一度訳あって削除再び投稿しました。
動揺させてしまい申し訳ありません。
売り上げが良好とはいえ朝早く起きて開店前にはパンを焼き上げて商品を用意しておかなければならない。
しばらくこの生活を続けているといってもやはり朝早く起きるのはなれないものだ。
「ふぁ……ねむっ、としまったっ!」
あくびをしているとせっかく焼き上げたパンをトングからこぼして床に落としてしまった。
ああ、なんともったいない。この素晴らしいできばえの焼きたてパンがお粗末なことに。落としてしまった以上、品物から廃棄物へと降格されるのはやむを得ないが仕方がない、パンくずにしてどこぞのワカサギ姫にでも釣り上げるかな。
からーん、からーん。どうでもいいことを考えていると、準備中との看板を立て掛けたはずなのに入り口が開いた音が聞こえてきた。
誰だ看板を無視して入ってくる非常識なやつは、そんなやつ俺の中でも……ひぃふぅはぁみぃ、心当たりが多すぎて数えきれない……っ。
全く、俺はパン作りに忙しいというのに。
一応もしかしたら泥棒という可能性もあるので確かめに向かう。盗まれてるようなものはないんだけどね。
「春ですよー、暖かな春をお知らせに来ましたよー」
これはまた変な宗教勧誘が堂々と……って違う。
店にやって来たのは春を伝える春告精、リリーホワイトだった、その名の通り妖精である。
しかしもう春かー。季節の影響を受けやすい幻想郷にも寒い冬を越えて過ごしやすい快適な季節がきたんだな。
「リリー、悪いけどうちはまだ開店前だよ。この時間はまだ入っちゃダメなの」
「おはようございます、春を告げる妖精リリーただいま参りました。春ですよー」
「はい、春ですねー。てそうじゃない俺の話聞けよ」
あとおはよう、と付け足す。話を華麗にスルーされたとはいえリリーみたいに和やかな挨拶をされては無視できるものも無視できないのだ。だって大概の俺の知り合いはろくに挨拶もしない非常識な連中だし、こういうリリーみたいな常識的な関係を大切にしたいのだ。でも勝手に人の開店前の店入ってくる辺り、リリーもなかなか常識的に外れているようだ。そのところは話しても無駄だとわかってるので端においとく。
「まさかもうリリーがくるとはね。春はもう少しさきかなーとは思ってたけど」
「今年は思ったより雪が降りませんでしたからね。外の空気も春らしくなってきたので春を伝えにきちゃいました」
そう言うリリーの笑顔はとても暖かく春らしさが伝わっていた。なんというか彼女の笑顔は見ていて和んだり癒されたりするものがある。
女の子の笑顔はやっぱりこういう素敵な感じじゃないとね。この幻想郷の女の子の笑顔ってドス黒かったり怪しいこと考えてる嫌な笑みばっかするやつらばっかりだもんな、主に俺の知り合いとか友達とか。
その点、リリーってすごいよな。最後まで純粋な笑顔たっぷりだもん。
「そうなんだね。こんな朝早くから春を伝えにいくなんてリリーは頑張ってるな」
「それはあなたもですね、朝早くからパン作りお疲れ様です。それと、リリーが今年春を伝えに来たのはあなたが初めてなんですよ。あなたにいち早く会いたかったから」
「う、うん。そうなのか、ありがと」
「…………………………むぅ」
やけに含みのある言い方だと思ったが、どう返事すればわからなかったので適当に返事をしておく。するとリリーは頬を膨らませて機嫌を損ねたような態度をとってきた。
可愛い。膨らんだ頬を指でツンツンしてやりたい。絶対ぷにぷにして気持ちいいに決まってるぞ。
「えと、リリーもしかして怒ってる?」
「……怒ってませんよ、ばか」
