「てか真堂、あんた教習所行ってんの?」
「おう。中免取るためにな」
放課後。ヒーロー基礎学がなくて体力も余っていたので、雄英のジム施設で脚を鍛えていた俺に、オレンジ色の髪をサイドテールにした美少女──拳藤一佳が話しかけてきた。
何を隠そう、俺は教習所に通っている。俺の誕生日は4月6日、既に16歳なので、普通自動二輪車免許が取れるのだ。
「いいなぁ。私は誕生日が9月だからさ、しばらく行けないんだよ」
「はは、取ったら後ろ乗せてやるよ」
「取って一年未満のタンデムは違反でしょ」
呆れた様子でそう言った拳藤。話を変えようと、何のバイクが好きなんだ、と聞こうとして、それを遮る声があった。
「あっれれ〜!? なんでA組の真堂がこんな所にいるのかなぁ!?」
「……1年用のジムだからだろ。物間、お前も筋トレか?」
拳藤は面倒くさいのが来たと言わんばかりにため息を吐いて、自分のトレーニングに戻っていった。おいおい、コイツを放置していかないでくれよ。
「それ以外にここに来る理由があるのかい? はぁ、これだからA組はさァ……ま、いいや。今日はそんな話をしに来たんじゃない。ほら、そのマシン使うから退いてくれ」
「隣に同じのあんだろ。そっち使え」
「僕はこっち使いたいんだ。いいから早く退いてくれ──」
物間が俺の横から操作盤を覗き込み、言葉を止めた。
「……君、これ何kgに設定してるんだい?」
「420kgだ」
俺の言葉を受けて、物間は一度俺の脚に視線を向けて、再び操作盤に戻した。
「僕の記憶違いかな。君、増強系だっけ」
「おいおい。俺の個性は『振動』だよ」
「は〜。これ素でやるのかァ……」
「……瞬歩っていう振動の反動で高速移動する技があるんだけど、鍛えてないと脚の方が負けちまうんだよ。だから、脚は特に鍛えてるな」
「なるほど」と呟いた物間は、俺の脚に手を置いて、その感触を確かめ始めた。
「借りていいかい?」
「いいぞ。でも、キツくなったら
「……ふん。僕を舐めるな」
物間の個性は『コピー』。触れた相手の個性を一定時間コピーするって感じの個性だと聞いている。コピーした個性を発現させて、再び消す、ってことくらいはできるはず。
それが出来ないんだとしたら、俺の個性はコピーするべきじゃない。
「──なる、ほど……ッ」
物間はコピーした『振動』を発現させたらしい。表情が歪み、どんどんと顔色も悪くなっていく。
まぁ、無理もない。俺の個性『振動』は、
今の物間はかなり酷く酔っていると思うが、それでも『振動』を切ることはしなかった。
「……君、いつもこんな中戦ってんのかい?」
「お前の制御が甘いんだよ。その振動を打ち消す振動を送れ」
「簡単に、言ってくれるね……ッ」
「今出てる振動と真逆に振るわせろ。強さを合わせる必要はない。まず半分にしろ。それだけでもだいぶ違う」
物間が目をつぶって集中すること数十秒が経った。もしかしてコピーした個性は時間が来るまで捨てられないのか? と考えていると、物間が「ふぅ」と息を吐いた。
顔色もさっきよりマシだ。
「できたじゃん。ナイス」
「……君、これを無意識で?」
「まぁ、慣れだよ」
「…………はぁ。気に入らないねぇ」
そう言った物間は、近くのベンチに座り込んでペットボトルの水を飲む。……まだ物間の中の『振動』は発動したままである。だが、物間はそれを感じさない様子だ。
ぶっちゃけ、たった数分で適応されるとは思ってなかった。俺は個性が発現してから半年近くゲロ吐きまくってたんだけどな。物間寧人、凄い男である。
「……僕が瞬歩とやらを使えるようになるのは、一体いつになることやら。まぁもう二度と借りないけどね!」
「ははっ。言ってくれたらいつでも協力してやるよ。しっかし良い個性だな、『コピー』」
「……そうでもないさ。僕の個性じゃ、スーパーヒーローにはなれない。脇役の個──」
「なる必要ないだろ、スーパーヒーローとか」
「はぁ?」
何言ってるんだコイツと言わんばかりの顔だ。それを気にせず、俺は言葉を続ける。
「オールマイトは例外としても、一人で全部できる奴なんていねぇだろ。強い奴の個性借りて足りないところ埋めて、必要ならそいつ以上に使いこなす。十分すげぇじゃん」
「……」
「それに、主役だの脇役だのなんて助けられた側には関係ねぇし。自分を助けてくれた奴がその人にとってのヒーローだろ。違うか?」
物間は何も言わなかった。ただ、さっきまでの人を食ったような笑みは少し消えていた。
「……君さぁ、そういう恥ずかしいセリフをよく澄ました顔で平然と言えるね」
「うるせぇよ。ちょっと真面目に聞いてたくせに」
「はぁ? 聞いてないが? 君の個性は『読心』じゃないだろう? 何を根拠に言ってるんだか……」
「じゃあ返せ。俺の良い話を」
「無理な注文をするなよ。一度聞いた話をどうやって返すんだい?」
いつもの様子に戻った物間が鼻で笑った。コピーした『振動』も時間が来たらしく切れたおかげか、さっきより顔色が良いし、機嫌も良さそうだ。
「レスト終わったから次のセット入るわ。邪魔すんなよ」
「ふん。誰が君の邪魔するんだよ。君こそ、僕の邪魔しないでくれよ」
