「♪~」
鼻唄まじりにヒロ君の洗濯物をたたみながら新妻さんを満喫する。
「ふ~できた。それにしても男の子の服を畳むのってなんだか新鮮」
アイドル活動して寮生活をしているので自分の衣服とかは自分でしなくちゃいけないがこうして男の子の服を畳むのは初めてである。
(それにしても・・・・)
畳み終わったヒロ君のYシャツ眺める。
(ヒロ君のシャツ・・・)
あんなにも遠くにあったものが今じゃこんな近くにある。ファンから恋人そしてまたファンになってそれで今じゃ旦那様。ホント人生なにが起こるか分からないな・・・繰り返し思い出すのはあの言葉。
(僕と・・・結婚してくれないか。由奈)
こんな自分勝手な私に人生を捧げてくれた。あれほどうれしい事は今までなかった。
ブーーーブーーー
そんな事を思いながら頬を緩ませているとスマホの着信音が聞こえる。私のではない。音が鳴る方を見ると机の上にヒロ君のスマホ。そういえば今日ヒロ君スマホ忘れたんだっけ。
「ただいまー」
私がスマホを手に取るのと同時にヒロ君が帰ってきた。ここは新妻としてきっと絡んでいる幼馴染や義妹ちゃんとの格の違いを見せつけなきゃと思いながら渡すシチュエーションを考えてるとふと思う。
(一体誰からだろう?)
お仕事の話は聞いて無いし。そもそもヒロ君への電話は滅多に無い。あるのは親友の影近君か義妹ちゃんぐらいだし。
(きっと迷惑電話か間違い電話のどっちからだろう)
そう思いながらスマホの画面を見る。でも私の予想とは裏腹にしっかりとスマホの画面には登録されている名前が映し出されていた。そして名前は・・・
『天満八澄』
私の知らない。そして名前からして明らかに女の子の名前。それを瞬間新妻としてどんな風に渡そうかなという考えはすべて怒りに変わったのは言うまでも無い。
「ねえ?ヒロ君・・・この天満八澄って誰なのかな?」
ゴゴゴゴゴ
再度僕に問い掛ける。顔は笑ってはいるが目は笑ってないし何よりも圧がすごい。
「え?いや・・・その・・・・・・・・・・・・昔のバイト先だよ」
答えを模索しながら何重にもオブラートを包んで答える。嘘は言っていない。でも
「ふーん。バイト先なんだ・・・そっか・・・」
納得してもらえた。そう一瞬安堵したが。
「でもおかしいな?バイト先なのに登録が個人名なんだ・・・ふ~ん。そういうのって普通お店の名前とかバイト先の店長とかで登録すると思うんだけどな~」
鋭いツッコミを入れる。由奈ちゃんの言う事はもっともで不信に思うのも無理もない。
「いやでも本当に昔のアルバイト先なだけだから・・・」
バイト先だがそのバイトがちょっと訳アリなので全ては言いづらい・・
「それだけ?」
「それだけだよ。深い意味は・・・」
もしも~し。ちょっと返事してよ~
「あれ?」
スマホから声が聞こえる。どうやら言い訳している最中にどこかで通話ボタンを押してしまっていたしなぜかスピーカーモードになってしまっていたようだ。
「・・・・もしもし」
このままでは埒が明かないので応答する。すると
「あ、やっと出てくれた。やっほー久しぶりヒロ君」
スマホからはこの修羅場を知らない呑気な声。あの時とまったく変わっていないあの子の声が聞こえた。
「お久しぶりです。急にどうしたんですか?今ちょっと手が離せない状況なので切りますね」
「え~扱い雑くない?一緒に遊びに行った仲なのに~」
「ちょっ!」
ここでまるでこちらの修羅場を見ているかのようにピンポイントに地雷原をぶち抜く発言をする。
ピキピキピキ
それを聞き由奈ちゃんが今まで見た事が無いほど怒っている。
「それでなんの用事ですか?」
早々に要件を聞き切って由奈ちゃんの機嫌を直さなくてはと思い早口で通話する。
「そうそう。実はまたお願いしたいたい事があるの~❤急で悪いんだけど明日会って欲しいな」
「会う?」
「もう相変わらずのにぶちんだな~デートだよ。デートのお誘い」
パッ
「いいえ。明日用事があるので行けません」
ここで由奈ちゃんの堪忍袋の緒が切れ僕が答える前に電話を取り電話に出る。
「ちょっと由奈ちゃん。ダメだよ・・・」
さらにややこしくなってしまいと少し頭を抱えてしまう。
「だってヒロ君女の子の頼み断れないでしょ?」
「断るよ。由奈ちゃんとの約束があるんだから」
「ホントに~?」
「もしも~しもしかして今の彼女さん?」
「そうで・・・痛」
僕が答えると由奈ちゃんが僕を抓る。妻ですって言って欲しいのだと分かるけど今由奈ちゃんは現役アイドルだしそもそも未成年の僕が結婚してますなんて軽々しく言えない。
「・・・・じゃあなおさらじゃん。会わなくちゃ」
「え?」
そして恋人がいると知っても会おうという返事が返ってきて驚く。
