※この作品はR-18です。

俺の個性は『振動』。全身バイブ人間だ   作:dogman

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第16話 第一種目

 

 

 

『さーて実況していくぜ! 解説アーユーレディ!? ミイラマン!』

『無理矢理呼んだんだろうが』

 

 どうやらここからはプレゼントマイクの実況が入るらしい。相澤先生は少しダルそうである。

 ゲートを超えて生徒たちがコースに出る……いや、轟の氷でほとんどが固まってる。頑張れば抜けれる程度に収めているのは、轟なりの優しさだろう。

 

『さぁ、轟の妨害を乗り越えた次は早速障害物だ! 第一関門──ロボ・インフェルノ!! ……って、どうした後ろの二人組!? もう競技は始まってんぞ!』

 

「お、やっと気づいた」

「……すー、はー」

 

 プレゼントマイクの言葉に、モニターに向いていた軽く万を超えるであろう視線が、俺たちに移る。カメラもまたそれに従い、モニターには俺と緑谷の姿が映された。

 緑谷は緊張した表情を浮かべながらも、胸を張ってその場に立っていた。

 

『おいおいおい!! A組二人は早くも諦めたのか!? 一部の観客からはブーイングも出ているぞお前ら──ってA組轟!! 攻略と妨害を一度に!! こいつぁシヴィー!』

 

 注目は十分だな。

 

「うし、俺はそろそろ行くわ。緑谷は?」

「……僕は、もう少し待つよ」

「そっか」

 

 緑谷とは個性を使った訓練をしていない。どれくらい動けるかは分からないが、本人がこう言うんだ。勝てる算段はついているのだろう。

 

「じゃあ、お先」

「うん。……また会おう」

 

 地面を一瞬振動させてその反動で高速移動をする技──瞬歩改め“瞬震歩”を使い、ゲートで詰まっている生徒たちを()()()()()最初の障害と対峙する。

 

『A組真堂が消えた──と思ったらロボインフェルの頭上に現れたぞ!? おいおいアイツの個性はどうなってるんだ!?』

『お前は知ってるだろ』

 

「やっぱ、インパクト残さねぇとな」

 

 眼下に広がるのは大量の0P(ヴィラン)たち。軽く数えて二桁はいる。ビルほどの大きさがある奴らが、だ。

 図体がデカイだけの雑魚だが、それでもこれを一掃したら、観客は湧くだろう。

 

「人間ナドブッコロセ──」

 

 右の拳を中心に薄青色で球状のエネルギーを纏う。

 空気を全身で感じながら、体勢を変えて拳を前に突き出し、捉えた()()()()に炸裂させる。

 

「──界震

 

 その面を中心に、空気そのものにヒビが入る。

 耳の奥に響く破壊音が鳴って、()()()()()()

 

『おおおおおっ!?!? 地震か!?』

『アイツの個性だろ』

『……A組真堂、殆どのロボをぶっ壊して第一関門を悠々突破! この地震による津波の心配はありませんので観客の皆様はご安心ください!』

 

 ぶっ壊れて地面に崩れ落ちたロボたち。良い眺めだ。空にいたから気が付かなかったが、地面はちょっと揺れていたらしい。個性を使い音を出さずに地面に着地する。

 

「おいおいおいおい真堂お前! オイラ死にかけたぞ今!」

「今生きてるから大丈夫。じゃあな」

 

 そこには腰を抜かした峰田が居た。人が潰れないように調整したつもりだったが、ちょっと危なかったか。少し反省だ。峰田に別れを告げて第一関門を抜ける。次は……

 

『オイオイ! 第一関門チョロすぎだろ! だが、第二はそうはいかないぜ!? 落ちればアウト! それが嫌なら這いずりな! ザ・フォーーール!!』

 

「ケロ。おおげさな綱渡りね」

「フフフフ! 来たよ来ましたアピールチャンス!」

 

