ハマっている作品を書きたくなってしまう病に罹っています。
これからもどんどん増えます。
異世界転生物の作品が世に蔓延る昨今。
それらに心掴まれた俺は強い願望を抱いていた。
つまり俺も異世界転生してハーレムしてぇとか、チート能力でモテモテになりたいとかいう下衆な欲望である。
そうして願いは叶えられた。
俺は異世界転移系作品の一つ、異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術の主人公坂本拓真として転生した。
最初は偶然名前が一致しただけだと考えていた。
しかしMMORPGクロスレヴェリが発売されたことで疑念は確信へと変わった。
そこから俺は異世界転移に備えてアイテム収集やらレベリングやら原作通りの魔王RPなどをしていった。
本当に異世界転移するかは分からない。
それでもいつかは叶うと信じて貪欲に強さを求めていった。
◇
そうして遂に俺は真の魔王と呼ばれることになり、日々挑戦者を返り討ちにする生活を送っていた。
今日も今日とて最奥に辿り着いた挑戦者を爆散させた。
魔王としての風格も出て来た頃合いである。
SNSじゃ最強のプレイヤーとまで称されている。
そして同時にカップルを完膚なきまでに叩きのめす非リアとも。
悲しいが仕方あるまい。
原作通りに進めねばならんのだよ。
だから貴様等カップルは爆発四散する定めにある。
と、今日も画面の中で激しい戦いを繰り広げていた。
そうして久しぶりにPCの電源を落として睡魔に身を任せて布団の中で気絶するように眠った。
そして目が覚めたら見知らぬ場所にいた。
塔の上だろう、高い景色と青い空。
そして己に迫る二つの影。
エルフの少女と豹人族の少女が俺にキスして離れる。
そこで俺は異世界転移したことを実感した。
俺は平静を装って周りを見渡した。
四方に立つ柱と自分が座る祭壇。
間違いなく自分の知識にある星降の塔である。
「これで隷従の儀式は終了ですね」
「召喚成功ね!これで、あたしも召喚士になれたわ!」
そんな原作通りのやり取りがなされる。
俺は感動に打ち震えてそれどころではない。
漸く夢が叶ったのだ。
この先苦労が待ち受けているだろうが、それ以上のメリットがある。
魔王としてこの世界に君臨することができるのだ。
チート無双もハーレムもできる。
これ程喜ばしいことがあろうか。
俺は思わず涙を流しそうになって堪える。
ここで無様を晒す訳にはいかない。
圧倒的な強者として振る舞わねばなるまい。
そう考えて心を落ち着かせていると黒い毛並みの豹人族の少女、レム・ガレウが話しかけてくる。
「こちらの言葉が分かりますか?」
「無論だ」
俺はなるべく魔王らしい口調を心掛けて返答した。
言葉を発したことに二人が動揺する。
「喋った!?」
「…驚きました。言語を理解するどころか発するなどと…」
二人は驚愕した後にどちらが召喚したかで揉め始めた。
俺は暫くそれを眺めてから厳かに口を開いた。
「喧しいな。このディアヴロの前に立っておいて仲間割れか?」
「仲間などではありません。偶々一緒にいただけです」
「偶々!?あたしが目を付けてたのに無理矢理始めておいて!」
二人は再度言い合いを始めたので俺は威圧を込めて言葉を発する。
「どちらでも構わんが、俺を呼び出したんだ覚悟はできてるんだろう?」
「覚悟って?ディアヴロは隷従してるんじゃないの?」
「笑うにすら値しない妄言だな。貴様等如きの力でこの俺が隷従などするか。寧ろ貴様等が隷従する側だ」
そういった次の瞬間、二人の首に首輪がつけられる。
それにレムも金髪エルフのシェラも動揺する。
「これは隷従の首輪!?」
「何で!?これがつくのは召喚獣じゃないの!?」
「貴様等の魔術を反射したのだ。分相応で良いではないか」
俺がクツクツ笑うと二人は目に見えて恥ずかしそうにした。
そしてレムが恐る恐る俺に問う。
「これは貴方の能力によるものなのですか?」
「そうだ。俺には魔術反射の能力がある」
正確には魔王の指輪による効果だが態々言う必要もないだろう。
レムは驚愕して冷や汗を流した。
「魔術反射とは凄まじい能力ですが……ですが認めません!こんなこと」
「あたしだって召喚獣に隷従するなんて嫌だよ!」
「俺を隷従させようとしておいて、自分が隷従する側になれば認めないか……随分と都合が良いな?」
「ひっ…」
「ひぅ…」
二人は怯えて一歩後退した。
無闇に怖がらせてしまったか?
