いがみ合っていた二人の巫女がエロ双六を通じて強制的に仲良くさせられる話 作:ハヤ0313
「……」
「……」
軽く互いの唇を啄んだ後、二人は硬直した。
「……あの、さ」
「……はい」
おずおずと、境が切り出した。
「普通に、その、する時って」
「……どうすれば良いんでしょうね」
そうなのである。
この二人の経験と言えば、大儀式の際に双六の盤面に従ったあの時のものしかないのである。
故に、こうやって面と向かい合った際、流れをどう持っていけばいいのか、イマイチ分からない。
……というかそもそもキスをしたいという話だった筈なのに、当然のようにその先をスる流れになっているのだが、共に違和感を感じていなかった。
「と、とりあえず、さ」
「……ベッド、行きましょうか」
境の視線がそちらに向かい、由乃はそちらへと導く。
ぽすん、と柔らかな感触が二人の臀部に伝わる。いつぞやと同じ体勢なのに、全く異なる状況。
とくん、とくん、と互いに鼓動が早まっていく。いつぞやと異なり、誰に促されるわけでもない状況。
それでも、あの時と同じように、互いの目から視線が外れる事は無い。
「由乃……」
「境さん……」
だから、また境の左手と由乃の右手が触れ合い、少しずつ、絡み合っていく。
「んっ……」
「ちゅ……」
だから、互いを見つめたまま、唇同士が重なった。
あの時と同じ、けれど決定的に違うキス。唇と唇を軽く押し付け合うという単純なもの。
カラン、と麦茶の中で氷が溶ける。
「ん……んぅ……ちゅ、ぅ……」
「はっ……ん、ちゅ……ん……」
それを皮切りに、キスが、始まった。
何度も、何度も互いの唇を啄ばみ、角度を変え、何度も、求め合う。
絡み合っていた手も、片手では足りないとばかりに反対側の手も指を一本一本絡め、きゅ、と軽く握り締められる。
「んぅ……っは、由乃……ん……」
「ちゅ……境、さん……んん……」
互いの名を呼びながら、互いの目を見つめながら、だんだん離れている時間が減っていく。
吸い、食み、唇が相手のもので染まっていく。
「っ!」
「っ!」
奇しくも、その先へ進んだのは同時であった。
ちろり、と唇の隙間から舌を出した瞬間、触れたのは唇ではなく相手の舌。思いがけない感触が伝わってきて驚愕したのは一瞬。そのまま舌同士の愛撫が始まる。
「ぁっ……ふぁ、んぅ……」
「んむぅ……ん、んっ……」
ぬるぬるして柔らかいものが絡み合う。やっている事は舌同士が重なり合ったまま円を描いているだけなのに、その感覚が堪らなく甘くて、行為を止める事が出来ない。
「ん、ちゅぅ……ぁむ、んっちゅ……」
「はっ、じゅ……んんっ、ちゅぅ……」
だから、もっとその甘い感覚を貪りたくて、舌を絡み合わせたまま、深く、唇を重ねた。
ふにふにとした柔らかい感触、ぬるぬるとした艶かしい感触、それらが異常に噛み合って、脳が多幸感で染まっていく。
今もその目は相手から逸らされる事なく、真正面から向き合っている。故に、瞳がとろん、としていく様や、頬がどんどん紅潮していく様が丸分かりで、相手が興奮しているという事実が更に自身の興奮へと繋がっていく。
「んんっ、ぷぁっ! はぁ、んぅ……」
「ちゅぅ、っは! はっ、ぁ、ん……」
息継ぎで唇が離れると、つぅ、と互いを繋ぐ儚い橋がかかる。だがそれが消えてしまう前に、また互いを求め合う。
終わりが無い。
「んむぅっ……んちゅ、ちゅ、ちゅぅぅ……」
「はぁんっ……んっ、ちゅっ、んちゅぅ……」
いくらでもしていたい。
もっと気持ちよくなりたい。
でも、両手が絡み合ってるから、このままキスし続けるしかない。だから仕方ない。
「っぷぁ! 由乃、待、んむぅっ」
「っは! 境さん……んっ、んぅ……うん?」
「は……はっ……待って、待ってってば」
「待ちません、んー……」
「待ちなさ、んんんっ、こら、んんっ!」
