※この作品はR-18です。

いちばん近くて遠い穴   作:松永蒼鉛

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1.脱衣所

あれは小学4年生の時のこと。

 

中学2年生の姉が、一緒にお風呂に入ろうと言い出した。

当時すでに異性に裸を見られるのを恥ずかしいと感じていたので、私はそれを断った。

 

今にして思えば、性に興味を持った姉が、手近でコントロールの利く相手として弟を実験台にしたかったであろうことは明白。

しかし、性に無知だった当時の私にそんなことはわからない。

 

結局、押し切られて一緒に脱衣所へと向かった。

 

小学4年生の私は、とにかく自分の裸、特に陰部を見られるのが嫌で、土壇場になって抗議した。

 

「やっぱり、姉ちゃんひとりで入りなよ、僕あとで入るから」

 

「一緒に入るって言ったでしょ? 一回言ったんだから、やっぱり無しはダメ」

 

そう言って姉は上着を脱がそうとしてきた。

恥ずかしいよと言って抵抗する私に、不満げにわかったと告げる。

ほっとした私を無視するように、姉が服を脱ぎ始めた。

 

「じゃ、じゃあ僕行くね」

 

「待ちなさい」

 

「待ちなさいって、なんで……」

 

私の目の前に姉の胸があらわになる。

もっと以前に見た時と異なり、大きく膨らんだ乳房を目にして私は言葉を失った。

 

その様子に、姉は得意げな顔をしていただろうか。

私の目はピンク色の乳首に釘付けで、覚えていない。

 

そのまま、姉はスカートのホックもはずし、するりと衣擦れの音を立てて、隠されていたショーツが目に飛び込んでくる。

 

私は顔を真っ赤にして横を向いた。

自分の裸を見られることなどより、姉の裸体を見ることの方が、よほど恥ずかしく感じられたのだ。

 

含み笑いが聞こえた。

私が恥ずかしがるのを見て、姉が発したものだ。

 

「どうして顔真っ赤にしてるのかなぁ?」

 

煽る言葉に返事を詰まらせる。

 

「えっち」

 

からかいの口調に、私はますます顔を赤くさせていたことだろう。

そう、えっちだと思ったのだ。

 

えっちなのは恥ずかしいことだ。

女の裸を見たなんて誰かにばれたら、どれだけからかわれることか。

 

完全に硬直してしまった私を見ながら、姉はショーツを脱ぎ去った。

そして、おしりを突き出して、もう一度。

 

「えっち」

 

見せつけてくるそちらがえっちなのではないか、そんな反論が浮かび、怒りを訴えようと姉の方を向いた私は、しかし口を開くことができなかった。

 

乳房が顔のそばまで迫ってきたのだ。

顔に柔らかく温かな感触が覆いかぶさる。

 

絶句する私の上着を、姉は一気にまくり上げた。

 

私の意識は顔に触れた乳房の感触にすべて持っていかれ、されるがままにシャツごと上着を脱がされる。

 

続いてズボンに手をかけられて、ようやく抵抗の意志が戻る。

 

「やめてよ!」

 

「お姉ちゃんのおっぱい見たんだから、見せてよ、ちんちん。お姉ちゃんだけ見られるなんてズルくない?」

 

目茶苦茶な理論。

しかし、小学4年生の私にとって、等価交換に応じない卑怯さは自尊心を傷つけるものだった。

 

私が観念したのを見て取った姉は、気が変わらないうちにと思ったのか、ブリーフごと一気にズボンを下ろす。

 

陰部がぽろりと外気にさらされる。

 

見られた。

見たのだから、見られても仕方がない。

でも、とてつもなく恥ずかしい。

 

茹だるような頭は、冷静な判断力をとうに失っていた。

どうすれば、この辱めから逃れられるか、そればかり考えているのに思考がまとまらない。

 

「脱がせないじゃん、足上げて」

 

思考停止中に投げかけられる命令に、思わず従ってしまう。

片足からズボンとブリーフが抜かれ、習慣からかもう一方の足も上げてしまった。

 

姉と弟が、一糸まとわぬ姿で脱衣所に立つ。

 

恥ずかしさに姉の顔を見られず、視線を下げれば乳房が目に飛び込み、逃げるように更に視線を落とす。

その先には黒い茂み、陰毛が存在した。

 

小学4年生の私は狼狽した。

混乱しきっていたと言っていい。

 

大人の股間には毛が生えているというのは、父母とお風呂に入っていたのだから、もちろん知っている。

だが、姉には、以前一緒にお風呂に入った時には無かったものだ。

 

姉の乳房が膨らんでいることは、服の上からでもわかっていた。

だが、股間の陰毛を見て初めて、姉の体が大人になっているのだと理解した。

 

おそらく私はショックを受けたのだと思う。

姉がもう、自分と同じ子供ではないのだと。

 

「ほら、入るよ」

 

浴室にいざなわれた私は素直に従った。

思考停止していたのもあるが、子供が大人にお風呂に入れられることを自然に感じたためだ。

 

恥ずかしさはもう無い。

 

うつむいたまま、浴室に入る。

 

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