チョロイン美少女だらけな異能力者学園を陰で牛耳る精神支配洗脳催眠のやべーやつ。 作:Lucas≒Claus
ぐおお頭いたあああ。
ぼくは唸った。
唸りまくった。
ここは病院だ。
さすがに力を使いすぎた。
反動がえげつない。
裏ワザまで使ったし、自動再生も睡眠キャンセルもいちじるしく機能が低下している。
医者に診断された。
しばらく能力の制限解除禁止。
使っていいのは負荷が軽い
ぼくは訴えた。
せめて催眠だけでも。
女のコとべたべたすると体力が回復する
泣きながら懇願したがだめだった。
催眠での酒池肉林は禁止された。
白衣の天使たちとベロチューも出来ないのだ。
「よく食べてよく寝ること」
と女医のジョイ=フロレンティアさんがいった。
彼女はエルパソ出身のメキシコ系アメリカ人で、褐色金髪セクシー主治医だ。
日本語は喋れない。
なので英語でやりとりしている。
意思疎通がスムーズすぎてまるで日本語で話してるみたいだ。
頭のいいひとの伝え方ってきっとそうなんだろう。
「なんで死んでないんだか。でたらめなからだしてんねェ。あいかわらず」
とのこと。
ぼくは病室の窓からそとを眺める。
すでに事件から丸一日経過していて、事態は丸く治りつつあるらしい。
ガラッと病室の扉が開いた。
「おはよー、せんぱい。元気してます」
ようマキちゃん。
これが元気なふうにみえるわけ。
ぐおお頭いたあああ。
「すごいテレパがうっさいです」
といって彼女はイスに着席。
そしてりんごの皮を剥きはじめる。
しゅるりしゅるりと。
「うわさに聞いたんですが」
うええ頭いたあああ。
どしたの。
「せんぱい、すごい異能の持ち主らしいですねえ」
ン。
なんのことかなああ頭いたあああ。
「うっさいですって」
仕方ないじゃんかってにテレパが出るんだよ。
考えたことが思念となって伝わるの。
オンオフはできないしいたたた。
「はあ。もう。おちゃらけてるんですから」
ま、ちがっ。
ほんとに痛いんだって。
「ほんとにー?」
ほんとほんと。
頭痛偏頭痛に全身筋肉痛。
みろこの片腕ギプスを。
「ちょん♥」
うぎゃああ。
ぼくは悶えた。
悶えまくった。
危うくナースコールに手を伸ばすところだった。
マキちゃんはニヤニヤしている。
サドだ。
鬼畜系ギャルだったのか。
「ふだんスカしてますからね。せんぱいは。新鮮でおもしろいです」
怪我人で遊ぶな。
「それで。なぜ隠していたんです」
隠す。
「チカラのこと」
あーね。
「Dランクで下っぱのカス能力とかいってたのに。ほら吹き」
ぼくはくちびるをとがらせた。
そして下手な口笛を吹いたがほんとうに下手だったので止めた。
いやとくに理由がないウソで。
「理由がないウソ」
もっとカッコいいタイミングでバラそうと。
モテたいし。
「たとえば」
マキちゃんが不良に絡まれているところへ颯爽と、とか。
「そんな古典的なシチュあるかい」
あるんだなあ。
この常夏の人工島では。
もとい国立
「なぜ」
治安崩壊。
裏通りを歩けば異能ヤンキーがゴロゴロいるぜ。
「なんてトコだよココはもう」
はあ、と彼女はため息ついた。
疲れているらしい。
とうぜんだろう。
新しい環境へ来たばかりだし、その最初の週でコレだ。
気分もすり減るところだ。
まちがいなく。
彼女は疲れまじりの女性特有の色っぽい気配でいった。
「はじめてのコトばっかりです。クタクタです」
さようか。
「暴走なんてはじめてみました。アレ、ほんとうに人間なんですね。まんがのモンスターでしょ」
崩れた建物。
割れた地面と砕けたアスファルト。
悲惨な悲鳴と血の匂い、もくもくと上がる黒煙。
そうおもいたいところだな。
ところがどっこい現実だ。
ぼくの言葉に沈黙し、彼女は頬杖をついてたずねた。
「いつも戦ってたんです」
なんだって。
「ああいうのと。放課後。暴走した異能者を、唯一キズつけずに鎮圧できるチカラだって
そりゃちょっと買い被りすぎだぜ。
まんがのヒーローじゃあるまいし。
千鶴センセは、話を盛るトコあるからな。
話半分で聞きたまえ。
「そうなんですか」
そうだよ。
「ふうん。男のコですね、せんぱい」
といってマキちゃんはちょっと笑った。
心なしか声がやさしい。
ぼくはそっぽを向いた。
得意じゃないのだ、こういうの。
だから黙っとこうとおもったのに、千鶴センセにはあとでキツーいお仕置きだ。
事後処理が済んだら有給とってもらおう。
「…………あのあと」
うん。
そういえば。
助かったの、救助したひとたち。
「うん」
そ。
「三人全員たすけました。えへん」
ぼくは、ぎょっとした。
え。
いったいどうやって。
すごい重症だったんだぜ。
静ちゃんが両手でひとり抱えたとして、千鶴センセのバイクにもうひとり、あとひとりはどうにもならないと踏んでいたのに。
「そこはわたしが活躍しました」
まじか。
