「出久~おやつよ~」
お母さんはそう言いながらテーブルにどら焼きの乗った皿とマグカップに入ったお茶を置いた。
どら焼き。某漫画の主人公の大好物として知られている和菓子であり、カステラ生地の柔らかな食感やあんこの素朴な甘さ等から古来日本から現代まで愛され続けてきたお菓子である。
『あっ、おい待てぃ(江戸っ子)。某青狸の漫画の主人公はのび太君だろう?ロボ畜生に主人公なんて務まるわけないからな!』
……この思想強めな考え方は無視するとして、僕自身もどら焼き自体は好きな部類のお菓子である。しかし、今の僕にとって、このどら焼きはあまり嬉しくないものとなっていた。
理由は単純で、先程コンビニでウエハースを買いまくって全て食べてきたからだ。それも3枚も。
いくら食べ盛りの子どもとはいえ、流石にもうお腹も膨れてしまっているのでこのおやつも遠慮したいのが本音である。
「あ、あぁ……いつもありがとね、お母さん…」
ならばどうするか?この場合ならばお腹がいっぱいならば事情を説明し、お皿を下げて貰うのがベターであろう。
実際、いつもの僕ならばそうしていただろう。……そう、いつもの
「まぁ、この子ったら…いつもはそんな事わざわざ言わないくせに、
お母さんはからかう様にそう言ってもう一つのどら焼きとお茶を
「あ…ありがとう、ございます……」
どら焼きが置かれると同時にお母さんにお礼を言う少女。
お礼を言う際にわざわざ少し立って頭を下げた様子を見る限り、育ちが良い事が伺える。
「まぁ!これはご丁寧に……出久にこんな礼儀正しいお友達がいるなんて知らなかったわ~♪」
その様子に思わず感嘆の声を漏らすお母さん。
……うん、僕自身もこんなに礼儀正しい子なんて知らなかったよ。というか、つい数時間前まで存在自体知らなかったよ。
…でも、それもしょうがないであろう。
「それじゃあゆっくりしていってね。えっと…」
「
だってその子、つい数時間前に会ったばかりの家出少女だもの。
公園での少女…もとい焦凍ちゃんの爆弾発言を聞いた後、僕の脳はフリーズしていた。
家出。それはその名の通り自分の家から出て行ってしまうという、主に年頃の子どもに見られる行動だ。
家出をする理由は『親が勉強しろってうるさいから~』とか『親が怒ってばかりで嫌になった~』等様々あるが、基本的に年端のいかない子どもが家出をしたところでどうなるわけでもなく、結局は諦めて家に帰ってしまう事が多いらしい。
『えっ……えっ…!』
しかし、僕自身も現在は年端もいかない子どもだ。『子どものやる事だから~』と若気の至りで片づける様な大人の考え方など出来るはずもなく、とても重くとらえていた。
だって…家出だよっ!?自分が今まで住んでた家にもう帰らないって覚悟で出ていく事だよ!?そりゃ重くとらえるよッ!!
次に考えた事が目の前の少女になんて声を掛けるべきかだ。
僕はなんて声を掛ければいいのだろう?
家出の理由を聞く?―――初対面の僕が聞いていいのだろうか?
家出をやめるよう説得する?―――この子の事情も知らないのに言っていいのだろうか?
昨日見た『密着!オールマイト24時!~最強ヒーローはこうして生まれた~』の内容でも振ってみる?―――今度こそクソナード判定されてドン引きされるわ!
様々な考えが頭の中で回る、周る、廻る…
『えっ…えっと……』
しばらく迷った末に、僕は自然と言葉を漏らしていた。
『……とりあえず…ウチ、来る?』
問題を先延ばしにする逃げの一手を…
『いやいやいや、これは“逃げ”ではないぞ出久ッ!むしろ“攻め”ておるわッ!朕は嬉しいぞっ!お前は勝妃を自分の雌に堕としたのにも関わらずまだ雄としての自信を持ててない節があったからのぉ……そんな出久が出会って数分の女子を自分のテリトリーに連れ込むという、アグモンがウォーグレイモンになるレベルのワープ進化をするとは思わなんだッ!!さぁ、ここからこの雌とジョグレス進化(意味深)でオメガモンを誕生させるのだっ!ついでのその光景を引子にも見せつけ発情させて3Pに持ち込むのだっ!!』
「やらなっ…!」
「? ……どうかしたの?」
「な、なんでもないっ!ちょっと考え事してて思わず…さ」
「そう……?」
少しの間訝し気な表情を浮かべたが、やがて気にしなくなったかのようにマグカップを両手で持ってお茶を飲み始める焦凍ちゃん。はぁ、まだ気を抜くと
『おいおい出久君さぁ…おちんぽなんてみんな性欲の事しか頭にないバカなんだからそれは貶してる事に入らんぜ?むしろ朕にとっては最高の誉め言葉じゃわい』
無敵かよこのチンコ。煽りにも動じないこの落ち着いた精神性だけは見習うべきか?……うん、やっぱりないわ。
……それはさておき、僕はこれからどうすべきなのだろう?
