キララの森を通って札が三つ並んだ分岐に戻り、真ん中の道を選んで島の中央へ向かう。
道幅は人が往来しやすい広さを確保すべく、生えている草を刈り取った跡が窺えるのはよいとして、足下は不安定なでこぼこの砂利道。丈夫な靴底だから良いものの、踏んだら足の裏に堪えそうな小石がたまに落ちている。
そして、道から外れた場所には、無造作に生い茂った草木。
(文献には「バーカーウェンに生息していない」と書いてあった植物が生えている。島民か移住者が、苗か種を持ち込み、繁殖させたか?)
本土でよく使われている薬草と、染料に使える花が、十分過ぎるほど植わってることへの違和感。
初日から詮索し過ぎるのはエリカの精神に負担をかけると思ったオリキスは、質問するのは別の機会にしようと見送った。
*
砂浜からエリカの家に行くのと変わらない距離を歩き、森を出る。目の前に広がる景色は平地で、青空を背景に家が点々と並んでいた。
二人は集落に入り、商い通りの横にある石垣の上の一軒家を目指す。
「此処が私の職場、ヒノエ新聞の事務局です」
見上げると二階建てだった。壁は白く、ほかの家と違って、屋根は赤茶色の瓦。石造りの階段は低めだ。子どもから老人まで、安心して訪ねることができる。
上り切った先には、白く塗った木製のドア。大きな釘を一本打ちつけてあり、共通言語で「営業中」と書いた板を吊り下げている。巧いとも下手とも言えない味のある書き方だ。
エリカはドアノブを右に回し、後ろへ引いてオリキスをなかに招き入れ、数歩進んで左側の部屋に入る。
「局長!」
オリキスから見たアーディンという名前の、中年男の第一印象は「垢抜けている」。
エリカを除き、此処へ着くまでに出会った島民たちは全員、民族衣装姿だったが、局長と呼ばれた彼の服装は、詰襟がある白いシャツにサスペンダー付きのズボン。目立ちたいのか、明らかに存在が浮いている。
アーディンは小瓶に入った緑の液体を窓から差し込む陽の光に当てて眺めていたが、オリキスを見て懐のポケットへ戻した。
「?見かけない顔だな」
ふわっとした柔らかい髪は、先ほど食べたクッキーの色を想像させる。根本部分は黒い。
エリカは説明する。
「彼、バルーガと一緒にシュノーブから来たの」
「名をオリキスと申します」
胸に手を当てて紳士らしく一礼するオリキス。
アーディンは両手を広げ、満面の笑みを浮かべて歓迎する。
「ようこそ、水鳥の島へ!俺はアーディン。島の人に情報を届ける役目を担っていて、エリカの上司兼、代理の親だ。こちらは助手のミヤ」
側に控えている女性は穏やかな笑みを浮かべ、頭をペコっと下げた。暗い紫色の髪が、何処か妖しげな印象を与える。
「そうか、そうか。あの洟垂れ小僧が帰ったのか。オリキスくんは長期滞在か、移住希望者かい?」
ご機嫌なアーディンは「まぁ座りなよ」と、仕事でも使っている三人掛けのソファーへ手のひらを向けた。
オリキスは真ん中に座り、アーディンは膝の位置ぐらいの高さしかない楕円型のテーブルを挟んで、真正面に座る。
「僕は知りたいことがわかったら、島を出て行きます」
「ほほお?次の便は、一年越えるか越えないかだよ?面白いことを言うね」
「有難うございます」
「それで君は一体、俺に何を聞きたいのかな?
ヒノエ新聞は、島の情報最先端の発信所!
代々伝わる食文化!
仕事の斡旋!
心を癒やしてくれる最高の景色!