うん、これは怒ってる。バカとはなんだバカとは。言い方可愛いくて許してしまうじゃねーか卑怯者め。
「そうだ。さっきパンが焼き上がったばかりなんだけどさ、良かったら食べていかない?」
「え、いいんですか。この時間帯は忙しくないんですか?」
「そろそろ休憩に入るからさ。俺もまだ朝から何も食ってないから一緒に食べよう」
「はい。ぜひご一緒させてください!!」
ご飯と聞くだけでたちまち笑顔になるリリー。仕事を控えた朝御飯はいつも一人だったので話相手ができて嬉しい。話相手が誰でもいいと言うわけではなく相手がリリーということが嬉しい。彼女は春の妖精なだけあって、皮肉めいたりすることはないし戦うことも嫌う謙虚で素直なやつだ。そういう理由では付き合いやすい相手とも言える。
なぜバカと暴言されたのかは謎だが機嫌を直すことができたのでよしとしよう。
朝食は色とりどりのフレッシュサラダに焼いたパンの上にベーコンと目玉焼きを乗せたベーコンエッグトースト。先ほど焼き上がったばかりの塩で味付けしたシンプルの塩パン。それとデザートにコンデンスミルクをかけたイチゴだ。
「わあ、すごく美味しそうです」
「そうかな。いつもこんな感じだけど……」
「パン屋さんの作った朝食が美味しくないわけないじゃないですか」
「そこまで言ってくれると嬉しいな。俺も作った甲斐があるよ。それじゃあいただきますっと」
「いただきまーす」
そう挨拶すると早速ベーコンエッグトーストを口にするリリー。がっつくようなみっともない真似はせずに美味しいそうに上品に味わいながら租借する様は思わず見とれてしまうほどだった。
妖精は思考が幼いというか、周りの迷惑を考えずにいたずらをして楽しんだりあっちこっち遊んで飛び回るものだから、本当にこの食卓マナーの見本のようなリリーを妖精かどうか疑ってしまう。
というか俺の妖精像がダメな方向に出来上がったのはあの氷の妖精さんのせいだ、あいつがここにいたらリリーの態度を見習わせてやりたい。あいつこの前もどこかの川を凍らせて村の人からは魚が釣れなくて困ってるーとか言われてたからな。今度会ったら注意してやらねーと。
と、食事の間はお互いの最近のことを話したりして食卓を盛り上げた。おかげで楽しくていつのまにか食事もほとんど食べ終わっていた。
「あれ、リリーの分のイチゴはあるのにどうしてあなたのはないんですか?」
「二人分あるかなーって思ったけど数が少なかったんだよね。自分の分までとってお客さんの食べるイチゴの数減らすわけにはいかないし、リリーは気にしないでいいよ」
「そういうわけにはいきません。こんな美味しいイチゴを独り占めしては春告精の名が廃ります。イチゴは春の旬の野菜です、しっかりとあなたにも春が素晴らしさを知ってリリーの役目を果たさないと」
何やら意気込んでるようだ。イチゴを野菜と知っている辺り、春告精らしいがそこで春告精のプライドを引き合いに出す必要があるのだろうか。
俺は別にいいのだがリリーはそれを許せなかったらしい。
リリーはイチゴと俺を何度も見比べてそして口を開いた。
「そうですね、春を伝えたいのはこれはあくまでリリーの役目であってそれをあなたに強制するわけにはいかないので……サービスしましょう」
「サービス?」
「はいサービスです、リリーに朝食を食べさせてくれたお礼。イチゴを普通にあげるのではなくリリーがちょっとサービスを付け加えるのです」
そういってリリーはイチゴを唇に加える。なんとなくエロチックな見た目に夢中になっていると、いつのまにかリリーがこちらに近づいて顔と唇が目前まで差し迫っていた。
待て待て待て、これって!?
