いがみ合っていた二人の巫女がエロ双六を通じて強制的に仲良くさせられる話 作:ハヤ0313
賽は投げられた
「ちょっと雁戸! なんてマス当ててんのよ……!」
「境さん! 名前! 名前! ペナルティが!」
「はにゃあああああっ⁉」
「あぁぁもう……!」
そこは八畳ほどの広さを持った和室だった。
光源は四方に置かれた行灯のみで、とても現代とは思えないほどに非文明的で薄暗い。
そんな室内には二人の少女がいた。
ブラウンを基調としたセミロングヘアを毛先に行くにつれてグレーに染めているという特徴的な髪をした巫女服姿の少女。
背は一般的な女性と比べて少々低いものの、出るところは出ていて引っ込むところは引っ込んでいる、所謂メリハリがついている体。しかし幼く見える顔つきのせいでトランジスタグラマーに見えなくもない。
その目元は自信と強気に溢れており、口調にもそれは反映されていた。
黒のミディアムヘアをハーフアップにした巫女服姿の少女。
背は一般的な女性と比べて少々高い。しかしその胸は少々控えめで、見方によっては少年にも見えるものの、その美しい髪と豊満な臀部のせいで見間違える事など起こりようが無い。
その目元は穏やかさと優しさに溢れているが、口調は割とそうでもない。
二人の少女がどうしてこのような所にいるのか、何をしているのか。
それを解説するには少し時を遡る事になる。
□□□□□□
栂峰も雁戸も、両家は由緒正しい神社を営む家系である。
だが、それぞれの神社は少々普通ではなかった。
無論、通常の神社のような行事や儀式を行ったりはする。するのだが、そうではない一般的でない事こそを重要視し、取り仕切る神社であったのだ。
その目的は鎮護。
土地に染み付いた邪気を払い、この地に葬られた荒ぶる神を鎮めるという使命を持っていた。
通常の神社でも表面上はそういった儀式を執り行ってはいる。だが、両神社ではそういった表面だけをなぞっているのではなく、もっと本質的な、
その儀式を行う日が、今日この日であったのだ。
「はっ! 雁戸の田舎モン、足引っ張らないでよね」
「栂峰さんこそ、邪魔しないでくださいね」
なお、両家の仲は悪い。
この儀式が執り行われ始めた頃はそうでも無かったのかもしれないが、栂峰の家の周辺が開発され始めてから拗れ始めた。
曰く、
「雁戸とかマジ田舎モン」
「栂峰とかマジ都会かぶれ」
とまぁ、そういう仕様も無い理由であった。
だがそうは言っても鎮護の儀式は執り行わなければならない。
故に儀式の周期である六十年に一度だけ両家は歩み寄り、共に事に当たるのだが、まぁ、両親から相手の家の悪口を小さい頃から聞かされ続けてきた少女達がいきなり仲良く出来る筈が無い。
そういう事もあっていきなりいがみ合い始めたのである。
「……へぇ? 大口叩くじゃない地味子」
「奇天烈なのは髪だけじゃなく頭の中もでしたか」
いや、単に二人とも良い性格をしているだけなのかもしれない。
「で?アンタ、儀式の内容は知ってるんでしょうね?」
「
「……ふん」
二人が居るのは両家の中間にある地点。
大地の力や穢れの流れ、いわゆる龍脈が交差する場所で小規模な祭殿が建っていた。
「母様も行けば分かるとしか言わないのよね。雁戸は?」
「忌々しい事に栂峰さんと似たり寄ったりですね」
「……今から聞いてくるってのもカッコ悪いし」
「カッコ悪くなってきてくださって構いませんよ?」
「むっかつくわねアンタ……」
共に女子高生というまだまだ未熟な身ではあったものの、この大儀式を遂行するにあたり現当主がそれぞれ境と由乃を指名した。
そんな未成年であるからして、この山中までは両親の車によって送り届けられた。故にここで踵を返し両親を問い詰める事は可能ではあったものの、それは二人のプライドが許さなかった。
「……じゃ、行くわよ」
「置いていきますよ栂峰さん」
「って先に行くんじゃないわよ雁戸!」
祭殿の中はシンプルであった。
八畳ほどの板張り、四方には火の灯っていない行灯、中央には……。
「……何これ」
境がそう言うのも仕方が無かった。
中央の二畳分を占めていたのは、
「スゴロク、ですか……?」
由乃が行灯に灯をつけると、その全貌が明らかになった。
それには幾つものマスが描かれており、一つの駒があり、サイコロが置かれている、いわゆる絵双六であった。
普通のものと違うのはその巨大さと、
「なにこの真ん中のガラス盤みたいなの」
「そもそもマスに何も書かれていませんね」
その二つの点であった。