可愛い女の子から、美人の女性まで……」
熱さに乗じて冗談を混ぜようとしたが、呆れたミヤがゴホンと咳払いして止める。
空気を察したアーディンは言いかけて黙り、反省して二秒の
「諸々取り扱っている!俺は君が情報を欲するなら、応えてみせるぞ!?」
「アーディン殿は、バーカーウェンに来て長いのですか?」
「…………」
キメたつもりが冷静に質問され、調子が狂う。
「う〜〜ん?どれぐらい経ったか覚えてないな。オリキスくん、回りくどい話はやめて、単刀直入でいいよ。畏まらず、どうぞ」
「では」
「うん」
「
お調子者を演じて明るく振る舞っていたアーディンは、眉尻をぴくっと動かして固まった。
数秒後、広げた両足のあいだで両手を組み、笑みを深めて答える。
「そいつは偽の情報だろ。水鳥の伝説発祥の地だからって、世界が与えた呪いは誰にも解けないさ」
「なぜ、言い切れるのです?」
「真実なら、過去に十二糸がこの島を訪ねている。おまえさんみたいな物好き自体、初めてだよ」
「"来れなかった"のでは?」
鋭い指摘にアーディンは笑みを消した。
空気が一変する。
「……洟垂れ小僧は了承した上で、君をバーカーウェンに連れて来たのか?」
「いいえ」
「ミヤ。エリカを連れて席を外してくれ」
女性陣二人が建物を出たあと、アーディンは険しい顔つきをし、睨み付けるように見据えた。
「オリキスくん。呪いを解きたい十二糸が何処に居る?人々に敬意と恐れを抱かせ、高い地位に就いて政治を動かす連中ばかりだ。先の事件を起こした
「関わらないほうが、ですか」
「シュノーブから来たんだ、噂ぐらい耳にしているだろう?返り討ちに遭うぞ。世界のチカラに頼らずとも、彼らは強い」
恐れと不安からアーディンの手に力が込もり、内側でじわりと汗が滲む。
だが、オリキスは逃がすつもりはない。左手の人差し指、中指、薬指の三本を立てて見せる。
「僕にはカードが三枚あります」
オリキスは自分が何者で、なぜバーカーウェンに来たか経緯を明かし、エリカの家で読んだ書物の内容にも触れた。
聴かされたアーディンは恐ろしい物を見たかのように、顔を蒼白にする。手のひらの冷や汗が止まらない。
「……君……、と、言っていいのか、……わからないが」
正面に座っている青年への直視を躊躇う。
「此処で、敬語は不要です」
「…………」
正体を知ったいま、許可を得ても重圧しか感じない。
「…………オリキスくん。君の持つカードは強い。そして君の言う通り、十ニ糸の"彼女"が結束を呼びかけているなら、気の毒としか言いようがないよ」
「ご理解、感謝します。呪いの解き方、教えていただけますね?」
アーディンはぎゅっと目を瞑り、心苦しさのあまり項垂れた。
「できない。水鳥の目覚めはバーカーウェンの奇跡を消して、エリカを不幸にする」
「エリカ殿は、アルデバランの娘ですね?」
アーディンは心臓に悪い話が続き、衰弱に等しい精神的な疲労を感じる。
「俺と、何も知らないミヤにとっては娘同然。子の不幸を願う親が、何処に?」
「親の幸せと子の幸せが、合致していると言えますか?」
静かに責め立てるオリキスは子ども目線で尋ね、苦悩を否定する。
「…………悪いが、今日は帰ってくれ」
悩むことは、迷っていることの現れ。
(目的は話した。時間に任せよう)
オリキスは立ち上がり「失礼しました」と言って、彼の前を離れる。
自分が島で暮らすあいだ、対角線上の国々ではカードを二枚手に入れる準備が進行中だ。
エリカを足せば六枚。
敵対しそうな"
相手は一斉に粛清を仕掛けてくる大きな動きは見せないだろうが、戦力と経験を言えば此方が劣勢。
