※この作品はR-18です。

俺の個性は『振動』。全身バイブ人間だ   作:dogman

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第23話 表彰

 

 

 

「──それではこれより表彰式に移ります!」

 

 表彰台のてっぺんから見る景色は絶景である。右の下段にはふんぞり返った爆豪が居て、その奥には3位の常闇。左の下段には、同じく3位の塩崎が立っている。

 

「メダル授与よ! 今年メダルを授与するのは勿論この人!!」

「私がメダルを持って「我らがヒーローオールマイトォ!!」」

 

 スタジアムの天井のふちから飛び降りてきたオールマイトの言葉がミッドナイトにかき消された。……改めてイカれた身体能力してんな、オールマイト。

 コホンと咳払いをして、オールマイトは常闇の前に立った。

 

「常闇少年、おめでとう! 強いな君は!」

「もったいないお言葉」

「ただ! 相性差を覆すには、“個性”に頼りっきりじゃダメだ。もっと地力を鍛えれば、取れる択が増すだろう」

「……御意」

 

 メダルを首に掛けて、常闇の頭をポンポンと叩いたオールマイトはいそいそと移動し、塩崎の前に行く。

 

「塩崎少女、おめでとう」

「ありがとうございます。オールマイト」

「茨の巨人、凄かったじゃないか! 洗練させていけばより強力な切り札になるだろう!」

「お褒めに預かり光栄です。あの巨人は荊棘の巨人(ローズ・ゴリアテ)と言いますので、よろしければそちらで」

「なるほど! 良い名前だね!」

 

 HAHAHAと高笑いしながら、塩崎の肩をポンと叩いたオールマイトは「さて」と呟き、妙に落ち着いている爆豪の前に立った。

 

「爆豪少年。強かったな! 2位、おめでとう──」

 

 オールマイトはそう言って、爆豪の首に銀色のメダルをかけようとする。……が、爆豪はそれを拒絶した。

 

「要らねぇ。1番以外に価値はねェ」

「おいおい、そんな事はないだろ? 2位だって十分立派だぜ?」

「……世間が認めても俺が認めなきゃゴミなんだわ」

「……うむ! 相対評価に晒され続けるこの世界で、不変の絶対評価を持ち続けられる人間はそう多くない! 受け取っとけよ! 傷として! 忘れぬよう!」

「要らねっつってんだろうが!」

 

 口では拒絶しつつも、オールマイトに押し負けた爆豪は、首にかけられた銀メダルを見て顔を顰めた。

 

「さて。──真堂少年、優勝おめでとう」

「ありがとうございます。オールマイト」

 

 俺の前に来たオールマイト。表彰台と地面という立つ場所の違いがありながらも、視線はほぼ一直線で交わっている。

 デカすぎだろ。

 

「君は、強いな。……まるで、昔の私を見ているようだよ」

「お褒めに預かり光栄です。でも、流石にそれはないッスよ」

「HAHAHA! 本心だとも! 次の世代は、君を……君たちを中心に育っていくことだろう! 本当に、心強い」

 

 俺の首にメダルをかけながら、しみじみとそう言ったオールマイト。圧倒的なNo.1として君臨してきた中で色んな悩みや葛藤があったんだろうな。俺なんかでは想像することも出来ないが。

 

「さぁ! 今回は彼らだった! しかしみなさん! この場の誰にも()()に立つ可能性はあった! ご覧いただいた通りだ! 競い! 高め合い! さらに先へと登っていくその姿!! 次のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!! てな感じで最後に一言!! みなさんご唱和下さい!! せーの──」

 

「「「プルス「お疲れ様でした!!!」ルトラ……」」」

 

 俺たちのプルスウルトラはオールマイトの大声に掻き消された。あなたも雄英生だろオールマイト……!