「……いや何よコレ」
「スゴロクですね」
「んなもん見りゃ分かるわよ!」
「安心しました、これで分からなかったらどうしようかと」
「直球でバカにしてくるわねアンタ……!」
なお意味が分からない状況下でも、二人はある意味平常運転であった。
「え、なに、これで遊べってこと?儀式が?」
「いや……えぇ、いや……えぇぇ?」
が、戸惑ってもいた。
何せ六十年に一度の大儀式である。魔術的な、呪術的な儀式だと気合を入れて来てみれば双六である。意味が分からない。
「雁戸、この際素で聞くけどマジで何も聞いてないの?」
「いや、マジで何も聞いていませんね……」
これでも戸惑っているのだと続ける由乃。それを聞いて境も唸る。
「はぁ。カッコ悪いけど母様に聞いてくるか」
「私もそうしま……え……?」
「……雁戸?」
二人で溜息を吐き、祭殿を出ようとした。出ようとしたのだが、
「開かない……!」
「はぁ? ……え、ちょ、開かないんだけど!」
「そう言ってるじゃないですか……!」
二人が開けて入ってきたその入口が、固く閉ざされていた。
鍵など掛けられていなかった両開きの扉が、どれだけ力を入れてもビクともしない。開けた時は年月を感じさせないほどスムーズに開いたその扉が、一切動かない。
無論二人は焦った。きっと何かが挟まったのだろう、きっと間違って鍵をかけてしまったのだろう。そう思ったが、何かが挟まったような感覚も無い程に扉はピタリと閉じているし、鍵の類は一切無い。
「う、そでしょ……⁉」
「バカな……」
あまりにも奇怪な現象に、二人の頬を冷や汗が伝う。
驚愕の呟きの後には静寂が広がり、ジジジ、と蝋燭が燃える音が微かに聞こえた。
扉の前で立ち尽くす境と由乃。
「っ⁉」
「っ⁉」
そんな二人の背後で、青白い光が灯った。
それは少しの変化であったものの、この異常空間に於いては劇的な変化に間違いなく、二人はビクリと体を跳ねさせつつ振り向いた。
「なに、あれ……」
「文字……?」
その光源は双六の中央にある正方形のガラス盤。そこに浮き上がった文字こそがこの部屋に新しく現れた光であった。
そこには、
『儀式をするにはボクで遊んでね!』
「…………」
「…………」
なんとも力の抜ける文言が書いてあった。
「…………」
「…………」
境は頭を抱え、由乃は眉間に皺を寄せた。
「……いや、あのさ」
「……えぇ、何と言いますか」
今、いがみ合っていた両者の心は一つとなった。
即ち、
『そんな儀式があるか!!』
□□□□□□
「はぁ⁉ いや、はぁぁああっ⁉」
「えぇぇぇぇ……」
境はキレた。
由乃は呆れた。
何度も言うが六十年に一度の大儀式である。であるが故に、そんな双六遊びが儀式だなんて信じられなかった。しかもガラス盤にはえらいフランクな感じの文言。そりゃキレるし呆れるのである。
「え、マジで? こんな山奥まで来て? スゴロク?」
「えぇぇぇぇ……」
「あーもう雁戸! 戻ってきなさいよ!」
「いたっ、ちょっ、栂峰さんっ、分かった、分かりましたからっ!」
呆けていた由乃をビシバシと叩いて再起動を促す境。由乃は密かに復讐を誓った。
そんな二人の目の前で、ガラス盤の文字はゆっくりと変化する。
『ルール説明』
『サイコロを振って、その数字の分だけ駒がマスを進みます』
『それぞれのマスには課題があります』
『その課題をこなしていってください』
『課題をこなせなければペナルティがあります』
『二人で協力してゴールを目指してね☆』
「うっっっっざ!」
「うぜぇ」
両者の心は再度一つになった。☆とか超鬱陶しい。
だがそんな二人をよそに、倒れていた筈の駒が
……それはまるで磁石でも仕込まれているかのように、二人が慣れ親しんできた
「……どう、思う?」
「言われてみれば、というレベルですが確かに力を感じますね」
遊戯盤に手をかざし、
だが、二人はそれ以上動かない。
動けなかった。使命を帯びているとはいえ、うら若き少女達である。この未知の儀式に対して恐れを抱くのは当然の事であった。
だが、
『一定時間のプレイ放棄を観測しました。
青白かった文字の表記が、赤く染まった。
「ひぁっ⁉」
「っ⁉」
直後、二人にペナルティとやらが襲い掛かった。
「なっ⁉ なにこれなにこれっ⁉」
「っぅあっ⁉」
その瞬間、両者共に急に内股になり股間を両手で押さえつけた。
まるで、
『クリトリスを振動させます』
『プレイを開始してください』
目を白黒させるしかなかった二人はその文言を見た。見てしまった。そして自分の身に何が起こっているのかをしっかりと認識してしまった。
