実質ポリネシアンセックス
極限まで圧縮されたエネルギーが放出される寸前、スタジアムに一瞬の静寂が訪れた。
観客も生徒たちも、そして教師陣すら──ミッドナイトは眠り香を出しながら、セメントスはコンクリートを操作しながらも──この瞬間を見逃すまいと目を凝らす。
そして、二つのエネルギーが解放された。
──パギャッ、バギッ!
──次の瞬間、エネルギーは悍ましい程の“異音”と、尋常ではない衝撃となりスタジアムを襲った。
「耳がッ」
「じ、地震──あいつか……!」
「それより熱だろ! バカアチィぞ!」
スタジアムを中心にして、半径500mの範囲に震度5相当の揺れが発生。更に炎が熱を撒き散らすことで、
何かを掴まないと満足に立っていることもできない揺れに、不快な耳鳴り。そして、ヒーロースーツを脱ぎたくなるほどの暑さ。それらが重なり、観客のほとんどはステージの上から視線を外す。
『こ、この地震による津波の心配はない……ないよな!? ありませんのでご心配なくッ! んなことより試合はまだ続いてる! 煙でよく見えねぇが、ありゃ人影だ! この試合の勝者は──』
先程の比較にならないほどの煙。もはや煙幕と言っていい程のそれの中に、一つの影が見えた。
プレゼントマイクのDJ魂が宿った実況により視線を戻した観客は、この試合の勝者が誰なのか、それを確かめる為、尋常ではない量の汗をかきながら、キラキラとした目でステージを見つめる。
煙が晴れるのは何分後だろうか、誰かがそんな思考をした。──次の瞬間。天が割れるような破裂音が響き、
──そして、一瞬にして煙が晴れた。
「……」
服は殆ど焼き切れ、全身に火傷を負っている。それでも男は拳を天に突き上げ、かろうじて残ったステージの欠片に立っていた。
男の名前は──
『ステージに立っていたのは……! ──真堂! 真堂だ! 轟は……場外! 二回戦進出は真堂で決定だぁああああああ!!』
「「う、うおおおおおお!!」」
会場が割れんばかりの大歓声。
轟が場外で倒れていることを確認した真堂は、少しだけ口角を上げて、その場に崩れ落ちた。
―――◆―――
「知らない天井だ」
「……あんた、思ったより元気そうさね」
ベッドからムクリと起き上がる。体のあちこちが痛い。全力の“震界”を打ったせいだろうか、頭がクラクラする。
上がってきたゲロを無理やり飲み込んで、リカバリーガールに話しかける。
「試合、どこまで進みましたか?」
「今から耳郎のとこだ。さっきまでその椅子座ってたんだが、流石に試合すっぽかす訳には行かなくて出てった」
俺の質問に答えたのは轟だ。視線を向けると、カーテンを捲ってよ、と挨拶をする轟と目が合う。
そうか、まぁ当然だな。最後に見た轟は場外でボロボロになっていた。俺と同じく速攻でここに運ばれたことだろう。
というか、耳郎の試合か。
「色々話したいが、すまん。後ででいいか?」
「おう」
「ありがとうな。ちょっと行ってくるわ」
「……よく動けるさね」
「リカバリーガールの治癒のおかげですよ。火傷も殆ど治ってるし、デカイ怪我もない」
体力おかしいんじゃないのというリカバリーガールの視線を無視して、もう少し寝とくらしい轟に「またな」と言い、俺は足早に観客席へと向かった。
今度は道中で変なおっさんに絡まれることなく、俺はA組が待機している席に辿り着いた。
「よォ、試合どんな感じ?」
「おお! やっと起きたか!」
「司! 無事で良かった〜! 今耳郎と切島の試合が始まったとこだよ!」
待機席にはA組のみんなが殆ど揃っていた。居ないのは試合をしている響香と切島。そして、次戦の麗日と爆豪と、緑谷と飯田だ。緑谷と飯田はトイレかなんかだろう。
試合終了後俺と轟の見舞いに来てくれていたらしいが、リカバリーガールに追い返されたらしい。
みんなからの心配と賞賛を受け流しながら、俺は一番前の席に座る。まぁ、響香が負けることはないだろう。
「にしてもお前、よく平気な顔でここ来れたよな。俺たちみんなお前のちんこ見たんだぜ? しかもギンギンの」
「……お、お下品ですわ……」
峰田がニヤニヤしながら放った言葉に八百万は顔を真っ赤にしてへたり込んだ。
「逆に聞くが、俺のちんこに恥ずかしい所はあったか?」
「お、お前のメンタルどうなってんだよ……」
