※この作品はR-18です。

むにっとねっとりドラゴン独占生活   作:ボルメテウスさん

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静寂を壊したい竜

里へ続く森の手前で、焚き火を起こした。

 

火を点けたのはイルルだった。だが炎は小さい。いつもなら枝が爆ぜる音が響くはずなのに、火は揺れず、静かに燃え続けている。

 

イルルが舌打ちした。

 

「……なぁ。これ、絶対おかしいだろ」

 

枝を一本、乱暴に放り込む。火は広がらない。ただ形を整えるように、音もなく包み込んだ。

 

ステラが腕を組む。

 

「制御されている。悪い状態ではない」

 

「だからムカつくんだよ」

 

短く吐き捨てる。視線がこちらへ向く。

 

「お前、何も感じねぇの?」

 

少し考える。

 

「……静かだな、とは思う」

 

その一言で、イルルの眉が寄った。

 

「静か、ね……」

 

立ち上がる。火の前から一歩離れ、背を向けた。

 

「俺さ、ああいうの嫌いなんだよ。何考えてんのか分かんねぇやつ」

 

クロのことだと分かる。言葉にしないのに、空気が張り詰めた。

 

ナデンが小さく口を開く。

 

「リンクの影響です。炎の揺らぎが最適化され――」

 

「分かってるって!」

 

遮るように声が強くなる。だが怒鳴るほどではない。押し殺した苛立ちだった。

 

イルルがこちらを振り返る。

 

「……なぁ。あいつ、なんでお前にだけ近づけんだよ」

 

問いは低い。けれど視線だけが強い。

 

「別に、特別なことは――」

 

「違ぇだろ」

 

言葉を重ねる前に、距離を詰めてきた。目の前まで来て、じっと見上げる。

 

「俺だって近くにいたいんだよ。なのにさ……」

 

言葉が途切れる。唇が小さく動いて、すぐ閉じる。

 

「……あいつが来てから、なんか変なんだよ。お前、遠くなった気がする」

 

焚き火の音が小さく鳴る。

 

ステラが静かに口を挟む。

 

「イルル。それは錯覚だ」

 

「うるせぇ」

 

視線を外さないまま、さらに一歩近づいた。肩が触れそうな距離。

 

「俺はさ、お前が線引くのも、止めるのも分かってる。でも……」

 

言葉が落ちる。炎が小さく揺れた。リンクの静寂が流れ込む。

 

その瞬間、イルルの表情が変わる。

 

「……やっぱ無理だわ」

 

ぱっと手を振る。炎が一瞬だけ大きく跳ねたが、すぐに収まる。

 

「静かすぎて、息できねぇ」

 

背を向けて、焚き火から少し離れる。完全には去らない。けれど距離ができた。

 

ナデンが小さく呟く。

 

「……独占欲の反応ですね。リンクが共有領域に触れた影響かと」

 

ステラは視線をイルルへ向けたまま言う。

 

「主。これは戦闘より難しい問題だ」

 

しばらく沈黙が続く。

 

焚き火の向こうで、イルルが膝を抱えた。炎を見つめたまま、動かない。

 

リンクの奥で、静かな闇が揺れる。

 

クロは何も言わない。ただ、遠くから見ているような感触だけが残っていた。

 

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