「っく、ぁ、ぅ……っ!」
「ぅあ、ん、あ……っ!」
認識してしまったが故に、未知が既知に変わってしまった。
何故このような現象が起きているのかは分からない。分からないがきっとプレイを開始しなかったからだ。だから、だけど、何故、何故こんな。
二人の脳内は混乱の極みにあったが、既知となってしまったために、状況は刻一刻と悪化していく。
「んんんぅぅぅぅぅ……っ!」
「はっ、くぅぅぁぁ……っ!」
即ち、意味不明ながらも局部への連続した刺激に対し、快感を感じ始めてしまった。
境も由乃もぺたんとその場に座り込んでしまい、刺激を受け続けている股に手を差し込んでどうにか振動を止めようとする。
しかし、何の原理か分からないその現象はその程度で止まる事がなく、寧ろ時間経過と共に振動が強まっていく。
「栂峰、さん……んぁっ!」
「なに、よ……ひぅっ!」
与えられ続けている刺激に耐えようと背を丸め込ませ、それでも尚収まらない振動に翻弄されかけながら、由乃は境に訴えかける。
「サイコロ……!」
「っ!」
まるでそこで待機していたかのように、境の傍にはサイコロがあった。
何がどうなっているのかは分からない。分からないがコレが儀式だというのならば、これが開始しないペナルティだと言うのならば……。
境は飛びつくようにサイコロを握り、それを投げ放った。
「はっ……!」
「ふぅ……っ」
それと同時、股間を襲っていた振動が無くなる。
「……なんっ、なの!」
「知りませんよ……!」
息を切らせ、僅かに汗を浮かばせながら何かに対して憤る二人。
何せ、
「何がクリっ……ク……なんなの!」
少女としての恥じらいが全て言い切る事を躊躇させたが、クリトリスである。クリトリスがぶるぶる震えさせられたのである。
「こんなのがっ! こんなのが儀式だって言うの⁉」
「全面的に同意ですね……!」
そんな彼女達をよそに、駒はサイコロの目の分だけ進む。
その出目は一。
「なんなの! 意味分かんないわよ!」
「……栂峰さん」
「なにっ⁉」
言いたい事を境が言ってくれている分冷静になれたのか、由乃は遊戯盤へと視線を落とす。
「サイコロ、栂峰にしては上出来です。ですが……」
「あぁもうアンタも言い方イラつくわね! ……あ」
駒は既に一マス分進んで静止しており、ガラス盤に再度文字が浮かび上がろうとしていた。
今度は何が起こるのかと身構える二人であったが、
『儀式終了までお互いの事を名前で呼び合う事』
「…………」
「…………」
二人は最初ポカンとしていたものの、次第に苦虫を噛み潰したような顔へと変化していった。
「……え、嫌なんだけど」
「……ごめん被りたいですね」
何せ下の名前呼びである。
それではまるで仲が良いような感じではないか、そう二人は思った。ついでに絶対に断る、とも強く思った。
「……そもそもアンタの名前ぇぇぇぇええええっ⁉」
「栂峰さっ、ぁぁぁぁああああっ⁉」
課題をこなせなければペナルティがある。それを忘れてしまっていた二人は、その罰を身を持って体験する事になる。
「アンタ呼びっ、も! ダメなわ、けぇっ⁉」
「くっぅぅぁぁ……! 名前、名前ですっ!」
解消するにはお互いを名前で呼び合うしかない。それしかないのだが、二人はいがみ合ってばかりで自己紹介すらしていなかった。
故に、名前を呼びたくても呼ぶ事が出来ない。
「あぅぅぅっ……! 境! 境よっ!」
「きょう、さん……あ、止まりましたね」
「アンタの名前ぇぇぇぇぇっ!」
由乃が境の名前を呼んだ途端、由乃のクリトリスを苛んでいた振動がピタリと止まる。
……そんな由乃は境へ視線を流し、
「ちょおおおおっ! アンタの名前教えなさいよっ!?」
まるで面白いものを見るかのように黙りこんだ。
「は、ぅ、んんんんっ! ちょっとアンタ、ひぅっ!」
「いやー、面白いものですね」
「全っ然面白くないわよっ! んぁっ!」
顔を赤く染めて股間に手を突っ込む境。だがやはり振動が止まる事はない。それどころかどんどん振動は強まっていく。
「ぁぁぁあっ! これ以上はっ! マズイからぁっ!」
「何がどうマズイのですか?」
「分かってて言ってんでしょおおおおおおおっ!」
ニヤニヤとしながら境を見やる由乃。良い性格である。
「んんぃぃぃぃっ! 名前っ! 名前名前名前っ!」
「それが人にモノを頼む態度ですか?」
「あぁぁぁあああもうムッカつく名前教えてください雁戸さんっ!」
