※この作品はR-18です。

いちばん近くて遠い穴   作:松永蒼鉛

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2.無知ゆえに

風呂場の椅子に座らされた私は、ぼんやりと姉の裸体を見ていた。

 

性の目覚めに至っていない小学4年生の私は、大人に変わりつつある姉の体を、不思議なものを見る目で眺める。

 

姉はといえば、今だからわかるが、性的に興奮していない私に不満な表情を浮かべていた。

なぜか不機嫌な姉に私は萎縮。

 

「じゃあ、ちんちんから洗うね」

 

また恥ずかしさが頭をもたげる。

 

「そこは自分でやるからいいよ」

 

「だめ、それじゃあ一緒に入った意味がないでしょ」

 

不機嫌な姉を恐れて、私は観念する。

シャワーの温水が股間に当てられた。

そして姉の手が伸びる。

 

陰部を触られたことに驚き、私は羞恥心から泣きそうだった。

 

しかし、姉はお構いなし。

陰嚢を撫でるように感触を確かめる。

 

「わ、柔らかい、不思議〜」

 

撫でる手は大胆になり、掴んで転がすような動きへと変わる。

私は陰嚢をぶつけた時の痛みを思い出して恐怖に駆られた。

 

「わぁ、ころころしてる、本当にタマタマが入ってるんだ、おもしろーい」

 

「やめて……痛くなっちゃうから」

 

痛くなるという言葉を聞くと、姉は手を止めた。

 

「そっか、デリケートなんだね」

 

理解を示してくれたことに私はほっとした。

思えば、恐怖からの安堵が心を緩ませたのだろう。

このくだりがなければ、その後に姉がとった行動に強い拒否をしたかもしれない。

 

「こっちも柔らかいね、ここは痛くないでしょ?」

 

小さな陰茎を指先でつまみ、ぎゅっぎゅっと感触を確かめながら、姉は私にたずねた。

 

「うん、大丈夫」

 

「じゃあ、皮も剥いてみるね」

 

私の頭に疑問符が浮かんだ。

皮とは何か。

姉は何がしたいのか。

 

私の返答など、はなから聞く気の無い姉は、亀頭を露出させようと包皮を後退させる。

 

ピリリと痛みが走り、私はビクリと体を震わせた。

だが、自分の陰茎の知られざる構造への驚きが勝り、姉の手を振り払うことはしなかった。

 

真っ赤な亀頭があらわになり、恥垢がこびりついた様子が目に飛び込む。

 

「ほら、こんなに汚れてる。病気になっちゃうらしいよ」

 

小学4年生の私は納得する。

大人である姉が、無知な私の健康を慮ってくれたのだと。

 

「ありがとう、知らなかった……嫌がってごめん」

 

ひりひりする亀頭に不快感はあったが、感謝の気持ちと罪悪感が勝る。

 

「いいって、いいって」

 

笑う姉。

当時は優しい微笑みに見えたが、今ならわかる。

姉は素直になった私の陰部をおもちゃにできることを喜んで、笑みを浮かべたのだ。

 

「じゃあ、まずシャワーで汚れを流すね」

 

「うん」

 

水圧で流されていく恥垢。

初めて外気に触れたばかりの敏感な亀頭に、暴力的なお湯の雨が降り注ぐ。

くすぐったさを超えた未知の感覚を、私は痛みだと誤認した。

 

「ちょっと痛いかも」

 

「そうなの? でも、すぐきもち良くなるはずだよ」

 

もちろん性的に無知な当時の私に、きもち良くなるの真意はわからなかった。

お風呂できれいになれば、さっぱりときもち良くなる。

そういう意味だろうと気にも止めなかった。

 

しばしシャワーを当てられていたが、むずむずとした感覚に身をよじらせるだけ。

勃起しない私に姉は首をかしげる。

 

「おかしいな……」

 

その呟きは私を不安にさせた。

まさか、汚れを取り除くのが遅すぎ、手遅れになったのかと。

 

「病気になっちゃってるの?」

 

「や、たぶん違うと思う……そうだ!」

 

姉はシャワーを亀頭に当てるのをやめてボディソープに手を伸ばす。

未知の刺激から解放された私はほっとした。

 

「石鹸でしっかり洗えばいいと思う」

 

姉の言葉は、小学4年生の私には至極真っ当なものに思えた。

自分でやるという発想も湧かずに、うんうんと頷いて大切な陰茎を姉にゆだねる。

 

ぬるり。

姉の指がボディソープと共に亀頭をすべった。

 

シャワーではよくわからなかった、明確に初めての刺激に、思わず腰を引く。

 

「え、痛かった!?」

 

「わかんない、痛いのとは違うけど、くすぐったい……とも違うへんな感じ」

 

慌てた様子だった姉がにやりと笑う。

もっとも、当時の私には、安心させようと微笑んでくれたように思えたのだが。

 

「じゃあ、くすぐったいかもしれないけど、我慢してね」

 

不安を顔に浮かべたまま、私は頷く。

 

再び、姉の指が私の亀頭を捕らえる。

絡みつき、撫で、ぬめる。

 

形を確かめるように、カリ首をなぞり、裏筋をくすぐった。

 

きもちいい。

性的な意味での快感ではなく、撫でられることへの心地よさと誤認したまま、私はされるがまま。

 

だが、その激痛は不意に訪れた。

石鹸液が尿道に入ったのだ。

 

「痛い! 痛い痛い!」

 

火がついたように焦る私に、姉も狼狽する。

 

姉は石鹸液が尿道に入ると激痛が襲うなど知らなかったが、結果的に正解の手を選んだ。

慌ててシャワーで泡を洗い流したのだ。

 

「大丈夫?」

 

この時の心配の表情は本気のものだった。

 

「おしっこの穴のとこがじんじんする」

 

半べそをかきながら事実を伝える私。

理由がわからないながらも、尿道口へとシャワーを向ける姉。

 

次第に痛みが弱まっていく。

だが、尿道口へのシャワーの刺激は、それはそれでゆるい痛みを伴った。

 

「姉ちゃん、もう大丈夫そう、それよりシャワーが痛い」

 

「え、あ、ごめん、大丈夫?」

 

さっとシャワーが離される。

 

じんじんと軽い痛みが残る中、私はふたつの思考の間で揺れていた。

痛いことをされたから逃げよう。

病気のせいで痛かったのだろうか。

 

逃げていれば、姉は止めなかっただろう。

あの時の心配そうな顔は家族を思いやる本物だった。

 

しかし、だからこそ私は優しい姉にすがった。

 

「ちんちん病気なのかな、姉ちゃん、僕のちんちん変なのかな」

 

「確かめてみるね」

 

再び陰茎に手を伸ばす姉。

それはおそるおそる貴重品を触るように丁寧で、思いやりが感じられた。

 

少しの間、姉は亀頭を検分すると、私にたずねた。

 

「まだ痛い?」

 

「さっきっぽがじんじんする、でもさっきみたいな凄い痛い感じはもうないかな」

 

私は石鹸液の衝撃から立ち直りつつあった。

 

「今度はちゃんときもち良くしてあげるね」

 

そう言って、姉は意を決した様子で陰茎に顔を近づけた。

私は疑問符を浮かべたままただそれを見ている。

 

そして、姉の頭に隠されて見えないまま、亀頭は口の中へ。

 

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