※この作品はR-18です。

むにっとねっとりドラゴン独占生活   作:ボルメテウスさん

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群れとしての纏まり

朝の光が森の奥からゆっくりと差し込み、夜露の残る葉を淡く照らしていた。焚き火の灰はほとんど白くなり、細い煙だけが静かに上へ伸びている。さっきまでの会話の余韻が残ったまま、森の空気はまだ少し重い。

 

イルルは腕を組んで立っていた。炎の気配は抑えられているのに、肩の線だけがわずかに張っている。さっき聞いた言葉をどう飲み込むか、まだ決めきれていない顔だった。

 

その静けさを破るように、背後から軽い声が飛んできた。

 

「あっ、いたいた、2人はここにいたのか」

 

振り返ると、ナデンが小走りに近づいてくる。いつもの落ち着いた歩き方ではなく、少し急いでいる様子だった。

 

「……なんだナデン。何の用だ」

 

イルルの声は低い。先ほどよりも明らかに棘が増えている。

 

ナデンは足を止め、二人の顔を見比べてから小さく肩をすくめた。

 

「うわぁ、さっきよりも機嫌が悪くなっているじゃないイルル」

 

「別に」

 

短く吐き捨てるように言うが、腕を組んだ姿勢は崩れない。視線はどこか森の奥を探るように動いている。

 

ナデンが軽く手を振る。

 

「それよりも戻るならば早くしないと、その……」

 

言葉が途中で止まった。

 

イルルの目が鋭く細くなる。赤い瞳が森の奥を睨んだまま、低い声が落ちた。

 

「……おい、そこで見ているだろ」

 

空気がわずかに沈む。

 

ナデンがきょとんと目を瞬かせる。

 

「んっ、あれ、クロ」

 

木立の影に、黒い影が立っていた。

 

動いていないのに、そこにいると分かる。静かな闇がその場所に溜まっているようだった。

 

クロは一歩も近づいていない。ただこちらを見ている。

 

「おい、さっきから見ているだけかよ」

 

イルルが一歩前へ出る。炎は出していないが、肩から立ち上る熱だけが空気を揺らした。

 

「ちょっ、イルル」

 

ナデンが慌てて声を上げる。

 

クロは少しだけ首を傾けた。

 

『……そこにいる赤い龍、凄く執着しているから』

 

その言葉は責める響きではない。観察をそのまま口にしたような声だった。

 

イルルの眉がぴくりと動く。

 

「……それは、まぁ」

 

ナデンが苦笑する。

 

クロの視線がゆっくりと移る。イルル、ナデン、そして主人公を順に見て、またイルルへ戻る。

 

『私は気に入っているけど、赤い龍もそっちの龍も私が気に入らない感じ?』

 

森の空気が少しだけ冷える。

 

イルルの足がもう一歩前へ出た。

 

「気に入らねぇ」

 

短く吐く。

 

赤い瞳が真っ直ぐクロを射抜く。

 

「お前は私の大切な群れを壊すような奴だ」

 

クロは瞬きを一度した。

 

怒るでもなく、ただ静かに受け止める。

 

『……そう』

 

それだけ言って、少しだけ視線を落とす。否定も反論もない。

 

その沈黙が、逆にイルルの胸の奥をざわつかせた。

 

しばらく睨み合いのような空気が続く。

 

やがてイルルが息を吐いた。

 

「けど」

 

声が少しだけ変わる。

 

「一人が嫌な気持ちは私にも分かるから」

 

ナデンが驚いた顔でイルルを見る。

 

「イルル」

 

イルルは腕を組んだまま、クロから目を逸らさない。

 

そして少しだけ顎を上げた。

 

「だから、あれだ!」

 

言葉の勢いが急に上がる。

 

「お前が私の群れで一緒にいたいならば、認めてやるよ!」

 

森の空気が一瞬止まる。

 

イルルが胸を張る。

 

「私は群れのトップだから」

 

クロは少しだけ目を見開いた。

 

その静かな黒い瞳の奥で、長い時間動かなかった何かが、ほんのわずかに揺れたように見えた。

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