ここぞとばかりにマウントを取ろうとする由乃。
この辺りで勘弁してやろうかと思い自身の名を、
「……もう暫く見ていたい気もしますが」
「ばかああああああああっ!」
鬼である。
「ふふ、由乃です」
「あああ由乃っ! 由乃由乃由乃! バカ由乃ぉっ!」
魂からの叫びと共に、境の下半身を責め立てていた振動が止んだ。
後には荒い呼吸を繰り返す境の姿があり、それを由乃はニマニマと眺めていた。
「アン……んんっ! 由乃、覚えてなさいよ……!」
「もう忘れましたよキョ、ウ、さん?」
「ああああもうムカつくムカつくムカつくっ!」
クリトリスに残る妙な感覚から逃れようと地団駄を踏む境。
だがその一方で由乃も局部に残った感覚を隠そうとしてモジモジとしていた。
「……あぁもう、何なのこの儀式」
「……意味不明なのには同意ですね、本当に」
ペナルティがクリトリスへの刺激だの、名前を呼び合うだの、大儀式とは思えないものばかりで、二人は再び困惑した。
これではまるで、
「コイ……雁……由乃、と仲良くしろって言ってるようなもんじゃない……!」
「境さんと、いいえ、雁戸と栂峰で仲良く事に挑め、という事なのでしょうか」
「ちょっとっ⁉」
苗字呼びに驚愕する境。
思わず制止の声をかけてしまうが、
「……なるほど」
「……お互いの事を指さなければ平気、って事?」
「そのようですね」
「マジで意味分かんない仕組みね……」
そう言いつつも境は納得もしていた。
これが大儀式かどうかは甚だ疑問ではあるものの、大層な術式が組まれているのは間違いない。そうでもなければクリトリスという極部に対してあのような限定的な、正気を疑うような術が為される筈も無い。
「……意味は分かんないけど、やるしか、ないようね」
「……えぇ。どうやらコレを終わらせなければ外にも出られないようですし」
だから、認めざるを得なかった。
これこそが大儀式なのだと。
二人は背を正し、巫女服を整え、盤面に向き直る。
「さ、雁……由乃、振りなさい」
「私が振るのですか?」
「一時休戦、交代交代よ」
「……それもそうですね、では」
互いへの悪感情を一時的に封じ込め、本格的に儀式に向き合う事となった。
何処かへ転がり落ちていた筈のサイコロはいつの間にか二人の傍にあり、それに対して気味の悪さを感じたものの、由乃はサイコロを放る。
その出目は三。
「……駒が勝手に動くのキモいわね」
「……念動力か何かでしょうか」
ずず、ずず、と大して重くもない筈の駒はゆっくりと一マス一マス進んで、三つ目で静止した。
それと同時に、ガラス盤に文字が浮かび上がる。
『お互いの好きな食べ物を教え合おう!』
「…………」
「…………」
二人は苦虫を噛み潰した。
「……あのさ」
「……言わなくても分かります」
こんなのが続くのか、そう言いたかった。
だがこれは儀式なのだ。一族の誇りをかけて向き合うべき儀式なのだ。いかに内容がくだらなかろうが大儀式なのだ。
「……前回やったの、当主様……曾お婆様達よね」
「……こんな儀式、確かに伝えたくないですね」
いがみ合っている両家が、実はこんな仲良くなるためとしか思えない儀式をしていたなど、言える筈がない。
それ故に、行けば分かるなどと曖昧な言伝をしたに違いないと、二人は結論付けた。
「……チーズケーキよ」
「は?」
「だから好きな食べ物よ! そこに書いてあんでしょうが!」
由乃は何を言っているんだコイツ、というような目線を送ったが、境は儀式に従おうとしただけである。
境は赤面しながらキレた。
「ほら! ア、由乃のも!」
「あぁ……あまりにも可愛らしいもので驚愕していただけです」
「一々噛み付かないと気が済まないのア、あぁもう名前呼びめんどくさい! 由乃由乃由乃っ!」
少しでも油断するとアンタ呼びが出そうになる境。そうしてしまうと再びクリトリスが振動してしまうため必死である。
「……マドレーヌです」
「はん! 田舎モンくさい中途半端な好物ね」
一々噛み付くのはお互い様である。チーズケーキもマドレーヌも似たようなものである。
『合格。サイコロを振ってください』
直後、ガラス盤にそのような文面が浮き上がり、思わずゲンナリする二人。
「…………やるわよ」
「…………えぇ」
だが、大儀式を遂行するために、二人は再度立ち上がった。
『握手しよう!』
「ぐんぬぬぬぬぬぬ!」
「随分力んだ握手ですねぇ……!」
『頭を撫で撫でしよう!』
「撫でさせてあげるわ、とっととやりなさい」
「ぷっ、撫でられたいのですか?」