負けたら、シュノーブは他国の属国にされる。
外に出ると、脚が二本の黄色い郵便ポストの前でミヤが居た。手には三つの封筒。中身を確認している。
アーディンの助手らしいが、落ち着き具合いは女房の立場にも似た佇まいがある。
何も知らない彼女はオリキスを見て人当たりの良い笑みを浮かべ、手を止めた。
「話は済んだ?」
オリキスは自分の胸に右の手のひらを当て、ゆったりした動きでお辞儀するように一つ頷く。
「はい。突然お邪魔して、すみませんでした。エリカ殿は?」
「農作物の収穫へ駆り出されたわ」
「慈善事業も、新聞屋の務めですか」
二人のあいだに、微風がサァっと流れる。
「……オリキスくん」
「はい」
「十二糸に怨みがあるの?」
オリキスは風に揺すられた帽子の鍔を右手の指で、くっと摘み、頭に押し込め直す。
「だとしたら……。僕は上官の下で働くことを辞めて、魔法騎士の職を捨ててますよ」
「じゃあ、呪いの解き方を知りたいのはなぜ?」
「あれは冗談です」
「!」
「十二糸がバーカーウェンに入れない説も、大陸を横断しているときに、通りすがりの人から聞いた噂話です。アーディン殿が真に受けるとは、思いもしませんでした」
表面でにっこり笑いながら嘘を並べ、どんな反応をするか試したのは事実だがねと、オリキスは頭のなかでほくそ笑んだ。
「証明された?」
「彼にお聞きください」
ミヤは眉尻を下げて、苦笑いを浮かべる。
「無理よ。前にね、本土から移住してきた人に各国の状況を聞いたとき、私が『悪党の織人とは違うみたいね』って彼に話を振ったら、何て言ったと思う?『あぁそうだね』って、たったひと言。信じられる?局長なのに」
「素っ気なかったと?」
「えぇ。避ける理由を何度尋ねても『バーカーウェンは楽園。十二糸のこと?要らない情報だよ』って。新聞を発刊してる立場の癖に酷いでしょ」
ミヤは両手を肩口まで上げ、はぁ、やれやれと呆れた。
オリキスは「本土で余程、嫌な目に遭ったのでしょうね」と、此処に居ないアーディンの庇ってみる。
「ミヤ殿は、いつから島に?」
「織人事件が終息したあとに移住したわ。ほら、チカラを引き継いだ十二糸もおっかないでしょ?干渉の外にある此処は安全だもの」
十二糸に偏見を持っている民は、各国に存在する。王族をも虐げた、恐怖の暗黒時代を繰り返すのではないか、存在を危惧しているのだ。
「と、いうわけだから。アーディンを振り回さないでね」
「肝に銘じます」
ミヤは笑い、片手をひらひら振って事務局のなかへ戻る。
オリキスは一人でバルーガの家を探すべく、手がかりを求めて商い通りへ下りた。
*
初めて見る顔と魔法騎士の制服に、島民の好奇に満ちた視線が注がれる。
オリキスは偶然目が合った島民にのみ、他所行きの微笑みを返してあしらった。
ずっと人に見られる生活を送ってきたせいか、悪意を向けられる以外は気にしない。
それに此処で暮らすあいだ、親しい相手を不必要に増やさないほうがお互いのためだ。
「こんにちは」
「いらっしゃいま……せ」
小店に寄ると、店番をしている十代後半の女は赤面した。
オリキスの容姿端麗な姿をカウンター越しに、真正面から視界に入れたせいだ。
「おおおお客様っ!お困りでしたら、朝昼営業の当店へぜひ、おこ、お越しくださいっ!」
「ご親切に有難うございます」
「!!」
微笑みを添えたお礼に、店員は心をズキュンと射抜かれ、顔からボフッと煙を出した。
「いきなり女引っかけてんなよ」
バルーガは背後からオリキスの襟を掴み、後ろへ引っ張る。
「人聞きの悪い。君の実家がある方角を尋ねようとしていたところだ」
