「ふーん……」
空気が、重い。まるで上から巨大な手で押さえつけられているようで、耐えきれず頭を垂れてしまう。
原因はいつものように私のPCを眺めているノア。彼女から発せられている特大の不機嫌オーラが実体化して襲いかかってきている……という幻覚を見てしまっているのだ。
「アビドス、トリニティ、ゲヘナ、百鬼夜行……へー、ヴァルキューレとはプールに行かれたんですね」
彼女がスライドショーのように表示させている写真に映る生徒たちは皆いつもよりも露出の多い、しかしその場に即した健全な格好……いわゆる水着に身を包んでいる。不思議だよね。ハナコの言う通り遠目からではビキニと下着の区別なんてつかないのに、その場ではあまり性的には見えないんだから。まあ、あのフォルダに入れている時点でその実はお察しなのだが。
そんな生徒たちとの海やプールへのお出かけシーンを眺めながら、ノアは「へー」とか「ふーん」とか短い言葉を漏らし続けている。時折画面に映る表情はいつも通りの笑顔なはずなのに、圧を感じて仕方がない。
「の、ノア……?」
「はい、なんでしょうか」
「怒ってる?」
「いいえ、怒っていませんよ? ただ、同じ三大校であるゲヘナやトリニティが海に行っているのに、ミレニアムは蔑ろなんて不公平じゃないかとは思っています」
それは十分怒っていると言うのでは? と口に出そうになったが、私は大人なので我慢した。ノアと同じ歳の頃だったら画面できずに言葉を漏らし、彼女の論理武装でめちょめちょになっていたことだろう。
まあ確かに、キヴォトスにおける学校間のパワーバランス? を考えると、ミレニアムと海にまつわるイベントを行っていないのは問題かもしれない。正直未だにそういうのよくわかってないけど。
一応弁明したいのだが、私は別にミレニアムを蔑ろにしていたわけではない。そもそもEXPOのようなイベントごとならともかく、こういうあくまでも遊びに過ぎないこと――一部は依頼も含まれていたけれど――に参加するのはいつも生徒側から声をかけられたからだ。というかそうでないと普通に私の身が持たない。改めてキヴォトスは大きすぎる!
それに、例えば私の肩書がシャーレ顧問ではなくゲヘナ風紀委員会顧問であれば「合宿だー!」って言いながら夏合宿を提案することもできるけれど、シャーレの私がそれをやるのはあまりよろしくないというのは流石にわかる。本当は私だってノアと海行きたかったよ! けどミレニアムからはなんの声もかからなかった!
「次の夏休みは海行こうね。温水プールとかでもいいけど」
「はい。ぜひそうしましょう」
あまりよろしくないと思いつつ提案すると、笑顔が少し柔らかくなった。まあ、周りにバレると色々アレなのはノアも承知しているところだし、実際に行くときはセミナーの皆でとかになるだろうな。けどノアの水着が見られるのはとても楽しみなのでオッケーです!
「あら?」
とりあえずノアの機嫌が良くなったことに胸を撫で下ろしていると、水着スライドショーをめくっていた彼女の手が止まる。
どうしたのだろうと画面を覗き込むと、映っていたのは水着の生徒ではなかった。
病院のカーテンに覆われた空間。そこでしっかりと服を着込んだ少女が服をたくし上げ、ヘソを露出させている。
いつだったか、栄養不足で倒れたヒヨリとの病室での一幕であった。
「これは……どういう状況なんですか?」
病室でヘソを見せつける。さしものノアも状況が理解できなかったようで、困惑の声を漏らす。まあ、普通に考えると意味がわからないよね。
かい摘んで状況を説明する。流石に表向き指名手配されている都合上、アリウスということは伏せたが、雑誌のモデルや友人を見て、自分のヘソが変ではないか不安になった辺りを。
「それは……先生でなくても他のご友人に相談すればよかったのでは……?」
それはその通り。サオリは自分探しのために単独行動することが多いようだけれど、ミサキやアツコとはよく一緒にいるみたいだし……いや、ミサキはこういう突飛な質問が来たら辛辣な返ししそうだし、アツコはあれでかなりお茶目なところがある。面白おかしく話を転がす姿が容易に想像できる。しまったな。私が相談されたことに説得力が生まれてしまった。
「色々あるんだよ、うん……」
アリウススクワッドの名誉のために言葉を濁す。曖昧にすることしかできないダメな大人を許してほしい。
「なるほど? まあつまり、先生がおへそを見せるように命令した、とかではないわけですね?」
「するわけなくない!?」
ちょっとノアの中での私像がおかしいことになっていないだろうか。私自身この時は結構困惑したんだけど?