「ア、由乃の方が身長高いからよ! あーなるほど、由乃ちゃんはヨシヨシされたいんでちゅかぁー?」
「ハゲるまで撫でてあげますよ……!」
『ハグしよう!』
「ぐんぬぬぬぬぬぬ!」
「どこにそんな力が……! ぐぬぬぬぬ!」
『両手を恋人繋ぎしよう!』
「体格差が何だってのよ……!」
「押し潰してあげますよ……!」
『嫌いなモノを教え合おう!』
「ア、由乃」
「栂、境さん」
『初体験はいつだったかを教え合おう!』
「ま、まだ無いわよ……!」
「小学三年生の時ですかね?」
「!?!?!?」
「術を初めてまともに扱えるようになったのは……あれ? 境さんどうしたんですかそんなに慌てて。何を想像したんですか?」
「べっべべべべべ別に慌ててなんかないわよ!」
「へぇ?」
「……でも小学三年の時とか凄いわねア、由乃」
「え、あ、え? えぇまぁ、はい……?」
『お互いを褒め合おう!』
「…………」
「…………」
「……まぁ、美人じゃない?」
「……とても可愛らしいと思いますよ」
『唇にキスしよう!』
「は?」
「は?」
課題が少々怪しくなってきたと思った矢先、とんでもないものがガラス盤に表示された。
キスしよう、ならば幾らでも逃げ道はあった。それだったら足にキスさせる事だって出来た。考え方がアレ過ぎる。
だがしかし、唇に、と指定されている。そしてキスとは唇で行うものだ。故に、それは、ちゅーである。マウストゥマウスのちゅーなのである。
「ちょっと雁戸! なんてマス当ててんのよ……!」
「境さん! 名前! 名前! ペナルティが!」
「はにゃあああああっ⁉」
「あぁぁもう……!」
故に境はキレた。名前を呼ばなければならないというペナルティさえも忘れてつい苗字で呼んでしまった。無論クリトリスが震えた。
「由乃由乃由乃っ⁉ なん、で! 止まらないの⁉」
だが、境の極部の振動が止まる事は無かった。
「そんなっ、うぁぁぁぁぁあっ!」
「き、境さん……⁉」
思わずへたり込み、またもや股の間に手を差し込むが、無論止まる事はない。
儀式におけるパートナーの異変に由乃も慌てる。今までは改めて名前を呼べばペナルティは解除された筈なのに、今回それが適用されない。
「んんんぅぅぅぅぅぅっ!」
境の切羽詰まった様子に青褪める由乃。
いくら気に食わない相手だろうと、同い年の少女である。今起きているものが如何に耐えれないものなのかは充分に理解している。そして、他人の前で、その、果ててしまう事など、恥ずかしさの極みである事など充分に理解している。
普段の由乃ならば、このまま境が果ててしまうのを肴にして楽しむ事も出来たのかもしれない。
だが、知ってしまった。短い時間ではあったものの、境という人物の人となりを知ってしまった。知ってしまったからには、多少の情も湧いてしまった。
だから、何とかしなければと、思ってしまった。
「ん……!」
「んぅっ⁉」
境の顎をくいっと上げ、自らの唇を、相手の唇と合わせた。
目を見開く境と由乃。
境は急の事態に、由乃は自分の行いに、それぞれ驚愕していた。
「っ!」
「っ!」
故にその接触は一瞬。
互いに退き、唇を手で塞ぐ。
「なっ、なななななななななっ!」
「……こ、これで課題クリアですね」
ごしごしと袖で口元を拭う由乃。
あわあわと動転し続ける境。
「……あそこの振動、無くなりましたか?」
「あ……」
提示された課題と言えど、あまりにも唐突なキスに意識が持っていかれていた境であったが、股間の振動が無くなっている事に遅れて気付く。
「……感謝しろとは言いませんよ」
「言ってるようなもんじゃない……」
そっぽを向く由乃であったが、その耳元は赤く染まっていた。
「……初めてだったのに」
「……私もですよ」
境の呟きは小さなものであったが、それは部屋の中に確かに響き、追随するように由乃も小さく呟く。
「……由乃」
「なんですか」
「……キスの事は置いといてさ、あんがと」
境の感謝に目を見開く由乃。
「ど、どうしたんですかいきなり⁉」
「感謝しろって言ったの由乃じゃん……」
由乃にとってそれは憎まれ口だった。だが境は素直に感謝を告げた。
嫌い合っている筈なのに、そんな言葉が出てくるとは予想だにしていなかった由乃は大いに慌てた。
「で、ですがっ」
「はん! あたしの感謝なんて超貴重なんだから、受け取っておきなさいよね!」
そう言ってそっぽを向く境であったが、その耳元は赤く染まっていた。そんな様子を見て、由乃の動転も収まっていく。
「……ふん」
「……っ」