しかし自分達に都合が良すぎるのは事実だ。
召喚した相手に反撃されることすら想定しないのは未熟が過ぎる。
二人の学びになると信じよう。
「まあ良い。俺を呼び出した無礼も貴様等の痴態で許してやろう」
「ありがとう、ございます…?」
「うぅ…召喚獣に隷従するなんて…」
「低劣な召喚獣などと一緒にするな。それより近辺にモンスターはいるか?」
「偶に森から追い出された獣がいる程度です」
「そうか。退屈だが仕方あるまい。久しぶりの外出だ。少しくらいは楽しめるだろう」
俺はそう言って出口へと歩いていく。
その後ろを二人が付いて来る。
階段を降りて外に出ると綺麗な平原が広がっていた。
ゲームではここから西側に人喰の森が、東側に町がある筈だ。
「ねぇ、ディアヴロは普通の召喚獣じゃないの?」
「当然だ。俺は異世界にて魔王と恐れられた存在だぞ」
「魔王…それを証明することはできますか?」
「ふむ。ならば適当な岩に魔術でも使うか」
俺はそう言って近場の岩に狙いを定める。
杖を構えて八十レベルの魔術を行使する。
「フリージア!」
瞬時に岩が凍り付き、巨大な氷塊と化す。
それに二人は驚愕して尻餅を付いた。
「…凄い凄い!何アレ!?元素魔術っぽかったけど、あんなことできるの!?」
「評価しようがない程の能力です。最上級の召喚獣でもここまで圧倒的な能力はない筈…」
レムは何やら考え込む様子を見せてから重々しく口を開く。
「貴方が力を貸してくれればアレを打倒できるかもしれません」
「アレとは何だ?」
「……魔王クレブスクルムです」
「ふむ。俺と同じ魔王を名乗る者か。気が向けば協力してやらんでもない」
原作通りに進める為に協力する気はあるが、やはり魔王RPすると突き放すような言い方になってしまうな。
「それで町は何処だ。案内しろ」
「はい。私に付いて来て下さい」
そうして俺の魔王RP異世界生活が始まった。
◇
辺境都市ファルトラに入る為にウルグ橋砦にやって来たのだが、二人が俺の後ろに隠れるようにピッタリと張り付いていて動き難い。
胸の感触が素晴らしいので許容するが鬱陶しいことこの上ない。
隷従の首輪を見られるのが嫌なんだろう。
「おい!そこのお前!何者だ」
「俺は魔王ディアヴロだ。この不届き者共に召喚された」
そう言って俺は隠れようとする二人を前に出す。
警備兵は首輪の付いた二人を見て動揺した。
「さっさと通せ。でなくば破壊して通る」
「ディアヴロの力は桁違いです。大人しく従って下さい。そうすれば危険はないですから」
レムが警備兵を説得する。
警備兵は露骨に怪しい俺を通すのを躊躇っているようだったが最終的に折れて通してくれた。
町へ入れば奇異の視線が向けられる。
確か隷従の首輪は奴隷にもつけられるんだったか。
レムが恥ずかしそうに宿屋へと行こうと提案する。
それに従って宿屋安心亭へと入ると看板娘のメイちゃんが迎えてくれた。
「大部屋に三人だ」
「は〜い!これ鍵だよ!」
「ちょっとディアヴロ!?」
「何で一緒の部屋に!?」
「どうせ二人とも俺の奴隷なのだから構わんだろう」
そう言えば二人とも俯いた。
奴隷扱いは不服と見えるが文句も言えないようだ。
「夜はなるべく静かにね!宿屋のアイドルメイちゃんからのお願いだぞ!」
そうして俺達は大部屋に案内された。
ベッドは一つだけ。
俺は適当に床に寝転んで腕を枕にした。
「ディアヴロはベッドは使わないのですか?」
「この程度であれば床と大差ない。何処で寝ようが同じだろう。ベッドは貴様等で使え」
それだけ言って俺は瞼を閉じた。
奴隷とのセックスはいつでもできる。今は兎に角睡眠を取りたい。
異世界転移の影響で碌に睡眠も取れないまま宿屋まで歩いてきたからな。
今後の活動はどうしようか。
確かこの後の展開は冒険者登録して二人と行動を共にして、魔王やらと関わって……。
駄目だな。前世の記憶が擦り切れていて殆ど思い出せない。
まあ魔王らしく振る舞っていれば原作通りに進むだろ。
そして時々勇気を出せばハーレムを築ける筈。
俺はそう適当に結論を出して睡魔に身を任せるのだった。
・オリ主
魔王RPに固執している。