問題を先延ばしにした結果、家にまで連れてきてしまったわけだが、この後どうするか全く思いつかないのである。
……まぁ、咄嗟だったとはいえ、僕の家に連れて来た事については後悔などはない。見た感じこの辺の子じゃないから土地勘とかないだろうし、迷子になったら大変だからね。放っておく選択肢はなかったよ。
それにお母さんも『出久が勝妃ちゃん以外のお友達を家に…ッ!』と喜んでくれてたしね。結果オーライってやつだ。
『困ってる人を見つけたら自然と身体が動いていた、か……出久よ、精神性はもうヒーローじゃあないか』
煽ててももう反応してやらんぞ。
…………でも、ありがとう。
『チョr……じゃなかった。それはそうと何か会話をした方が良いのではないか?これからどうするか考えるのはいいとしても、相手の情報なしで考えるのは愚策じゃろうて』
………確かにそうだ。これからの事を色々考えたとしても、それは僕自身の考えであってこの子の考えではない。言わば現時点で考えた事は僕の独りよがりになってしまうという事だ。
そうだな……流石にいきなり家出関係の話はハードルは高いかもしれないけど、まずは普通の会話を試みて関係を築く事から始めよう。信頼関係を構築出来たら、色々とディープな話もしやすくなるだろうし。
『おぉ、朕が教えた女を堕とすテクニックをここで活かすとは流石歴代最高チンポの持ち主じゃな!!』
……ほぼ事実だからなんも言えねぇや。
そんな事より会話会話…
「ね、ねぇ!」
「うん?」
「……どら焼き、美味しい?」
「………うん」
「そ、そっか…」
「うん」
「……」
「……」
「ち、ちなみに好きな食べ物は…?」
「そば。あたたかくないやつ」
「そ、そうなんだ…」
「うん」
「……」
「……」
「……いい天気だね」
「……そうだね…?」
「……」
「……」
……会話が、続かない(泣)
………しょ、しょうがないじゃないかッ!!
相手に重そうなバックストーリーがある事は置いといても初対面の、それに同年代の可愛い女の子と気さくの喋れるほど僕のコミュ力は高くないよッ!笑いたきゃ笑えよぉ!!
『誰も何も言っとらんわ。はぁ…童貞卒業したというに精神性はまだまだ童貞のそれじゃの。今後修正が必要じゃな』
じゃかぁしいッ!!
「…あっ、パパ」
「えっ?」
そんな事を考えていると、焦凍ちゃんがテレビを指さしながら言葉を漏らした。
反射的に僕もテレビを見る。テレビではニュース番組がやっており…
”お手柄!No,2ヒーロー銀行強盗鎮圧!!”
という見出しで画面にはそっぽを向いてはいるがNo.2ヒーローであるエンデヴァーが映っていた。
……えっ、ちょっと待って。
「い、今、なんて…」
「あっ…」
僕の言葉に、焦凍ちゃんは「しまった」と言う様な表情を浮かべた。
えっ…えっ……今、聞き間違えじゃなければ…
「パ、パパって……」
聞き違いだろうか? そう思いつつも聞かずにはいられない。
そんな僕の様子に焦凍ちゃんは諦めたかのように目をつむり、やがれ観念したと言わんばかりに語り始めた。
「………そうだよ、私のパパ…エンデヴァーなの」
聞き間違いだと思っていた、衝撃の真実を……
「そ、そそそそそそそそっっっっっかあぁぁぁ~~……!」
「えっ、今のそれどんな表情なの?」
僕の返答に、思わずと言った様に焦凍ちゃんが聞いてくる。
どんな表情をしているのか、鏡がないから自分では分からない。だが、おそらく変な顔になってるだろう。
『そうじゃなぁ……例えるならダイパリメイクの情報が出た瞬間に歓喜したけど、いざグラフィックが発表された時に剣盾のクオリティより遥かに劣るものがお出しされて『あっ、これ…かぁ?』と素直に喜んでいいのかどうかわからないという様な感情が渋滞を起こしてるような表情じゃな』
らしい。……いや、例えが分かりにくいよっ!?もっとわかりやすく言ってくれよっ!!
