チョロイン美少女だらけな異能力者学園を陰で牛耳る精神支配洗脳催眠のやべーやつ。 作:Lucas≒Claus
日曜。
不吉な日だ。
安息日にかぎってなにか起きる気がする。
SOSを受信する。
近い。
「わ」
ばったり出くわしたのはマキちゃん静ちゃんコンビ。
私服だ。
わざわざ男子寮までくるあたりなにか用だろうか。
「ひましてるかな、と」
ちょっと急用。
「ついてっていーい」
ちょっと悩む。
静ちゃんはまだしも、マキちゃんは伸び代アリの注目株とはいえまだまだ素人ものの素人さんだ。
荒事となると。
「…………」
静ちゃんに服の裾をがしりとつかまれた。
「トラブルなら助太刀しますよ、せんぱい」
なぜわかる。
「だってむずかしい顔してます。平穏な日曜の朝にもかかわらず」
だからって手を貸す理由がなくない。
「友だちですし」
まだ仲良くなったばっかじゃない。
「あ。そういうこという。友情は期間じゃなくて質ですよ」
見返りもとくにないぜ。
「友情は見返りを求めません」
となりで静ちゃんがウンウンとうなずく。
ついでに巨乳がどたぷんする。
マキちゃんは、ふてぶてしい表情でいった。
「こーみえて昨日ユーレイを追っ払ってんです。地縛霊。じゃあくなヤツでしたが、コンビプレーでどうにかなりました。いまさら尻ごみする相手もいません」
ずいぶんグイグイくるな。
「武家の女ですから」
やはり武家ギャル。
ぼくは嘆息した。
ここでグダグダやってる時間もない。
わかった。
力を貸してくれ、ふたりとも。
「りょ!」
「…………!」
とりあえず現場へ直行。
静ちゃんが活躍した。
彼女の異能は『怪力』だ。
お荷物ふたりを抱えたまま100mを3秒フラットで走り抜け息切れひとつしない。
「ぅ、わ……」
マキちゃんが、眼下の光景におもわず、といったふうに声を漏らした。
瓦礫の山だ。
都市部ではない工業区画だから死体はないが、見慣れているはずもない。
中心には、怪物がうずくまっている。
貧乏ゆすりしながら。
まるで自閉症の子どものように。
「なに、あれ」
異能が暴走したらしいな。
「暴走って……。あれが……?」
二本足の怪物だ。
筋肉質で毛むくじゃらで家くらいある巨体を誇る巨人であり頭には瞳がひとつある。
腕は獅子に似ている。
無数の触手も生えている。
乳房も。
半開きのくちびるから覗く歯並びはよく涎を垂らしている。
「ひと…………?」
マキちゃんだって似たようなものだろ。
「わっ。わたしは
たぶん変身の異能だ。
肉体を自由に変化させるとかかな。
だから、能力の規模がちがうだけだよ。
「なんでわかるの」
会話してるから。
ぼくはトントン、と頭の横を指で叩いた。
まだ意識が残っている。
か細いけれど。
思念のノイズがひどい。
「ど。どうしようせんぱい。かなり帰りたくなってきた」
だからいったのに。
ぼくらは遮蔽に身を潜めた。
無策に近づくのは危険におもえる。
なぜならあたり一帯がめためただ。
暴力を発露する衝動や、自動攻撃的な作用が異能で発現しているとみるべきだ。
ならば慎重を期すべきだ。
視界に映りこむ。
テリトリーに踏みこむ。
避けるべきだ。
さいわい射程はギリギリ足りている。
「どうするの。せんぱい」
あの瓦礫のなかにひとがいる。
静ちゃんの異能なら重機代わりになって助けられるかもしれない。
手伝ってくれる。
「わかりましたっ」
ふたりがそばを離れる。
ぼくは中央の怪物を注視する。
動きはない。
あいつからは思念が、まったく感じられない。
もう手遅れなのか。
いや。
自閉モードに入っている、と推測する。
身も心も怪物となって理性を失っているパターン。
負荷から心を守る動きと異能が重なると、ままなる。
