感情を強く出さない渢と快活な鶯花。一見噛み合わない組み合わせのように思えるが、その実二人は少し歳の離れた姉妹のように仲が良く、日々穏やかな生活を送っていた。
……だが毎夜行われる秘密の奉仕についてだけ、渢は真面目に取り組みながらも内心頭を抱えているのだった。
制服支給、良い給料……まではいい。
住み込みなのだ。問題は拘束時間なのだ。
大学に行く時間以外は朝晩含めほぼ全てという勤務形態はいかに渢が勤労学生であるからといっても、他者から見れば少しやり過ぎなのではないかと思ってしまうものである。
だが稼げる内に稼ぎたい、と考えている渢にとってはそんなもの些細な問題であった。
白と黒を基調とした長い裾のエプロンドレス、肩口で切り揃えられた黒髪の上にはホワイトブリムが乗っており、どこからどう見ても世間一般に周知されているようなメイドといった姿。
生地の多い衣服でありながらも胸の膨らみは大きく、腰元はキュッと締まっており、少し屈めばお尻のカーブが浮き彫りになる事から、とても魅力的な身体付きであるのが見て取れた。
そう、渢のお仕事はメイドさんなのである。
……と言っても、不特定多数を相手にする喫茶店や怪しい店、などという場所に勤めているわけではなく、とある上流階級のお宅で住み込みバイトをしているのであった。
「渢さん渢さん!」
「おっと」
今日も大学の講義が終わるや否や、どこへ寄り道をするでもなくスーパーで買い物を済ませ、もはや自宅と言っても過言ではない青龍寺家へ出勤し、与えられた自室でメイド服に着替え、夕飯は何を作ろうか、と考えていた矢先、後ろから快活そうな少女にぎゅっとしがみ付かれた。
「今日のお夕飯は何ですかっ!」
「そうですね……白身魚がありますが、何かリクエストはありますか?」
「じゃあじゃあ! ムニエルが良いです!」
だがそんな行為は慣れている、とでも言わんばかりの様子で渢は少女をあしらう。
「分かりました。ではお嬢様、その間宿題をされますように」
「しゅ、宿題なんて無いもん」
「私の目を見て仰ってください」
お嬢様、
この青龍寺家のご令嬢にして唯一の跡取り。
学校帰りそのままの姿、つまりセーラー服に身を包んだ少女で、背中まで届く黒の長髪は光を反射するほどに美しく、明るい笑顔と好奇心旺盛そうな瞳の影響から、快活、といった印象を抱く。
身長は渢に比べてやや低く、体型は……比べるまでもないほど貧、いや、ほっそりとした身体付きであるのが見て取れる。
青龍寺家は海外を渡り歩く古物商を起源とするもので、今となっては世界的に有名な商社である。
だがその社長たる鶯花の父親、及びその奥方は長期の海外出張で現在家には居ない。
出来るだけ日本で育ってほしい、という両親の考えと本人の希望もあって鶯花は出張には連れていかれなかった。そのために、両親不在中は親戚筋に預かってもらう予定、であった。
しかし鶯花はそれに反対した。親戚筋との相性が悪かったわけではないのだが……年頃の娘には色々あるのだろう。とにかくそれを嫌がった。
ならば仕方なく自宅にそのまま残す、というわけには流石にいかない。なにせまだ年端もいかない少女、一人暮らしをさせるには不安に過ぎる。
故に、両親は住み込みバイトの募集をかけた。
殺到した。応募が超殺到した。青龍寺家と繋がりを持とうとする有象無象がこぞって応募した。
だがその高倍率を潜り抜け、見事合格を勝ち取ったのが青龍寺家の
家柄が特段優れている、という訳ではない。極々一般家庭の出自で、特筆出来るような事は無い。何が決定打となったのか今でも渢は首を傾げている。
しかしまぁそんな事はともかく、受かったのならば誠心誠意尽くすのみ、という訳で真面目にメイド業をこなす日々を送っている。
「渢さんのご飯はいつも美味しいです!」
「恐縮です」
「むー。そろそろその堅苦しい口調やめません?」
「私はあくまでもメイドですので」
「手強いなぁ」
渢が勤め始めてから既に二年。時折帰ってくる保護者から大学卒業後も契約継続を仄めかされる程度には渢と雇い主との関係は良好であった。
無論、渢と鶯花の関係も良好。お嬢様とメイドという関係ではあるものの充分に仲が良く、鶯花は渢に非常に懐いていた。