だが、境が制止の声をあげる。が、由乃が止まらない。もっとキスをしたいのだと、止まらない。
口を塞がれてしまっているから制止を目で訴えるが、返ってきたのはまだ足りないという目。
その目線に境は心が、身体が熱くなってしまう。
「ふんっ!」
「あうっ⁉」
が、頭突きで黙らせた。
「もう、もうっ⁉ 由乃! がっつき過ぎ!」
「だって……」
「なによ!」
「……普通にこうやってするのが、なんか、こう、すごく、良かったんですもん」
「うぐっ」
誰に促されるでもない、二人だけの秘め事に由乃は脳をやられていた。
それを目で、言葉で形にされ、境は狼狽える。皮肉屋の由乃が素直な気持ちを全面に出してくるのが妙に嬉しくて、狼狽えてしまう。
「だから、境さん……もっと……」
「ええいエロ由乃っ! 待てっ! ステイっ!」
「ぅぅぅ」
なおもキスをせがむ由乃を断腸の思いで止める境。
「あのね? 聞いて?」
「ヤです」
「あぁもう! 私だってもっとしてたいわよ!」
「なら」
「だから……!」
境は、繋がっていた手を無理矢理解き、
「もっと、こういうのも……しようよ」
そう言って、ジャージのファスナーを下ろした。
その下から現れたのは下着に包まれる事なく無防備になった豊乳。
思わず固まってしまった由乃をよそに、下も脱ぎ捨て、何も纏っていない、生まれたままの姿となる境。
「ね……? 由乃……しよ?」
恥ずかしさからか、興奮からか、顔を真っ赤に染め、由乃を求める境。
固まっていた由乃は一瞬フラッとよろめいたものの、次の瞬間には纏っている邪魔なものを乱暴に脱ぎ捨てていた。
「ふ、ん……」
「ぁっ……」
ふに、と大きく柔らかい感触が、小さくも柔らかい感触が手に伝わってくる。
下から持ち上げるようにして、胸の形を確かめるようにして揺らされると、互いの唇から息継ぎのためではない吐息がこぼれた。
「由乃の……綺麗……」
「境さんのだって……」
誰もが羨む豊乳がたぷたぷと揺れる。誰もが羨む美乳がふるふると揺れる。
その動きに釣られて、もう大きくなってしまっている突起もぷるぷると揺らされ、シンプルな愛撫であるのに、互いの胸の奥に乳悦が発生していく。
「は、ぁ……んっ、ちゅ……」
「んっ、ふ……ぁ、んぅ……」
だがやはり、先程まで溶け合っていた唇が切なく、互いの胸を愛撫したままに、再度唇が重なり合った。
「んんっ、ん……ぁ、ん……」
「ちゅ、ぅ……ふぁ、ぁ……」
唇を、舌を絡め合わせた先程と同じキス。だがそこに胸への刺激が合わさる事によってこぼれる吐息が多くなり、うまく溶け合う事が出来ない。
だから目線で訴える。もっとシたい。足りない。もっと深く。
「んふぁぁあっ!」
「んぅぅっ!」
にも関わらず、二人は胸を包んだまま指先で、きゅっ、と乳首を摘んだ。
その途端、境の目尻が、由乃の眉が、とろん、と溶ける。
「はぁぅ……! んちゅ、んんん……っ」
「ふぁぁ……! はぁんっ、むぅ……っ」
きゅむ、きゅむ、と乳首が捏ねられる。
境は由乃の乳首の弾力を楽しむように、由乃は境の乳首を可愛がるように、力加減は異なるものの与えられる快感が等量になるように、既に起き上がっていた突起を捏ね回す。
「んっんっんっんっ! んむぅっ、ん……っ」
「んんっ、ぁ、んっ! ちゅぅ、んぅ……っ」
僅かに摘む度に、僅かに力を入れる度に、僅かに転がす度に、唇の端から切ない吐息が漏れていく。
ぴくん、ぴくん、と瞼が動き、それでもなお目線は逸らされない。唇が塞がれているのだからと、瞳同士の会話を止めない。
気持ちいい。気持ちいいね。もっと。ずっとしていたい。そういった無言のやり取りが続く。
「んぁっ! 由乃ぉ……もっと……」
「んんっ! 境、さん……」
だが敏感過ぎる乳首を持つ境は早々に唇を合わせる事が出来なくなった。だが、だから、もっとしてほしいのだと甘い声で直接由乃にねだる。
「……ちゅ」
「はぁぅっ!」
