チョロイン美少女だらけな異能力者学園を陰で牛耳る精神支配洗脳催眠のやべーやつ。 作:Lucas≒Claus
「せんぱいせんぱい」
なんだねマキちゃん。
「さっきどこ行ってたの」
ぼくは平素の顔でいった。
静ちゃんを探し求めて三千里。
「ふぅん。そんな遠くまで。なぜ」
女のコはいつだって追いかけられたいものなのサ。
「なんかムカつく。要領得ないし」
プール終了後。
すっかり夕暮れ時の教室は閑散としている。
千鶴センセは急なお仕事。
冰織はぼくの代わりに助太刀をシにいった。
静ちゃんは地べたセックスで腰を痛めたため保健室。
ねむちゃん先輩はいまもぐーすかぴーぴー眠っている、あったかいらしいぼくのお膝で。
甘く気怠い疲労感が漂う空気。
ほのかに解散の雰囲気がある。
が、マキちゃんはぼくに用事だ。
不敵に笑って人差し指をぼくに向ける。
「なんでもひとつ」
いうことを聞く。
「そゆこと。お昼までに考えてたのに、どっか行っちゃっていないから」
すまないね。
でなにするの。
「なんでもいいんだよね」
なんでもいいよ。
マキちゃんはにっこり笑顔だ、のぞく八重歯が可愛らしい。
「やたっ。じゃね、ええっとね」
はい。
「わたしといっぺんデートしよっ。せーんぱいっ♥」
さっそく放課後デートをする。
ねむちゃん先輩は女子寮にある彼女のお部屋においてきた、この先のめくるめくイベントにはついてこれそうにないからな。
「お。しっかり着替えてますね」
そりゃね。
私服くらいある。
「制服しか着ないのかとおもったよ」
ひどいな。
ぼくは気さくに笑った。
マキちゃんも。
「さて。感想は」
かわいいね。
ボーイッシュてやつか。
「うーん。フーディにショーパンをボーイッシュと呼んでよいものか」
ギャルのマキちゃんは悩んだ。
悩みはすぐに捨てられた。
「じゃいこっ」
腕を組まれてデート開始。
といってもこの島はみる場所もすくない。
遊べる場所も限られている。
「カラオケはいろ」
おっけい。
即了承するぼくに、マキちゃんはたじろいだ。
軽口のつもりだったらしい。
「いや。歌えんの」
タンバリンの名手です。
「いやいや。それじゃ楽しくないじゃん」
楽しいよ。
マキちゃんが歌ってるのみてたらたぶん。
「えー。そういう対等じゃないのはデートとはいわないの」
でも座って話せる個室がいいんでしょ。
なるべく騒がしい感じの。
カラオケが適切なロケーションであるとぼくは、おもうな。
彼女はまたもたじろいだ、そして脱力して諦める。
「ううっ。これが読心能力かぁ」
そしててきとうなカラオケの個室に入って。
てきとうな流行歌をマキちゃんが歌う。
けっこううまい。
ぼくはぱちぱちと手を叩いた。
やるね。
「でしょ。これでもアイドル候補生」
候補生なの。
「うん。といっても、デビュー前にドロップアウト。真の使命に気づいちゃったからね」
あー、異能が。
そりゃ災難だね。
「そ。選ばれし者だとみつかっちゃったので芸能界は即・引退決定。事務所からは三行半。そしていまは遠い離島へと島流しの刑。
ちょっと憂鬱気な表情でマキちゃんは、注文したフードの野菜スティックをぱくついた。
ドレッシングなしで。
けっこう気高い
やはり武家ギャル。
「どーなんのかなぁー……。わたしの将来……」
ぽつりといった独り言にはしみじみとした情感が籠っている。
ぼくはいった。
本題はそれ。
「ン。うん。いや出会って数日でスる話じゃないのはわかってンよ。関係値とかさ。あるしさ。でもさ。やっぱり、その、やっぱ不安じゃん。いままで積み上げてきたものとか、一気にさ。ひっくりかえったわけだから」
ちらっとこちらの表情をうかがう彼女。
ぼくとちがって読心能力なんかあるわけないから、彼女はそれでぼくの感情を読む。
視線とか、表情とか、身振り手振りや仕草の印象、手がかりから。
ぼくの考えを類推する。
やはり不便だ、人類一般のコミュニケーション。
その点ぼくの異能はたいへんズルだ。
卑怯といってもよい。
他人の心を麻酔いらずに掻っ捌いて、切開して、手を突っこんで縫合できる。
操心。
よい力といえるはずもなかった。
「……親元も離されてさ。不安だよ。やっぱり。ある日とくべつな能力に目覚めたからって、いってもさ。……それもあんまりとくべつじゃないし」
そう。
「うん。だって
感情の亀裂をみつける。
そこか。
ふうん。
ぼくは、わざとらしく感情を逆なでする、怒らせるのは得意だ。
じゅうぶん個性だとおもうけれど。
「どこが。E+だし。これってすごくふつうなんでしょ。つまんないよ」
彼女はすこし苛立った。
そして吐き捨てるようにそういった。