「〜〜だからって、紛らわしい真似すんなっ」
バルーガは軽く叱り、襟から手を離す。
「遭難はないと思うけどよ、一人行動で迷わないためにも、まずは島の地図を買え」
二人のやり取りを眺めていた女店員は、オリキスが客であることを再認識し、目をキラリと光らせた。
「うちで買えますよ。一枚百ネリーです」
声をかけられたオリキスは、腰に提げた袋へ手を入れる。
「では、一枚購入します」
女店員はカウンターの上に両手を乗せて、接客用の笑顔を向けた。
「一週間に一度更新をしてますので、基本版と最新版、併せて二枚買っておくことをおすすめします!」
「……では、二枚」
「有難うございます!」
圧されたオリキスは硬貨で支払い、草木で染めた紐でくるりと巻かれた地図を受け取り、バルーガに尋ねる。
「観光地になった群島のヤマタヒロでも、千ネリーはするぞ。島民の生活は成り立っているのか?」
「バーカーウェンは自給自足型で、資源の調達、調合、作成、労働で物を獲る。それらは自分で消費せず、店に並んだ商品と物々交換していいことになってるんだ」
「硬貨はどうなる?」
「翌年の便で届くイ国からの物資と交換するまで貯め込む。枢機卿様のおかげで、本土じゃ百ネリーする商品が
枢機卿は良心の塊と呼ばれる慈悲深い人柄で、国内外問わず教皇より支持され、国の南部とバーカーウェンを王に任されている。島民には有難い存在だが……。
(配下が島に住んでいたら厄介だな)
「オリキス。観光は明日に先送りして、住む家を決めるまでの拠点へ行くぞ」
*
バルーガは民家の集落から程近い、見晴らしが丘の実家へとオリキスを招いた。
青緑の瓦。
壁は白寄りの灰色。
二階建ての家は、なだらかな坂を上り終えた先に建っていた。
丘の名前通り、景観は良い。島の周辺にある海を見渡すことができる。
「さっき一時的に、エリカにおまえを預けて来たはいいけど、オレ、帰るトコ間違えてねぇよなってドキッとしたよ。シュノーブで暮らしているあいだに、外壁を塗り替えたんだってさ」
立札の字は『優しい村長の家』。……自分で言うことか?二人は思ったが、口に出さない。
ドアを押し開けて家のなかに入ると、民族衣装を着た三人のうち、真ん中に居る、十代半ばの少女が先に前へ出た。
「おかえり、バルーガお兄ちゃん。その人がお客さんっ?」
彼女は好奇心を抑えきれず質問した。バルーガは横に立ち、わしゃわしゃっと頭を撫でてやる。
「あぁ、仲良くしろよ。オリキス、こいつは妹のアンズ」
「よろしくねっ」
「こっちがうちの両親」
村長と言うにはそこまで年老いていない男性と女性が立っている。
身長は細高く、鼻の下にちょび髭を生やした父親は明るい笑みを浮かべて「遠い国からようこそ。いらっしゃい」と歓迎。
ひょうたんのような体型をした、顔が丸っこい母親は「第二の故郷だと思ってちょうだい」と、大らかに話した。
「オリキスです。お世話になります」
「部屋に案内するぜ」
バルーガはそう言って階段を上り、オリキスを連れて二階へ向かう。
「通常の移住者は、紹介人の世話になる。それをオレんちの家族が『息子と二人で、遠方のシュノーブから来た。うちで世話したい』って押し切ったんだ。すまねぇな」
「謝るのは僕のほうだ。家族水入らずで過ごしたいだろうに。悪かった」
「ぜーんぜん気になんねぇよ。一人で三人の相手するよりラクだぜ」
バルーガと使う共同の部屋はベランダ付き。
木目の床を彩るのは、民族風の手織りラグ。
ベッドは部屋の両脇に一台ずつ置いてある。
衣服をかけやすいポールハンガーも二人分だ。
ベランダに続くドアを開けて外の景色を確認するオリキスに、バルーガは口調を強めて注意する。