キスの衝撃に慌てていたのは少しの間だけ。
二人は表情を引き締め、盤面に向き直る。
「境さん」
「なによ」
「恐らくこれからもこのような課題が課される事でしょう」
「……でしょうね」
大儀式、と言うにはあまりに俗過ぎる内容ではあるが、こなさなければならないのだ。
「分かってるわよ。キスだって何だってしてやるわよ」
「……頼もしい事です」
「由乃も躊躇するんじゃないわよ」
「えぇ勿論」
ここに至って、ようやく二人は大儀式に臨んだ。
両者の間にあった蟠りは、多少和らいだかのように見えた。
そうして境はサイコロを転がして、
『服を脱がせ合おう! 儀式が終わるまでずっとそのままだよ!』
「境さん!」
「わ、私が悪いんじゃないわよ!」
和らいだ空気など無かった。
暫くギャーギャー騒ぎながら服を剥ぎ取り合ったのだった。
「はぁ……はぁ……」
「く……ふ……」
互いに全裸になり……下着も服判定だった……大事なところを腕で隠した体勢の二人。
ちなみに息が切れているのは騒ぎ過ぎたからである。
「服を着ていた時から思っていましたが……」
「……なによ」
「何ですかそのワガママボディは……!」
由乃の視線は境の胸に注がれていた。
その胸部は豊満と呼ぶほかなく、頂点を腕で隠してはいるものの、いや隠しているからこそ腕から溢れそうになっており、境が恥じらって身を屈めれば屈めるほどにその胸はこぼれ落ちそうになっていた。
「う、うっさいわね! 大っきくて嫌な事も結構あるんだから!」
「はぁ⁉ それだけ魅力的なものぶら下げておいて!」
「男からの視線がいやらしいのよ!」
「……あー」
顔を真っ赤に染めてそう訴える境。その言葉に込められた本気具合に由乃は思わず意気を削がれた。
「あたしだってここまで大っきくなりたくなかったのに! 勝手に、大っきくなってくんだもん……」
「今女性をだいぶ敵に回しましたよ、主に私を」
が、再度キレた。
「由乃くらいスラッとしている方が綺麗なのに……」
「そ、そのいきなり褒めてくるの何なんですかもう……」
が、再度意気を削がれた。
皮肉屋の由乃としては、悪態をつきながらも素直な境を持て余し気味であった。つまり照れさせられる事が多い。宿敵とも呼べる相手なのに、どうにもやりにくかった。
「……さ、境さん。次のサイコロどうぞ」
「こっ、この状態で⁉」
だからそれを隠すように話題を転換した。
しかし振られた境としてはたまったものではない。なにせサイコロを振るためには手を用いなければならない。腕を使わなければならない。体を隠しているこの腕を使わなければならないのだ。
「えっと、由乃に譲」
「栂峰家でありながら自分の言った事を放棄するおつもりで?」
「うぐ」
交代交代でやると言ったのは境である。
つまり退路が絶たれた。
「うぅぅ覚えてなさいよぉ……」
「もう忘れました」
「このぉ……」
恨み節をあげながら、下半身を隠していた手でサイコロを手にする境。
その拍子に顕になったそこから薄らと茂みが現れ、それを目の当たりにしてしまった由乃は思わず目を逸らした。
「あと何マスあるのよぅ……このっ! あ、やった!」
その出目は六。まだ先は長いものの、一気に駒を進める事に成功する。
ずず、と相変わらず見た目に反した重い音を鳴らしながら駒は移動を開始した。
「次は軽いのだと良いんだけど……」
「何が来ても大丈夫なよう構えておきましょう……」
無論二人とも期待などしていなかった。寧ろ諦めている節さえある。あるのだが、
『乳首当てゲームをしよう!』
「…………」
「…………」
絶句した。
「…………」
「…………」
すぐに復帰する事が出来なかった。
『十分以内に終わらない場合ペナルティです』
「っ⁉」
「っ!」
すぐに復帰した。
境も由乃もガバっとお互いを凝視し、何か言葉を発しようとして、口をパクパクさせ、ついには揃って溜息を吐いた。
「あーもーやるわよ、やればいいんでしょお……」
「分かり、ましたよ……」
そうして、互いに向き合い、隠していたものを曝け出した。
「……綺麗で羨ましい」
「だから境さんはそうやって……!」
境がそう呟くのも無理がないほどに、由乃の胸は美しかった。
確かにサイズは小さめであるものの、薄桃色の乳輪もその先端も、胸全体に比べて黄金比とも言える形をしており、欲情という気持ちを抱く前に芸術品を見るかのような気持ちにさせるものであった。
「……境さんのも、魅力的じゃないですか」
「あぅ」
仕返しとばかりに由乃はそう呟く。