 第二関門は、梅雨ちゃんの言う通りおおげさな綱渡りだった。梅雨ちゃんは器用に手と足で綱を渡っていく。

 太さはボチボチあるから、速度を気にしなければ誰でも突破できそうだな。

 

「まぁ、そんなやり方はしないが」

「って司じゃん! いつの間に──」

「ちょっと揺れるから、気をつけろよ」

 

 俺の存在に気づいた芦戸にそう言って、“瞬震歩”で次の足場にジャンプする。

 

「おお! 彼の個性中々に面白いですね! さて、私のサポートアイテムが脚光を浴びる時──」

 

 なにやら騒いでる女子を無視してドンドン足場を移動する。お、先頭の轟と轟を追う爆豪の背中が見えた。このままぶち抜いてやるぜ……!

 

『実に色々な方がチャンスを掴もうと励んでますね、イレイザーヘッドさん』

『何足止めてんだあのバカ共……』

『さぁ先頭は難なくイチ抜けしてんぞ!』

 

「くそがっ!」

「先いくぜ、爆豪」

「あぁ!? ふざけんじゃねえよ振動野郎! 調子こいた宣誓しやがってよ〜!」

 

 空を飛ぶ爆豪を追い越す。そのまま抜き去ろうとして……中々距離が離れない。爆豪の怒号がずっと同じ声量で聞こえてくる。こいつ、早いな。

 

「スロースターターなだけあるな。俺について来れるとは」

「上から目線で来やがって……ッ。ここで死ね!」

 

 高度を下げた爆豪の爆破を避ける。当たればひとたまりもないだろうが、当たらなければどうということはない。

 

『先頭が一足抜けて下はダンゴ状態! 上位何名が通過するかは公表してねえから安心せずに突き進め! さぁトップの轟、早くも最終関門に突入! かくしてその実態は──』

 

「チィッ!」

 

 轟が最終関門に入ったという実況を聞いて爆豪の攻撃の手が止まる。爆豪の性格的に、俺と小競り合いして一位を逃した、とかは受け入れられないだろうからな。

 

『一面地雷原!! 怒りのアフガンだ! 地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ! 目と脚酷使しろ! ちなみに威力は大したことねえが、音と見た目は派手だから失禁必死だぜ!』

「人によるだろ」

 

 爆豪は凄まじい爆破で俺から離れ、轟の元に向かう。

 

「地雷なんて俺にゃ関係ねぇんだよ! てめぇ、宣戦布告する相手を間違えてんじゃねえよ」

 

 爆豪が轟を追い越した。……が、その腕を轟が掴んだ。なんだか急に蚊帳の外になった気分だ。

 

『ここで先頭がかわった──! 喜べマスメディア! お前ら好みの展開だああ!』

 

 地面を振動させ、自分の走行路にある地雷だけを爆破させる。これで何も気にせず走ることができるぜ。“瞬震歩”を使い、二人の横に並んだ。

 

「真堂──」

「振動野郎──」

 

 ついでに右足に振動のエネルギーを発生させて、二人の横っ面を蹴飛ばす。

 空間に小さなヒビが入り、強烈な衝撃が二人を襲う。威力は抑えてるから、あまり怪我はしないだろう。コースアウトしてくれたらありがたい。

 

『おいおいおい白ひげかぁ!?!? A組真堂、悠々とゴールに一直線──』

『今の子はワンピ知らねえだろ──』

 

 ゴールまではもう50mも無い。目だけで横を見ると、轟は氷でコースアウトを防ぎ、爆豪は空中で連続爆破して体勢を立て直している。だが、スピードは死んだ。

 

 俺の一位を阻むものなど、何も無い──

 

「──僕が来た。なんてね」

 

 視界の端に、緑の閃光が走った。

 

 

 

 

 

「……普通に負けたわ。早すぎだろ緑谷」

「真堂くんこそ、後ろでずっと見てたけど凄い追い上げだったよ!」

「慰めが逆に辛い。……あー、あの宣誓して二位かよ俺」

 