「土壇場で火事場パワーに目覚めました。秘められた力の覚醒です。新たなる力の名は、名は、ええと、名付けて
ぼくはぽかんとした。
なんて間のいい女だ。
異能が進化したの。
たずねると、彼女はこそばゆそうに鼻先を擦った。
「らしいです。せんせには、今度ランク再測定しましょっていわれました」
よかったじゃん。
「へへっ。はい。おかげで、人命救助もできましたよ」
ぼくはマキちゃんを見くびっていたらしい。
主人公気質なのだ、彼女は。
「てへへ。主人公って。てーれーるー」
あながち冗談でもない。
ぼくら異能者は、やっぱり人知を超えた力だから、わりと気合と根性で世界をおもうがままにできる。
だから重要なんだぜ。
根明の陽キャは。
ぼくは至極まじめにいった。
するとマキちゃんは、ぷらぷらと脚を振りながら照れくさそうにいった。
「……えー。なんすか。もう。せんぱい、めぇっちゃおだてるじゃん」
これから馬車馬のように働いてもらうからね。
「え。なぜ」
こういうのが日常茶飯事なんだぜ。
「えと」
ぼくだけじゃからだが、足りないなあ。
「あー、その」
友情は見返りを、なんだっけ。
「うーん」
助けてくれると助かるんだけどなあ。
ほんとうに助かるんだけどなあ。
超有能な異能者が、ぼくの代わりに事件を解決してくれるとなあ。
「はいはいっ。わかりましたっ。ひまなときは手を貸してあげますっ」
よろしい。
言質とったぜ。
「ううう。なんだか扱い変わった気がする」
お客さま扱いは終了なわけ。
「へー。そっちが素ですか。せんぱい。いじわるだ」
ぼくはぷらぷら手をふった。
彼女はぷいとそっぽを向いた、
病室にはうららかな陽射しがさしていた。
「…………せんぱいが、ケガしている人を見捨てるといったとき。すごく怖かったんです」
うん。
「なんか言い返してやろーっておもったケド。ぜんぜん反論なんか出てこなくて。頭は熱くなっているのに、ああ、そうだよなあ、っておもいました。冷たいですかね」
仕方ないんじゃない。
現場判断はときにより高い視座と倫理から下されるからな。
「それは現場の知恵ですか」
ウム。
「そですか。ヤですね」
うむ。
「よしっ。決めましたっ」
彼女はおおきな声でそういった。
びっくりした。
いまは
「わたし、つよくなります」
つよく。
「そんで、ちょースゴイ異能者になって、世間をお騒がせてやるんです」
お騒がせるのか。
「アイドルは廃業しました。なので異能系美少女配信者でひと旗上げます」
なるほど。
「ジャンルは私人逮捕系です」
いっきに焦げ付いたにおいがしてきたな。
過激路線は炎上するぞ。
マキちゃんは颯爽と無視をした。
「それで、特殊能力を悪いことに使う連中を、とっちめてやるんです。暴走事件も解決します。そしたら再生数は爆上がり。広告収入がっぽがぽ。異能者学園の治安も一気に解決です」
そりゃすごい施策だな。
「せんぱいにも協力してもらいます」
ええっ。
「千鶴せんせーにも、静ちゃんにも、ほかにもみんなに協力してもらいます。まずはクラスメートを全員登校させてやります。次にわたしが番長になります。そしたら兵隊どもを集めて、ここでてっぺんとってやって、筋金入りのワルどもから、街を守るイイ不良どもに更生させてやるんです。その動画はメンバーシップで公開します」
金とるかよ。
「金とります」
なかなかに壮大な計画だ。
「そんだけしたら。せんぱいだって、もうかっこつけて戦う必要ないでしょう」
ン。
「わたしがこの学園を乗っ取って、陰で牛耳ってやるんです。そしたらせんぱいはお役御免です。いいとこわたしの下っ端です。太鼓持ちくらいはさせてあげます」
うん。
「……──もう、だれかを見捨てるとか。考えなくてもよくなります。痛いことしたり。クラスメートと馬鹿やって、遊んで、ちょっとエッチですけべな男子になるんです」
そうか。
「ひとりきりでがんばるなんて、許しませんからね。このマキちゃんの目が黒いうちは」
アーモンド色だな。
「うるさい。おめめは黒いんです」
彼女はきっぱりいった。
とても元気溌剌だった。
でもどうしてそこまでしてくれるの、とぼくはたずねた。
「せんぱいは。わたしがこの島に来てはじめて出会った。第一村人さんですから」
それにしてはずいぶん重いな。
「武家の女ですから」
やはり武家ギャル。
ぼくはからからと笑った。
ひさしぶりに鬱屈とは無縁の気分だった。
いつの間にか、頭の痛みもどこかへ吹き飛んでいる。
「これからよろしく。マキちゃん」
ぼくはグーをさしだした。
彼女は、一瞬びっくりして、それからおなじくグーをだした。
あいこだ。
コツンと。
「よろしくですっ。せーんぱいっ」
彼女はとても愛らしい笑顔でいった。
「りんご、食べます」
ぜひウサギさんに切ってくれ。
書き溜め切れたので次回更新日は未定です。
なるはや。
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