たっぷりとしたその胸は確かに大きい。大きくはあるのだがそこに下品さは無く、重力に逆らうかのように前にツンと突き出しており、少し色素の薄い乳輪もその先端も、豊満な胸を彩るパーツとしては特上のものであった。
「じゃあ……始めるわよ」
「私のをやるんですかっ⁉」
両手の人差し指を掲げ、由乃に近付く境。無論由乃はたじろいだ。
だが、心の準備をする時間など無い。それが両者共に分かっているからこそ、境は指を近付け、由乃は体を硬くした。
「と、とりゃー」
ところで乳首当てゲームなるものは、普通は衣服の上から当てるものである。見えないからこそゲームとして成立するのである。
然るに、完全に見えている状況下では、
「……っ!」
ぷにゅり、と由乃の乳首に人差し指が真っ直ぐに突き立てられた。
「わ……人の乳首なんて初めて触った……」
「初めて人に触らせましたよ!」
もう用は済んだとばかりに後退して胸を押さえる由乃。その顔は赤かった。
「なんか、その」
「……なんですか」
「すごくえっちぃ感触だった」
「言うなバカっ!」
素直さをこんなところでも発揮しないでほしいと由乃は心の中で叫んだ。
恨みがましく境を睨んでいた由乃であったが、何かを吹っ切ったように人差し指を掲げた。
「ちょ」
「ふふふふふ、今度はこちらの番ですよ」
「嘘でしょ⁉ もうやったじゃん! ……って嘘ぉ⁉」
境がガラス盤を見やると指示はまだ消えていなかった。
ならばこれはお互いに乳首を当てなければならないという事なのだろう。即ち境の乳首も当てられなければならないのだ。
「さぁ覚悟してくださいね境さん」
「ちょ、ちょおっと待とうか由乃!」
「待ちません。時間制限があるんですよ」
ジリジリと近付く由乃。ジリジリと後退する境。先程とは立場が完全に逆転していた。
「胸を張りなさい、境さん」
「い、嫌よ! なんかその言い方が嫌!」
「どう言えっていうんですか……ほら早く」
「うぅぅぅぅぅぅ」
タイムリミットは刻一刻と近付いてきている。
「……境さん?」
それが分かっていても境は抵抗を止めない。
問答無用で乳首を当てに行こうとした由乃であったが、境の様子に疑問を抱く。何であろうがやればいいのだろうと諦め、覚悟を決めていた筈だと。
「どうしたんですか、時間が……」
「……由乃、あのね?」
「な、なんですか」
だからこそ、上目遣いで見上げてくる境に対して疑問を抱く。何故今更、と。
「ちょっと……胸、敏感なの」
「……えっと」
「だから、その、優しく、して……?」
「っ」
顔を赤く染め、目を潤ませ、不安そうに見上げてくる美少女。いくら嫌っているとはいえ、由乃は少し
だが、
「うるさい」
「あぅんっ⁉」
ぷすっと豊乳の頂点へ指を突き刺した。鬼か。
「あ……や……指、どけてぇ……っ」
だが、境の反応は激烈だった。
クリトリスへの刺激には耐えていたのに、いや耐えていたからこそ劣情が幾らか残っていたのだろう。そこに敏感な乳首への刺激が加わり、思わずしおらしくなってしまうほどに乳悦を感じてしまっていた。
が、それを引き起こしてしまった由乃は非常に動転した。
たかが乳首に指を押し当てただけなのに、なんだこの感じようは、と。というか感じ過ぎでは、と。この指をどうするべきなのだろう、と。
「はぁん……っ」
だから、由乃は我に返った瞬間に指を離した。離したが、その際に乳首をカリッとしてしまい、境から悩ましげな声がまた上がる。
「は……く……由乃、このやろぉ……」
苦々しくこの事態を引き起こした相手を睨みつけるも、まだどことなく先程の余韻が残っているようで艶かしい境。
そんな姿に、不覚にも由乃は同性ながらもドキドキしてしまった。
「敏感だって、言ったじゃない……!」
「す、すみません……そこまでとは思っていなくて」
「……分かればいいのよ」
だからだろう、皮肉屋の筈なのに由乃は素直に謝ってしまう。それに対して素直に引き下がる境。
憎むべき栂峰の家の者なのに、憎むべき雁戸の家の者なのに、今では二人共、相手に対してもやもやするような気持ちを抱き始めていた。
「……クリア。ほら、由乃」
「……はい」
その気持ちの正体が分からないままに、儀式は進む。
由乃がサイコロを振ると、出目は五であった。
「ん、調子良いわね」
「えぇ、これでマス目がまともならば良いのですが……」
サイコロの調子は良かった。良かったのだが、そこの課題が良いとは限らない。
だが、
『十分間ハグしよう!』
「お、当たりじゃん」