…だが、感情が渋滞しているという表現は今の僕には一番合っているのかもしれない。
「えっと…『No,2ヒーローがお父さんってすごいなぁ』って気持ちと、なんか焦凍ちゃんの様子から『あんまり言いたくない事だったのかなぁ』って感じてどう反応していいか分らなくって……」
マーラ様の言葉もあってか、僕は素直に自分が感じている事を言語化出来た。
そう、エンデヴァーが自分の父と語るときの焦凍ちゃんの顔はあまり嬉しそうではなかった。むしろあまり話したくない様な様子であったのだ。
もしも僕が同じ立場であればすごく誇らしく感じるかも知れないが、これは僕の話だ。実の娘である焦凍ちゃんがどう感じているか分からない。もしかしたら、僕が想像もつかない様な辛い事もあるのかもしれない。
そんな可能性があるのにも関わらず、焦凍ちゃんの事情も知らずにいつもの様に『すっげえぇぇぇぇ!!』と言いながらナード丸出しで色々と話を聞かせて欲しいと捲し立てるという選択肢がどうしても選べなかったのだ。……選べなかっただけで本当はめっちゃ話を聞きたいけどねッ!
「…………」
そんな僕の言葉に、焦凍ちゃんはまじまじと僕を見ていた。
その顔を表現するとするならば……まるで今までの人生で見た事もない珍獣に会った様な、驚きと興味が混じった様な顔であった。
……えっと、なんだろう、咄嗟に言ってしまったけど、なんか悪い事言っちゃったのかな?
「あ、あのッ!な、なんか嫌な事言っちゃってたかな!?そ、それなら本当に…」
「ッ!? ち、違うの…!」
咄嗟に謝ろうとした僕であったが。その行動は焦凍ちゃんに止められる事となった。
ち、違うの…?な、なら何で……
「そ、その……今までパパがエンデヴァーって説明すると、怖がられる事が多かったから、反応が新鮮で……初めて会った時にも言ってたけど、本当に怖がってないんだなって…」
僕が疑問に思っていた事をポツポツと語ってくれる焦凍ちゃん。
あー……確かにそうかもしれない。
出会った時からエンデヴァーが怖がられてる事気にしてたし、自分の父親が恐怖の対象になるのは気分が良くないのだろう。その立場になったことはないが、結構辛そうだと言う事は想像に容易かった。
あと、その他の可能性としては……あんまり父親や家族の事が好きじゃないとかだったら、話題にすらあげたくない事もあるかもしれないしなぁ…これは飛躍しすぎかもしれないけど、現に家出とかしてしまってるわけだし、可能性が全くないわけではないと思う。
「えっと…あんまりお父さんの事聞かれたくない様に感じたんだけど……もしかして、お父さんの事苦手だったりする?」
「ッ! そんな事ないよッ!!」
「おぅ!?」
僕の問いかけに対し食い気味に否定しながら詰め寄って来た焦凍ちゃんに、思わず驚きの声を上げてしまう。
「確かにパパはヒーロー活動する時は不愛想になっちゃって怖い印象もあるけど、家では私達に優しくてかっこいいパパなんだッ!苦手なわけないじゃないかっ!!」
そんな僕の様子など気にする暇もないのか、焦凍ちゃんは立て続けに言葉を並べてきた。
な、なんだかよく分からないけど、とりあえずエンデヴァーを嫌ってたりするわけではなさそう…?