どこまでも堂々としている俺の返しに、峰田はおずおずと席に座った。俺は自分の相棒に自信を持っているし、愛している。
多少世界に晒されたとて、逮捕されないならむしろアドだろう。
「……いいなあ」
「ん、なんか言ったか?」
「う、ううん! なんでもない!」
気づいたら隣に座っていた葉隠が何かを呟いたような気がしたが、どうやら気のせいだったらしい。
「というか、これまでの勝敗とか知らねえわ。教えてくんね?」
「ふふー! 私勝ったよ!」
「……ちぇ、酸で電気通さなくするってなんだよ。普通通りやすいんじゃねーの?」
詳しい話を聞くと、三奈が酸の粘度を調整して電気の威力を減衰させて一撃を耐え、フィールド全体に溶解度は低いがめっちゃ滑る酸を撒いて勝ったらしい。
Vピースをしている三奈は非常に可愛かった。上鳴の個性で負けるとあんのか……? という疑問も湧いたが、まぁ個性の使い方は人それぞれである。
「俺も勝ったぜ。飯田は手強かったが、なんとかな」
「ほーん。見たかったわ」
俺たちの後にあった力動vs飯田は力動が制したらしい。中々良い勝負をしてそうだ。スピードの飯田とパワーの力動。後で見てみよう。
「塩崎と発目さんの戦いは塩崎さんが勝ったよ。発目さんが少し暴走してたけど……」
「暴走、それも面白そうだ」
葉隠が言うには、発目のプレゼンに塩崎が付き合わされていたらしい。ずっと振り回されていて、最後は満足した発目が場外に出たとか。
「私は負けてしまいましたわ……」
「強敵だった」「ダッタ!」
八百万vs常闇は常闇か。まぁ、想像通りだな。八百万の創造スピードじゃダークシャドウの猛攻を防げなかったんだろう。ダークシャドウ、あのなりでパワー凄いんだよな。
『防戦一方だった切島! ここで反撃に出る──が! 耳郎の心音攻撃でフラついてるぞ!?』
試合は響香優勢で進んでいた。長年の個性伸ばしの効果もあり、響香の個性『イヤホンジャック』は非常に強力なものになっている。
威力もリーチもコントロールも索敵能力も、最初の頃とは桁違いに向上している。
接近してきた切島の攻撃を俺との組手で培った格闘術でいなし、隙を見てプラグを刺して心音攻撃。
『再び切島にプラグが刺さる! これ何回目だよ!』
『10回目だな』
『解説どうもありがとうミイラマン! さぁ切島! 本日10回目の心音攻撃を受けてとうとう動きが止まったぞ……オイ、気絶してね?』
10回の心音攻撃を受けて、切島は糸が切れたかのように動きを止めた。硬化を解いて白目を向きながらも、倒れることはなく、その場に立ち続けている。
ミッドナイトがステージ内に入り、旗をピシッと振って口を開いた。
「切島くん気絶により行動不能! 耳郎さんが二回戦進出よ!」
ミッドナイトの言葉に会場が湧いた。まぁ、そうだろう。パッと見だと切島の方が強そうだし。……お、響香と目が合った。その慎ましい胸を張り、こちらに軽く拳を突き出した。かわいいなコイツ。拳を返す。
「ケッ、堂々とイチャつきやがって……!」
峰田が怒るのももう慣れたもんだ。真左から視線を感じてチラッと目線を配ったが、そこに居るのは葉隠。
個性を発動していない今の状態じゃ、どんな顔をしているのかが分からなかった。
「さて、次は爆豪と麗日か。どうなるかな」
「ふつーに爆豪じゃね? お前や轟、緑谷以外で、アイツとやり合えるビジョンが見えねえや」
俺の口から出た言葉に反応したのは上鳴だ。そう言ってくれるのは嬉しいが、それは少し麗日お茶子という人間を、そして『無重力』という個性を過小評価している。
俺が言葉を返す前に、左後ろに座っていた八百万が口を開いた。
「それは分かりませんわ。空中での機動力に優れているとはいえ、麗日さんの個性で浮かせられてしまっては、爆豪さんは相当な不利を背負わされますし」
「同意見だ。それに、麗日は俺との訓練である程度の時間ならデメリットなしでの空中浮遊が可能になった。相手が爆豪といえ、ワンチャン……いや、スリーチャンくらいあると思うぜ」
空中に浮けるからなんだって思われるかもしれないが、爆豪に吹っ飛ばされても場外負けはしないってことだからな。それに、爆豪も浮いた相手はやりにくいだろう。
『さて、次が一回戦最後の組だな! 中学からちょっとした有名人! ヒーロー科! 爆豪勝己!
