「はあ……はあ……」
既に出した精液が手指と男根の間で塗り潰されてぐちゅぐちゅといやらしい音を立てる。やけに大きく聞こえるのはそれだけ私が興奮してるからだろうか。……いや、そもそも普段はこんな続けざまに自慰行為をすること自体稀だから、そのせいかも。
「すごい。結構強く擦るんですね」
それに、今は見られながらなんていう異常事態中。変に感覚が研ぎ澄まされている部分もあるだろう。実際、自慰の気持ちよさもいつもの比じゃないし。というか、一度出してまだまだ全然余裕があるはずなのに、まるで射精直前かのようにしごく手が止まらない。なんだこれ。
左手で隙間なく肉棒を握り、何度も何度も上下に滑らせれば、奥歯がかすかに擦れてかちかちと間の抜けた音が口の中に響く。
目の前の画面にはリレーでハスミと競っているユウカの写真が表示されている。戦闘中とはまた違う一生懸命なみんなが写ったいい写真だ。
けれど、今の私は、性欲に頭を支配された私にはどうしても違う感想が浮かんでしまう。
「ブルマって、確かに運動するには動きやすくていいんですけど、やっぱり露出がすごいですよね。ユウカちゃんの太もも、脚の付け根まで出ちゃって、とってもえっちです」
とか。
「ユウカちゃんと競っていたのは正義実現委員会の副委員長さん、でしたか。おっぱい、大きいですね。写真なのにたゆんたゆんって揺れて見えちゃいます。思いっきり鷲掴みしてみたら、指が埋もれちゃうくらい柔らかいんでしょうね」
とか。
「……ひょっとして、私の心読んでる?」
「そんなことできませんよ。ただ、先生の視線的にそんなこと考えてそうだなと思っただけです」
それは心を読んでいると同義なのでは? 煩悩まみれの頭の中を耳元で代弁してくるノアにそんなツッコミが湧くが、それが喉元を通り過ぎる前に下半身の気持ちよさで上書き消去されてしまう。
普段ならできるだけ表に出さない“男”の部分が、勝利を求めて走る二人の肢体を視姦する。頭の中はノアが口にした通りの有り様で、ユウカのハリのある太ももとハスミのジャージのチャックが閉まらないくらい大きいド級の巨乳ばかりに目が行く。それぞれに違った発育の良さを見せる二人の身体。そこにこの欲望に固くなったバトンを押し付けたら、挟んだら、どれほど極楽の心地だろうか。
その時、二人はどんな顔をするだろう。なんだかんだ先生としては好かれている自覚はある。頬を朱に染め、まんざらでもなく受け入れてくれるだろうか。それとも軽蔑の目を向けてくるだろうか。……それはそれでゾクゾクしてありかも。
まるでエロ本の内容に自己を投影するように、有り得もしない妄想で膨らませる。妄想なんだから、これくらいの先生らしからぬ行為は許してほしい。
「あっ、ガマン汁、出てきましたね。息もさっきより荒いです。そんなに興奮するなんて、先生の頭の中で二人はどれだけめちゃくちゃにされているんでしょうね?」
妄想の中でユウカの太もも、ハスミの胸に亀頭を押し付ける。先端を擦る指の感覚を空想の柔らかさに置換する。
「それとも、先生がめちゃくちゃにされているんでしょうか。
ああ、それもいい。
ハスミが膝立ちになってまろび出た二つの大玉で肉棒を挟み込む。あのサイズだ。おそらく平均くらいの大きさの私の逸物は完全に隠れてしまうだろう。
