フォルティッシモ・パラフィリア -ピアニストの狂咲き- 作:宇多川志木
「
「私は先生というよりは使徒のような存在ですが……あなたが望むのであれば」
***
秋の文化祭。活気に満ちた校舎から遠く離れた、旧校舎の三階。
埃っぽい廊下の突き当たりにある、使われなくなって久しい美術準備室。
錆びた鍵をKがピッキングツールで手際よくこじ開ける。
「そんなスキル、どこで身につけたの?」
「まあ、仕事柄こういうことも必要になるんですよ」
「仕事柄……?」
「ほら、開きましたよ」
二人を出迎えたのは、カビと油絵具の混じった、淀んだ空気。
「これは……誰も来そうにないね」
コスプレ用のセーラー服だ。淡いグレーの襟と、同色のプリーツスカート。
彼女は躊躇なく、着ていたトレンチコートを脱ぎ捨てた。
全裸の肉体に、清純の象徴を纏っていく。
スカートのホックを留めると、鏡がないのが惜しいほど完璧な「女子高生」がそこにいた。
だが、そのスカートの下には、下着を一切つけていない。
整えられた制服のひだの奥には、処理されることなく伸び放題になった陰毛の森と、今にも爆発しそうな腸のリビドーが隠されている。
「……似合います。恐ろしいほどに」
Kが、熱っぽい視線で彼女を見つめながら、愛機の一眼レフを構えた。
レンズの向こうの瑠衣は、文化祭の喧騒から切り離された薄暗い教室で浮き上がっているかのように見えた。
聖性と俗悪さが同居する、歪な女子高生。
「さあ、始めましょうか。K先生」
瑠衣は艶然と微笑み、教壇へと歩み寄った。
埃まみれの教卓。かつて教師たちが教科書を広げ、生徒たちを見下ろしていた神聖な場所。
彼女は、その教卓の上に、ゆっくりと腰を掛けた。
プリーツスカートがふわりと広がり、その下の無防備な太ももが露わになる。
「……見せてください。制服の下の、『真実』を」
Kの指示に従い、瑠衣はスカートの裾を両手で捲り上げた。
西日が差し込む窓際で、彼女の秘部が逆光に浮かび上がる。
へその下から股間を覆い尽くす、黒々とした剛毛の逆三角形。
その奥に見え隠れする、赤く充血した粘膜。
シャッター音が、静寂な教室に連続して響き渡る。
遠くから聞こえる吹奏楽部の演奏が、奇妙な調和(シンフォニー)となって彼女の背徳感を煽る。
「んっ……、ふぅ……」
瑠衣は、教卓の上でM字に開脚したまま、自身の内側に意識を集中した。
ここに来るまで、意図的に溜め込んできた便意が、限界に達している。
学校という規律の象徴のような場所で。しかも、教師が見下ろす教卓の上で。
この絶対的な「禁則(タブー)」が、彼女の括約筋を甘く痺れさせた。
「出すよ……先生。全部、撮って」
彼女は、教卓の端に尻をずらし、排泄口を宙に浮かせた。
その下には、床に直置きされたKのカメラが、ローアングルから彼女の恥部を狙っていた。
ブリュリッ、ボトボト……。
湿った重い音が、埃っぽい教室の空気を震わせた。
教卓の上から、温かい排泄物(ムジカ)が落下し、床のPタイルに茶色の「作品」を築いていく。
強烈なアンモニアと腐敗臭が、瞬く間にカビ臭い部屋の空気を塗り替えた。
「はあ……ッ! なんてことだ……! 教室で、制服姿で……ッ!」
Kは半狂乱になってシャッターを切り続けた。
フラッシュの閃光が、排泄の瞬間を、スカートの中の痴態を、鮮明に切り取っていく。
瑠衣は、排泄の快感に身を任せながら、恍惚とした表情で天井を見上げた。
固形物に続き、ジョロジョロと尿がほとばしる。
黄色い液体が床に広がり、Kの靴を濡らすが、彼は構わずに撮影を続ける。
制服のスカートの裾にも、尿の飛沫が跳ねて茶色いシミを作っていく。
「なんという禁忌……これはルルドの泉に降臨した『大いなるバビロン』だ……!」
相変わらずの仰々しい称賛。
Kの興奮は止まらない。シャッター音も止まらない。
「……あはっ、汚れちゃった。セーラー服が、うんちとおしっこで……」
瑠衣は、全てを出し切った後、汚れた教卓の上で力なく笑った。
自分の体内から出た汚物が、神聖な教室を汚染したという事実。
その征服感と背徳感に、彼女の脳髄は甘く痺れていた。
「やはりあなたは、最高の被写体だ……」
Kは、排泄物の山の横に跪き、汚れた彼女のスカートの裾に顔を埋めて、深く息を吸い込んだ。
獣の臭いと、排泄物の臭い。
二人の共犯者は、薄暗い旧校舎の片隅で、文化祭の熱気とは無縁の、薄汚くも濃密な時間を共有していた。
(先生との甘い時間、気持ち良かった……♥)
瑠衣は、汚れた手で自分の顔を覆い、クツクツと喉を鳴らして笑い続けた。
学校という名の檻の中で、彼女は再び、誰にも飼いならせない「獣」としての自分を証明したのだった。