「うぐっ」
気づいた時には既に遅く唇を唇で塞がれた。
「んっ、れろっ……くちゅっ」
柔らかい唇を押し付けるようにして強引にイチゴごと彼女の舌がこちらの口内に入ってくる。リリーの舌はこちらの舌を舐めとるように蹂躙して、それに巻き込まれたイチゴが潰されて甘い味が口いっぱいに広がる。
もちろんイチゴを味わう余裕もなく、知らずのうちに俺はイチゴよりも彼女の濃厚なキスに夢中になっていた。
彼女の舌触りが俺の脳髄を刺激して全身を奮い立たせる。何度絡めても飽きないキス、俺はふと目を開けてみると目の前には目をつむりながら懸命に舌を絡めようとしている淫靡な表情をしたリリーがいた。その表情が俺の理性を誘い、俺は彼女の後頭部に手をやってこちらにくるように押さえ込むとさらにキスが激しくなる。
ちゅぱっ、ちゅるっ、くちゅくちゅ、れろっ、れろろっ
朝っぱらから何をやっているんだという思考はかき消されて、俺はただひたすら彼女を求めるのに脳を支配されていた。
⬛
「ありがとうございましたー」
正午過ぎ。俺はリリーとちょっと濃密な時間を過ごしたあと、そのあとはいつものように店を経営していた。
パンを買ってくれたのを見送って、お客さんが一人もいなくなったところで一息つく。
若干だが、リリーの唇の感触が残っている気がする。それに口内にはイチゴよりも甘かった舌触りが……。
あの時間は幸せだったが、リリーがあそこまで積極的な女の子だとは思わなかった。ちょっと天然でおっとりとした女の子というイメージが俺にはあったので驚いてしまっている。
「…………おーい?」
俺も後にはノリノリになってしまったが積極的に攻められただけでああなってしまう自分に多少の不甲斐なさを感じてしまう。こんな男のままだと絶対地獄に落とされてしまいそうだ、あのロリ閻魔ならやりかねないとおおいに想像できる。
「…………起きてるのか?」
あー、でもやっぱり女の子のキスってあんなにも気持ちいいものだったんだな。いきなり舌入れられてゆっくりする余裕もなかったけど、あれはなかなか。
「……おーいってば!!」
「んだよこっちは気持ちいい思い出に浸ってる最中に――――――――!? あ、お客さんでしたか。いらっしゃいませー」
反射的に言葉が出てしまったのを訂正してすぐさまいつものお客さんに対する態度に切り替える。やべ、思い切り失礼なこと言ってしまったし……これは言い逃れできない。
相手は相当怒ってるだろうなと予想して恐る恐る顔をあげる。お客さんの正体は霧雨魔理沙だった。
「なんだ魔理沙か。ならいい」
「なんだとはなんだ、仮に私も客なんだぞ。失礼なやつだなぁ」
いえ、正直なところお客さんの相手が友達付き合いのあなたで良かったです。もし相手が全くの赤の他人だったら悲惨のことになっていたので。
ありがたやー、ありがたやー、この度の魔理沙様のご恩は忘れません。明日ぐらいまで。
「さっきからなんだよ、怒鳴ったり感謝してきたり気持ち悪いな。罰としてこのパン1個貰うからな」
店の信頼が落ちるよりパン1個で済めば安いものだ。だけど魔理沙、店の中で店の商品を堂々と食べるのはどうかなー。ほら、入ってきたお客さんが魔理沙見て動揺してるじゃないか。
「んー、やっぱお前の作るパンは旨いな。霊夢のやつなんか私が遊びに来たっていうのにパサパサの煎餅しかくれないんだぜ。それと比べてお前はこんな旨いもの食わせてくれるんだから、いい友達もったわ。あ、もう1個もらうぜ」
普通にもう1個のパンに手を伸ばそうとしたところを俺は叩き落とす。他のお客さんの前でこれ以上タダでパン食べさせてるところとか見られたらいけないんだって。
「魔理沙は遊びに来たんじゃなくてお茶をたかりに来たが一番正しい表現だからね。今度は魔理沙がお茶菓子でも持っててやれば」
「お茶菓子だけ持ってかれてバイバイされるのが目に見えてる」
むっ……反論できない。まあ魔理沙と霊夢の関係らしいし俺には関係ないから別にいいか。
「そういえばさっきリリーが村のあちこちを飛び回ってたぜ。お決まりの、春ですよーって。どうりで今日は日差しがポカポカして気持ちよかった訳だ」
「今朝俺のところにも来たよ。もうてっきり別の場所で春を伝えに行ったんだと思ったんだけどまだいたんだな」
この村はそこまで大きくないし、妖精のリリーなら空を飛んで春ですよーって言えばすぐにみんなに伝わっているのに。
「自分の役目は春を伝える事だから、全員にちゃんと春を伝えてきれたか確かめているんだと」
