あれは小学4年生の時のこと。
中学2年生の姉が、一緒にお風呂に入ろうと言い出した。
当時すでに異性に裸を見られるのを恥ずかしいと感じていたので、私はそれを断った。
今にして思えば、性に興味を持った姉が、手近でコントロールの利く相手として弟を実験台にしたかったであろうことは明白。
しかし、性に無知だった当時の私にそんなことはわからない。
結局、押し切られて一緒に脱衣所へと向かった。
小学4年生の私は、とにかく自分の裸、特に陰部を見られるのが嫌で、土壇場になって抗議した。
「やっぱり、姉ちゃんひとりで入りなよ、僕あとで入るから」
「一緒に入るって言ったでしょ? 一回言ったんだから、やっぱり無しはダメ」
そう言って姉は上着を脱がそうとしてきた。
恥ずかしいよと言って抵抗する私に、不満げにわかったと告げる。
ほっとした私を無視するように、姉が服を脱ぎ始めた。
「じゃ、じゃあ僕行くね」
「待ちなさい」
「待ちなさいって、なんで……」
私の目の前に姉の胸があらわになる。
もっと以前に見た時と異なり、大きく膨らんだ乳房を目にして私は言葉を失った。
その様子に、姉は得意げな顔をしていただろうか。
私の目はピンク色の乳首に釘付けで、覚えていない。
そのまま、姉はスカートのホックもはずし、するりと衣擦れの音を立てて、隠されていたショーツが目に飛び込んでくる。
私は顔を真っ赤にして横を向いた。
自分の裸を見られることなどより、姉の裸体を見ることの方が、よほど恥ずかしく感じられたのだ。
含み笑いが聞こえた。
私が恥ずかしがるのを見て、姉が発したものだ。
「どうして顔真っ赤にしてるのかなぁ?」
煽る言葉に返事を詰まらせる。
「えっち」
からかいの口調に、私はますます顔を赤くさせていたことだろう。
そう、えっちだと思ったのだ。
えっちなのは恥ずかしいことだ。
女の裸を見たなんて誰かにばれたら、どれだけからかわれることか。
完全に硬直してしまった私を見ながら、姉はショーツを脱ぎ去った。
そして、おしりを突き出して、もう一度。
「えっち」
見せつけてくるそちらがえっちなのではないか、そんな反論が浮かび、怒りを訴えようと姉の方を向いた私は、しかし口を開くことができなかった。
乳房が顔のそばまで迫ってきたのだ。
顔に柔らかく温かな感触が覆いかぶさる。
絶句する私の上着を、姉は一気にまくり上げた。
私の意識は顔に触れた乳房の感触にすべて持っていかれ、されるがままにシャツごと上着を脱がされる。
続いてズボンに手をかけられて、ようやく抵抗の意志が戻る。
「やめてよ!」
「お姉ちゃんのおっぱい見たんだから、見せてよ、ちんちん。お姉ちゃんだけ見られるなんてズルくない?」
目茶苦茶な理論。
しかし、小学4年生の私にとって、等価交換に応じない卑怯さは自尊心を傷つけるものだった。
私が観念したのを見て取った姉は、気が変わらないうちにと思ったのか、ブリーフごと一気にズボンを下ろす。
陰部がぽろりと外気にさらされる。
見られた。
見たのだから、見られても仕方がない。
でも、とてつもなく恥ずかしい。
茹だるような頭は、冷静な判断力をとうに失っていた。
どうすれば、この辱めから逃れられるか、そればかり考えているのに思考がまとまらない。
「脱がせないじゃん、足上げて」
思考停止中に投げかけられる命令に、思わず従ってしまう。
片足からズボンとブリーフが抜かれ、習慣からかもう一方の足も上げてしまった。
姉と弟が、一糸まとわぬ姿で脱衣所に立つ。
恥ずかしさに姉の顔を見られず、視線を下げれば乳房が目に飛び込み、逃げるように更に視線を落とす。
その先には黒い茂み、陰毛が存在した。
小学4年生の私は狼狽した。
混乱しきっていたと言っていい。
大人の股間には毛が生えているというのは、父母とお風呂に入っていたのだから、もちろん知っている。
だが、姉には、以前一緒にお風呂に入った時には無かったものだ。
姉の乳房が膨らんでいることは、服の上からでもわかっていた。
だが、股間の陰毛を見て初めて、姉の体が大人になっているのだと理解した。
おそらく私はショックを受けたのだと思う。
姉がもう、自分と同じ子供ではないのだと。
「ほら、入るよ」
浴室にいざなわれた私は素直に従った。
思考停止していたのもあるが、子供が大人にお風呂に入れられることを自然に感じたためだ。
恥ずかしさはもう無い。
うつむいたまま、浴室に入る。