※この作品はR-18です。

むにっとねっとりドラゴン独占生活   作:ボルメテウスさん

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焚火の前に

 ナデンの身体が、そっと重なる。焚き火の熱よりも、彼女の体温が近い。

 

 まだ濡れている服が、肌に張り付き、冷たさが際立つ。だが、その冷たさが次第に、僕の体温と混ざり合っていくのがわかった。

 

「……なんか、変な感じだ」

 

 ナデンが呟く。声は低く、どこか恥じらいを含んでいた。

 

「何が?」

 

「こうしてるだけで……心臓が、落ち着かない」

 

 僕はそっと、彼女の背に腕を回す。

 

「僕もだよ」

 

「……嘘つけ」

 

「本当」

 

 体を少し動かせば、肩が、胸が、脚が触れ合う。密着という言葉が、形になるほどの距離。

 

 ナデンの呼吸が、少しずつ浅くなっていくのが分かる。焚き火の光が、彼女の濡れた睫毛を照らし、潤んだ瞳が僕を見つめてくる。

 

「……もうちょっとだけ、寄っていいか?」

 

「うん」

 

 彼女はそっと身を預けてきた。全身の力を抜くように、ゆっくりと僕の胸に体を合わせてくる。

 

「……体、熱いな」

 

「ナデンが冷たいからだよ」

 

「……そうかもな」

 

 冗談めいた口調だったが、指先が僕の胸元をなぞる動きは、どこか頼りなげだった。

 

「……あんたさ」

 

「うん?」

 

「こういう時、どうしてる?」

 

「“こういう時”? どんな時?」

 

 ナデンは、少しだけ顔を上げた。

 

「誰かと、近づきたくなった時」

 

 言葉の選び方が、彼女らしかった。遠回しで、不器用で、それでも真っ直ぐで。

 

「……気持ちを、確かめる」

 

 僕は正直に答える。

 

「それで、嫌じゃないなら……触れる」

 

「じゃあ、今の私は?」

 

「……触れたくなる、相手だよ」

 

 ナデンの目が、少し見開かれた。

 

「……はっきり言うな」

 

「ナデンが、訊いたんだよ」

 

「……そうだったな」

 

 小さく笑う。その表情が、どこか安心したようで、こちらも自然と笑みがこぼれた。

 

 手が、そっと彼女の肩に触れる。湿った服の下、細い肩が小さく震えた。

 

「……嫌なら、言って」

 

「言わない」

 

 すぐに返ってくる。言葉は短いのに、強さがあった。

 

 焚き火の明かりが揺れて、ナデンの横顔が淡く照らされる。髪が肩に張りつき、露出したうなじが、濡れて輝いていた。

 

 そっと指先で、そのうなじに触れる。

 

「……っ」

 

 ナデンが微かに息を呑む。

 

「冷たい」

 

「僕の指?」

 

「いや……自分の肌が、びくってなるのが、変な感じで」

 

「痛くない?」

 

「……むしろ、もっと……」

 

 そこまで言って、ナデンは唇を噛んだ。

 

「……なんでもない」

 

 言葉の途中で、首をうつむかせる。けれど、彼女の背に回した僕の手を、自分から解こうとはしなかった。

 

 そのまま、しばらく沈黙が流れた。

 

 焚き火の音だけが、空気を埋める。

 

 ナデンの鼓動が、胸を通して伝わってくる。速い。でも、不安定ではない。何かを確かめるような、そんなリズム。

 

「……動いても、いいか」

 

 ナデンが小さな声で言った。

 

「うん」

 

 その許しを受けて、ナデンは自分から僕の胸元に手を這わせてくる。慎重に、ゆっくりと。

 

 指先が服の縁に触れ、そこから肌に触れる。

 

 その一触れが、全身に響いた。

 

「……変な声、出すなよ」

 

「……努力する」

 

「ばか」

 

 ナデンは、ほんの少しだけ笑った。

 

 触れるたび、鼓動が近づく。触れるたび、熱が重なる。

 

 湿った服が、やがて脱がれ、皮膚と皮膚が触れ合う距離になる。

 

 それでも彼女は、最後まで僕の目を逸らさなかった。

 

「……ちゃんと、見てろ」

 

 命令のように言いながら、どこか震える声だった。

 

 僕は頷く。

 

「……うん。ずっと見てるよ」

 

 そして、唇がまた重なった。

 

 今度は、もう迷いがなかった。

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