「その律儀さを見習って魔理沙も俺のところで働いてみない? 今なら店員は俺しかいないしそれなりに給料も出せるよ?」
なんかいつもそこら中回ってるし、結構な頻度でここやら博麗神社やら紅魔館やらアリス邸やら行ってるし。異変起きれば気が向いて暇潰しに行ってたりするし、暇を労働に変えるいい機会じゃないか。
「いやいい。これでも魔法の研究に忙しいんだ」
「魔法ってそんなに楽しいの?」
まあ俺も使えるようになってみたいとは思うけど。
「魔法は乙女のロマンだからな。なんならここで新作の魔法ぶっぱなしてやろうか?」
「やめろ店が潰れる物理的に」
ずいぶん豪腕な乙女のロマンだ。それでいいのか乙女よ。
そんな他愛の会話をして別のお客さんの会計を済ませる。いつまで経っても魔理沙は出て行こうとしないので、ここに立たせっぱなしにするのもあれだから部屋に招こうと思ったところで、外が騒がしくなってるのが聞こえてきた。
「なんか騒がしいな」
「まさか異変か。見てみようぜ」
嬉嬉として魔理沙は早足で喧騒のする外へと向かう。
そんな俺の周りで異変が起こってたまるか。大体村の中で起こる異変ならもっと騒がしいことになっているだろう。
とりあえずちょうど良いことに店内には誰もいなかったので魔理沙の後を追う。
喧騒のする場所へと進めば進むほど人が増えて、やがて建物の前で人が密集しているのを発見する。人の視線が集まるところに入るとそこには魔理沙と、
「リリー……」
どうしてか地面に腰を落として曇った表情をするリリーがいた。そして何故か全身がトマトまみれになって赤色に染まっている。そして彼女の朧気な視線の先には険しそうにリリーを睨むおばさんがいた。手にはトマトが握られていて、リリーをこんな目にした犯人だとすぐにわかった。
「なあ魔理沙これはいったい……?」
「――あんたみたいな化け物が村に来ないでちょうだい!?」
おばさんの怒声が響いてそれと同時にリリーにトマトを投げつける。見事にリリーの顔面に直撃して赤い果肉が弾け飛んで辺りに飛び散る。
なぜこんなことが起きているのかと、呆然としている俺より先に割って入ったのは魔理沙だった。
「そこまでだそこまで。おばさん、この状況だとおばさんに非があるようにしか思えない。お前の口から何があったのか話してもらうぜ」
「ば、化け物が人里に来るから悪いのよ。私は妖怪が大嫌いなの」
「それ、偏見だろう。確かに無力な人間は妖怪を嫌う……ていうより怖がるが、こいつリリーや寺小屋の教師をしている慧音とか無害だろ。リリーも春告精だからこの村を自由に回る許可は出ているんだけどな」
話を聞く限り、このおばさんは極度に妖怪 を嫌っているらしい。それはこの村ではそれなりに知られてはいたが、まさか春告精のリリーにまでこんな仕打ちをするとは思わなかった。
ここの村民たちは人間に無害の妖怪等には温厚的で、協同組合からの信頼を得ている妖怪は村の掟さえ守れば村に通すことを許可している。だから俺は余計におばさんに驚きと怒りを感じていた。
「リリー、大丈夫か?」
「はい、私はなんともありません…………」
近づいてリリーの反応を確かめる。トマトを投げつけられただけなのでケガはなさそうだが今朝のような元気な雰囲気を感じられない。リリーは俺が幻想郷に来る前からこの村に来ていたらしいし、突然拒絶されれば落ち込んでしまうのも無理はない。
体に傷はできていなくとも心には傷ができていた。
「なによ、あんたまさかその化け物を庇うっていうの」
「庇うっていうよりなんかなー。私はお前が妖怪を好きになろうが嫌いになろうがいいんだけど、見てて無視なんてできなかったからな。確かに大きな異変を起こすのは妖怪連中だけど、必ずしも妖怪が悪いとは限らないんだぜ」
「庇うというのね。やっぱりあんたも化け物だわ。人間の癖に魔法なんて恐ろしいもの平気で使ってるし」
「とばっちりだろっ……」
はぁ、と魔理沙はため息する。おばさんはついに痺れを切らしたのか魔理沙にまでトマトを投げつけた。白黒の魔法使い衣装がトマトに染まる。
魔理沙は二度目のため息をして怒りすらも感じていない様子だった。女の子なのにあそこまでやられてすごい心の余裕の持ち主だ。俺なら若干傷つくね。そういう意味では彼女を尊敬する。
魔理沙は頬についてしまった砕けたトマトの果肉を指でとって舐めとりこちらに近づく。俺とリリーを一瞥して言った。
「お前はリリーを連れて戻れ。ここは私がなんとかしてやるから」
おー、今日の魔理沙は一段とかっこいい。と、悠長に感想を述べている場合ではない。
「リリー行こうか」
「は、はい……」