「だからヒロ君と彼女さん二人と会いたいって言う事だよ」
「なんで?」
どうしてそんな事を言うのか理解できない。それに会わなくちゃって。
「・・・まさかと思うけどあの時の約束忘れちゃったの?」
「約束?」
「うわ~約束忘れるなんてひどいな~あんなにも出してあげたのに」
「出して・・・あ・げ・た~ 」
意味深な言い方をしてさらに由奈ちゃんの怒りのボルテージが溜まっている。
「でも明日は本当に用事があるんです。由奈ちゃんと買い物にショッピングモールに行くので」
「ショッピングモールって最近できたあの大きな観覧車のある?」
「そうですが・・・」
「尚更丁度いいよ。そこに明日行く予定だったし」
「いやですから」
なんかどんどん勝手に一緒に行くのが決まっている。
「そもそも会ってどうするんですか?目的はなんなんですか」
「大丈夫大丈夫。ちょっと友達に紹介したいから」
「紹介って・・僕と由奈ちゃんをですか?どうして」
「それは私の作戦の為。後は昔した約束が理由だよ。今ここでヒロ君があの時の約束さえ思い出せばいいんだよ。にゅふふふふ・・・」
不穏な笑い方をする。ここで思い出す。八澄さんてちょい悪に憧れていたのを。それは今でも変わっていないようだ。それにしても・・・
(約束・・・)
どんな約束をしたのかは思い出せない。でもなにか大切な約束をした気がする・・・
「お待たせー」
「まったくだ。なんでいつもいつもこう待ち合わせの時刻ギリギリなんだよ・・・早くしないと混むとか散々言ってて」
「女の子は準備に時間がかかるのよ。それにバイトやらテストで久しぶりの幸とのデートなんだしおめかしに時間掛かるのは当然でしょ?」
「・・・・」
「あれ?何照れてるの?」
「そんなんじゃない」
「ふふ、照れてる照れてる。まあいいわ。じゃあ早速行きましょ」
「おい。引っ付きすぎだろ歩きづらい」
「えーいいじゃん。恋人同士なんだし♪」
キイイイイイイイイイ
「ちょ」
「なんだ」
バタン
「おやおやお二人ともお揃いで今からデートですか・・・・あん 」
「げっ。澄・・・」
絵末とデートに行くため駅前で待ち合わせし行こうとしたら車が急ブレーキで止まりその中からチンピラのような口調で八澄が現れた。
「絵未ちゃんさ。私に会って「げって」ひどくない?」
「『げっ』て言いたくもなるわよ。今から幸とデートに行くんだから邪魔しないでよ」
「うん。知ってる。だから私達も一緒に行くの。ほらそのために車で来たし」
「いや・・・なんで知ってるのよ。それに私と幸が乗る事前提で話しないで?てか今日のレンタカーいつものよりなんか高そうなんだけど・・・後綺麗だし」
「ああ。実はこの車パパがクリスマスプレゼントに買ってくれたの」
「「クリスマスプレゼント!!!」」
「そう。パパがいつまでもレンタカーじゃ不便だろうって・・・まあ私的にはもっとかわいいのが欲しかったけどね」
「ブルジョワが・・・で?それを見せびらかすついでに邪魔しにわざわざ一人で来たの?」
「ううん。一人じゃないよ」
「そういえばさっき達って言ったな」
「ふっふっふ・・・今日は助っ人を用意しました」
「助っ人?」
「そう言う事でじゃあーん。小町浩孝君と由奈さんです」
後部座席が開くそして降りてきたのは・・・・
「大丈夫?由奈ちゃん」
「う、うん・・・なんとか・・・」
ふらふらと僕らは車からでる。外の空気がこんなにもおいしいなんて
「紫苑さんって運転上手だったんだね」
「そうだね僕安全運転の大切さを身に染みたよ・・・」
天満さんの荒い運転で乗り物酔い一歩手前である。最後なんて急ブレーキでシートベルトをしてたのに頭を打ち付けそうになったし。
「あ、あれ?なんで二人共そんなにぐったりしてるのよ」
天満さんは僕らの様子を見て不思議がっている。同じ車でいたのにもかかわらず平然としている。
「あんた・・・前にも言ったけど自分の運転が荒いって自覚しなさいよ・あんな運転なら酔うに決まってるわ。だ、大丈夫?」
「な、なんとか」
「ちょっとヒロ君。なんで敵に介抱されてるのよ。私の味方でしょ。絵末ちゃんは敵なの」
「味方とか敵とか言われても・・・」
車内の何か話しかけていたが正直運転が怖くてずっと由奈ちゃんと体を震わせてて天満さんの話は全然頭に入っていない。
「・・・その男は誰だ?」
僕らを見て男の人が怪訝な顔をしながら天満さんに話しかける。
「おっ幸君がヒロ君に反応してる。これは嫉妬かな」
そしてなぜか怪訝な顔をしている男の人を見ながら嬉しそうに目を輝かせている天満さん。
「そんなんじゃない。大学でも男と一緒に居るところ見たところないし」