 

「そこはプルスウルトラでしょオールマイト!!」

「ああいや……、疲れただろうなと思って……」

 

 どこか締まらないが、俺たち一年生の体育祭はこうして幕を下ろしたのだった。

 

 

 

―――◆―――

 

 

 

「おつかれっつうことで明日明後日は休校だ。プロからの指名等をこっちでまとめて休み明けに発表する。ドキドキしながらしっかり休んどけ」

 

 相澤先生はそう言うと「んじゃ、お疲れさん」と続けて教室を後にした。相澤先生がいなくなると、教室は途端に騒がしくなる。

 

「真堂が一位……ま、想像通りって言えば想像通りだな」

 

 上鳴が腕を組みながらそう言った。

 

「強かったなァ! やりあえなかったのが残念だぜ」

「さすがだな」

「強かったー」

 

 みんなの賞賛の言葉が飛んでくる。鼻が高いぜ。

 椅子に座ったまま胸を張り仰け反っていると、帰り支度を終えた爆豪に「おい」と声をかけられた。 爆豪は真剣な声色のまま言葉をつづける。

 

「今回は俺の負けだ」

「……そうだな。俺の勝ちだ」

 

 俺の返しに爆豪はキレる──ことはなく、チッと舌打ちだけして、自身の手のひらを見つめながら静かに教室から出て行った。

 

「なんか、爆豪らしくねぇな」

「負けてちょっとショックなんじゃね?」

「2位でショック受けるのは大分贅沢だけど……」

 

 まぁ、爆豪は見るからに中学まで敵無しでした、ってタイプだからな。だが、自分の負けを認められないほど愚かではない。だからこっから更に強くなりそう。知らんけど。

 

 

「てかこれからどーする? 打ち上げとかしちゃう?」

「打ち上げいいなァ! 高校生らしい!」

 

 上鳴と切島の言葉を皮切りに、みんなが盛り上がる。スマホをチラリと見ると、メッセージアプリに大量の通知が届いていた。家族のグループLINEを開くと、優勝おめでとうの言葉と共に今日は祝いにみんなで肉を食おうというメッセージが届いていた。

 

「真堂はどうする?」

「わり、家族と飯食うからパスで。明日か明後日もやってたら参加させてくれ」

「おうおう! 後でグルラに送るわ!」

 

 切島鋭児郎。ナイスガイだぜ。家族や中学の友達から来た祝いの連絡に返信しながら帰りの準備をしていると、背中をツンツンとつつかれた。

 

「お、どうした?」

「……今日、実家に泊まる?」

「あー、そうだな。折角家帰るし明日休みだし、泊まってこうかな」

「ん、分かった」

 

 俺の返事に満足したのか、小さくこくりと頷いてそう言った響香は席から立ち上がった。

 

「司も終わったでしょ?」

「あぁ。ぼちぼち帰るか」

 

 体育祭ってこともあって荷物は少ない。帰り支度は既に終わっていた。

 駄弁る為に椅子に座ってたが、それも別に今じゃなくていい。休み中でも休み明けでも、何時でも話せる訳だし。

 

「んじゃ、また」

「ばいばい」

「おう! またな!」

「またね〜」

 

 まだ教室に残っていた面々に挨拶をして、俺と響香はみんなに背を向けて扉に向かって歩く。

 

「……」

 

 ()()()()()が背中を見つめていることに気づかずに、俺たちは教室を後にした。

 

 

 

―――◇―――

 

 

 

「……良い一日だった」

 

 親父と母さん、父方の爺ちゃんとばあちゃんと共に俺の優勝を祝っての焼肉パーティーが終わり、久しぶりに実家の自室に戻った俺は、一人でベッドに寝転がっていた。

 

「優勝、優勝か」

 

 こう、今になって実感が湧いてきたというか、なんというか。誰が来ても負ける気は無かったが、本当に最後まで勝ち切れるとは、感慨深いものがある。

 

「……でも、疲れたな」

 

 マジで疲れた。界震も結構打ったし。そのお陰でだいぶ慣れて来たが、その分しっかりと疲れている。生存本能が刺激されたのかなんなのか、相棒は痛い程に勃起している。

 

