※この作品はR-18です。

むにっとねっとりドラゴン独占生活   作:ボルメテウスさん

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イルルとナデンの対比

 ナデンの肌が、ほんのわずかに震える。けれど、それは拒絶ではなかった。

 むしろ、彼女自身が自分の中の「知らなかった熱」を、どう扱えばいいのか分からないまま、手探りで進んでいる――そんなふうに見えた。

 

 触れる。応える。重なる。

 

 彼女の手が、僕の背を伝うたびに、指先に緊張が宿る。その一線を越えるには、まだためらいが残っていた。

 

「……これで、合ってるのか?」

 

 囁きは、まるで風に問うように細くて、真剣だった。

 

「うん……ナデンのままで、合ってるよ」

 

 そう答えると、彼女は少しだけ眉を寄せて、でもすぐに、目を閉じた。

 

 身体が寄り添い、互いの体温が一つの場所に収束していく。

 

 ナデンは、丁寧だった。

 

 無理に迫ることはせず、押し付けるでもなく。ただ、自分の不器用な優しさを、一つずつ積み上げていくように、僕の身体を知ろうとしていた。

 

 彼女の魅力は、「傷ついた経験の深さ」から生まれていた。

 痛みを知っているからこそ、触れ方が柔らかい。

 遠回りをしてきたからこそ、一歩の重みが違う。

 

 彼女の唇が、首筋を辿るとき。

 その熱に、ためらいと誠実さの両方が込められているのが分かる。

 

 ナデンの愛し方は、静かで、深くて、どこまでも慎重だ。

 その慎重さが、逆に僕の奥まで届いてくる。

 

 身体を重ねたあと――彼女は僕の胸に額を押し付けて、小さく吐息をもらした。

 

「……あんた、変な奴だな」

 

「よく言われる」

 

「……でも、もう少しだけ……こうしてても、いいか?」

 

「もちろん」

 

 そう言って、彼女の背に腕を回すと――彼女は、やっと小さく笑った。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 雨が止んだ頃、イルルが戻ってきた。

 

「……お前ら、火に当たってるだけだろうな?」

 

 と、洞窟の入り口から睨んでくるその目は、焚き火より熱かった。

 

 ナデンは肩をすくめ、少し距離を取った。

 

 イルルは、それを見て鼻を鳴らす。

 

「ふん、まあいい」

 

 彼女は濡れた外套を脱ぎ、洞窟の一角に座ると、静かに火を見つめた。

 

 ――イルルは、ナデンとは正反対だ。

 

 彼女は、自信に満ちている。

 愛し方も大胆で、支配的ですらある。

 距離を一気に詰め、こちらの準備もお構いなしに、内側まで踏み込んでくる。

 

 それが、時に暴力的にすら思えるほど、激しい熱を持っている。

 

 でも――

 

 その熱は、彼女なりの“守り方”だった。

 

 イルルの愛し方は、「独占」だ。

 奪うことでしか守れないと思っている。

 だからこそ、どこまでも強くて、脆い。

 

 イルルに抱かれる夜は、息を飲むほど熱く、逃れられないほど密だ。

 

 ナデンが“寄り添う愛”なら、イルルは“覆い尽くす愛”だ。

 

 二人の差は、明確だった。

 

 そして――どちらも、捨てがたい。

 

 ナデンの繊細さは、触れるたびに胸の奥が温まるような愛で。

 イルルの激しさは、心の底から突き動かされるような衝動の愛だ。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 その夜、イルルが僕の隣でぽつりと呟いた。

 

「……お前、あいつに触れたな」

 

「……うん」

 

「嫌じゃなかったのか?」

 

「嫌なわけないよ。ナデンは……優しい」

 

「ふん。だったらもう、こっちに戻ってこなくていい」

 

 言葉は棘があったけれど、その手は、僕の袖を掴んでいた。

 

「……けど、ナデンにはないものも、私にはある」

 

「例えば?」

 

「全部だ」

 

 そう言い切るのが、イルルらしかった。

 

 その「全部」が何かは、言葉にしなくても分かっている。

 僕の全部を焼き尽くすほどの、炎のような情熱。

 触れられるたび、存在を支配されるような、濃密な体温。

 

 イルルは、決して「分け合う」愛をしない。

 彼女は、全部欲しがる。

 そして、それを「私だけが持つ」と信じている。

 

 ナデンと過ごした、静かな夜。

 イルルが隣にいる、燃えるような夜。

 

 どちらも、僕の中に刻まれて、否応なく「選ばせよう」としてくる。

 

 だけど――

 

 僕はまだ、どちらの手も、離したくなかった。

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