それを受けて由乃は、もっとキスしていたいという思いを抱きつつも、可愛い境のおねだりに耐えきれず、豊乳の頂に口付けを落とした。
「っ! ぁっ、やぁっ……!」
それと同時にとす、と境が柔らかいベッドに押し倒される。
驚いたのは一瞬の事で、乳首から伝わるねっとりとした感覚に身を捩らせる。
「んっ、んん……! はぁ、ん……っ!」
これからたっぷり可愛がってあげますね、と言わんばかりに由乃は硬くなっている突起を舌の上でコロコロと嘗め回す。
無論その間も柔肉は熱が冷めないように、寧ろ昂ぶるようにとふにふにと揉まれている。
「んぁっ! ぁっ、んん、ん……っ!」
ちゅぽ、と乳首を解放したと思いきや、こっちもですよと反対側に吸い付く由乃。
咥えられた口の中ではにゅるにゅると舌が乳首に絡まって、境は思わずぴくん、と身体を跳ねさせる。
「ちゅぅ……っ。境さん、声、聞かせてください」
「ぁ、や、恥ずかし、ぁ、ぁあ……っ!」
口に指を当て、淫らな声を出さないようにする境であったが、その手を由乃が奪い去り、何も隠せなくなってしまう。
抵抗しようと思えばいくらでも出来るのに、それをしない境を見て由乃は優しく微笑み、また唇を胸に落とした。
「はぁ、ぁぁ……っ! んぅぅ、んぁ……っ!」
部屋の中に境の声が静かに響く。
それと同時にちゅむ、ちゅむ、と胸が愛撫されている音が混じり、二人の興奮が更に高まっていく。
「んぅっ、んっ、ぁっ、あっ、あんっ!」
何度も乳首を吸われては解放され、吸われては舐め転がされ、時には吸われずにちろちろと舐め上げられ、その度に境は敏感に反応する。
そんな境を上目遣いで確認しながら、どうすれば悦ぶのかを由乃はつぶさに観察する。
「ぁぁあっ……! それ、きもち、いっ……!」
だが観察するまでもなく、境は素直にそれが気持ちいいのだと主張する。
「んんんんんぁぁああっ!」
だから胸を絞るようにして揉み上げ、先端を吸いながら口内で滅茶苦茶に舐め転がした。
「はぁぅぅうっ! んんっ! んぅぅぁああっ!」
乳首どころか胸全体が性感帯な境は、全身をくなくなと捩りながらその快感を受け入れる。
その反応が嬉しくて、由乃の愛撫にどんどん熱が入る。
「あっ! 由乃っ、ゆのぉっ! んっ、んぁああっ!」
胸の先端という小さな場所から大きな快楽が流れ込んできて、それを処理したいのかもっとして欲しいのか、由乃の頭を抱き締める境。
由乃はそれを後者の方だと捉え、ピンッ、と硬く腫れ上がったそれを甘噛みして新しい感覚を送り込む。
「んんぁっ! それっ、つよ、はぁぅぅうっ!」
かみかみと硬質なもので乳首を挟み込まれると鋭い快感が発生し、そんな苛められた可哀想な乳首を今度はにゅるにゅると舐めしゃぶると優しい快感で癒されて、落ち着いた頃にまた吸われ、噛まれ、舐められ、種類の違う快感に境は翻弄される。
「あんっ! ぁぁ、あぁぁ……! んんんぅっ!あぁっ!」
それが、反対側の乳首にも施される。
だが今まで苛められていた乳首は、今度は指を使ってくにくにと責められて休まるという事が許されない。
「由乃っ! ぁぁあっ! 由乃ぉっ!」
只々ひたすらに甘く幸せな快感で胸が溶けそうになる境。
もっと溶けろ、もっと硬く、もっと柔らかく溶けてしまえと夢中になる由乃。
「あぁっ⁉」
だから由乃は、もっと蕩けさせられる場所に手を伸ばした。
「待、って……!」
「っ⁉」
だから境は、力を振り絞って、ぐるん、と体勢を入れ替えた。
「……境、さん?」
今度は由乃が押し倒されているような姿勢。思わぬ反撃に事を急ぎ過ぎたかと思う由乃であったが、
「あたしもっ、あたしもシてあげたい……!」
「なに、を……⁉ ひぁっ! 境さん⁉」
熱に浮かされた境は、興奮しきった状態で由乃の脚の間に陣取り、その根元に口付けた。
「んんっ! 私はしなくても、あんっ!いいですからぁっ……!」