「学校はどうでしたか?」
「楽しかったです!」
「言い方を変えましょう。勉強はどうですか?」
「しっ、知らないなー」
「なるほど。旦那様に報告」
「してるっ! ちゃんとしてるからっ!」
勤務内容には鶯花の勉強をみる、というのも含まれている。故にメイドとはいえ、時折こうして釘を刺すことも忘れない。
お嬢様はまだ少女と呼ぶに相応しい年齢ではあるものの、ゆくゆくは会社の跡取りとなる。それ故、相応の高校を受験し、相応の大学へ進学する予定なのだが、その為に勉強は必要不可欠である。
渢は大学で教員免許を取るべく真面目に勉強していた影響もあり、最初は手探りであったものの、今となっては専属家庭教師としても過不足なく対応出来るようになっていた。
「今年受験なんですから、気を抜いてはいけませんよ」
「ぶー。どうせならコネ入学出来ればいいのにー」
「なんてこと言うんですかお嬢様……」
なお、遊びたい盛りの少女にとって
ちなみに両親はいわゆるお嬢様学校などに通わせる気はなかったらしく、普通の……そこそこ有名な私立……学校に通わせていた。なんでも、色々経験して苦労しろ、という考えなのだとか。
「ごちそうさまでしたっ!」
「お粗末様です」
「いいや! 美味しかったです!」
「恐縮です」
「もぉー! これだから渢さんはーっ!」
ご飯粒一つ残さず完食して素直に感謝し褒めるも、事務的な反応しかよこさない渢に鶯花は不満げな様子を見せる。
別に渢とて嬉しくない筈がない。だが彼女は若干、若干感情を顕にするのが苦手というだけで、鶯花の事を少し歳の離れた妹のように思うほどには好感を持っている。
「渢さん渢さん」
「なんでしょうか」
持っているのだが、
「この後、その、
その言葉に、鶯花には気付かれない程度に渢は身を固くした。
「……お嬢様」
「ダメ……ですか……?」
快活そうな雰囲気を少しだけ潜め、上目遣いで渢を見やる鶯花。
「……勉強は、なされたのですか」
「はいっ! 渢さんがお夕飯作ってくれてる間にバッチリ!」
そんな視線を向けられた従者は一拍置き、平静を装って婉曲的に断ろうとするも、続けられた回答にその逃げ道は呆気なく潰される。
「……そう、ですか」
お嬢様とメイドの視線が交差する。
片方は僅かに頬を紅潮させながら、片方は無表情を装いながら。
「……少しだけ、ですよ」
「やったっ」
その均衡が保たれていたのは数秒だけだった。渢は内心溜息を吐きながら鶯花の
「じゃあ部屋で待ってますから!」
「……はい」
渢の返事を聞き入れるや否や、表情を明るくした鶯花はそう言ってリビングを後にした。
残された渢は人知れず溜息を吐き、後片付けに移る。
「…………」
その表情は無表情でありながらなお固い。
別にそれは、お高い食器を取り扱っているから、ではない。
これから鶯花の部屋でする事に対し、彼女なりに思い悩んでいるからであった。
――――――
「……お嬢様」
「はーい!」
ドアをノックして、返ってきたのは明るい返事。
それを確認して再度溜息を少し吐いた後、渢はドアに手をかけた。
「……失礼します」
そこは少女らしい部屋だった。
そこかしこにぬいぐるみが配置されており、家具の類も穏やかな色彩で、正に可愛らしいという印象を抱く。
「えへへ、待ってました」
部屋の主も、その印象と相違ない姿であった。
首元や肩を露出した薄桃色のベビードール。まだ幼くはあるものの、絵に描いたようなお嬢様、という風体で鶯花はベッドに腰掛けていた。
そんな彼女はドアが開くと同時に立ち上がり、とことこっと渢の下へと足早に近付いていく。
渢がこうやって鶯花の部屋を訪れるのは何も珍しい事ではない。勉強を教えるために、家庭教師としての役割も果たすために部屋の扉を叩くのはよくある事である。
だが彼女は、内心大きく溜息を吐く。
「……お嬢様」
「やっぱり、ダメ?」
「……いえ、ダメでは、ありません」
「じゃあ、その……今日も、お願い、しても良いですか?」
雇い主のご令嬢からのお願いをメイドごときが断れる筈もない、などという高飛車な事を鶯花は欠片も思っていない。
別にそういった強権を乱用している訳ではなく、ただ純粋に、してくれたら嬉しいな、してほしいな、くらいの気持ちしか抱いていない。