「おなじ異能でも、せんぱいのほうがまだマシ。心を読むとかテレパシーとか、まじまんがみたいじゃん。Dランクでもさ。ぜんぜんちがう。しょぼい、わたしのと、ちがってて。うらやましいよ」
一瞬かちんとキたのをぼくは、ひた隠しにする。
フェアじゃないからだ。
なにも事情を知らない相手に、感情任せに八つ当たりは。
遅れて自己催眠が起動する、ぼくは荒ぶった感情の制御を取り戻す。
冷静になる。
心はとてもフラットだ。
ぼくはすでに少女、
知らずに心を丸裸にされていることなど、彼女はおもいたってすらいまい。
揺さぶりをかける。
これも今後のためだ。
わるくおもわないでほしい。
マキちゃんは、ふつうがいやなの。
「ぜったいいや」
どうして。
「だって人生は一度きりだよ。ふつうで、脇役で終わるなんてイヤ。主役になりたい」
だからアイドルになりたかったの。
「そう。キラキラ輝く舞台で歌って踊って、それってすごくとくべつでしょ。憧れる。でもそんな努力はすでに水の泡。とくべつなわたしはあの日死んだの」
いまの境遇が悲しいんだ。
「……悲しいわけじゃ、ない。友だちも出来たし、楽しかったし。きょうとか。みんなでプールしたりしてさ」
それで満足は出来ない。
「どうだろう。いいたいことはわかるよ。人並みの幸せで満足しろってんでしょ。でもさ。なんかさ。やっぱり、あるわけじゃん。わたしたちには、とくべつな力がさ。なのになんでこんな窮屈なの……」
深くため息をついて彼女は、ストローのドリンクを吸う。
メロンソーダ。
かつて昭和の時代これを振る舞うのは特別な催事のことだったがいまはだれでも楽しめる凡庸で普通なソフトドリンクだ。
ドリンクバーにだって入っている。
「なんかゴメンね。デートとかいって引っ張ってきたのに。こんな辛気臭い話してさ」
いいや、ぜんぜん。
むしろマキちゃんのことを知ることができてうれしいぜ、ぼかぁ。
悪戯めかして笑うぼくに、彼女はちょっと微笑んだ。
「えー。サラッとドキドキするこというじゃん」
デートだからね。
「ふふっ。そだね。デートだもんね」
マキちゃんはカラオケの選曲を済ませると、ひとしきり熱唱した。
ふたり分の料金の元を取るみたいに。
彼女なかなかどうして頑丈ですよ。
「あら。あなたにしては珍しい。手放しに褒めるなんて」
千鶴センセがぼくを愛撫しながらそういった。
時刻は深夜。
仕事明けの彼女のアパート、ぼくはマキちゃんとのプラトニックなデート後に、乱れた女教師と一戦済ませた。
いまは賢者タイム。
「じゃ信頼できそう」
はい。
いちばん敏感な心のキズに、けっこうがっつり触ってみたけど。
ちょっと苛立つくらいでした。
もー、性根がふつーなんでしょうね。
とってもいいコ。
「ふうん。それであなたは、彼女を中心にクラスを立て直そうというわけ」
はい。
あれだけメンタルが安定してれば、暴走リスクもないでしょうし。
陽だから相手にぶつかっていけます。
いい触媒になるとおもいますよ。
「ひとをモノ扱いしない」
はい。
「はいは」
一回。
「よろしい」
奇妙なやりとりをして彼女は、ぼくのほっぺを弄った。
まるで調教されているみたいだ。
「でもすこし不安だわ。彼女の異能、あまり荒事向きじゃないから」
そこはみんなと、ぼくの出番すね。
陰に日向にフォローしますよ。
学生時代は潤滑油のような人間でした。
「まだ学生でしょ。もう」
呆れた表情でぺこりと頭を叩かれる、淫行教師の手によって。
ぼくは甘える、千鶴センセは甘やかす。
たのしい。
「……すっかりまともになったわね。あなたも」
まとも。
どこが。
かってにエロい校則追加して学園全土を洗脳している男ですよ。
さらに学園の美少女全員コマして
目ぇ腐ってんですか淫行のし過ぎで。
このエロ教師。
「原動力が
そんな凶悪なツラはしてません。
ひとちがいです。
この人畜無害な笑顔をみてくださいよ。
「作り笑顔も上達した」
えーっ、そんな扱い。
ひどい。
渾身の満面の笑みなのに。
キズつく。
「ふふっ」
甘やかな指先がぼくの額を撫でた。
頭髪で隠した生え際のあたりにはいくつか手術痕があって、うっすら消えかかっているものも含めるとまるで茨の
むかしぼくがヤンチャしていた時代のもので、黒歴史だからひとにみられると恥ずかしい。
だから隠している。
「おどけて茶化す癖。きらいじゃない」
彼女はそっと傷跡にキスをした。
すごくチャーミングな息遣いで。
ぼくはすこし顔を赤くする。
「やっぱり子ども」
うるさいな。
ぼくは千鶴センセにベロチューをして、その唇を塞いだ。
†
十年前────ある日の追憶─────他愛ない雑談
───────国立先端異生物研究所にて.