立ち上がらせようと掴んだその手はとても弱々しく彼女の心境が痛いほど伝わってきた。だけどここで嘆いても仕方ない。このトマトおばさんを殴ってリリーの気がすむなら殴るけど彼女はそんなこと望まないだろう。だって彼女は優しいから。
それにここは魔理沙が任せてくれるんだ。普段はあれだがこういう時に頼りがいがある。ありがとう魔理沙。
⬛
ひとまず家に帰ってリリーが落ち着くのを待つとお風呂に入れることにした。色々と話したいことはあるだろうけどさすがにトマトまみれのままというわけには行かない。
脱衣場まで案内して彼女の汚れてしまった服の代わりに俺の寝巻きを用意して、彼女の裸を見るわけにはいかないのでその場から離れようとした時だった。
「あの……」
袖を掴んで俺を引き留めるリリー。
「よければリリーと一緒にお風呂に入ってくれませんか」
「ふぇ!?」
変な声が出てしまった。
まてまて、風呂に誘われたからってこういうときくらい煩悩を抑えろ俺の思考。シリアスぐらい真面目にやればか野郎。リリーだって理由があってのことだろう。
「一緒にお話したいことがあるんです。後からでも言いんですけど、落ち着いた今ならすぐにでも言いたいことを言える気がしますから……」
「リリー……」
リリーの瞳は朧気で、しかし何かを言いたげで。掴まれた袖を振りほどくことも容易だがそうもできなかった。
はい、結論的に言うとハイとしか頷けませんでした。この事に決して他意はない、あくまでリリーのお話に付き合うためである。
というわけで一緒にお風呂に入ることになった。もちろん俺はタオルで下半身を隠して、リリーは全身を隠している。しかしそれでも魅力的な柔肌が丸見えなわけでどうしても若干興奮を覚えてしまっていた。
軽く体をお湯で洗い流した後、お互いに背中を重ねて風呂に入る。一人暮らしの風呂場なので湯銭は狭く、膝を曲げて入っても二人の背中はしっかりと密着していた。
リリーの背中は背中越しからでもわかるほどに感触は滑らかで小さく、水分を含んだロングの髪が二人の背中に挟まれているのがわかる。
この状況で落ち着くことなんてことはできず、体がお湯以上に熱くなっている気がした。承諾はしたものの今にでも頭がクラってしそうになる。
「初めてだったんです。春告精のリリーが人間にあそこまで嫌われるのは」
おもむろにリリーが口を開く。リリーの話を聞くと意識がはっきりしてきた。
「あれはリリーは悪くないよ。リリーはみんなに春を伝えていただけなのにあんなことするなんて」
非道だ。大袈裟な誇張なのかもしれないが、どうしてもあのおばさんに怒りを抑えきれない。
あいつめ……今度あったらこっちもトマトを投げ返してやろうか、しかも完熟のやつで。リリーを泣かしたぶん、魔理沙に投げたぶん、俺を怒らせたぶんとで、ついでに回りを騒がせたぶんで大量に投げてやろう。
……いや、今この話は止めよう。今はリリーに耳を傾けないと。
「そうでもないです。妖怪と人間は本来お互いの存在を知っているだけで、関わってはいけない関係なのです。リリーが少し変わった立場ってだけで、あの人がリリーにした行為はある意味正しいのです。
考えて見てください、例え無害だろうと妖怪を一切認めない村や人間から見れば今回の出来事をどう思いますか?」
「……それは」
……リリー、それは自虐的な質問すぎるよ。
その答えがリリー自身にとって辛いものなのに、なぜ俺に言わせようとするんだ……。
「本当ならリリーは春告精の役目を捨てて大人しく故郷に籠ってれば良かったんです。それが正しかったんです。でも……でもですね、正しいことよりもリリーには大事な想いがあって、だから今年も春告精のリリーはこの村に、あなたに春を伝えに来たんです」
「その理由……聞いてもいいか?」
「それは、その。……あなたに会いたくて、あなたの顔が見たかったから」
途端にリリーの歯切れが悪くなる。
でも近距離で話していたため聞き逃すことはなく、その言葉を聞いて思わず可愛らしいと思い、俺は意識するよりも早くリリーを後ろから抱き締めた。
「え……どうして」
リリーの肩は震えており、力を加えれば砕けてしまいそうなほどに儚げに感じた。抱き締めたせいでさっきより官能的な感触が伝わってくる。
「俺たちが関わってはいけない関係とかそんなの事ないよ。会いたいって思えば会えばいい。俺はいつだってリリーの事歓迎するよ」
「う……っ」
「へ?」
「うわあああああんっ!!」
へっ!? ちょっ!? まてまて、まさか泣いて抱きついてくるとか思ってもいなかったんですけどっ!!