 でも、一発抜く気力も体力も残っていなかった。今日はこのまま寝よう。ゆっくりと瞼を閉じて、眠りにつ──

 

──ピロン。

 

 ──こうとして、スマホに通知が届いた。23時過ぎたら自動で通知が来ない睡眠モードにしているんだが……。そんなことを考えながら枕元に置いてあるスマホを手に取る。

 

「あー、まだ10時半か。そりゃあ通知も鳴るわな」

 

 画面に表示されている22:32の文字を見て呟く。

 その下に表示された連絡アプリの通知をタップして、アプリを起動する。

 

『今からそっち行っていい?』

『てか起きてる?』

 

 メッセージの送り主は響香だった。起きてる、と送ると同時に既読のマークがついた。迎え行くわ、と送ると、『隣じゃん。いいよ』と直ぐに返信が来た。まぁ、ならいいか。

 

──ピンポーン。

 

「はええな……」

 

 最後のメッセージから数十秒も経っていない。よっ、と体を起こしてベッドに腰掛ける体勢になる。一階の玄関からかすかに響香と母さんが話している声が聞こえてくる。

 

 「夜分遅くにすみません」、とか言ってるのだろうか。

 まぁ、一人暮らしを始める前はちょくちょくこういうこともあったので、そこまで深くは話してないだろうが。

 

 暫くの談笑の後、話し声が無くなった。代わりに、階段を登ってくる足音だけが響く。少しして、コンコン、と部屋の扉がノックされた。

 

「どうぞ」

「ん、失礼します……」

 

 扉が開かれて、寝巻きのジャージを羽織った響香が部屋に入って来た。履いている短パンが辛うじて見える。脚を大きく露出しているが、寒くなかったのだろうか。

 

「……優勝おめでと」

「ありがとう。響香も良いとこまで行けてたな」

「ちょっとトナメの運が……いや、この言い訳はロックじゃないな。純粋に、ウチの実力だとあそこが限界だったかな、多分」

 

 そう言いながら響香はこちらに歩いてくる。

 髪が揺れ、シャンプーの匂いが俺の鼻をくすぐった。どうやら風呂に入ってから来たらしい。かくいう俺もご飯を食べた後、部屋に戻る前に入ってきた。

 

「親父さん達はなんて?」

「めっちゃ褒めてくれたよ。そりゃ。……でも、やっぱりちょっと悔しいや。爆豪になんも出来ずに負けちゃったし」

 

 俺の隣に腰掛けた響香は、ぐでーと上半身をベッドに預けてそう言った。サラサラとした髪がシーツの上で広がる。無意識のうちに、響香の頭に手が伸びていた。

 

「くすぐったい」

 

 そう言いつつも、響香は拒絶しない。軽く身を捩りながら、頭を撫でる俺の手を受け入れた。

 

「2日間休みだな」

「……下、お母さん達いるじゃん」

 

 響香はジトっとした目をしてそう言った。

 ……言われてみたらたしかにそうだな。響香が声を出さなければ良いとか、そういう話ではないし。

 

「きゃっ──」

 

 俺の右に居た響香を抱き抱えて、一度ベッドから立ち上がり、ちゃんとした姿勢で響香をベッドに寝かせる。

 響香と目が合った。襲いたい衝動に駆られるが、そういう気分じゃない相手とセックスするのは、俺の性癖からは外れている。

 

 そして、俺もその隣に寝転んだ。

 

「おやすみ、響香」

「……ん?」

 

 まるで予想と違った結果が訪れたかのような気の抜けた声を上げた響香。響香自身の匂いとボディソープやシャンプーにコンディショナーの匂いが混ざった独特の匂いに包まれて、俺は泥のように眠りに落ちた。

 

 

 




中途半端になりそうだから一旦ここまで
総合評価とやらが5000を超えていました。システムをよく理解してないけど皆さんいつもありがとうございます。
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