「けど、ここの写真が入っているということ……この姿に欲情したということでは?」
「それはその……てへっ。――イタイっ!?」
おどけてみたらぺちんと軽く頬を叩かれた。
いやまあはい。この写真をおかずにしたことはあります。そもそもたくし上げって構図が妙にいやらしいし、あの時は混乱が勝ったけど、よくよく考えたらものすごいシチュエーションがエロかった気がする。ヘソを見た感想ってなに? こんな身体でもいいとか、役に立ちそうってなに? 完全に流れがエロ漫画のそれだぞ槌永ヒヨリ!
「それにしても、そうですか。先生はおへそにも興奮されるんですね」
「ノア……?」
脳内でヒヨリにいつもの泣き顔をさせていると、ノアがぽしょりとなにかを呟いたのが聞こえた。
聞き返そうと声の方を見ると、くるりとこちらに背を向けた彼女からぷち、ぷち、と小さな音が聞こえてくる。それがボタンを外す音だと気づいた時には、彼女のシャツが上着ごとぱさりと床に落ちていた。
「な、なにを――!?」
急に露わになった白い肌に思わず顔を覆おうとして、動きが止まる。
上着もシャツも取り払い残っているのはブラだけ、と思った上半身。けれどよく見れば薄水色ベースのそれはブラにしては記事がしっかりとしているというか、少し表面に光沢がある。そこまで女性下着に詳しい訳では無いが、人に見せない水着のブラトップに非対称デザインはあまり採用しないのではないだろうか。
困惑しているうちにスカートもストッキングもその肌から離れる。最後に残ったのは上下同じデザインの布地だけ。
最愛の彼女のビキニ姿がそこにはあった。
綺麗だ。そう思うと同時に喉がごくりと鳴ってしまう。職場で水着姿というあり得ないシチュエーションが、あまりにもいやらしさを助長させていた。
「どうですか、先生? 私のおへそ。流石にモデルさんみたいな縦型ではないですが……」
そんな私の興奮を知ってか知らずか、ノアは露出したへそを見せつけてくる。だらしないわけではないが流石にインドアなタイプ故か、その形は縦寄りの楕円形だ。
自分についているものと同じ器官。最早役割を終えた跡地であるそれから目が離せない。それどころか吸い寄せられるように顔が近づいていく。
「先生? キャッ!」
やがてか細い腰に腕を回すと、その小さな凹みにそっと口づけをした。流石に驚いたのか、ノアの身体が跳ねる。
「せんせっ、急になにを……っ、んっ」
痩せているながらもその腹部は柔らかい。ヘソの輪郭を確かめるように何度もキスをして、唇で柔らかさを堪能する。
なんだろうか、この満たされる感じは。普通のキスで得られるものとは違う感触。こう、ちょっと良いところの美味しい肉を食べた時のような幸福感。……そう考えるとなんだか味も確かめたくなってきた。
「ひゃっ!? ん、ふ……っ、先生、そんなところ舐めるなんて、ゃ、んんっ」
舌の腹を押し付けて舐め上げる。汗だろうか、かすかな塩気と共に味蕾が甘さを感じ取ったような気がする。それがなぜか異様に甘露に感じられて、二度三度と舌を這わせていく。
「ぁっ、ん……っ、っ……」
それにしても、本当に柔らかい。多少肉付きがいいとはいえ、ノアは痩せている方だ。その腹がこんなに柔らかいとは……ひょっとして腹筋が存在しないのでは? 肌もすべすべだし、いくら舐めても飽きることはなさそうだ。
まるで餌を前にした動物のように夢中でむしゃぶり続ける。
「んんっ!?」
そんな私を止めたのは、胸元から響いた刺激だった。思わず腹舐めをやめて顔を下に向けると、いつの間にか私の胸元にノアの手が伸びて、服の上からその先端をくりくりと弄っていたのだ。
「もう……躾のなっていないワンちゃんですね……」
「ぁ……っ」
ほのかに顔を赤らめて困ったような表情を浮かべた彼女がピン、と乳首を指で弾くと、全身に甘い刺激が広がる。思わずまたノアのお腹に顔を埋めるが、彼女には感じてしまったことはお見通しらしい。上から楽しそうな笑い声が降ってきた。
「先生みたいなちょっとMっ気のある男の人は乳首も感じちゃうらしいとは聞いていましたが、本当だったみたいですね」
「そ、それは……」
からかうような声を否定したかったけれど実際に快感が発生したのは事実なわけで、尻すぼみに言葉が消えてしまった。そんな私の反応にまた笑みを漏らすと、再び指を胸に這わせてくる。
「ピン……ピンっ。くりくりー」
指の腹で乳首を弾いたり、焦らすようにその周りに指先を這わせたり。シャツと下着の上からだというのに触られる度に気持ちいい。いや、二枚の布の上からだからこそかも。ノアの指が動く度に布地で乳首が擦れるのだ。こんなこと今までなかったのに……。
「ゃん。もう……くりくりくり、ピン、ピン、ピンッ! ふふっ、ちょっと硬くなってきていませんか?」