「……分かりました」
それを渢も分かっているからこそ、思うところは多々あれど、嫌々ではなく、
「……では、失礼いたします」
「はいっ!」
だから渢はそう言って、自分より少し背の低い鶯花の纏っているベビードールの裾の中へと、ゆっくり、手を差し込んだ。
「ぁ……」
ふにゅん、とした感触が渢の指先に返ってくる。
そこは、余計なものなど一切無く、すべすべとしつつ柔らかな手触りであった。
「……お嬢様」
「ん?」
「……なぜ何も履いてらっしゃらないのですか」
つまり、秘すべき場所に、渢は直接触れていた。
「えへへ」
「……えへへじゃありません」
「だって汚れちゃうし」
「……そう、ですか」
「だからもっと……ね? 触って?」
「……分かりました」
快活ながらもどこか潤んだ瞳に見つめられ、渢は心の中で最後の溜息を吐き、その手を緩やかに動かし始めた。
「ん……ん……ん……」
すり、すり、と無毛の恥丘からぴったり閉じた姫割れを通り、会陰にかけてゆっくりと撫でられると、縋るようにして鶯花は渢の腕を両手で軽く掴み、その瞳を閉ざした。
「ふ……ぁ……ん……」
ほんの小さな呼吸の乱れが、渢に伝わる。
……それは、愛撫だった。紛れもなく、秘め事だった。
渢が勤め始めてから一年くらいだったか。いつものように勉強を教えようと鶯花の部屋を訪ねた際、部屋の主が勉強机に向かってあそこを擦り付けている事を目撃してしまう事件があった。
……自慰だった。紛れもなくオナニーだった。
そんなものを目撃されて鶯花は当然のごとく動転……しなかった。むしろ、こうすると気持ちいいです、すごい発見をしました。そんな事を渢に報告してくる有様。
お嬢様といってもそこまで純粋培養されている訳でもない筈であるのに、鶯花はそういった知識に乏しかった。
故に、頭を抱えた渢はそういった知識をちゃんと教えよう、とした。したのである。したのであるが、その方針をあまりにも、
「んっ……は……ぁ……」
オナニーを教えたつもりだった。正しい、かは分からないものの、自分なりのオナニーを教えたつもりだった。
口頭ではよく分からない、というお嬢様の手を拝借し、指遣いはこう、力加減はこう、と文字通り手取り足取り教えた。教えてしまった。
「ぁ……ん……ん……」
それで済めば良かった。気持ちいい事を覚えた鶯花がオナニーに夢中になっただけならば、まだ良かった。
だが彼女は忘れられなかった。渢の手付きがあまりにも気持ちよくて、その快感をもう一度得たいと望んでしまった。
「んぅ……ん、ぁ……」
故に、お願いした。
オナニーが上手な渢から触ってほしい、と。
「ぁ、は……ん……んっ……」
渢はそれを、拒否出来なかった。妹のように思っている可愛いお嬢様の懇願に逆らえなかったというのもあるが、間違った教え方をしてしまった責任を感じていた。
だが今となっては後悔している。あの時あんな教え方をしなければ、と。あの時あの行為を咎めていれば、と。あの時断っておけば、と。今日まで続けていなかったならば、と
「んっ……渢さん」
「……はい、なんでしょう」
「また、ぁっ、考え事しながらしてますね」
「……何の事でしょう」
「むー。集中、してください」
「……はい」
しかし時は戻らない。
鶯花が正しい知識を得た今も、彼女はそれを望む。渢から気持ちよくしてもらいたいのだと、毎夜望み続ける。
故に、渢はメイドとして、ただ淡々と業務をこなすようにして鶯花を慰める。
「ぁんっ」
秘部全体を撫でていた手の動きが、変わる。
徐々に熱を持ち始めていた陰部。その上端に指先がかかった。
「ぁっ……ゃぁ……」
「……ここ、お好きですよね」
「んっ……好きぃ……」
「……では、続けますね」
「うん……は、ぁぅ……」
ゆっくり、触れるか触れないか絶妙な加減で
ベビードールの下、何も纏っていない、何にも守られていない乙女の大事な場所。
そんな場所を、優しく丁寧に、これから気持ちよくしてさしあげますね、とでも言わんばかりに渢は触れていく。
「ん……ぁ……は、ぅ……」
その声なき声を読み取っているのか、鶯花の吐息が湿度を帯びていく。