ユウカはその太ももで私の腕を挟み、まるで素股でもするように腰をカクカクと前後させる。快感で妄想力が上がっているのか、何も触れていないのに腕に内ももと秘部の柔らかさを感じる気すらしてくる。
妄想に次ぐ妄想。最早写真はスパイスの一つに過ぎなかった。先走りがとめどなく流れ出し、手の中で精液と混じって水音がどんどん大きくなっていく。
「ま、まだ激しくなるんですか?」
ノアの困惑が混じった声が鼓膜を震わせる。確かに今の私の自慰は椅子がぎ、ぎ、と軽く軋むくらい激しくなっている。
普段であればここまで激しくなることはない。というか、大抵はその前に耐えきれずに吐き出してしまう。
けれど、今はほとんど間を置かずの二回目。限界近い海綿体の硬さに対して、射精感にはまだいくらかの余裕がある。
もちろん、これだけ激しい自慰なんてすれば、相応に疲れもする。興奮とは別の息の荒さが混じってくる。
けれど、肉棒をしごく手を止めようとは思わない。疲れを無視してしまえるくらい、未だ興奮が私を支配しているからだ。
それはこれまでの妄想のおかげでもあるし。
「すご、ぃ……こんな、パンパンに……」
肩越しに注がれる熱い視線のおかげでもあった。見慣れない男性器に多少恥じらいつつも幾らかこちらをからかう余裕のあったさっきまでと違い、今は時折熱い吐息を漏らしながらじっと股間を凝視しているのを感じる。こきゅりと小さく喉が鳴る音すらいやらしく思えてくる。
見られている。それだけじゃない。ノアに、初心な少女に雄の性欲を見せつけているという事実が変な脳内物質を出させている気がする。頭がクラクラして、酸欠にでもなってしまいそうだ。
写真を、妄想を、ノアを、この場にあるすべてをおかずにして、一心不乱に肉棒をしごいていく。ようやくじんわりと腰の下あたりに射精感のもやもやが集まってきた。このまましごき続ければ、もう少しで二回目の射精にたどり着きそうだ。
「ぁ……」
そんな小さな声が聞こえてきたのはそんな時だった。下手をすれば股間の水音にすらかき消されそうな小さくか細い声。耳のすぐ近くだったからこそ拾えたそれも、今の状況では無視していたことだろう。というか、実際に聞こえた、と認識しただけで聞き流し、見られながらの自慰という行為を優先した。
まあそもそも、仮に声に反応して動きを止めたところで、結果は何も変わらなかっただろう。
「ぺろ……っ」
「ひぁっ!? の、ノアっ!?」
いきなり顔を舐められるなど、想定のしようがないのだから。
耳珠を掠め、こめかみ近くまでを小さな舌にぺろりと舐め上げられ、思わず上擦った声が出てしまう。気恥ずかしさも相まって、流石に手の動きが止まる。
「ダメ、ですよ、先生。おちんちん、シコシコやめないで……ちゅ、れろ……」
そこに、更に追い打ちがかかる。ノアの舌が、今度は耳をねぶり始めたのだ。
「れ、れりゅ、ちゅ……額の汗もすごいですけど、耳もちょっと汗でしょっぱいですね」
唇と舌が耳介の凹凸を確かめるように這う。舌が通り、唾液がまぶされた部分が空気に冷やされ、肩をすくめそうになる。
ここに来て、自分がかなりの汗をかいていることに気がついた。液晶画面にうっすらと映った額には玉のような汗がいくつも浮いているのが見える。おそらく先程こめかみあたりを舐められたのもこの汗を狙ったのだろう……って!