「それはつまりずっと私の事を見てると解釈してもいいんだよね」
・・・・
「幸無駄よ。こうなった澄は何を言っても喜ぶから・・・罵倒でも喜ぶ変態なんだから」
「ひどい」
「とりあえず。はじめまして小町浩孝と言います。今日は天満さんのお願いで二人に会って欲しいと頼まれてきました」
「頼まれたって何を?そもそもどういう関係?」
「一応天満さんのバイトで知り合った仲です」
「それだけの関係でわざわざこんな事に付き合ったの?暇なの?」
なかなかに辛辣な事を言われる。
「それで隣の子もバイトの仲間?」
「初めまして小町由奈です。今紹介された小町浩孝君の妻で~す」
「・・・・・・・・・・・」
自信満々に由奈ちゃんは言うがみんなが白い目で由奈ちゃんを見る。
「は~類は友を呼ぶというけどまさかここまでとは」
「絵末も見栄っ張りだがここまで見栄っ張りだと哀れすら感じるな・・・」
「まさかここでボケをかまして来るとは思ってもなかったよ・・・意外とツッコミじゃなくてボケ役だったとは」
まあ当然みんな信じないのは分かる。どうみても自分たちよりも年下な女の子が結婚してますなんて言っても初対面で信じるわけない。
「ヒロ君。みんなひどいよ~信じてくれないよ」
そんな散々な事をみんなに言われ僕に駄々っ子のように僕に抗議する由奈ちゃん。こういうところも信じてもらえない理由なんだけどな~と追撃をするような事は流石に言わず心の中だけにしている。
「いや・・・由奈ちゃんの言う通り本当に僕たち結婚してるんです」
あまり公言したくないがこのまま由奈ちゃんが嘘つき呼ばわりされるのは夫としてどうかと思うのでしぶしぶ僕も言うが
「はいはい。いいのよ。そんな嘘に付き合わなくても・・・」
当然信じてもらえない。
「いやいや本当なんです」
「そんなにむきにならなくてもいいのよ。大変ね~」
「いえいえ」
そして5分経過・・・・・
「え~と・・・まじ?まじで結婚してるの」
ずっと繰り返しようやく信じたようで驚いた顔で僕と由奈ちゃんを交互に見る。
「はい・・・そうなんです。籍も入れてます」
「「は?籍も」」
「てっなんで澄も驚いてるのよ。呼んだの澄でしょ?」
「いや~由奈ちゃんとは今日初めて会ったしヒロ君も結婚してるなんて流石に妻持ちの男の子をひっかけるほど私はそこまで悪では無いので・・」
「いや・・・ちょっと待って私達より歳下・・・少なくとも未成年よね?」
「はい・・・お互いの両親から了承をもらって年明けすぐに入籍しました」
「・・・・・・・・」
絶句して魂が抜けたような顔をしている。まあ自分でもどうかしている事を言っている自覚はあるのだが・・・
「えへへ」
そんな僕とは裏腹に由奈ちゃんはみんな結婚している事に信じてくれたので満足し笑みを浮かべる。でも僕は気がかりである。
「由奈ちゃんさ・・・そろそろ結婚してますって言うのやめない?」
僕はみんなに聞こえないように由奈ちゃんの耳元で言う。事実だとしても世間的には人気アイドル。その正体が現役JK新妻だという事を公に広めたくない。いつバレないか紫苑さんが胃痛でいつか倒れてしまってもおかしくない。でも
「止めません。事実を言って何が悪いのかな」
「え~」
そんな僕の心配とは裏腹に世間の目なんてまるで気にしない由奈ちゃん
「それに見てよ。みんなの反応。私の正体ばれてないでしょ?」
確かにここまで由奈ちゃんがアイドルだと誰も言ってこない。
「そうだけど・・・それ自分でいって悲しくならない?」
「全然。これから女優さんとして有名になっていくんだからいいんだよ」
「そういうものなのかな?」
「そういうものなんです~♪」
「二人共どうしたの?」
「いえなんでも・・・じゃあ要件も終わったし帰ってもいいですか」
「いやいや一緒にショッピングモールに行くって約束したじゃない」
「やっぱりついてくる気満々じゃねえか・・・・」
「当たり前でしょ?大学も春休みで幸君と遊ぶ機会なんて全然なかったんだし。その埋め合わせをして欲しいな」
「埋め合わせってなんでだよ・・・そんな関係でも無いだろ。第一会う機会が無いって言ってるがその割には俺のバイト先にちょくちょく来てるだろ・・・」
「え~それは幸君のためじゃ無いからいいじゃん。あのお店が好きだからだよ。第一私高いお金払ってるお客さんなんだから。店長さんも私が来るとすごい丁寧な対応してくれるし。それでもし私が来なくってそれが幸君が原因だって分かったら幸くんどうなっちゃうだろうね~」
「くそ・・・脅しやがって・・」
「にゅふふふ。どう?私のチョイ悪もなかなか様になってきたでしょ」
「チョイ悪というにはかなりあくどいと思うんだが・・・おい絵末もなんか言って・・・あれ絵末は?」