渢の腕を掴んでいる手が僅かに力み、腰がゆらゆらと微かに揺らめいて、早く、早くそれが欲しいと従者に向けて無意識に懇願する。
「んっ」
だから、渢はそうした。
さわさわと撫でるだけだった指先が、乙女が一番快感を得る場所へ、確かに降り立った。
「ふぁ……ぁ……んん……」
無防備でありながら強固な守りに覆われたそこが、優しく撫でられる。
渢からの視界はベビードールで遮られているものの、幾度となく繰り返してきたこの行為によって力加減を、触れる場所を違える事など有り得ない。
「ぁっ……は、んぅ……んっ……」
故に、淡く的確な快感が鶯花に送られる。
ゆら、ゆら、と腰の動きが心なしか大きくなり、渢の腕を掴んでいる指先に時折小さく力がこもり、声色が徐々に甘くなっていく。
「ん、はぁ……もっとぉ……」
だが鶯花は堪え性が無かった。徐々に徐々に温めていく、という渢なりのオナニーでは足りない、とばかりにもっと強い刺激を従者に求める。
「……これくらいでよろしいですか?」
「あっ……! うん……いい、よぉ……っ」
だから、応じた。
渢の指先が少しだけそこに干渉した途端、色付いた声が一瞬あがり、鶯花は言葉によってその行為を肯定した。
「……続けますね」
「うん……あ、はぁ……んぅ……っ」
くにゅ、くにゅ、と鶯花の大好きな場所が可愛がられる。
円を描きながらされるそれは甘い甘い快感を生み出し、耳の後ろが熱くなるような感覚が彼女を襲う。
「んんっ……は、んぅ……ぁぁ……っ」
連動して頭がぽぉっとするようなその感覚に身を委ねながら、鶯花の腰は渢の指先に押し付けるように、指先から逃げるように、無意識にくなくなと揺れ動く。
目を閉じている彼女はそれを認識出来ない。だが彼女の反応をつぶさに観察している彼女はそれに気付いていた。
「……お嬢様」
「はぅ……んっ……なぁ、に……?」
「……もっと強くしますか?」
「うん……もうちょっと、だけ……」
だから、促した。
貪欲で堪え性のない主人を見ていられない、とばかりにそれを提案した。
無論、そんな鶯花はこくり、と頷く。
「……では」
「はぁぅっ!」
指先が、乙女の一番敏感な場所に確かな圧力をもって干渉した。
「んんっ……ふぁ、あっ……あっ……!」
途端に、反応が変わった。
顎が引かれ、腕を掴んでいる手に力がこもり、腰の揺らめきが明確に大きくなり、気持ちいい、気持ちいいと鶯花は身体で従者に訴え始める。
だから渢は、そんな彼女がもっと気持ちよくなれるよう、すっ、と腰を優しく引き寄せた。
「んぅぅっ……はぁ、あっ……ぁんっ……!」
それにより、欲求とは裏腹に快感から逃れようとしていた腰が愛撫する指先に押し付けられるような姿勢になる。
くなくなと揺れるのはそのままであったが、僅かに波があった快感が一定の強さで送り込まれるようになり、鶯花の吐息が更に熱を帯びていく。
「あっ……んっ、ふ……んんぅっ……!」
円を描くようにしながら優しく、ゆっくり、丁寧に、しかし確かに圧をかけながら甘粒を癒す渢。
支えている腰がぴくん、ぴくん、と跳ねるのを感じながら、彼女はその行為を続ける。鶯花が安心して気持ちよくなれるよう、小さな性感帯を捏ね続ける。
「んっ……ぁ、ぁ、あっ……あぅっ……!」
腕を軽く掴んでいた鶯花は、いつの間にか渢の胸元に縋り付くような姿勢へと変わっていた。
腰を引こうとしても従者の手によりそれは優しく封じられ、だが快感で身体は動こうとし、少しでも快感を放出したいとでもいうように勝手に背が丸まる。
「あっ……ぁぁ……ふぁぁ……!」
熱い吐息が渢の首にかかる。甘い声が渢の耳へ届く。鶯花の手にきゅっ、と力が込められ、気持ちいいという感情が渢に伝わる。
だから、従者は問い掛ける。
「……お嬢様」
「んぅぅ……なぁ、に……?」
「……どう、されますか?」
どうするか。
何度も繰り返されてきた問い。
律儀な渢が、ただ確認するだけの問い。
「ぁっ、んっ……イかせ、てぇっ……!」
だから、鶯花はそれを望んだ。
「んっ……あっ、あっ、あぁっ……!」
だから、渢はそれに応じる。
「ぁんっ……んっ、あっ……ふぁあっ……!」
力加減はそのままに、小粒を、硬く大きくなっている小粒を捏ねる手付きが速まる。
