フォルティッシモ・パラフィリア -ピアニストの狂咲き- 作:宇多川志木
◆あとがき
まずはこのページを開いていただいてありがとうございます。たぶん結末を読んだ上で開かれてるかと思うのですが、僕の余談に興味を持ってくださって嬉しく思います。
小説は昔書いていた時期があったんですけど、完結できた試しがなかったんですよね。だいたい書くのが面倒くさくなってしまうのが原因なんですけど。なのでAIという補助輪を使いながらとはいえとにかく完結ができたことは、自分の中で大きな前進になりました。
「こんなマニアックな小説誰が読むんだよ」と内心自嘲しながら書いたので、「思ったよりPV出てんじゃん」というのが正直な感想です。やっぱエロ小説だからですかね?エロは偉大ですね~。
世界観について。当初は『euphoria』みたいなダークでサディスティックな雰囲気を考えてました。初期案では、瑠衣が冤罪で捕まって恥辱的な扱いを受けるエピソードと、1-2話みたいに看守に逆襲を仕掛けるエピソードがいくつかあって、だんだんと瑠衣が独房を「支配」し、看守が耐えられなくなり釈放される、という展開だったんですけど、釈放後のエピソードを作っているうちに「それよりもさっさとKと出会わせたほうが良い」という判断になり、ごっそりボツになっています。今思えば瑠衣を丸刈りにまでする必要はなかったと思うのですが、「丸刈り剛毛ピアノ」の語感が良すぎて変えられませんでした。ごめん瑠衣。
釈放されてからはかなり「現代インターネット社会」って感じなんですが、こんな強烈なスカトロジーアーティストが有名になっていったら世間はどういう反応をするんだろう?と想像しながら作成しました。それを動画のテキスト書き起こしやSNSや掲示板の反応という形で補足展開させていくのは『NEEDY GIRL OVERDOSE』や『都市伝説解体センター』の影響を強く受けてるな、と我ながら思っています。本当はもっと世間の反応を入れたかったんですけど、あんまり補足だらけになってしまうのもどうかと思い、いくつか取り下げました。それでも多いんですが……。
第3部は投稿を始めてからエピソードの詳細を詰めたので、当初考えていた展開から結構変わっちゃいましたね。「Kの正体」「瑠衣の冤罪の真相」「Kが瑠衣との色恋を拒む理由」という3つの大きな疑問を針の穴に糸を通すように回収する必要があって悩みました。なんで行き当たりばったりで着手したんだ!と昔の自分を叱りたい。結局「TIH」というワイルドカード的要素をねじ込む必要が出てきてしまったのは反省点ですね。
美術とかクラシック音楽とかギリシャ神話とか色々専門的な用語が出てくるんですが、僕は何一つ知らないド素人で、物語内で展開されている演奏会や写真集の説明はほぼGeminiくん頼りです。第3部の核になっている「ピグマリオンとガラテア」も、その過程で調べながら知りました。こんな小説のおかげで教養が深まるのも皮肉なもんですね。
続いて各キャラクターについて。
【有村瑠衣】
端から見れば清楚で可憐な女性なんだけれども、実はめちゃくちゃ肝が座っている、というキャラクターデザインにしています。アーティストさんとかだいたい我が強いですしね。
実は女性の方がメンタル強いのではないか?と思うようなところはあるんですよね。人気のVTuberさんとか見てると、芸人のようにイジられることを受け入れたり、あるいは身の毛がよだつ性的な二次創作すらも黙認して、それが更なる人気のドライバーになったりとかしてますし。そういう何もかも受け入れてくれる存在に対して、僕達矮小なオタクはひれ伏すしかないんじゃないかと思うんですよね。瑠衣には、そういうアイドル的な逞しさを盛り込んだつもりです。彼女の狂気が最終的にKをも上回る展開にしたのは、そういう思想があってのことだったりします。
【K】
ぽっと出のカメラマンのつもりだったのに、気がつけばもう一人の主人公として育ってしまいました。Geminiくんは彼を警察への復讐者として仕立て上げようと誘導してきたんですけど、やはり彼は彼なりの美学に囚われたアーティストであってほしい、という僕の想いでああなりました。ラストで彼の計画が瓦解して号泣するシーンは、まんま『容疑者Xの献身』でしたね。個人的には瑠衣を上回る愛着が湧いています。
物語内で直接言及はしていないのですが、Kは「とある芸術家の血縁者」という隠し設定があります。色々ヒントを散りばめたのですぐ分かった人もいるかもしれません。これも後付け設定だったんですが、「ここまで重なり合うことあるんだ」と自分でびっくりしています。
【山本】
本当は瑠衣とKの二人だけで完結させたかったんですけど、ラストの展開を考えていく中でKと取引をする警察サイドの人間が必要となってしまい、彼が固有キャラとして加わることになりました。Kとはまた一味違う飄々とした抜け目なしという感じのキャラに仕上がり、意外と個性が付いたな、と思ってます。彼がいたほうが会話が盛り上がるので、エピローグにも出てもらっちゃいました。
だいぶ長々と語ってしまいましたが、なんかもう僕自身がこの作品のファンみたいになっちゃってるんですよね。そのぐらい僕の中の根幹が詰め込まれているんじゃないかと思います。
評価とか感想とか、あればいただけると嬉しいです。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。