リリーのあんなところやそんなところが当たってくるし、しかも場所によっては生で触れてる部分もある。おまけにリリーの何気に大きい。どこが大きいとは言わないけど、胸大きい、言っちゃった!!
くっ……ひとまず落ち着け俺。ここでリリーに変な事したら小さい閻魔に八つ裂きにされると思え、でも小さいとか言ってる時点で半殺しにされるかも。
「お、おいリリー?」
「だってあなたにそう言われるとすごく嬉しくてっ、嬉しいはずなのにっ、リリー、涙が……涙が止まりません」
「ああ、そう、だよね……」
しゃっくりしながらリリーは今の気持ちを吐露する。
妖精だけどリリーは女の子だもんな。よほど心に来るものがあったのだろう。
しかしこの状態はヤバイ。具体的に言うとぷにぷにとした二の腕が俺をぎゅうと抱き締めてきて、彼女のたわわに実った二つの実が胸元に押し当たっている。鼻血が出てしまいそうなほど心地良い状況に必死に耐えながら俺はリリーの頭を撫でてやる。リリーの涙がこちらの肌を濡らしてきてほんのちょっとだけ冷たい。
リリーの涙を手で拭ってやると少し嬉しそうに微笑んだ。こうすれば喜んでくれるのだろうと思って今度は頬を撫でてやる。
しばらくして泣き止むと、リリーはこちらの手を両手で優しく包んできた。
「リリー……?」
呆然として俺はその光景を眺める。一体何をするのだろう……と思っているとリリーは掴んだ俺の手の指を口に加えてきた。
「ちょっ……リリー……」
「リリーからのお礼です。受け取ってください」
そう言ってリリーは口の中に含んだ指を舌先で舐め始める。彼女の口内の生暖かい空気が指を撫でて、舌先で舐められると何とも言い難い痺れが襲ってきた。
ぺろっ、ちゅるっ……ちゅばっ、れろれろ
お湯に浸かっているというのにゾクゾクとした心地よい感覚。滑りとした舌ざわりと湿った口内の空気が指を弄りまくってくる。お礼にしてはやってはいけないことをしている気がした。
と言っても病みつきの快感を手放せるはずもなく俺は懸命に指を舐めてくれるリリーを見つめる。
「れろっ、んろっ……あなたの指ちょっとしょっぱいですけれど癖になりそうです、れろれろっ」
そう言うリリーの頬はほんのりと上気している。恥ずかしいからなのか興奮しているかどうかは分からないが、さっきよりも舌使いが激しくなり粘液がまとわりつく。
指が舐められる快感を存分に味わったところでようやくリリーは口から指を話した。付着した唾液が指を銀色に輝かせているのが湯気が漂った中でも分かった。
しかしこれだけでは物足りない。これ以上はよくないとは分かっているものの男である俺は官能的な興奮を禁じ得なかった。
欲求を押さえれなかった俺は彼女の唇を不意に奪う。リリーがびっくりしたような声を上げるが唇を防いでいるため外に響くことはなかった。キスを理解したリリーは俺を拒否せずに積極的に唇を押し付けてくる。
ちゅっ……ちゅちゅっ、ちゅぷっ……
俺も負けじと唇を押して応戦する。ぷるぷると潤った唇がこちらの唇に張り付いて離れない。リリーの唇の隙間から息が漏れでて俺の頬を撫でてきて少しくすぐったい。体温が上がって体が火照ってきているのが分かる。その理由が風呂に入っているだけだからではないと分かった。
いつまでもキスをしていたい幸せを感じながらも肺が限界を訴えてきて唇を離した。
「……リリーはすごく幸せなのです。ずっと思ってた人に嬉しいことを言われて、キスまでして。あの、もっかいキスがしたいです」
リリーに言われずとも俺は自ずと自分からリリーにキスをしていただろう。それほどまでに俺はリリーを求めていた。
麗しい唇に艶のある頬。長い金色の髪に華奢で小さな肩。唇を重ねてリリーの愛おしいすべてのところを手で撫でていく。