「あたしがしたいのっ! んちゅぅ……!」
「はぁぅっ!」
由乃が特に感じる性感帯、クリトリスが境の口によって覆われた。
「んんんんんっ! んぅぅあっ! あぅんんんっ!」
力が入ってしまいそうになるのを必死に堪え、完全に脱力した柔らかな舌全体を使って、由乃のクリトリスを下から上へ何度も舐め上げる境。
局部をザラザラとしつつも柔らかいもので何度も撫でられ、その度にくぐもった嬌声が響く。
「れろ……由乃の声も、聞かせてよ……ちゅぅ……っ」
「あんっ! そんなのっ、ぁぁぁああっ!」
素直な境と違い声を出す事を拒む由乃であったが、クリトリスが吸引される事によってその頑なな口はすぐに開く事となった。
「それだめっ、だめですっ! んんぁぁあっ!」
髪を乱す事を一瞬躊躇するも、境の頭に手を当てて止めようとする由乃。
だが境は気にする事無く、逆にその両手を捕らえ、もっと気持ちよくなれと只ひたすらに由乃の敏感な場所を吸い続ける。
「あぁっ、んっ、んっ、ぁあっ、んっ、あんっ!」
ちゅ、ちゅと何度も吸われ、腰がぴくぴくと動き、捕らえられた両手をぎゅっと握り返す由乃。そんな反応が嬉しくなってしまい、上目遣いで蕩けた顔を確認する境。
「んんぁああっ! それっ! だめですからぁっ!」
だから、どんな愛撫が好みなのかを由乃がやったのと同じように探りだす。
吸う事を一時止め、今度は硬く尖らせた舌先でクリトリスの周りをなぞるようにして周回する。
「あぁっ! ああぁぁっ! だめっ! だめぇぇっ!」
びくびくびくっ、と由乃の身体が跳ね、強すぎるのかと反省する境。
ならば、と今度はぴんぴんぴん、と舌先で何度もクリトリスを弾く。
「あぁぁあぅぅぅっ! んんんんんんぅぅっ!」
今度は柔らかくした舌で何度も何度も舐め上げた。だが何をやっても由乃は身体を跳ねさせる。表情からは痛みや苦しみは見えない。
「はぁぁあぅっ! んんっ! ああぁぅぅっ!」
ならば全部気持ちいいのだと境は判断し、特に反応の良かった愛撫を、クリトリスを吸い上げる事を選択した。
ちゅ、ちゅ、と何度も軽く吸い付いて、ちゅぅ、ちゅぅぅ、と何度も強く吸い付く。
強く吸い上げる度にぐぐぐ、と腰が持ち上がり、ソレが近いのだな、と由乃の淫臭にクラクラとしながら考えつつ吸う事を強めていく境。
しかし、
「あああああっ! やぁっ!
その一声で、行為を中断する。
「……きもち、よく、なかった?」
見るからに感じていたからこそ、もっと感じてほしくてしていたのに、そうではなかったのかと青ざめる境。
身を起こし間近で見つめると、そこには今にも泣きそうな表情で、だが劣情に駆られている表情の由乃。
「ちが、違うんです……」
「どう、したの……?」
おろおろとしながら由乃の額にこつん、と額を重ねる境。
少し冷静になり、少し事を急ぎすぎたかと反省したのだが、
「好きです……!」
「んむぅっ⁉」
急な告白と同時に抱きしめられ、急に唇を奪われた。
「んんっ! 由乃っ⁉ んんぅっ!」
「ちゅぅっ! すきっ! んんんっ!」
何の前触れも無かった、無かった筈だ、なのに何で、好き、なんで。境の脳内が混乱でいっぱいになる。
「境さんっ! んちゅぅぅっ! っぷぁ! すきっ、だいすきっ!」
「由乃っ⁉ んっむぅううっ! んんっ! ちょ、まって!」
イきそうになっていた筈……なのに、今は目を潤ませながら好きを連呼する由乃。
これではまるで儀式の時のようだ、と一瞬思う境であったが、様子がおかしい事に気付き制止の声をあげる。
「きょうさん……」
「ど、どうしたのよ由乃……」
熱に浮かされつつも何かを目で訴える由乃に問いかける境。
「だめ……だめなんです……」
「何が……」
ダメと言いつつも、視線が離される事が無い。ダメと言いながら、ぎゅっと身体を抱きしめる事を止めない。
何かの、何か重要な予兆を感じ取る。
心臓が、その何かを期待して跳ね上がる。