隣のマシンに座った物間。俺たちはちょくちょく話しながら一緒にレッグプレスに励んだのであった。
―――◇―――
「……」
それなりに追い込んで満足した俺は、更衣室で体操着とシャツとパンツを脱いでロッカーに放り入れ、タオルだけを持ってシャワールームでシャワーを浴びたんだ。
「……パンツがない」
シャワーを浴びるだけだからと、服を入れた後に鍵をかけながったのがミスだった。
帰ってきたら、ロッカーの中からパンツが消えていた。スマホはあるし、財布の中身も無事だ。
本当に、パンツだけが消えている。
「盗まれた──訳はないよな。流石に」
誰が好き好んで俺のパンツを盗むってんだ。それに、この更衣室に入れるのはジムに入った人間だけ。使用履歴も残るし、盗んだとしたなら相当容疑者が絞られる。
「……どっかで落としたか?」
それこそ意味が分からないが、盗まれたと考えるよりはまだ納得できる。いや、盗まれた方が納得できるか? どこで落としたんだって話だしな。
「……まぁ、帰るか……」
本当に不本意だが、仕方ない。犯人探しをして、もし物間とかが犯人だったら俺は立ち直れない。今日ノーパンのまま帰って、俺がこのことを忘れたら解決する話である。
少し悲しい気持ちになりながら着替えた俺は、ノーパンで家まで帰ったのであった。
「あ、危なかったぁ……♡」
真堂が後にしたジムの更衣室の、シャワールームの一室。
誰もいないはずのそこからした声は、誰に拾われることもなく消えていった。
―――◆―――
「……っ♡」
雄英にいくつもあるトレーニングの一つで、最新鋭のマシンが揃ってるっていうジム。それを使おうと思って、更衣室で体操着に着替えようと服を脱いだ時、ふと思った。
このままブラもショーツを脱いで中に入ったら、私に気づく人は誰もいないじゃん、って。
本当に、ただの好奇心だ。別に、露出しようとか、そういう気持ちは一切ないし。そもそも、私は元から透明だから、裸で入ってもそれが露出になるかは怪しいところだし。
変な、誰に向けたかも分からない言い訳をして、私は裸でジムの中に足を踏み入れた。
「よし、ボチボチ教習所の時間だから帰るわ。お前らはどうする?」
「僕はもう少しやってから帰るよ」
「私も」
「了解。頑張れよ」
「はっ、言われなくても」
「今度教習所の話聞かせてね」
し、真堂くんと……B組の人!? な、なんでここに真堂くんが──!
心臓が大きく跳ねた。どうしようと考えていると、真堂くんがこっちの方に近づいてくる。な、なんで……! とりあえず更衣室に戻ろう!
「く〜、良い感じに追い込めたな」
……そして、真堂くんも更衣室の中に入ってきた。
なんで!? ここ女子更衣室──ッ、あっ、間違えて男子の方に入っちゃってるじゃん……ッ!
その場にへたりこんで、咄嗟に口を抑える。
真堂くんが違和感に気づいて『振動』を使ったら、それだけで私の存在はバレてしまう。
動いて物音を立てちゃったら、その時点で終わりだ。私は真堂くんが動くのをただ待つことしか出来なかった。
私のすぐ隣を真堂くんが歩いた。もし、1歩でもこっちに寄っていたら、多分当たっていた。
そんなあったかもしれない未来を想像して、バレる恐怖よりも性的な興奮の方が大きくなった。
(ダメダメ……! 何考えてんの!)
「夏休みまでに免許取れるといいなぁ」
真堂くんは体操着を脱ぎながらそう言った。そういえば、ちょっと前にストーリーでヘルメットの写真を見た気がする。バイクの免許を取るために教習所に通ってるらしい。
真堂くんってひとりごと多いタイプなんだ、と思っていながら眺めていると、真堂くんは肌着に手をかけ、そのまま脱いだ。鍛えられた身体が、露わになった。
(で、でかい……!)
まるで漫画のキャラクターみたいな筋肉。腕の一番太いところは私の脚くらいありそうだし、身体の分厚さも凄い。
横からでも腹筋が少し浮かんで見える。お腹の横? の筋肉も凄くて、まるでボディビルダーみたいに見えた。
「よっと」
そんな掛け声を発しながら、真堂くんは体操着のズボンと──パンツを一緒に脱いだ。
(で、でっかぁ……♡)
ボロン、と、真堂くんのおちんちんが外に出てきた。
パッと見だと15cmくらいあるように見える。まるで三本目の脚のように垂れているそれから、目が離せない。
歩く度に揺れるそれを目で追っていると、タオルを一枚取った真堂くんはシャワールームに入っていった。
「あ、危なかった……♡ 今のうちに、逃げないと──」
逃げようとして立ち上がると、一つのロッカーが──真堂くんが使っていたそれが、少し開いてるのが目に入った。
「……っ♡」
変なことを考えたわけじゃない。
でも、ロッカーはまるで宝箱みたいな魅力を放っていて、気がついたら、私はそれを開けていた。
真堂司…教習所に通い始めた。普通に身体能力お化け。
物間寧人…努力している相手へのリスペクトは強い。それはそれとして、真堂のことはA組だから好きではない。
拳藤一佳…好きなバイクの種類はネオクラシック。
葉隠透…考えるより先に身体が動いていた。これから何をするつもりなのか。