その途端、身体の揺れが脚にまで伝播し、かくっ、かくっ、と鶯花の膝が震え始めた。
「ぁ、あっ……あっ……ん、あぁっ……!」
だがもっとして欲しい、構わずに続けて欲しい、とでも言うように鶯花はより強く渢に縋り付く。
そんな彼女を見つめながら、渢は指先の動きを徐々に徐々に速めていく。
「んぅっ……ぁっ、あっ、あっ……イ、く……!」
そんな一番好きなやり方をされて、鶯花が耐えられる筈がなかった。
「は、あぁっ……んんっ……ぁっ、ぁあっ……!」
いや、耐えようなんて一切しなかった。大好きな瞬間を迎えるのが嬉しくて仕方がなかった。
ベビードール越しに胸の先端が小さく主張し、見えない場所から小さな雫が滲み出る。
甘粒は凝り固まっており、優しくかき混ぜられる度に甘い甘い快感が小さな一点から全身へと駆け巡っていく。
吐息がより熱くなり、湿度が濃くなり、渢の胸元が蒸れていく。
身体が揺れる。
膝が震える。
顎が引かれ、背が丸まり、より強く縋り付く。
柔らかなお尻がくんっくんっと引かれ、もっと強く抱き寄せてとばかりに、腰にあてられた渢の手に自ら押し付ける。
だから、それを感じ取った従者は、優しくそこへと導いた。
「ぁっあっあっ……! んっんぅぅぅぅ……‼︎」
静かで、甘やかな絶頂だった。
ぴくん、ぴくん、と全身が揺れる。
かくん、かくん、と膝が震える。
だがもっとして、もっと、もっと気持ちよくして、と言わんばかりに渢にぎゅっと縋り付く。
だから従者はそうする。
少しだけ力を緩め、少しだけ速度を落とし、撫で癒すようにして、くにゅくにゅと甘粒を捏ねる。
幸せだった。鶯花は幸せを感じていた。
温められ、高められ、希望通りに昇り詰めさせてもらって、幸福で全身が蕩けそうだった。
更には伝えるまでもなく絶頂を長引かせてもらって、気持ちよさで心まで震えていた。
「は、ぁ……ん、く……」
鶯花の呼吸が徐々に落ち着くにつれ、渢はその手付きを徐々に弱めていく。
「んっ……」
最後に、ぶるっ、と強く震え、そこでようやく鶯花は皺のついてしまったメイド服から手を離した。
「……お嬢様」
「ん……」
だから渢は問い掛ける。
「もっと、して……?」
だから、いつも通り鶯花は求めた。
潤んだ瞳で従者を見つめ、一度は力の抜いた手で再度きゅっと縋る。
「……かしこまりました」
それを受けて、渢は鶯花の背に腕を回し、膝に手を回し、お姫様を扱うがごとくゆっくりとその身を抱き抱え、綺麗に整えられたベッドへと向かう。
「ぁ……」
ぽすん、という音さえ鳴らないほど優しくおろされる。
だが二人分の重さを与えられたベッドは僅かに軋み、その音に反応するかのように鶯花は小さく声をもらした。
「……どのようにいたしますか?」
静かに、静かに問い掛けられる。主語の無い、端的な言葉。
だがそれに対し、鶯花は悩まなかった。
「ん……」
少女の指先が、ベビードールの裾へと伸びる。
薄桃色の端がきゅっと摘みとられ、するすると、ゆっくり捲り上げられた。
「渢さん……」
秘所が、顕になる。
年頃の娘ならば有ってもおかしくない彩がそこには無い。故に、少しだけ綻んだ一本筋が、明確に晒される。
優しく捏ねられて、少しだけ赤く染まった上端部。硬く大きく育てられたその小粒は、そこを守るべきものから僅かに顔を出して、真っ赤になって何かを期待するかのようにふるふると震えている。
そこから視線を僅かに下へズラせば、一番大切な場所がひくん、ひくん、と小さく開閉しており、それに連動するようにして滲み出ていた恥ずかしい雫が主張を繰り返し、眩さを覚えるほどの素肌の中で明確に光を反射していた。
「渢さぁん……」
潤んだ瞳で従者を見上げる鶯花だが、それ以上の言葉は無い。
熱がまだ残っている吐息を漏らしながら、期待しながら脚を大きく開き、腰を僅かに、くいっ、と上げる。
「……失礼します」
従者には、それで十二分に通じた。
「ぁ……」
渢が身を屈める。
鶯花の両脚の間へと入り込み、触れるだけで形を柔らかに変えるお尻を慈しむように両手で持ち上げ、
「んっ」
忠誠を誓うかのようにして、その唇を秘所へと落とした。
「は、ぁ……んっ……ぁっ……あっ……」
何度も、何度も口付けが行われる。