僕が戸惑っていると、その様子に気が付いたのか焦凍ちゃんは「ハッ!」として、僕から距離を取った。
「ご、ごめん…パパの事、誤解される事が多くてつい……」
焦凍ちゃんは“シュン…”と顔を伏せて反省するそぶりを見せる。
……もしかして、焦凍ちゃんがさっきあんまり話したがらなかったのは、エンデヴァーの事を悪く言われる事が多かったからなのかもしれない。
エンデヴァーは様々な事件を解決してきた凄腕ヒーローであるが、各種メディアで不愛想な態度やファンに塩対応という事からアンチになる人も少なくはない。だから、もしかしたら焦凍ちゃんも自分の父親の事を悪く言われて嫌な思いをしてきたのだろうと僕は思った。
……なら、僕が取るべき行動は―――――
「ううん、大丈夫だよ。……ねぇ、良ければ君のお父さんの事、もっと聞かせてくれないかな?」
「……えっ?」
「確かに僕はヒーローとしてのエンデヴァーについては結構知ってる方だと思うけど…君のお父さんとしてのエンデヴァーについては知らないんだよね。だから、君が教えてよ。エンデヴァーが君にとってどう最高のお父さんなのかを」
―――僕は、彼女の話を聞くべきだと思った。
僕はかっこいいヒーローとしてのエンデヴァーは知っているが、彼女の言うかっこいい父親としてのエンデヴァーの事は知らない。多分、今までの会話の中で、焦凍ちゃんはその事をみんなに知って欲しいと願っているのではないかと、そう思ったのだった。
そんな僕の言葉に焦凍ちゃんは少し虚をつかれた様な表情を浮かべ、そしてすぐに表情を穏やかなへと変えた。
「……うん、いいよ。まずパパはね―――――」
それから、焦凍ちゃんのお父さんの話……というか
曰く、パパは家では家族思いでよく1番上のお兄ちゃんと一緒に遊んでくれるとか。
曰く、ママは美人で優しく、料理上手だとか。
曰く、最近お姉ちゃんがママから料理を学んでいて、麻婆豆腐は絶品だとか。
曰く、1番上のお兄ちゃんと2番目のお兄ちゃんはすごく仲が良いだとか。
「……焦凍ちゃんは本当にお父さんが、家族が大好きなんだね」
他にも色々な話があったが、この一言に尽きる。彼女の言葉の端々から、本当に自分の家族が大好きなんだという事が伝わって来た。
そして何より……
「うんっ!!」
彼女の満面の笑みを見れば、どれだけ愛されて育てられてきたかなんて丸わかりである。
……だからこそ、だからこそ聞かずにはいられない。
「そっか―――――」
「―――――それなのに、なんで家出なんかしたの?」
「ッ!」
僕の言葉に、焦凍ちゃんは思わずと言った様に顔をこわばらせた。
……まぁ、それも当然だろう。それ程までにデリケートな問題で、今日あったばかりの僕が踏み込んでいい領域の話でもないのだから。
だが、あんな話を聞いておいて、黙っているなんて出来ない。
「ごめんね、本当は僕なんかに聞かれたくないよね。――――でも、君が家族の事を大事に思ってる事が分かったから…だから、家出なんて本当はしたくないんじゃないかなって……」
そう、彼女は家族の事を愛しているにも関わらず、家出と言う選択肢を選んだのだ。
あぁ、分かっている。彼女にもいろいろ事情があるのだろう。だが、それを差し引いたとしても、放っておくなんて出来ない。
「………………うん。…本当は、私も家出なんてしたくなかったよ。……でも、どうすればいいか、分からなくて…」
そうポツリと呟く彼女。……何があったかは分からないけど、どうやら家庭内で何かあったようである。
「何があったかは分からないけど…ご両親と話が出来るなら話した方が良いよ。言葉が届くんだから。大丈夫、ご両親も君の事を大切に思ってるから、きっと力になってくれる。……それに、もしも僕にも何かできたなら、力になるよ」
力になる。その言葉に反応するかのように焦凍ちゃんは顔を上げ、僕の顔を見つめた。
「……どうして、そこまでしてくれるの?今日、初めて会ったばかりなのに…」
そう、彼女は疑問の言葉を投げかけてきた。
どうして、か…実は僕もよく分からない。でも、強いて言うなら―――
「―――――君が、助けを求める顔をしてたから」
―――――自然と言葉が出てきた。
そうとしか、説明することが出来なかった。
僕の言葉に焦凍ちゃんは一瞬だけ目を見開いたかと思うと、何かを噛み締めるかのように再び顔をふつかせる。
そのまま1分、2分と時が流れ、やがて顔を上げる―――――
「―――――うん、そうだね。向き合ってみる」
―――そう言った彼女から、僕は強い決意を感じとった。
「………ありがと、緑谷の…ううん、出久のお陰で勇気が出た」
「あっ…い、いやいやいや!そんな大層な事してないって!最後に向き合う事を決めたのは焦凍ちゃんなんだからすごいのは焦凍ちゃんの方だよっ!!」
微笑みながらそうお礼を言ってくる彼女に、僕は思わず見惚れてしまいそうになるのを誤魔化しつつまくし立てる様に言った。
や、やっぱり焦凍ちゃん、顔が整いすぎててふとした拍子に思わず“ドキリッ”としちゃうなぁ……
それにしても、あんまり大したこと言ってないはずなのにそんなに好意的な表情浮かべなくても…
『いやいやいや、なぁに言っとるんじゃこの朴念仁。今の普通に好感度爆上がり要素満載だから。自分が苦しい時に颯爽と現れて手を差し伸べる
そんな事を考えていると、頭の中に声が響く。
あぁ、せっかく久々に静かで最高だったのに……喋り出して早々ギャルゲみたいな事言うんじゃないよ。現実世界であんな甘ったるい展開なんて起きないんだからさぁ…
『……えっ、さっきのセリフ無自覚で言ってたん?マジで??』
珍しく動揺している様子のマーラ様。
なに驚いてんだこのチンコ、別に普通に僕に出来る事があれば力になるよって言っただけじゃん。普通に接しただけだよ?