「あなたなにをみているの」
彼女はぼくにそういった。
ぼくらは白い部屋の囚人だ。
飼育されている。
白衣の大人たちの手によって。
「はっきりいって不気味よ。なにもない空間をみつめているのは」
きみにはみえないものをみている。
「だからそれはなにと訊ねているの」
言葉にするのはむずかしい。
だって言語じゃないからね。
はじめて犬や猫をみた人間は、それを犬や猫と認識して名づけをするには果てしない時間がかかっただろう。
そういう
「つまり」
きみとお喋りをしたくはないということだ。
「そ。じゃそうやって寝ぼけてなさいよ」
彼女は不機嫌そうにそういったが、ぼくのそばを離れるつもりはないらしい。
隣に座っている。
ぼくはうっとおしいから、手で追っ払おうとするのだが彼女は抵抗する。
「なによ。なにったら」
あっち行けよ。
「どうしてよ」
うざったいからさ。
「どうして。わたし、あなたの気に障るようなこと、シたかしら」
これからする。
「つまり」
きみはぼくを拒絶する。
「なによそれ」
ぼくには未来がみえているんだ。
きみとぼくの間に訪れる未来が。
これはかなり確度の高い推定だ。
だからはやくあっちいってくれ。
「なに、それ。よくわかんない」
わかるように話してないからね。
「あったまきた。ぜったいいうこと聞いてやんない」
すきにしてくれ。
「そうする」
ぼくは宙空の世界を読む。
彼女はぼくの隣で、本を広げてそれを読む。
「このあいだ、助けてくれたでしょ」
助けたわけじゃない。
「でも実験を肩代わりしてくれたでしょう。アレ、痛いのに」
きみが眠っていたからだ。
「わたしたちに睡眠は必要ない。でしょ」
ぼくは無益な反論をやめた。
「ふたりきりの同種だものね。助け合わなきゃ」
ぼくらは同種じゃない。
「じゃあなぜ助けたの」
不憫だったからさ。
きみは、どうみたって怯えていたろ。
実に情けなかった。
だから助けてやった。
どう、プライドがキズつけられたかい。
「どうしてキズつくの。助けてもらったのに。よくわからない」
それがぼくときみの間にある情緒的断絶だ。
いまは問題なく意思疎通が図れているけれどしばらくして、認知限界──ある種のスレッショルド──に近づくと、ぼくらは決定的に破局する。
だから馴れあわないほうがいい。
ぼくらは同種じゃない。
「煙に巻いたって無駄。だってわたし、あなたと関わるってもう決めたもの」
そう。
「うれしい。そうでしょ。笑ってるもの」
じゃ、仕方ないね。
北米大陸の穀倉地帯の3分の1。
そしてユーラシアの繁栄。
あとは南極大陸の氷棚の一部。
それが、人類が異能を理解するのに差し出した代償だ。
無数の爆発があった。
無知、無能、闘争、差別、偏見、貧困──およそ人間たりうる出来事のすべて。
それらを触媒として。
混乱が相次ぐと異能者の発生は爆発的に増加し、やがて全人口の0.1パーセントを占めるほどになった。
やがて対立が表面化する。
水面にあぶくが浮くように。
闘争を制したのはいつだって数が多いほうだ。
勝者たちは利益を分配した。
欲望はとぐろを巻く。
やがて賢者たちは、みずからを殺す毒を産んだ。
好奇心が猫を殺すように。
オッペンハイマーがその危険性を理解しつつも、核兵器を世に送り出したときと同様の手順で。
きっと彼らの
人類の手ではコントロール不可能な。
特異な能力者。
百万発の核兵器よりもはるかに危険な呪われし王権。
"次世代ヒト先天性異常形質 /
発現操作ワーキンググループ"。
それがぼくを作り出した連中の名前だった。
次回投稿は本日18時頃です。