ショックを与えれば、わずかでも自己を取り戻せるかもしれない。
希望はある。
ぼくは、胸ポケットに仕舞った薬剤ケースを意識する。
使う場面がないのが理想だ。
しかし場合によっては切るべき手札だった。
「きゅ、救助しました! ただ血が……」
みせて。
ぼくは怪我人をみつめた。
重軽症者3名。
トリアージする。
助けられる人数にはかぎりがある。
「それって、見捨てるってこと」
そうだ。
「…………」
ひどいキズだ。
病院までもたない。
他のふたりも決して軽くない。
ひとりは切ったほうがいい。
残酷な決断にマキちゃんは、呆然とする。
しんどいだろうな、とおもった。
静ちゃんは血が苦手だから、蒼白になっているし。
しばらく押し問答をしていると、千鶴センセがバイクでやってくる。
彼女は荒事の現場責任者だ。
「遅くなってごめんなさい。状況は」
ぼくが第一発見者です。
「ありがとう。最悪ね」
最悪一歩手前です。
死人はいない。
まだ。
ぼくの思念に従って、千鶴センセは怪我人たちをみつめた。
さらに傍らのマキちゃんや静ちゃんに視線をうつす。
色々をぐっと飲みこんだ。
そしてテキパキと指示を出す。
「…………必要なことをしましょう。応急処置……は正確ね」
いつもどおりに。
「ターゲットは」
動きなし。
「治安維持部隊に招集をかけている。あと二十分はかかる」
位置についても撃つのは控えるように伝えてください。
どうなるかわからない。
「わかった。共有する」
報連相をすませる。
必要なことだった。
マキちゃんは、冷静なぼくらに吠えた。
「人命救助は二の次でいいんですか」
ぼくは黙った。
千鶴センセが代わりに相手した。
「ごめんなさい。すべては救えない」
まだ浅い付き合いだ。
だから彼女は、ぐっと俯く。
静ちゃんがマキちゃんの手を握った。
「わたしたちは医者じゃない。でも最低限の処置をした。事態はまだ収束していない。拡大の恐れがある。そして彼には、その対処に当たってもらう必要があるの」
マキちゃんはぼくに視線をうつした。
「せんぱい……?」
標的が動き出しました。
まずいな。
いったんぼくがやります。
念のため後詰めを準備してください。
「わかった。アサインできる能力者を探す。期待はしないで」
お願いします。
ぼくは、とりあえず遮蔽からからだを出した。
怪物はぼくの存在を機敏に察知する。
走り出す。
単眼がぼくを追跡する。
望むところだ。
囮役なんだから。
「ぅぅぅぅ゛ぅぅ…………」
不快な唸り。
そして腕を振りあげた。
地面に叩きつける。
すると、衝撃波が撒き散らされる。
ぼくは吹っ飛んだ。
したたかに背中を打つ。
イッ、たいな。
「ぅ゛ぅぅ…………」
だが好都合だ。
アドレナリンがでた。
わざわざ薬を飲む手間が減った。
緊急時にのみ許される異能の一時制限解除。
ぼくは震える手で自分の脳に催眠の針を打ちこむ。
"ぼくはクールなタフガイだ、あばらにひびくらいじゃへこたれない"。
痛覚が鈍くなる。
感覚がマスキングされる。
ぼくは粉々になるまで戦い続ける死兵の心を手に入れる。
「ぅるるる……」
唸る怪物。
ぼくの能力行使を察知したか、警戒しているらしい。
じりじりと後ずさっている。
しかしはったりだ。
すぐ見破られ、ぼくを破壊しにくるだろう。
さて。
ぼくは非力な異能者だ。
精神感応系だから、ふところに入られると弱い。
なんて弱点はとっくのとうに克服済みだ。
いちおう歴戦。
裏ワザを使う。
自己催眠の応用だ。
手のひらで顔を覆い隠す。
"ぼくは生まれつき運動神経抜群の超人だ、静ちゃんにだってひけをとらない"。
命令で細胞を上書きする。
ばきばきと肉体が軋む音がする、代わりに一時的な超パワーが手に入る。