視線が、溶け合いながらも強い意志を持つ。
「好きが……止まらないんです……」
「由乃……」
「境さんの事を考えただけで、胸が張り裂けそうなんです」
「…………」
「境さんに触れられるだけで、切なくなるんです」
「…………由乃」
「境さんの事が、好きで、好きで、だから」
涙を溢れさせながら、想いを溢れさせる由乃。
「あの儀式のせいだって、この感情がただの刷り込みだって、勘違いだって、分かってるんです」
「由乃」
「でも、でも好きなんです! 境さんの事が、好き、で……だから、一人だけで、私は、嫌で、だから……」
「由乃、聞いて?」
儀式の際の課題。形だけ互いを好きだと叫んだあの情事。
好きだという言霊が由乃の中に浸透したが故に、この感情は勘違いなのだと、ただ身体がそう反応しているだけの反射なのだと、だから通じ合っていないままに一人で達するのが寂しくて仕方ないのだと、由乃の頭の中がぐちゃぐちゃになって言葉が支離滅裂になる。
「あたしは、由乃が好き」
だが、境の言葉に思考が停止する。
「切掛なんてどうでもいいじゃない」
「でも……!」
「最初はあんなだったけど、あたしも、今は由乃の事、好きよ?」
「でも……」
「でもでもって、ワガママちゃんめぇ」
「うぅ……」
だんだんと、時間差でゆっくりと境の言葉が由乃へ染み込んでいく。
「好きでもない人と、大好きな人とじゃなければこんな事出来ないわよ」
即ち、好きなのだと、好き合っているのだと。だからこの感情だって、許されていいのだと。
「寧ろこっちは付き合ってるつもりだったんだけど」
「……え?」
「なのにそれが勘違いだったーだなんてショックよ」
「え、あの、あの……!」
由乃の言葉が、好きな人の言葉が、嬉しくて、泣いていた事など忘れてしまった。
「だからさ、由乃」
「……はい」
「好きよ」
「っ! 私、もっ! 好きですっ!」
だから、想いがようやく通じ合った。
「ちゅ、んぅ……ちゅ、ちゅ……」
「ん、んむぅ……ちゅむ、ん……」
最初の睦み合いをやり直すかのように、由乃が押し倒されたままに唇を重ね合う二人。
境の手は由乃の髪を撫でながら、由乃の手は境の頬に添えられたまま、先程と僅かに、けれど決定的に違うシチュエーション。
「ん、ちゅっ……! ふふ、由乃、好きよ」
「ふぁ、ぁ……境さん、大好き……」
「……あの、由乃さん? 素直過ぎない? 大丈夫?」
完全に蕩けきった表情で境を見やる由乃に、いつもの面影が一切無く、若干心配になる境。
「だって……好きで、嬉しくて……」
「っ! ちゅぅっ! んんっ、じゅ、ちゅぅぅっ!」
「んむぅっ⁉ んっ……んぁ、んんっ、んんん!」
が、心配など消し飛んだ。
もう止まらない。止まる必要など無い。
乱暴に、だが慈しむように由乃の口内が犯される。歓喜に打ち震えながら、ただ愛おしくて境のキスを受け入れる。
それでも足りず、互いの背に跡が残る程にぎゅっと抱きしめ合う。
舌がどろどろになるまで絡み合わせ、それでもなお足りないと、限界まで距離をマイナスにする。
「んぅっ!」
「んぁっ!」
だが足りない。
もっと足りない。
故に、もっとどろどろになるために、もっと溶け合うために、唇と同じくらいに、それ以上に熱を持ったそこに手が伸びた。
「あぁぁっ! んっ、んむぅっ! んんっ!」
「あぅっ! んぅっ、んんっ! ちゅぅっ!」
くちゅ、と今まで鳴る事の無かった粘ついた音が響き、互いの中に指が入り込んだ。
どろどろに溶けきった膣内。乳首の、クリトリスの、唇の、舌の愛撫で完全に発情しきった膣内。そんな場所に想いの通じ合った指が入り込んだ。
受け入れたその瞬間からきゅうきゅうと指を締め付け、とくとくと指の隙間から愛液が溢れ始める。
身体が重なり合った状態で動かし難いなど関係無いとばかりに、荒々しく、しかし愛情を込めて相手の甘い場所を探っていく。