「ノア、そんな、汚いから……!」
耳を舐められるだけでも謎の羞恥があるというのに、汗をかいた状態でとなるとなおさらで、なおも耳舐めを続けようとするノアを制止しようと試みる。しかし、後ろから肩を両手で抑えられている状態では禄に逃げることもできず、できることと言えば対話がせいぜい。
「汚くないですよ? 先生の耳、しょっぱくて美味しいです。――はむ、れろ、ちゅ、ちゅるっ」
そして耳舐めという凶行に走る少女は、やめる気など毛頭なかった。耳たぶを甘噛するように口に含むと、口の中で飴を舐めるように転がしてくる。
「どう、ですか? 気持ちいい……ですか? はぷっ、れ、れぇ、ぬろろぉ……っ」
「ぁっ……ん、ノア……っ」
さらに一度耳たぶから口を離すと、今度は舌を穴へと差し入れてきた。耳掃除でもしているかのように水気を帯びた軟体が右へ左へ壁面を這い回る。
水に潜ったときのように音がくぐもる。世の中には濡れている綿棒があるというが、それはこんな感覚なのだろうか。一瞬そんな考えが頭をよぎるが、すぐに否定する。
だって、耳掃除をされたくらいであんな変な声は出ない。こんなに背筋がぞくぞくと快楽に震えることはない。ぞくぞくが下腹部に集まってきて、止まっていた手を動かしてしまう。
「あぁ、またそんなに激しく……流石にもう出ちゃうんじゃないですか? れろ、れろぉ、ちゅ、ちゅぷ……」
耳穴を犯しながら、肩に身体を密着させてくる。スレンダーながらに確かな存在を主張する膨らみがふにゅりと押し付けられて、それだけなのに喉から熱のこもった吐息が漏れた。
写真から妄想する余裕は既にない。いや、そもそもその必要が最早なかった。頭の中を優しくかき混ぜられるような感覚に、腰が小刻みに跳ねるのを止めることができないのだ。
「ノ、ア……もぅ、出そう……」
「ん、ちぅ……ふふっ、いいですよ、先生。二回目のお射精、全部出して。私に見せてください――はむっ、ぺろ、じゅるるっ」
「ああっ! ノア……ノア……ッ」
もう、オフィスを満たす水音が自慰によるものなのか、ノアの耳舐めによるものなのかもわからない。ただひたすら、左手で終わりへ至ろうと乱暴なくらいに肉棒をしごき続ける。ついさっきようやくその切っ先を感じることができた靄のようだった射精感が、今とはなってははっきりと知覚できる。ドロドロのスライムのような熱い何かが下腹部から尿道を駆け上ってくるのを感じる。
「先生……」
そこに。
「
「――――ッ」
たとえ一見かすかなものだろうと最後の一押しがあれば、我慢するつもりもない私はひとたまりもないわけで。
――びゅっ、びゅるるるっ、どぷ、どぷぷっ!
仕事場を汚すことも厭わず、白濁をぶちまけた。
「すごい……二回目なのに……」
耳元で聞こえるノアの声に襲ってきた虚脱感で背もたれにぐったりと身体を預けながら顔を上げると、デスクの周りは飛び散った精液まみれになっていた。確かに二回目の量ではない。なんなら一回目よりも出たのではないだろうか。
それに、量もそうだが勢いもいつもより激しい。飛び散った白い粘液はキーボードは愚かディスプレイまで届き、写真越しのハスミとユウカをいやらしく汚している。
キーボードは買い替えだろうか。ディプレイも早く拭かなきゃ跡が残りそう。賢者タイムで落ち着きを取り戻してきた頭がそんなことを考えるが、徹夜続きにこれだけ精液を吐き出した身体は思うように動いてくれず、背もたれから離れそうにない。
「それにしても、これ全部生徒のみんなとの写真ですか? 皆が見れる写真フォルダもありますけど、こんな階層の深いフォルダに『先生専用』があったんですね」
私が動けないのをいいことに、ノアは無事なマウスを操作して私の――秘蔵の――思い出フォルダを物色しだす。
「当然の話ですけど、他校の生徒とも仲がいいんですね。これは海水浴の写真ですか。これは……あら? 温泉?」
