たのだからたまらない。胸元から広がる刺激の種類が増えたことで、堪える難易度が劇的に跳ね上がった。
「れろ、ぴちゅ……はむっ、ちゅぅ……あ、どうして目を閉じちゃうんですか?」
それに、視覚的にも目に毒すぎる。乳首に舌を這わせながら、上目遣いでこちらの反応を窺うようにじっと見つめてくるのだ。妙な気恥ずかしさを覚えて目を閉じた自分は決して悪くない、はずだ。
しかし、それはそれで悪手だったのかもしれない。
「ちゅ、ちゅっ、こり、こり……先生の乳首、おちんちんと同じくらい固くなってますね……ちゅる、んっ、ぁ……っ」
視覚情報をシャットダウンしたことで、それ以外の感覚が鋭敏になったような気がする。胸先を這いまわる指や舌の動きも、絶えず肉棒の輪郭を確かめるように這いまわる肉ヒダの動きも、乳首を舐めるために腹部に押し付けられた乳房の感触まで、すべてわかってしまう。
びくりと肉棒が震え、興奮をノアに伝えてしまう。結局恥ずかしいところを晒してしまったことに変わりがない。
プラスマイナスはゼロ。
いや、直後、それが明確なマイナス行為であったことを理解した。
「うぁ!? ノア、いきなりっ、はげし――っ!!」
「ふっ、んんっ、言った、じゃない、ですか……っ。すぐ、覚えます、って……ひぁっ、あぁっ!」
肉棒を飲み込んだ膣の動きが、その激しさを増したことに反応できなかったのだ。
棒の半分程度の幅だったストロークは抜け出てしまいそうなくらい大きくなり、試し運転は終わりとばかりに速さが上がっている。先ほどまでとは比べ物にならない動きに、接合部からはぐちゅ、ぶちゅ、といやらしい水音が響き渡り、簡易ベッドがぎ、ぎ、とリズミカルな軋みを上げる。部屋の外まで聞こえてしまいそうな行為音の洪水が鼓膜を震わせる。
「っ――!」
たまらず閉じていた瞼を開けば、今度はそれが追い打ちとなる。
直前に乳首を弄っていたからだろう。ノアは激しい腰振りを支えるため、両手を私の脇腹近くについていた。
それはつまり、前かがみになっているということ。
揺れるのだ。ノアのふくよかなふくらみが。最早ぷるぷるなどという生易しいレベルではない。ぶるんぶるん、あるいはばるんばるんと形容した方がいいほどに激しく。
男じゃらしと呼んでもいいその誘惑に、見ているだけではいられなかった。
「あぁんっ!! いいですよ、先生っ。私のおっぱい、好きなだけ、触って……ひゃっ、んんっ!!」
汗ばんだ肌が手のひらに吸い付いてくる。まるで私のために用意されたようなフィット感。弾力があるのに、指がどこまでも沈み込んでしまいそうな柔らかさを両手で貪る。跡が残ってしまうのでは、などという相手への配慮は既に意識の外だ。
「あっ、あっあっ! 先生、せんせっ」
そして、胸を愛撫されたノアは腰の動きを緩めるどころかより激しく責め立ててくる。
いや、スピードやストロークの大きさという点では抑えめになっているだろう。しかし、快感によってそこに不規則性が生まれ、私に予測不能の刺激を還元してくる。
そして与えられた痺れに堪えきれず、胸を揉む手に力が入る。
快感の増幅循環。エネルギー保存の法則を無視した幸福な無限機関が完成していた。
「せ、せんせ……わたし、もう……ッ」
「私も、もう、限界……ッ」
とはいえ、当の私たち自身がその快感に耐え切れるはずもなく。互いに閾値を超えた快楽にビクビクと身体を震わせる。ラストスパートと言わんばかりに互いを限界まで責める。
ぐちゅりと根元まで肉棒が飲み込まれるたび、きゅっと身を縮めた睾丸にノアの臀部が密着する。それすら快感信号へと変わっていた。
「一緒に、一緒にイって! イってください! わたしの、膣内で――ッ」
そして、膣の最奥を貫かんばかりに根元深くまで叩きつけられた瞬間、膣壁がこれまで以上にぎゅぅぅっと締め上げてきた。脈動するように何度も一瞬緩んでは締めるを繰り返してくる。
「ぐうぅ――射精る!!」
――びゅるるるるっ!! びゅっ、どぷっ、どぷぷっ!!
そんな最後の責めに耐えられるはずもなく限界まで溜めた精液を吐き出す。視界に見えなくとも、その勢いの良さを実感するほどの射精。あまりの勢いに、ノアの身体が少し跳ねたと錯覚したほどだ。
互いに何度も身体を痙攣させる。水音とベッドの軋みが消え、二人分の荒い息遣いが淫靡な湿気に満ちた室内に響く。
「は……は……っ」
ぱたりと、糸が切れたようにノアが私の胸に倒れこんでくる。敏感になった身体は胸をかすめる呼気すら愛撫と捉えてしまうようで、尿道に残っていた残滓を吐き出すようにどぷりと追加の吐精が行われた。
意識が飛びそうになる疲労感。このままもうひと眠りしてしまおうか、などと頭の片隅で考えながら、胸上の愛おしい存在を抱きしめる。かすかに汗の浮いた額にキスをすると、それでは足りないとばかりに顔を上げて唇同士の繋がりを求めてきた。
「ん……ふふ、しちゃい、ましたね……」
「しちゃったなぁ……」
唇を触れ合わせるだけの優しい接触で済ませた彼女が笑いかけてきて、思わずぼやくように言葉を漏らす。
別に失敗した、などという気持ちはない。生徒とお付き合いをする以上最初から責任は取るつもりでいたし、いつかこうなることも考えていた。……まあ、まさか寝込みを襲われるとは思っていなかったけど。
とはいえ、最後の一線を越えたという感覚もまた事実。それゆえに漏れ出た言葉であった。賢者タイムでようやく感動が追い付いてきたような、そんな感覚。
その感動をどう伝えたものかと、もう一度口づけを交わそうとして――
――くぅ。
「「…………」」
なんともかわいらしい音が、二人の間から聞こえてきて、思わず動きが止まった。瞳に私だけしか映さない顔が、みるみる朱に染まっていく。
「夜食でも食べようか」
気の利いた言葉が思いつかず、ストレートな言葉を紡いだ唇は、その小さな唇で再び塞がれた。
ノア編は以上になります。
女性責め多めで楽しかった。(小並感
セイア同様今回までの話の加筆修正+書き下ろしを追加した同人誌を夏コミで頒布予定です。素敵な表紙と挿絵も描いてもらったから、今から楽しみ!
それでは今日はこの辺で。
ではでは。