「んんんっ! んぁっ! ぁ、ぁあっ! んんっ!」
「んむぁっ! はぁっ! あっ、あっ! んむぅ!」
その間も唇は離れない。愛しい人とずっと繋がっていたいとばかりに離れない。息継ぎをする瞬間だけ、嬌声をあげる時だけ寂しくなって、その寂しさを埋めるようにまた繋がり合う。
「好きっ、好きだよ由乃っ!」
「境さんっ! 大好き、大好きですっ!」
くちょ、くちょ、と蕩けている場所がかき回され、だんだんと唇を重ねる事が困難になっていく。
だから愛を叫び合う。
愛が届くたびに、愛を受け取るたびに、それに連動するようにお腹の奥から快感が昇ってきて、勝手に腰が揺らめいて身体の密着がより深まっていく。
「由乃ぉっ、ちゅぅっ! んぁぅっ!」
「きょうさ、んんんっ! ふぁぁっ!」
でも止められなくて、我慢できなくて、嬌声を口内で交換しながら、脳に直接響かせながら口付け合う。
「あぁあっ! んっ、んっ、んっんぅっ!」
「んああっ! あっ、んっ、んっむぅっ!」
既に甘いスポットなど見つけていた。
くちゅくちゅくちゅ、と下の方から淫猥な音が鳴り響いていて、ベッドシーツに染みが広がっていっている。
だがそんな音など、そんな事など二人には届いていない。
ずっと見つめあっていたい。ずっとキスしていたい。ずっと溶け合っていたい。ずっと気持ちいいのが続けばいい。
由乃が好き。
境さんが好き。
「んんんんぅぅぅぅっ‼」
「んんんぅぁぁぁぁっ‼」
だから、想いが昂って、絶頂した。
「はぁんっ! んんっ! んむぅっ! ぁっ!」
「あぁっ! ふぁっ! んちゅぅっ! んっ!」
だから、まだ足りない。
境のザラザラとしたところが、由乃のぷっくりとしたところが、由乃の指で、境の指で、ぐちゅぐちゅとかき乱される。
そこが抉られるたびに気持ちよさにキスを邪魔されて、でもそこがどうしようもなく切なくてもっと欲しくて、両立が出来なくて、でも口付けを止めない。
もう言葉なんて要らない。
目線だけで想いは伝わっている。
気持ちいいね。
気持ちいいです。
もっと?
もっと。
ここ?
ここですね?
好き。
大好き。
由乃。
境さん。
唇が、胸が、腕が、お腹が、脚が、指が、全てが重なり合って、全てが溶け合って一つになる。
もう他の音なんて聞こえない。
脳が好きで埋まっていく。
「ゆのっ! あああっ! すきっ! すきぃっ!」
「きょうさんっ! んぁああっ! だいすきっ!」
だから、あまりにも気持ち良過ぎて離れてしまう。離れたくないと思っても離れていってしまう。
だから、声に出して気持ちいいのだと、大好きなのだと叫ぶ。
「はぁぅぅうっ! ゆのっ! いこっ! ねっ!」
「あぁああんっ! はいっ! いきま、すぅっ!」
限界は近い。
終わってしまう。
だから悔いの残らないように、相手から目を逸らさない。
「やぁっ! あっ、そこっ! いくっ! ゆのっ! すきだよっ! すきっ! あああぁぁあっ! ゆのぉっ! ああっ! ぁあああああっ‼」
「んんんぁぁああっ! だめっ! やだっ! やだやだぁっ! すきっ! すきすきっ! きょうさんっ! ああぁあっ! んぁああああっ‼」
同時に頂に昇り詰める。
快感で、切なさで、好きで涙をぽろぽろとこぼしながら、二人の身体が一緒にぴくん、ぴくんと波打つ。
ぴったりと重なり合って、最後の最後までぎゅぅ、と抱きしめ合う。
余韻がいつまでも残る。だからそれを逃さぬように、また唇が触れ合う。
何度も、何度も啄み合って、最後まで視線は絡み合っていた。
「……どろどろになっちゃったわね」
「……見事にぐちゃぐちゃですね」
身体も心も落ち着いた頃、互いの身体とベッド上の大惨事に気付く。
「あー……とりあえず洗う?」
「そう、ですね……いや先にシャワー浴びましょうか……」
重たい体を起こし……離れた瞬間寂しさに襲われた……境の手を引いて立ち上がる由乃。
「……?」