こちらの手つきにくすぐったそうにリリーはふふっと一瞬唇を開いてそこに俺は舌を挿入していく。
口内の至るところを舐め回してリリーの舌を見つけると舌どうしを絡め合わせて蹂躙していく。
びちゃっ、ちゅるるっ、れろっ、れろれろっ、ちゅぱちゅぱっ
少し苦しそうにするリリーに嗜虐心を燻られて、逃がさないように両肩を抱き締めて引き寄せる。んー、んーとリリーが声にならない声を上げるがそれを無視して口内を弄ぶ。
さすがに自分にも限界がきて唇を離すとリリーは頬を膨らませて文句を言ってきた。
「リリーが苦しそうにしてるのにそれを知っていじめてくるなんてひどいです! 思わずキスで窒息するかと思いました!」
「ごめんごめん。だってリリーが面白い反応するからつい」
「面白くなんてないです。もういいです。今度はリリーの方からあなたにキスします。さっきは不意を突かれたのでやられましたがこれでもリリーは妖精なのです。覚悟してくださいね?」
あ……何だか嫌な予感がする。と思って頃にはもう遅く今度は立場を逆転させてリリーの舌がこちらの口内へと浸入してくる。
俺がやったことを全てを実行されて肩を勢いのまま強く抱き締められて、口内を舐め回されたあと舌を乱暴に絡めてくる。妖精と人間のスペックの差は圧倒的で、リリーが勢いを落とさずに舌を動かしてくるのに対して俺は早くも呼吸の限界が訪れてきた。
「リリー、謝るから……っ」
「だめれすっ、このままもっとっ……もっとあなたを感じていたいれふっ……」
どうやっても聞いてくれそうにない。それならばと俺はさっきからリリーの体に巻かれたタオルがはだけそうになっていたので乱暴に脱がず。リリーは驚くがまだキスをやめない。もちろん俺もこれで終わらせるはずもなくあらわになった乳房を揉んでいく。余裕がないので多少強く揉んで応戦する。リリーの胸を大きく見た目通りの弾力をしていた。肌触りも心地よくこの状況でなければいつまでも揉んでいたい気分になるほどだった。
「んうっ! ぅぅ、ちゅるっ……ぃやっ、お、おっぱぃ……ちゅぷっ、れろろっ」
弾力の良い胸に手のひらを沈ませたり揉んだりするがそれだけではキスがやむことはなかった。喘いではいるものの負けじと唇を離さないでいる。
ならばと胸を揉むだけではなく乳首の部分を捏ねたりつまんだりすると、リリーは背筋をピンっと跳ねさせて唇を離すとそのまま後ろの壁に身を預けた。リリーの秘部に位置するお湯だけが若干滲んでいるのが分かる。リリーはというと息を荒げてまるで力が抜けたように肩をだらんとさせていた。
「き、キスとおっぱい触られただけなのにイっちゃいました。リリーがまた負けちゃいましたぁ……」
「いや勝ち負けの勝負じゃあないんだと思うんだけど……」
俺は酸素をようやく取り戻すがそれだけで終わるには至らなかったことに気づく。股間は熱を秘めて勃起していた。
リリーと体を重ねたい衝動が押さえられなくなる。
「え? 急に近づいてきてどう……んひゃああっ!」
俺は唐突にリリーの太ももと腰の辺りに両手を回して立ち上げるとその勢いで彼女を持ち上げる。リリーはびっくりして俺の肩に腕を回すと、俺はこの体勢を固定するためにリリーの背中を壁に張り付けた。欲求に身を任せて彼女の濡れた秘部に亀頭をあてがうと一気に挿入させる。敏感に反応した膣内が思いきり肉棒を締め上げてきてリリーの驚きがまじった嬌声がお風呂場に響き渡った。
「んうっ~! び、びっくりしたじゃないですか!」
「ご、ごめん。リリーとどうしても繋がりたかったから」
性欲に負けたのは認めるが言ってることも事実だ。
「もう……でも私もこうなりたかった。いいですよ、私にあなたのおちんちんください」