乙女の秘密の場所に、乙女の大事な場所に、乙女の敏感な場所に。大切なものを扱うかのように、丁寧に丁寧に鶯花の期待を落としていく。
「ゃぁ……っ」
だが、彼女に堪え性は無い。
腰をくなくなと揺らし、それじゃない、と無言のおねだりをする。
「あんっ!」
だから、渢は応じた。
「んんっ……! ぁっ、あっ、あっ……!」
口付けが、秘部の中で一番自己主張しているそこへ、何度も何度も落とされる。
接触し、吸い上げ、離し、また接触し、吸い上げ、離し、その度に大事な場所全体がきゅっ、きゅっ、と緊張と弛緩を繰り返す。
「んっ、んっ、んっ、んっんっ……!」
タイミングが、狭まっていく。ちゅっ、ちゅっ、と小さな音の間隔が短くなっていく。鶯花が好むものに向けて、最小限の助走をしていく。
少女は見つめる。優しい従者を見つめる。信頼している彼女ならば、この後すぐにそれをしてくれる、と期待のこもった視線を送る。
だから、それはすぐだった。
「はぁあぅっ!」
また僅かに赤みを増したそこに、柔らかく、ぬめりを纏ったものが、這った。
「んんっ! あっ! あぁぁぅっ!」
渢の舌が、甘粒を捉えていた。
可能な限り脱力したそれは大きな小粒を包み込み、指とは明確に異なる快感が鶯花に送り込まれる。
「ふぁぁっ! ぁんっ! んっんぅぅっ!」
にゅるり、にゅるり、と纏わりつくようにして硬いものが柔らかいものに包まれ、少女の腰がぴくぴくぴくっと微かに跳ねる。
その反応をつぶさに観察しながら、従者はいつも通り、彼女が好むものを与え始めた。
「んぁあっ! ぁっ! あっ! あぁっ!」
ただ舐めているのではない。渢は顔ごと動かして、脱力させた舌を動かさず、極限まで柔らかさを保ったもので乙女の最も敏感な場所を癒していく。
下から上へ。下から上へ。
僅かに露出した真っ赤な実から最後の守りを丁寧に剥がすようにして、ゆっくり、何度も何度も舐め上げる。
「あぁっ! んぅぅっ! んんんぁっ!」
大切な場所。大事にしなければならない場所。そんな場所にあって、快感を得るためだけに存在する器官。
だからこそ大切に、痛みなど与えないように、ゆっくり、舌のざらつきさえ感じ取れるような速度で下準備を施していく。
「んっ! ぁあっ! ぁぁあっ!」
そう、下準備。
彼女が好むものは、まだコレではない。
もっと先。徐々に捲り上がっていく最後の守りが崩されたその先こそ、鶯花が今一番欲しがっているもの。
「あんっ!」
それが、整った。
渢の眼前には完全に姿を現した真っ赤な甘粒。
内側から弾けそうなほどに膨らみ、これ以上苛めないで、これ以上触らないで、もっとして、もっと触って、と自己主張している蕾。
「はっ……! はっ……! はっ……!」
それは鶯花自身にも見えてしまうほど。
だが目線が逸らされない。自分のはしたない姿を目にしても、彼女は渢と蕾の両方へ視線を往復させる。
早く、早く、早く。
もう彼女の脳内にはそれだけしか無い。
「あっ!」
だから、従者は応じる。
「んっ!」
小さな赤が、渢の唇の中へと消え、
「ふぁああああっ!」
くちゅくちゅくちゅ、と優しく舐め転がされ始めた。
「あぁぁあっ! んあっ! はっんぅぅうっ!」
柔らかさを少しだけ捨てた舌先、それが敏感突起をくまなく舐め回す。
もう守りなど存在しないそこは、熱い口内の中で更に熱をもったものによる愛撫が直接施される事となり、甘やかでありながら全身に電流が駆け巡るほどの快感の発信源となる。
「あんっ! あぁぁあぅっ! んっぁああああっ!」
くんっ、と腰が持ち上がる。
不安定な姿勢になるも、そのまま気持ちいい姿勢でいてください、とばかりに渢がお尻を支え、鶯花は思う存分に快楽を味わう。
「ひぁああっ! ああっ! んんんぁあああっ!」
優しいながらも激しい快感が鶯花を灼き始め、びくびくびくっ、とお腹が上下に痙攣し、腰が上下左右にくなくなと揺れる。
だがそんなもの一切の邪魔にならない、とばかりに渢は鶯花の一番好きな場所に吸い付き続け、鶯花の一番好きな快感を与えていく。
「あぁぁんんっ! あっ! はぁああぅうぅっ!」
秘密の場所がひくひくと開閉し、雫でしかなかった快感の証明が、とろぉ、と会陰に伝わり始める。