対抗するようにヘソを舐めてみるが、余計にノアの責めが激しくなってしまう。目視はしていないが、ノアの言う通りなのだろう。布地と乳頭の密着具合が上がっている気がする。それはつまり、与えられる快感が増すということで、状況は余計に不利となっていた。
「んっ、くりくり、くりくりっ……あら? 先生……おちんちん、大きくなってませんか?」
「あ、いや、その……はい……」
見えないと思っていたのに、ノアに指摘されて思わず縮こまる。いや、指摘された箇所は肥大しているんだけど。既にズボンの中では男根が限界まで勃起している。あまりに勃起しすぎて痛いくらいだ。
「ぁっ……」
素足で裏筋をそっと撫ぜられ、肉棒がズボンの中で跳ねる。
「乳首だけでこんなに硬く……いえ、私のお腹も原因ですかね? ……あっ、もう」
肯定するように再び顔を腹肉――というほど贅肉はないのだが――に埋める。最初は好奇心だった腹を舐めるという行為。それがいつの間にか性的興奮に繋がっている。普通に生活していればまずやらない行為が、口元から感じるノアの肌感か、体温が、乳首責めも相まって快楽へと変換されていた。
この肥大した肉棒をなんとかしたい。欲望を吐き出したい。さっきからそんな思考が脳裏をよぎり続けている。今更いいじゃないか。ここにはノアしかいないんだし。そんな悪魔の囁きが聞こえてくる。
「ふふっ」
そんな私にノアは天使のように微笑みかけると――
「いいですよ、先生。自分のお手々でシコシコって気持ちよくなってください」
「っ!!」
そっと悪魔と一緒に背を押してきた。
その後の私の反応は最早反射と言ってよかった。片手で無造作にズボンを下ろし、天を突く勢いで跳ね出た怒張を無造作に扱き始める。最初からフルスロットルで、火傷してしまいそうな早さで。
「ふふっ、そんなに激しくしたらすぐ出ちゃいますよ?」
そんな情けない様子に声をかすかに弾ませて、ノアは再び手を私の胸へと伸ばしてくる。既に位置を覚えてしまったのだろう。迷いなく指の腹で小さな突起を捉えると、弾き、こねくり回してくる。
「くるくる、くにくに……」
ボタンを押すように乳頭を圧迫されると、なぜか腰が跳ねてしまう。腹の下にじんわりと熱が溜まっていくようだ。
同時に漏れそうになる声を隠そうと、ノアの腹を猿轡のように咥え込む。日焼けしていない白い肌に赤い跡が付くが、それを気にする余裕は既になかった。
早く出したい。もっと気持ちよくなりたい。頭の中にあるのはもうそれだけ。一心不乱に柔らかい腹に舌を這わせ、肉棒を扱き、乳首の快感を享受する。
「の、ノアっ! もう……ッ!」
そんな状態が長く持つはずもなく、何度も身体を跳ねさせながら恋人へ懇願する。声が上ずり、大人の威厳もなにもあったものではない。
目が合った彼女は優しく微笑んできて――容易に最後の一押しを繰り出してきた。
「いいですよ。出しちゃってください。ほら、ギューッ」
「あ、あァ――――ッ!!」
人差し指と中指で乳首を挟まれる。急に強い刺激によって与えられた快感がポンプのようにせり上がろうとしていた精液を押し上げる。
――びゅるる、びゅっ、びゅるるるるっ!!
「あはっ、今日もすごい勢いですね……あぁ、アツい……」
勢いよく鈴口から飛び出した精液がノアに飛び散る。内臓から出たての白濁の熱に彼女は思わずといった様子で双眸を細めた。
やがて欲望のすべてを出し切ると、ようやくノアから離れる。快感のせいで腰に力が入らず、そのまま床に座り込むことになってしまった。
「お疲れ様です、先生。大丈夫でしょうか」
「うん、大丈――」
さきほどまで私を責めていた張本人からの心配の声に反応しようと息が整わぬままに顔を上げて――息を飲んでしまった。
欲望のままに吐き出した精液。それは彼女の脚に飽き足らず、その上、ビキニパンツにまで届いていた。魅力的なデルタゾーンにはいやらしいシミを残しながら粘度の高い白濁液がだらりと垂れてしまっている。
その様はまるで中に出された精液が垂れてしまったように見えて、ごくりと唾を飲み込んでしまう。
「あら?」
「あ、これはその……」
そんな光景を見せられれば、出した直後とはいえ未だ余力を残している息子は反応してしまうもので、九十度ほど立ち上がった精液まみれの肉棒をノアの前に晒すことになってしまった。
この状況で「射精管理をする」と言っていた彼女が「今日はもう終わり」となるはずもなく、先ほどとは別の意味で両目を細める。
「ふふっ、どうやら先生はまだまだ乳首をいじめられたいみたいですね」
先程までの行為を想起させる言葉に肉棒がぴくっと跳ねる。言葉なき肯定を身体が示す状況で、近づいてくるノアから私が逃れる術は何一つ残されていなかった。
そもそも、逃げる理由もないのだが。