※この作品はR-18です。

むにっとねっとりドラゴン独占生活   作:ボルメテウスさん

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ステラの警告

焚き火の火が、静かに揺れていた。

 

イルルは少し離れた場所で膝を抱え、炎を見ている。背中は小さいのに、近づきづらい空気があった。リンクの奥で流れてくる静寂が、胸の内側をゆっくりと撫でていく。

 

「主。少し時間をもらう」

 

ステラの声は低い。いつもと同じ調子なのに、どこか慎重だった。

 

焚き火から離れ、木立の影に入る。足元の落ち葉がわずかに鳴る。誰も追ってこないのを確かめるように、ステラは一度だけ背後を見た。

 

沈黙が続く。

 

言葉を選んでいるというより、順序を組み立てているような間だった。

 

「……結論から言う」

 

赤い瞳がこちらを捉える。

 

「クロは、主を殺せる存在だ」

 

責める響きはない。事実だけを置く声だった。

 

胸の奥に残っている、あの黒い静寂を思い出す。怖いとは思わない。ただ、深すぎる水に触れたような感覚がある。

 

「分かってる」

 

そう答えると、ステラは小さく首を振った。

 

「いいや。分かっていない」

 

視線が鋭くなる。だが怒りはない。戦場で部下に説明する時の顔だ。

 

「私は災害を何度も見てきた。敵ではない。意思もない。ただ存在するだけで、戦場の形を変えるものだ」

 

言葉が落ちるたび、胸の中のリンクがわずかに震える。

 

クロの静けさ。

 

イルルの熱。

 

ナデンの冷たい思考。

 

全部が同時に流れてくる。

 

ステラは一歩だけ近づいた。間合いが戦闘時と同じになる。

 

「主は近づいたな。命令ではなく、自分の判断で」

 

「ああ」

 

「なら私は従う」

 

短く頷く。その瞬間、胸の奥が少し軽くなる。だが次の言葉で、空気が引き締まった。

 

「だが、守る」

 

声が低く落ちる。

 

「これは主従ではない。役割だ」

 

腕を解き、焚き火の方向へちらりと視線を向ける。イルルの炎が一瞬だけ揺れた。

 

「……あの竜は、主の中心に入り込みすぎている」

 

リンクの奥で、何かが触れた気がした。静かな闇が波紋を広げる。

 

ステラはそれを感じ取ったように、少しだけ目を細める。

 

「主は線を引く役だ。火力でも制御でもない。“止める側”」

 

ゆっくりと言葉を選びながら続ける。

 

「だが、止める者が巻き込まれたら……誰が線を引く」

 

問いは空中に残る。

 

答えを求めているわけではない。ただ、現実として置かれた言葉だった。

 

風が吹き、枝葉が鳴る。焚き火の匂いが少しだけ流れてきた。

 

ステラが小さく息を吐く。

 

「だから決めた。主は守る対象だ。命令ではない。私の判断として」

 

声は静かだった。誓いというより、配置を宣言するような言い方。

 

しばらく視線が重なる。

 

戦場なら、この距離は刃が届く位置だ。だが今は、何も構えていない。

 

ステラが一歩下がった。

 

「誤解するな。クロを敵とは思わない。……だが、味方ともまだ言えない」

 

言葉の最後が、ほんの少しだけ柔らいだ。

 

背を向け、焚き火へ戻っていく。その背中を見ていると、立ち位置が変わったことだけがはっきり分かった。

 

焚き火のそばでは、イルルが顔を上げない。

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