その感覚にゾクゾクしたものを感じる鶯花であったが、そんな感覚は莫大な快感によって一瞬にして流されていく。
「あっあっあっんんんっ! んぁぁああああっ!」
見えぬ場所で真っ赤な小粒が優しく蹂躙される。
舌先で何度も弾き、ゆっくりと転がし、根本をほじり、くるりと全周を這い回り、飽きというものが来ないよう、鶯花を気持ちよくするという目的を遂行し続ける渢。
「んぅうううっ! もっと! もっとぉっ!」
だがそれでは足りないのだと鶯花は泣く。
腰を上げたままくなくなと揺らし、気持ちいいけれど切なくて仕方がないのだと主張する。
「ふぁぁぁああああああっ!」
だから、従者は応じた。
「ああぁあっ! それっ! きもち、いいっ!」
優しさが無くなる。
じゅるるっ、と強く吸い付き、ちゅぽっ、と解放するや否や舌先でぴんぴんぴんっと舐め弾き、それでも足りないだろうという気遣いによってぐりゅぐりゅと潰し舐め、真っ赤な小粒が蹂躙され始める。
「んっはぁああんんっ! あっ! あああぁあっ!」
快感に堪えきれなかった鶯花が、腰を高々と掲げながら、胸を反らせながら枕を掴む。
もはや肩と脚だけで体重を支えているような姿勢。だがその姿勢が一番快感を得られるのだと言わんばかりに全身をびくびくと痙攣させる。
「ひあぁあっ! あぅうっ! んっあぁあああっ!」
ほじられる。
柔らかさを奥にしまった舌先がくるりくるりと小粒の根本をほじっていく。
その度に鶯花は歓喜に震え、より一層渢に押し付けるようにしてぐりぐりと腰をくねらせる。
「ああっ! ああっ! ああっ! ああぁぁあっ!」
透明で粘性のある液体が溢れかえる。
秘密の場所から溢れていたそれは会陰を越え、恥ずかしい場所を越え、お尻に伝い、そこを支えている渢の手に触れるほど何条もの流れが形成されていた。
「んっんんんぅううっ! あっ! ああぁああっ!」
だがそんなものに左右される従者ではない。
むしろ鶯花が正しく気持ちよくなっているのだと判断し、更に愛撫を強めていく。
「あああぁあっ! ふうさんっ! ふうさぁんっ!」
だから、少女は耐えられない。
優しかった快感が無段階で激しい快感へ移行させられてきて、快感の器は今にも溢れ返りそうだった。
「もっとっ! してぇっ! してぇぇっ!」
だから、従者は応じる。
「あんっ!」
ちゅぅぅっ、と最大限強く、もっと出てきてください、もっとおっきくしてください、と言わんばかりに真っ赤な小粒を吸い上げ、
「ひぁあああああああああああっ!」
その根本を、ぐりゅぐりゅぐりゅっ、とほじり始めた。
「あああぁぁぁああっ! いくっ! いくのぉっ!」
もはや柔らかさなど無い舌先が快感の生え際を強く押し上げるようにしながら左右に細かく揺さぶられる。
好きだった。これが一番好きだった。
あそこが爆発するような、腰が無くなるような、お腹が蕩けるような、頭が弾けるような快感が鶯花を襲う。
「んっあああぁああっ! もう! もうっ!」
腰が浮き上がる。見せびらかすように、押し付けるようにして限界まで浮き上がる。
お腹が収縮し、秘密の場所が収縮し、枕を掴む手に力がこもり、全身が緊張する。それに備えて身体が最短で準備する。
「あっあっあっあっあっあっあっあっ!」
まるで助走するかのようにして短く甘い声が連続する。
鶯花の表情は快感に蕩け、その目尻に小粒の涙が浮かび上がる。
ベビードールに隠された胸の上の小粒は、ここも触ってと必死に主張している。
だが何よりもそこが、渢からあやされている大粒が一番好きと言わんばかりに、更に硬く大きく育っていく。
だから従者は導く。
ひくひくと開閉を繰り返す秘密の場所などに目もくれず、ただひたすらに鶯花の一番好きなものを与え続ける。
続けられる。真っ赤な突起が下からぬりゅぬりゅぐりゅぐりゅと押し上げ舐められほじられる。
それは最適解。鶯花が一番好きな場所で、一番好きなやり方。
枕の形が歪む。
身体が痙攣する。
腰が限界まで上がる。
脚に力が入り、足先に力が入る。
快活だった可愛らしい顔が快楽に染まる。
秘密の場所に、ぎゅぅぅ、と力がこもった。