出てきたのは真剣な顔をした爆豪と、この距離でも緊張が伝わってくるカチコチの麗日。
「良かった! 間に合った!」
「おぉ、おかえり。飯田に緑谷」
「おかえり〜」
何処に行っていたのかと思い話を聞くと、どうやら麗日にアドバイスをしに行っていたらしい。友達思いの良い奴らである。というか、俺の次の相手緑谷なんだよな。
「……次は、よろしく。真堂くん」
どうやら緑谷も同じ思考をしたらしい。神妙な顔で言ってきた緑谷に、軽く手を振りながら言葉を返す。
「あぁ。ま、今はこの試合に集中しようぜ」
―――◇―――
「お前、浮かす奴だな。丸顔。退くなら今退け。痛いじゃすまねぇぞ」
私より頭二つはデカイトゲトゲ頭の男の子──爆豪くんは、ふざけた様子もなく、ただ事実を述べるかのようにそう言った。……気に食わない。
『START』
「退くなんて選択肢ないから!」
開始の合図と共に地面を蹴る。爆豪くんは回避……じゃなくて迎撃! 勢いのままに突進する私を待ち受けているのは、爆豪くんの右の掌。
BOOM
「ぶわっ!」
直の爆破ってこんな痛いん……!?
「うわあモロ……」
「女の子相手にマジか……」
でも、ここまでは
「ナメッ──」
這わせて煙幕から出したジャージを押さえつけた爆豪くんを頭上から見る。いくら爆豪くんと言えども、視野外からの攻撃に対応するには、数瞬かかる──!
「
「ッチ!」
BOOM!
苦し紛れの爆破。
それは、私と
『おおっと!? 爆豪空を飛んでいる! 麗日の個性が決まったなぁ! ざまぁ!』
『実況としてどうなんだそれは』
「爆豪くん行動不能──」
BOOM!!
「どこ見とんだミッドナイトォ! 俺がこんくらいで戦えなくなる訳ねぇだろアァ!?」
「……戦えるかもしれんけど、飛んでかんように爆破しながら私と戦うのは、ちょっと無理あるんやない?」
「調子乗ってんじゃねぇぞ丸顔……ッ」
顔に青筋を浮かべた爆豪くんは、左手を上に向けて爆破させて地面に着地した。左手の爆破でバランスを取りながら、コチラに突っ込んでくる。右手での爆破をなんとか避けて、体勢を立て直──ちょ、追撃の手が全然止まらん……!
『爆豪という男には無重力状態すらハンデじゃないのか!?』
『ハンデはハンデだ。だが、麗日と当たるって分かった時点で個性を食らった時のシュミレーションでもしてたんだろう。ああ見えて、マメな奴だよ』
「おらああああ!」
「──おっせぇ!」
BOOM!!!
爆豪くんの戦闘センスはデクくんに聞いていてよく知っていた。だから、個性を使えただけで、無重力状態にしただけで勝てるとかそんな甘い想定はしてない。
「まだまだぁ!」
『休むことなく突撃を続けるが……これは……』
爆豪くんもプレゼントマイクも観客の人たちも、私がヤケを起こしたと思ってる。
真堂くんとの特訓で、個性の
だから、もう少し、もう少しだけ
「見てらんねぇ……! おい! それでもヒーロー科かよ! こんだけ実力差あんだから早く場外にでも放り出せよ! 女の子いたぶって遊んでんじゃねーよ!」
「そーだそーだ」
『一部からブーイングが……しかし正直俺もそう思──わあ肘っ!』
『今遊んでるっつったのプロか? 何年目だ?シラフで言ってんならもう見る意味ねえから帰れ。帰って転職サイトでも見てろ。ここまで上がってきた相手の力を認めてるから警戒してんだろ。本気で勝とうとしてるからこそ、手加減も油断も出来ねぇんだろうが』
観客席の誰かのブーイングに対する相澤先生の言葉。……爆豪くんにここまで警戒されてるとは、自分でも思ってなかった。でも、嬉しい。
「……そろそろ、か。ありがとう爆豪くん。──油断してくれてなくて」
「あ……?」
両手の肉球を合わせて、全ての
「勝あアァつ!!」
大量の瓦礫。普通の人間が食らえば確実に死ぬであろうソレ。当たり前に、殺す気がある訳じゃない。良い感じに、
『流星群ー!!!』
『気付けよ』
こんだけの量! 迎撃するにしても回避するにしても必ず隙ができる! それに、急に無重力状態じゃなくなるのめっちゃ気持ち悪いやろ! その隙に、拘束して戦闘不能に──
BOOM!!!!