「ほかに家が見つかっても、深夜は出歩くんじゃねぇぞ。不審者扱いされちまうのは勘弁だぜ?」
のんびり寛げる故郷へ帰省したのに、変人を連れて来たと噂されては、居心地が悪くなってしまう。
「道中、僕が深夜に外出したことがあったかい?」
「澄ました顔しやがって。あったじゃねぇか、シュノーブを出発して港へ行くまでの途中、二泊した村でだっ」
「あぁ、あれか」
「人助けなら声かけろよ。ったく」
オリキスは数秒間、沈黙。
嫌な予感を察知したバルーガに、彼は計算高く、ふ、と笑った。
「了解した、次は声をかけさせて貰う。そのときは断らないでくれ」
「断るな、だって?しれっと怖いこと言うなよ」
バルーガは目を閉じながら腰に両手を当てて顔を上に向け、発言を誤ったと悔いる。
「おやつ食べる準備ができたよぉ~~!下においでぇ~~!」
一階から、バルーガの母親が大声で呼ぶ。
二人は居間に行って、空いている席に並んで座った。
「お食べ」
オリキスにとっては、島に来て二度目のおやつ。
粉物は形状を変え、蜜をかけたパンケーキになって現れた。
「「いただきます」」
重なる声。
バルーガは手を合わせ、オリキスは頭のみで一礼。
二人は鉄製のフォークとナイフを手に取り、切り分けて口へ運ぶのだが、その際バルーガは口を大きく開け、オリキスは口を小さく開ける。
母親は彼らの性格の違いを見て和み、くすくすと笑った。
「イ国の人から聞いたことあるよ。魔法騎士の試験って難しいんだろ?あんた凄いわねぇ」
バルーガの母親は息子の向かい側へ座り、斜め前に居るオリキスを褒めた。
「ご子息と大差ありません」
オリキスが控えめに笑って答えると、母親は右手を上下に振って笑う。
「謙遜しなくたっていいんだよ」
聞いていたバルーガは、瞼を伏せて半眼になる。
「嘘じゃねーぞ。シュノーブの一級騎士と魔法騎士は同じ階級だぜ?」
「ふうん。そうかしら?」
「外見を比べるなっ」
顔を見比べた母親の、冗談とも本気とも取れるすっ呆けた態度に、バルーガは手を止めて肩をわなわなと震わせた。
パンケーキを食べ終えたあと、住む家はないか質問を受けたバルーガの母親はテーブルの上に右肘を着き、手のひらの上に顎を乗せて顔を傾ける。
「一年間の滞在だったら、前の人が使っていた家があるわよ。みんなそこで移住体験をして、気に入った場所で家を建てるの」
アンズが母親の隣に座る。
「オリキスお兄ちゃん、お料理できるの?」
バルーガ家の視線がオリキスに集中する。
「薬草を煎じて飲むぐらいは」
「それ、お料理じゃなくてお薬の調合だよ」
ぷっと吹き出したアンズのツッコミに、三人が笑う。
「野宿したときは、ご子息に助けられました。有難うございます」
「変な物食べて、お腹壊さなかったかい?」
「息子、信じろよ」
今度はバルーガ以外の三人が笑った。
アンズが両膝を内側に寄せ、その上に両手を置いてやや前のめりになる。
「ねぇねぇ、病気に効く魔法は使えるの?バーカーウェンは治癒魔法が得意な人、大歓迎だよっ」
オリキスは真面目な顔をして、目を瞬きさせる。
「医師は不在ですか?」
「前に居たお医者様は昨年、お歳でぽっくり逝っちゃってさ。お兄ちゃんたちと入れ違いで、イに派遣をお願いしたばかりなの」
「ほかに頼れる人は?」
「新聞屋のアーディンさんとミヤさんが看るの得意でね、島の人たちに最低限の治療法は教えてくれたんだけど、いざってときは魔法のほうが早いでしょ?」
母親が重苦しそうに、はあ、と溜め息を吐く。
「エリカちゃんのご両親も居ればねぇ。島へ帰って来ないのが残念だわ」