「さっきと同じのが来ましたね」
キスだの乳首当てゲームだのに比べればあまりにも普通と言えるような内容であった。
追加の文面も無い。十分という時間は課されているものの、それ以外に指定されている条件は無い。
「さ、どうぞ」
簡単な課題ならばさっさとこなしてしまおうと、由乃は両手を広げた。
「うっさい、そっちが飛び込んでくんのよ」
が、境も両手を広げた。
「……私の方が身長高いですし、そっちが来るべきです」
「……あたしの方が包容力あるし、そっちと違って」
「へぇ?」
「あぁ?」
気持ちに余裕が出てきたのか、またマウントの取り合いが始まってしまった。
最初のハグは二人共渋々ながら歩み寄っていたというのに、また意地の張り合いになってしまった。
なお、裸であるという事に関しては既にどうでも良くなっている。
「おっぱいが何だって言うんですかタッパですよタッパ」
「はー? コレが母性の象徴って言われてるの分かんないのぉー?」
なお、両者共に内心ではそれぞれの主張に納得はしている。隣の芝生は青いのだ。だが認めるわけにはいかない。
その後も仕様も無い言い合いが続いたものの、お互い一切引かずに平行線のままであった。
「……いや、いいからやろうよもう」
「……そうですね」
が、時間の無駄だと悟って二人はその距離をゼロにしていった。
「っ!」
「っ⁉」
が、胸と胸が合わさり、背中に手を回した瞬間、境は、由乃は、悟った。
「ふ、ふーんコレを十分? 楽勝じゃない!」
「え、えぇ! 余裕ですね!」
互いに目を逸らしつつ、楽だと、余裕だと言い張る二人。
だが、実際には非常に焦っていた。
柔らかい、とにかく柔らかい。
しっとりとした肌が、まるで吸い付いてくるよう。
衣服越しでは気にならなかった鼓動が、ダイレクトに伝わってくる。
お腹もくっついていて、互いの陰毛さえも相手に触れてしまっている。
押し潰された胸が、ヤバい。
押し当てられた乳首が、ヤバい。
柔らか過ぎるものの中心にあるものが、少し硬さを感じるそれが、異様に気になる。
思わず背中に回した手に、力が入る。
なんか良い匂いもする。
これを、十分間。
「…………」
「…………」
正直耐え切れないと思った。
だが先に弱みを見せるわけにはいかない、と二人は自然と黙りこむ。
そうすると、今度は互いの鼓動が気になってくる。互いの体が気になってくる。互いを、意識してしまう。
「……なんか、言いなさいよ」
「……そっちこそ、何か無いんですか」
顔は逸らしたまま、ぽそりと呟く。そしてまた無言。
「……嘘でしょ」
「何が……嘘ですよね」
堪えきれなくてチラリとガラス盤を確認すると、そこには残り七分と記載されている。
しっかり残り時間がカウントされているのも驚きであったが、まだ三分しか経っていないというのが現実逃避したくなるほどの驚きであった。
「……んぅ」
「……んっ」
思わず、抱き締めあったままモジモジとしてしまう。身動ぎをしてしまう。
その度に少し汗ばんできている体が擦れ合い、その度に柔らかさを再認識し、その度に乳首が擦れ合い、その度にピリッとした
「っ!」
「っ!」
残り六分。
どこに目をやれば良いのか分からない状況ではあるものの、密着している体からは尋常じゃない情報量の何かを感じてしまう。
例えば、何故か硬くなり始めている乳首とか。
「……ん」
「……く」
残り五分。
例えば、その硬くなりつつある乳首が柔らかいものに包まれた感触が悪くも無いとか。
「…………」
「…………」
残り四分。
例えば、心音がやけにうるさい事とか。
「…………」
「…………」
残り三分。
例えば、いつの間にか目を合わせていて、互いの頬が上気し始めている事とか。
「…………」
「…………」
残り二分。
例えば、顔が異様なまでに近い事とか。
「…………」
「…………」
残り一分。
例えば、少し頭を動かせば、唇同士が触れあいそうな事とか。
「っ!」
「っ!」
ガラス盤の文字が切り替わった瞬間、両者は飛び退いた。
互いの心中には一つの事だけ。
『あのまま抱き合い続けてたらヤバかった……!』
故に、即座に口を開く。
「ふ、ふん! 楽勝だったわね! あー、何かあついなー」
「え、えぇ! 余裕でした! 何か空気が篭ってきましたねー」
コイツにだけはバレてはならないと、内心を隠しつつ二人は強がった。無論その様子に互いに気付く事はなかった。余裕が一切無かった。
「さ、さぁ。境さんの番ですよ」
「ま、任せなさい! とりゃっ!」
そして、賽は投げられた。