「──マッ、じか!」
「デクのやろうとつるんでっからてめェ、なんか企みあるとは思ってたが……」
「一撃て……!」
『会心の一撃! 麗日の秘策を堂々──正面突破!!』
「危ねぇな」
「……どんな三半規管しとんの、爆豪くん」
正直、今にも吐きそう。喉まで上がってきたソレを飲み込んで、
そうポンポン大爆破出来ひん……はず!
「お……っら!」
「──いいぜ。こっからが本番だ麗日!」
突撃は爆破で吹っ飛ばされる。同じことがそう何度も通用する相手じゃない。二回目の流星群は、瓦礫を溜める前に潰されるだろう。
だから、何か、何か他の方法を──こういう時、
『おおっと麗日突撃の手を止めたぞ!? ここが限界か!?』
「オイデクのことでも考えてんのか!? 舐めやがってよォ!」
BOOM
「わっ! ちが……っ」
な、なんで思考に真堂くんが……いや、理由は分かりきってる。絶対、あの時の……訓練の時のせいやん……! 思わず顔が赤くなる。頭をブンブンと振って、煩悩を取り払う。
「……ごめん。ちょっと気が散ってた」
「俺の前で気が散るとは……中々良い度胸してんじゃねえかよ……!」
爆豪くんは、怒りMAXと言った感じだ。目を釣り上げて、BOOMBOOMと小さな爆破を繰り返している。
……煩悩は振り払ったが、真堂くんなら、という考え方は別に間違ってない気がする。彼は、私が今まで出会ってきた人間の中で、
ただ、
自分や触れたものを対象にする個性。
それは、私の
「長々と考え事しやがって……っ。死ね!」
BOOM!!
睨み合いに痺れを切らした爆豪くんの突撃。世界がスローモーションに見える。
私は、掌を前に出した。
空気を感じる。指先の肉球全てに、空気が
「
「ああ──っ!?」
──個性が、発動した。
急な無重力に戸惑いつつも、爆豪くんはすぐに状況を理解して、爆破の反動で動こうとして……それが出来ないことに、顔を歪める。
「爆破がまとまんねぇ……ッ」
言うなれば、
空気も爆風も、支えにならない。爆破の反動で多少の推進力を得ることができても、普段のようには動けない……!
「貰った──ぁえ?」
無防備の状態の爆豪くん。彼に手を伸ばして……私はその場に崩れ落ちた。
口から吐瀉物が漏れる。ここで、キャパオーバー……っ!
「まだ……」
凄まじい程の吐き気にめまいを無視。立ち上がろうにも、足を動かすことすらできない。いつの間にか近くにやってきたミッドナイトが、私の背中を撫でる。
「父ちゃん……!」
体が動かない。意識も朦朧だ。ぼんやりとした視界の中で、唖然とした表情でこちらを見つめる爆豪くんの顔を最後に、私は意識を失った。
「麗日さん行動不能。二回戦進出、爆豪くん──!」
真堂……自信に溢れてる若者。ボロボロ
轟……負けたけど気分がいい。おそらく親父の最高火力を超えるであろう技を使ったけど負けたから。
緑谷……結構余裕ある。真堂をどう攻略するか考えてる。
耳郎……エッチ。ちゃんと強い。かわいい。チア着てちんちん応援して欲しい
切島……強い。タフな男
八百万……エッチ。彼女の優秀な頭脳は離れた距離で見たちんこの詳細なデータを弾き出した。
葉隠……エッチ。露出に興味がある。でも誰にも見られないしなぁって思ってる。
爆豪……これからって時にさァ!!
麗日……個性の解釈を広げた。無重力といえども空気はあるので死ぬことは無い。純粋に、相当な推進力がないと抜け出せない。男の影響。
R18なのに全然エッチしてなくて本当に申し訳ない。それでもコメントくれたりお気に入り登録してくれたり評価を付けてくれる皆さんには本当に感謝しかありません
体育祭が終わったら隙間エッチポイント沢山あるから、どうかそれまでご辛抱を……!