「一緒に入りましょう?」
「……そんな事したら、また、その」
「しましょう」
「!?!?!?」
一緒にシャワーなんて浴びてしまったらまた求め合ってしまう、そう境は言おうとしたのだが、また求め合うつもりなのだと由乃は断言した。
「ちょ、ちょ、由乃っ⁉」
「……? なんです?」
「あの、え、ちょ、え?」
「大好きな人ともっとしたいというのは不思議ですか?」
「!?!?!?」
「なんなら一人暮らしの理由はそれしかありませんが」
「!?!?!?!?!?」
「大好きです境さん」
「ちょ、ちょぉーっと待て!待とう!」
「……? はい」
皮肉屋の由乃から皮肉が一切出て来ない。というか愛しか出て来ない。そんな無敵生物に境は恐れ慄く。
「え、なに? 一人暮らし始めたのって、あたしとイチャイチャするため⁉」
「そうですが?」
「え、なに ?シャワー一緒に浴びるのも、もっとイチャイチャしたいから⁉」
「そうですが?」
「由乃が素直過ぎて怖い!」
「心外な」
「それ! いつものそういうの!」
「どういうのですか……」
だが、テンパった境の気持ちが通じたのか、ようやく由乃は苦笑した。
「……そうですね。これからいつでも会える事ですし」
「そ、そうよ!」
「でも一緒にシャワーは浴びますよ」
「何でよ⁉」
「水道代節約のためです」
「あっはい」
「……イチャイチャ、したいんですけど」
「我慢なさいっ!」
「……したく、ないんですか?」
「し、したいけどっ! 門限があんのよっ!」
「家なんて捨てて一緒に住みましょうよ」
「ばっ……バカっ!」
「考えましたね?それも悪くないなと」
「考えたわよ! 悪い⁉」
「いいえ……いつか、一緒に」
「……そうね、いつか」
そうして、二人は手を繋いで浴室へと消えていった。
「だっ、だからしないって!」
「境さん……!」
「んむぅぅっ!」
無論イチャイチャした。
後日。
「由乃っ! 見て見てっ! 凄いっ! 凄い綺麗!」
「はいはい」
由乃のバイクに乗って、二人は雁戸家に近い山の中腹に来ていた。
「夜景ってこんなに素敵に見えるのね!」
「私は見慣れているのですが」
「そんなの関係ないわよ!一緒に感動しなさい!」
境はテレビ越しではない、初めて生で見る光景にはしゃいでいた。そんな彼女を由乃は苦笑気味に後ろから見つめる。
「こんな夜景独り占めしてたなんて、ずるいわよ!」
「いやそういうわけでは……」
「他にもバイクとか一人暮らしとか、ずるい! 由乃はずるい!」
口ではそう言いながらも、満面の笑みで由乃の腕をぎゅっと掴んで振り回す境。
だからだろう。
「境さん」
「なに? ……っ⁉」
境の唇が、唐突に奪われた。
「……好きですよ」
「…………うん」
「……うん、て」
「いやあの、やばい」
「やばいて」
「キュンと来た。キュン死する」
境の憧れのシチュエーション。
境は、ここに来た時点でそれを予想していなかったと言えば嘘になるが、実際にそれをされてみると、ときめきまくってしまったのである。
「由乃、結婚しよ」
「はい」
「……ツッコミは?」
「ありませんが? あぁ、冗談半分でそんな事を言えてしまうんですね境さんは」
「はぁぁぁ? 本心ですけどぉ? あぁなるほど由乃ちゃんは照れちゃったのねー?」
「はぁ? 照れてませんが? そっちこそ顔が赤いですけど?」
「はぁ? 照れてるでしょ? そっちこそ顔赤いじゃない」
「ぐぬぬぬぬ」
「ぐぬぬぬぬ」
犬も食わないのである。
「……ぷっ」
「……ふふ」
そして、同時に笑い出す。
こんないがみ合いなど、ただのじゃれ合いだと。
そして、静寂が訪れた。
「……また来ようね」
「……えぇ、いくらでも」
視線が絡み合ったままに、ぽつり、と境が由乃に話しかける。
「……また、行っていい?」
「……えぇ、いつでも」
そうしてどちらからともなく近付き、手が絡み合い、影が一つになった。