 緑谷を視界に捉えた時には、緑谷はゴールゲートをくぐっていた。正直、競技の途中ら辺から緑谷の存在を忘れていた。ちょっとでも警戒しとけば一位取れたかもしれないのに……いや、たらればだな。俺は、緑谷に負けたのだ。

 

『さぁさぁ序盤の展開から誰が予想出来た!? 一番最後にスタジアムから出て、今一番にスタジアムへ還っててきたその男──緑谷出久の存在を!!』

 

 割れんばかりの歓声が緑谷に降り注ぐ。

 緑谷は堂々と胸を張り、拳を天に突き上げた。

 

 

 

―――◇―――

 

 

 

「どう思う?」

「とりあえず緑谷の株価急上昇だね。個性はシンプルな増強型で持続時間も強化率も高いときた」

「事務所経営を請け負ったと仮定して彼をどう売り出していくか意見を交えたいんだけどどう思う?」

「普通に実力で売り出せるだろう。ビジュアルで売り出すのは無理だろうが、彼は恐らく堅実な性格。その性格にあの実力があれば、このビジュアルもマイナスにはならない」

「概ね同意見だ。だが、あえてビジュアルを前面にアピールして──」

 

 

 

―――◆―――

 

 

 

「早かったなお前ら」

「……」

「ハァ……ハァッ」

 

 俺がゴールしてから少しして、轟と爆豪が帰ってきた。爆豪は眉間に皺を寄せてかなり怖めな表情をしているが、轟はどこかスッキリとした顔だ。

 

「やっぱり、お前らに宣戦布告して正解だった」

「……チッ!」

 

『さあ続々とゴールインだ! 順位等は後でまとめるからとりあえずお疲れ!!』

 

「やっぱ司早いな〜」

「響香も10位とかだろ? 多分早い方だぜ」

 

 例年通りなら40人位は第二種目に進める。響香もそれを知っているからか、そこまで緊張はしてなさそうだ。

 

「にしても、塩崎は早かったな。爆豪轟のすぐ後だ」

「本当は一位を狙っていたのですが……」

 

 塩崎は二人がゴールしたすぐ後にやってきた。

 やはり、『茨』の個性は汎用性が高いな。

 

 二人と、途中で合流した力動や葉隠たちとだべっていると、最後の生徒がゴールゲートを潜った。

 

「ようやく終了ね。それじゃあ結果をご覧なさい!」

 

 ミッドナイトがそういうと、モニターに上から名前と順位が表示されていく。1、緑谷。2、真堂。3、轟。4、爆豪……といった感じ。

 

「予選通過は42名! 残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい! まだ見せ場は用意されてるわ!」

 

 丁度42位だった青山は、ただでさえ青ざめていた顔を更に青くする。腹痛も限界が近そうである。難儀な個性だな。

 

「そして次からいよいよ本戦よ! ここからは取材陣も白熱してるからキバリなさい!! さーて第二種目よ! 私はもう知ってるけど──コレよ!!」

 

 騎馬戦、とデカデカとモニターに表示される。

 騎馬戦、騎馬戦か……。

 

「騎馬戦……!」

「個人競技じゃないけどどうやるのかしら」

 

「参加者は2〜4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ! 基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど一つ違うのが、先程の結果に従い各自にポイントがあてられること!」

 

「入試みてえなポイント稼ぎ方式か。わかりやすいぜ」

「つまり組み合わせによって騎馬のポイントが違ってくると!」

 

「あんたら私が喋ってんのにすぐ言うね! でもそうよ! そして与えられるポイントは下から5ずつ! 42位が5ポイント、41位が10ポイント……といった具合よ。そして……1位に与えられるポイントは──1000万!!!

 

 全ての視線が、緑谷に集まる。

 そんな重圧の中でも、緑谷は覚悟を決めた表情でそこに立っていた。

 

「上位の奴ほど狙われちゃう──下克上サバイバルよ!」

 

 

 




ホンマごめん、騎馬戦スキップで……
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