『うわ、この反応マジじゃん。おっかしいのぉ……朕の知る限り出久の先祖にリトさんはいなかったと思うが…しかしこの無自覚に女を堕とす所業はまさにハーレム王の所業……遠縁の親戚か何かか?』
……もういいや。これ以上反応しても疲れるだけだから無視しよう。
「ううん、出久のお陰でようやく決心がついたよ。……だから、パパと話をしてみる」
僕の否定の声を更に否定しつつ、焦凍ちゃんは自らの決心を述べた。
うん?……パパと話すって事は、家出の原因ってエンデヴァーなの?
「出久は私に力を貸してくれるって言った。だから、出久には話してもいいと思う」
僕が疑問に思っていると、焦凍ちゃんはそれを察したように言葉を続けた。
その瞳は、僕の事を信頼していると語っているかのように感じた。
そんな彼女から語られたのは、彼女の黒い部分。家出の原因。
「パパが、ママをいじめてるの」
――――あこがれの存在であるはずの、ヒーローの闇の部分。
「……えっ」
焦凍ちゃんの言葉を飲み込むのに、僕はしばらく時間がかかった。
パパが、ママをいじめている。それってつまり……DV!?
『いじめてる(性的に)の可能性が微レ存?』
茶化すなッ!!今はシリアスの時間だッ!!
「パパはね、普段は家族みんなに優しいの。ママにも、燈矢兄にも、冬美姉にも、夏雄兄にも……」
戸惑う僕を置いて、焦凍ちゃんは語り続ける。
な、なんてことだ…ま、まさかNo,2ヒーローであるエンデヴァーが家庭内暴力を振るうなんて……!そんなの…そんなの……!
もう、続きを聞きたくはない。憧れの存在である一人が、そんな事をしているなんて信じたくない。そんな警笛が頭の中でずっと鳴り響いている。
しかし、僕の想いを裏切るかのように、真実が語られる。
「でもね、みんなが寝てる真夜中、トイレに起きた時に見ちゃったの」
「裸になったパパが、裸のママに乗っかってすごい力で腰を打ちつけてる姿を……」
―――――地獄の轟家の全貌が。
…………ん?
「…ん?」
「お布団の上でうつ伏せになったママに向かって、すごい大きい音が鳴るくらいに腰を打ちつけ、偶にお尻も叩いてたの。……あんなに激しくママを痛めつけるパパ、初めて見た」
「……うん?」
「ママもね、苦しそうに“ア゛ッ!”とかオ゛ッ!“とかとっても苦しそうで……トドの鳴き声みたいに呻いてて……すごく怖かった」
「…………ん?…ん???」
「何で裸でそんな事をしてるのかは分からなかったけど…大好きなパパがママをいじめてるのが怖くって、どうすればいいかわからなくて……それで、家出したの」
「……………」
「…でも、出久のお陰で決心がついた。私、パパと話してみる!そして、ママをいじめるのをやめて貰う!!」
「…………………ソッカ~」
“ふんすッ!”と意気込む焦凍ちゃんに対し、僕はそう反応するので精いっぱいであった。
…………ね、ねぇ、あんまり考えたくはないんだけど…これって……
『十中八九、親の生セックスを目撃するっていう大事故起こしてトラウマを発症した子です。本当にありがとうございました』
…………デスヨネ~。
拙者焦凍君の女体化名が思いつかなかったアイデア枯渇侍、考え抜いた末に某エッ!な同人作品と名前が丸被りしたで候。問題があったら潔く消すわ…
前書きでも触れたけど、轟家周りは結構書かなきゃいけない描写多いからめっちゃ文字数多くなる…轟家救済の難しさよ……
そして次回はなんでこんな(ある意味)地獄の轟家が実現してしまったかを書く予定だから多分めっちゃ長くなるし、もうめちゃくちゃだよ(杉田)
しばらくエロ描写書けんなこれ、潔くエロ全カットして一般向けに投稿し直すか?(錯乱)
ここまでご拝読ありがとうございました