「ああぁぁぁああああああっ! もっともっともっとぉっ! ああぁぁああんんんんっ! んんっああっぁぁああああっ! いくいくいくっ! ふうさんっ! ふうさんすきぃっ! ああっぁぁぁぁっぁぁぁああああああっぁぁぁぁああああああっ‼︎」
びくんっ、と一際大きく身体が震えた。
踵がベッドから浮いてしまうほどに足先に力がこもり、限界を越えて更に腰が跳ね上がる。
とぷぅっ、と濃厚な絶頂の証が溢れ出て、お尻まで形成されていた流れの幅が更に広がる。
だがそんなものは関係ない、とばかりに渢は愛撫を止めない。
剥き出しの真っ赤な大粒を再度口内へと招き入れ、縦横無尽に快感を叩き付ける。
がくがくがくっ、と鶯花の身体が跳ね回る。だが支えとなっている従者の手により、絶頂中の痙攣さえ押さえ込まれる。
それにより生まれるのは絶大な幸福感。
一番気持ちいい瞬間が延々と伸ばされ、鶯花の脳内が真っ白を通り越して無色透明になっていく。
身体がどこかへ浮いていくような感覚。身体がどこかへ沈んでいくような感覚。
だが肉体だけは快感を放出しようと必死に暴れ回る。
防衛反応により瞳はぎゅっと瞑られ、防衛反応が壊れて呼吸が止まり、不随意に腰だけは跳ね回り、体内からは次から次へと歓喜の涙が溢れていく。
「ああっ! はっ、ん、はぁ……!」
そんな鶯花の様子を見届け、渢は乙女の敏感な場所からゆっくりと離れる。
これ以上ないほどに真っ赤に染まった大粒と舌の間に粘度の高い透明な架け橋が形成され、時を置かずしてふつん、と消え去った。
「ふうさん……渢、さぁん……」
快感に身を灼かれ、蕩けた表情を晒しながら渢の名を切なげに呼ぶ鶯花。薄桃色のベビードール以上に身体を紅潮させ、何かを求めるように両手を宙へ伸ばす。
「んっ……」
だから、従者は応じた。
少し乱れたベッドシーツの上で身体をズラし、その身体を鶯花に、体重をかけぬよう優しく重ねる。
「渢さん……」
渢が近寄ってくるや否や、その身を強く抱き締める鶯花。
「……っ」
そして、何かを口に出そうとするも、一瞬言い淀み、
「今日も、ありがとうございました……」
感謝の言葉を、従者へと告げた。
――――――
「……では、お休みなさいませお嬢様」
「はい……おやすみなさぁい……」
まだどことなく夢心地な鶯花を清め、渢は部屋を後にした。
「…………はぁぁぁぁぁぁ」
だが自室へと戻るや否や、彼女は大きく溜息を吐いた。
「またやってしまった……」
そしてそのまま頭を抱える。
「断らなきゃ、もうダメだよって、もうやめよって言おうと思ってるのに……」
従者とお嬢様の秘密の関係。
そんなものが、許される筈もない。感情的にも、職務的にも、条例的にも。
「うぅぅ……」
不健全。あまりにも不健全。
確かに最初の一手を致命的に間違えたのは渢。だがそれ以降、特に二回目の際に断っていれば、今日までそれが続く事はなかった筈。
「しかも……」
渢は思い出す。情事の終わり際、鶯花が口走った言葉を思い出す。
聞こえていなかった訳がない。聞き逃していた訳がない。
「おぉもぅ……」
好き、という言葉。
それが、気持ちいい事を与えてくれるから好き、なんてものである筈がない事は渢とて容易に想像がつく。
お嬢様の道が、常道から外れてしまっている、というのを従者はもはや確信していた。
「はぁぁぁぁぁぁ……どうしよホント」
故に、今日も従者は溜息を吐く。
自分に全責任があると分かっているからこそ、取り返しのつかない事をしてしまったと分かっているからこそ、大きく溜息を吐く。
「……日報送ろ」
故に、現実逃避をするために、今日の仕事内容を雇い主に報告するべくパソコンを立ち上げるのであった。
――――――
一方、鶯花の部屋。
『今日も……まともに言えませんでした……』
『我が娘ながらチキンに過ぎる』
『だってぇ……』
『そして送られてきた普通の日報』
『なんて……?』
『いつも通り、真面目な仕事ぶりで何より』
『わ、私との事は……?』
『いつも通り、ノータッチ』
『ですよねー』
『まぁ娘に性的なご奉仕してるとか書けんよな』
『ですよねー』
『しかしそろそろ告白くらいしたらどうだ』
『その……恥ずかしいじゃん……』
『娘がチキン過ぎてパパ呆れちゃう』
『うぅ……』
そんな、海の向こうとのやり取りがあったとか。