そうべんりなワザじゃない。
反動がある。
しかも即発動とはいかなくて、これは馴染むまで時間がかかる。
「ううう゛っ」
接近する怪物のタックルをしゃにむにかわす。
背後の廃墟が一撃で崩れ去る。
怪獣だ。
脅威なのは速度だ。
巨大、しかし身軽。
破壊力バツグンで三拍子そろってる。
まともにやりあえば、純戦闘タイプの高位異能者でも危うい。
ぼくがやるしかない。
「!?」
強襲部隊が狙撃する。
千鶴センセの手配だろう、致命打には至らずとも怪物はびっくりして静止する。
この隙は値千金だ。
時間稼ぎが間に合った。
自己催眠がからだに馴染みきる。
まず自己治癒力を高める。
ひびの入ったあばら骨も、完治。
拳を、握る。
「ぁああ゛あ゛あ゛っ」
吠える怪物の突撃を、まっこうから相手する。
怪物のアゴを右ストレートで撃ち抜いた。
ズドンと。
高射砲並みの一撃が、頑丈な外殻を破壊する。
「がっ」
人間なら一発でノックダウン。
ぐしゃぐしゃのミンチ確定だ。
いまのぼくは静ちゃんの生き写しの体力で、パンチ力およそ10tだし。
しかし怪物はタフネスだ。
ぜんぜん揺らぐ気配もない。
ぼくは、鋭く息を吐いた。
アドレナリンが切れるまでが勝負だ。
薬は、
ぼくは怪物を挑発する。
こいよ。
相手してやるから。
「ぅ………ゥらぁああ゛」
咆哮。
くちびるとくちびるがぶつかってしまいそうなほど近くで、彼女はぼくを威嚇した。
一瞬だけ、反応があった。
イイのを喰らわせたからだ。
怪物の中身がいった。
たすけて。
「まかせろ」
ひさしぶりにちゃんと喋った。
そこからは、もうひどい。
グダグダだった。
決定力不足。
疲弊。
マキちゃんたちは無事に救助と搬送を終えただろうか。
わからない。
わかるのは、怪物となった女の子がひどく苦しんでいることだけだった。
「たす、けて……」
とうとう怪物の口がいった。
心の声だけでなく。
自己を取り戻しつつある。
ぼくはにやりとした。
ようやく詰めだ、あと一歩で仕留められる。
そしたら薬でブーストかけて、助けられる。
がくんと膝から力が抜けた。
アドレナリンが切れたのだった。
ぼくは平凡な精神感応能力者にもどる。
「ぅぅ゛あああぁ゛あ」
怪物が泣いている。
きみょうにつぶらな単眼から涙を流している。
ぼくは、歯を食いしばってそれをみつめた。
ごめんな。
たすけてやれなくて。
ぼくは、胸ポケットに仕舞った薬剤ケースを取り出す。
「がっ、あ゛……」
瞬間、怪物が凍りついた。
冷気を操る異能者で、おもいつくのはたったひとりだ。
愛すべきストーカー。
「あいしてるぜ、冰織」
怪物の外殻が、薄氷となって砕け散る。
中身の女の子が痛みとショックで理性を取り戻す。
ここだ。
このタイミングしかない。
スケジュールⅡの薬物を経口投与で体内に取りこむ。
効果はすぐあらわれる。
脈拍が上昇し頭はひどくスッキリする。
制限解除。
限界のからだに鞭打って、全能感を咀嚼する。
「…………ぁ━━」
ぼくは全力の思念波をぶつける。
一撃でけりをつけるしかない。
ぼくの異能は操心だ。
すべて使える。
精神感応系では文句なしの最高位に位置する。
その機能を総動員して、ひとのかたちを見失った少女の心を取り戻す。
暗い、海。
心に沈む。
鉛のように重たい水を、ぼくはドルフィンキックで潜ってゆく。
みつけた。
つかむ。
ひきよせる。
引きずり出すと、怪物は、ぱんと泡になって弾けて消えた。
ぼくは顔も知らない女の子を胸に抱いた。
気怠い満足感。
これで救出戦は完了だ。
あとは傷ついた女の子を慰めるだけ。
ぼくは、強烈な薬物濫用の影響と、能力行使の
次回更新は12/18(木) 18時頃です。