生徒の写真をおかずにしていたという先生としては大失点もいいところな弱点だが、そもそもそれ以上に情けないところを見せたノア相手には焼け石に水だろう。……いや、そういえば混浴温泉に入ったときの写真とか、お散歩プレイの写真とかあった気がする。まあ、その辺はもう今さらかも。
最早今の私は無敵の人だ。いくら追撃が来たとしても追加ダメージなど――
「ここ、まだフォルダがありますね? 名前はつけられていないみたいですけど――」
「ま、待って! それはダメ!」
慌てて止めにかかる。が、疲れきった身体ではどうしても動きが鈍くなってしまうし、なにより今の状況でこんな反応をしてしまえば、見てくださいと言っているようなものだ。
一瞬こちらに顔を向けたノアはコユキを彷彿とさせるような茶目っ気のある笑みを浮かべ、名前のついていないフォルダをクリックする。思わず目をつむり、俯く。
「これって……」
中に格納されていた画像ファイルのサムネイルが表示され、ノアが息を飲んだのが伝わってきた。
フォルダには無数の写真が入っている。けれど、その被写体は一人だけ。晄輪大祭、パジャマパーティ、EXPO、シャーレ、あるいはキヴォトスのどこか。ただ話しているだけだったり、仕事をしていたり、あるいは暴徒鎮圧で戦っていたり。
そんな、ノアの写真だけが入っていた。
「ふふっ」
そんな中身を見て固まっていたノアからそんな笑い声が聞こえてくる。恐る恐る顔を上げると、振り返ったノアと目が合った。アメジストを思わせる澄んだ紫の瞳が優しげに笑っている。
それが近づいてくる。椅子のヘリに片膝を乗せ、吐息同士が混ざり合うくらいの距離で見下される。ほのかに甘い匂いが肺を満たしてくる。
「先生、あのフォルダの意味、教えてもらえますか?」
「そ、れは……」
私だけが見ることのできる――パスワードロックもかけている――生徒たちの写真がまとめられたフォルダ。そこにノアの写真だけがさらにフォルダ分けされている意味。おそらく目の前の彼女には寸分の狂いもなくその意味が伝わっていることだろう。
理由を自白することは簡単だ。最悪、たった二文字で形容できてしまえる。
「…………」
けれど、言葉が出ない。この状況で口にするのは何が何でも情けなさすぎる。いや、ここでまごついている時点で十分情けないのだが、それにしたって私にもプライドというものはあるのだ。
「……まあ、そうですね」
「ノア……?」
そんな煮えきらない反応しかできない私にノアはぽしょりと呟くと、そっと頬に手を添えてきた。少し冷たい指先が顔の輪郭を撫ぜる。
「ん……」
「っ――」
そして――間抜けにも半端に開いた私の唇に、ノアのそれがそっと触れた。思わず息が止まる。
呆然と、苦しくなるまで呼吸を忘れた私から離れた彼女は、上品に口元を隠すと笑いかけてきた。
「私としてもせっかくなので雰囲気は大事にしたいですからね。それはまた後日ということにしましょうか」
それは、最早全部言ってしまっているようなものではないだろうか。ほんのりと染まった頬の彼女にそう思うが、言葉にすることはなかった。私としても、リベンジの場は欲しいのだ。
「とりあえずそれは置いておくとして……このままだと他の子達も先生の毒牙にかかってしまうかも知れませんね。これは大問題です」
「へ?」
ひとまず情けない方と情けない方で情けない方を死守した私から視線をディスプレイに戻したノアの言葉に、変な声が出た。この状況で? いやしないが?
しかし、そんな抗議の視線も表示された
「なので、これからは私が先生の性欲、しっかり管理してあげますね」
「え」
ぽかんと口を開けたまま固まった私をよそに、ノアは忘れ物だったらしい筆記具を鞄に入れると、そそくさと帰っていってしまった。
残ったのは、最後の彼女の言葉を反芻して動けない、情けない大人だけ。
えっと……これはつまり……今後もノアがさっきみたいにえっちなことをしてくれる……ということ? まだ告白してもいないのに?
こうして、私とノアの恋人? 射精管理生活が始まったのだった。