膣壁がヒクヒクと震えて肉棒に絡み付いてくる。俺は快楽に腰を砕かれそうになりながらも肉棒の抜き差しを開始する。奥に挿入させるたびに俺とリリーの体が密着してこちらの胸板が彼女の豊満な胸を圧迫させる。
「ひゃあっ、んうっ、あんっ、リリーの中であなたのおちんちんどんどん熱くなってるっ、ああっ」
お風呂場なのでリリーの喘ぎがよく響いて、俺の耳を伝って官能を刺激してくる。リリーの声を聞きたくてさらに激しく腰を動かす。ぬちゃ、ずちゅっ、と愛液に濡れた膣内を肉棒が擦る音が何とも嫌らしくそれだけ快楽を貪っているのが理解できる。
お湯から上がってしまったため次第に冷めてくるが体を重ね合うのと興奮ですぐにまた体が熱くなっていく。
「ああっ、好き、大好きっ、あなたのことを愛してます、だからキスもっ、んんっ」
リリーが蕩けた表情でこちらを見つめてくる。自分も愛してるよ……という意味も込めて腰は動かしてそのままに唇を重ねる。そのキスはすぐに激しいものへと絡み互いの舌を蹂躙して貪っていく。
ずちゅっ、じゅぷっ、ずぷぷっ
れろっ、れろろっ、ちゅぱっ、ちゅるるっ
性器が絡み合う音と激しくキスが繰り返される淫らな水音が交わり、リリーの嬌声にも負けないくらいの大音量で響き渡る。
リリーの甘い声と嫌らしい水音。ただえさえリリーと身を重ねることで限界まで体が火照っているというのにその音を聞くとなると脳がショート寸前まで追いやられる。
つまり何が言いたいかと言うと快感を得すぎてもうすくで果ててしまいそうだった。もう終わりが来ると思うと惜しく感じてしまい、俺の体と壁に挟む勢いでリリーに向かって腰を穿つ。
「あんっ、と、とてもあなたに愛されてる感じがしてっ、んんっ、あなたのことがもっと好きになりそうです、ああっ、ふああっ!」
「俺も、愛してるよ、リリーっ……!」
途端に大きな痺れが体中を駆け巡ると俺はその勢いで彼女の膣奥を亀頭で思いきりキスさせる。その快感の衝撃で精液が彼女の膣内で溢れだした。
「んうああっ~~! あっ、あああっ、で、出てます、あなたの精液が私の中で……」
快感が強すぎて力を抜かれてしまいそうになるが何とか意識を保ってリリーを支える。
膣内の締め付けは未だに強く肉棒を離さない。やがて全ての精液を出しきると、快楽が体から少しずつ消えていって次第に熱が冷め始めた。
俺たち二人は抱き締め合いながら余韻に浸る。
成り行きで一緒に風呂に入ることになったものの、今この時を俺は幸せに感じていた。
⬛
「ただいま~」
今日の仕事が終わって部屋に戻る。するとそこには春告精のリリーが当たり前のように居座っていた。まるで俺の帰りを待ってくれたかのようにすぐに返事を返ってくる。
「おかえりなさい~。あなたが帰ってきてくれなくてリリーは寂しかったですよ。さあお仕事でお疲れでしょう、たくさんリリーに甘えてくださいね」
あの日からしばらく過ぎてリリーが俺の家で過ごすことになってからしばらくこの調子だ。
居間で座って待っていてくれたリリーに胸に顔を埋めて抱き締めてもらう。柔らかい肉つきと脳が蕩けそうな甘い匂いが一度に味わうことができる最高の時間だ。仕事で溜まった疲れがたちまち抜けていく。
リリーが頭を撫でてくれた。
「ふふっ……リリーは今すごく幸せです。これからも一緒にラブラブ~ってしましょうね」
そう言われていつの間にか眠気が訪れているのが分かった。どうやらリリーに抱き締めてもらうことで気が抜けてしまったらしい。それを察してかリリーは膝枕をしてくれて俺はそこに頭を寝かせる。
後頭部にはリリーの太ももの感触。目の前ではリリーが愛おしそうな表情をしていた。俺はそんな彼女の柔らかい頬を撫でてやるとやがて視界が霞んでしまうくらいに眠くなる。
俺は彼女に寄り添ったまま深い眠りについた。