あの後、麗日が気絶してセックスは終わった。
兄貴や家族と過ごし、不破先輩やB組の面々と交流を深め、教師陣に鍛えてもらう。
そんなこんなであっという間に時が経ち、期末テストまであと一週間を切っていた。
「全く勉強してねー!! 体育祭やら職場体験やらで全く勉強してねー!!」
「確かに」
上鳴が苦しそうに呻き、その隣では三奈が頭を抱えている。
俺の隣の席である。脇とブラがチラリと見えた。
ムラムラしてきた。それを打ち消すように、反対を向いて爆豪にダル絡みする。
「お前は頭良いもんな。見た目によらず」
「一言余計だクソが! ……テメェもデクの次くらいにゃ出来んだろうが」
爆豪の顔を見ていたら勃起が収まってきた。
……いやしかし、爆豪は爆豪で、女だったらそれなりに可愛いかもな。顔立ちは整ってるし、身体も締まっている。
性格に少し……いや、だいぶ難があるが、それもまた一興である。
「やっぱ全員で林間合宿行きたいもんね!」
「うむ!」
「普通に授業受けてりゃ赤点は出ねぇだろ」
「言葉には気をつけろ!!」
轟の言葉に、上鳴は胸を押さえて叫ぶ。
哀れなり上鳴電気、もう少し頭を使って個性を使えば、このクラスで一番強いだろうに。
そんな芦戸と上鳴に対して、クラス一の秀才──八百万百が助け舟を出した。
「お二人とも、座学なら私、お力添え出来るかもしれません」
「ヤオモモー!!!」
「演習のほうはからっきしでしょうけど……」
八百万は自嘲げにそう言って、ため息をついた。
そんな彼女に、響香、瀬呂、尾白が話しかける。
「ウチもいいかな? 二次関数、ちょっと応用でつまずいちゃってて……」
「わりぃ俺も! 八百万古文わかる?」
「おれも……」
「え、え、……良いですとも!!!」
嬉しそうに手を上げて八百万が叫んだ。
……まぁ、俺はいいか。そこまで勉強に困ってないし。
◆
「試験、なにするんだろうなぁ」
「ん」
「あら、拳藤さんから聞いていないのですか?」
昼休み。ランチラッシュの食堂で、俺は飯を食べていた。
一緒に居るのは響香、力動、小大、塩崎である。拳藤も来るらしいが、今はまだいない。
ちなみにメニューは塩サバ定食。脂が乗っていて大変美味しい。
というか、今のは聞き捨てならんぞ。
「アレ、拳藤は知ってんの?」
「先輩とお知り合いらしく、私たちにも教えてくださいましたわ。ここでお教えしてもよいのですが、後でご本人から聞きますか?」
「そうしようかな。どうせ、一緒に飯食うし」
「ん」
「一学期でやったことの総合みたいな感じで言ってたし、あんまむずくなさそう」
そうこう話しながらご飯を食べていると、拳藤がやってきた。ぶつくさ文句を垂れる物間を連れて。
物間は俺を見つけて、口元を歪めた。
「おやおやおや? なんでA組の君がここで食べているんだい。もしかして、向こうに居場所がないのかなぁ?」
「なにくだらないこと言ってんだよ。お前も一緒に食おうぜ」
「……まぁ、たまにはいいかもね。わざわざ空いている席を探すのも面倒だし」
物間は空いていた席に座った。
ツンケンしつつも、なんだかんだ根は素直な奴である。
「ごめんな真堂。コイツさっきA組に絡んでてさ、なんか変なスイッチ入っちゃった」
「いいよ別に。いつものことだし」
「ん」
「B組の恥部、ですね」
「君たち随分とひどいな!?」
物間が心外そうな声をあげる。
そんな物間を無視して、拳藤は俺たちの向かいに腰を下ろした。
「それより、真堂たちは試験のこと知ってる?」
「いや、ちょうど今話してたとこだ」
「なんも知らないや」
「おー、そうなんだ。実技試験、入試の時みたいな対ロボットの実戦演習らしいよ」
拳藤は特に溜めずに、普通に教えてくれた。
……良い奴だな。知っていたが、こう、普通はもうちょっと恩着せがましくするだろ。
「ふん、恩に着るんだな。僕たちはせっかくの情報アドバンテージを手放したんだから……」
おぉ、期待していた反応である。ぶつくさ言う物間を無視して、俺たちは昼食をとったのであった。
◇
「んだよロボならラクチンだぜ!!」
放課後。期末の実技がロボ相手であることを知った上鳴と三奈は、表情を明るくした。
「お前らは対人だと個性の調整が大変そうだからな」
「あぁ! ロボならぶっぱで楽勝だ!!」
「人でもロボでもぶっ飛ばすのは同じだろ。何がラクチンだアホが」
……まぁ、爆豪に同意だな。
対人対物問わず、手加減できないとヒーローとしては話にならないだろう。
「アホとはなんだアホとは!」
「うるせぇな調整なんて勝手に出来るもんだろアホ!」
……前言撤回である。調整が勝手にできるってどんな才能マンだよコイツ。
そんなことを考えていると、爆豪は緑谷を睨みつけて、舌打ちをして教室から出て行った。
そんな悪態を見て、響香が口を開いた。
「感じ悪いなぁ」
「いつも通りだな。安心感すらある」
それに、入学当時より丸くなっている気がする。
爆豪にどんな心境の変化があったのかは分からないが、非常に良い事だ。変にピリつきたくないし。
◆
「へー、ヤオママはロックなファッションが好きなんだな」
「うん。先輩がそうだったらしくて。ほんと、嫌われてるかと思ってドギマギしてたよウチ」
響香は八百万の家での勉強会で八百万のママ、ヤオママと交流を深めたらしい。
今日は期末試験当日。雑談しながら雄英に向けて歩いていく。
「司も来たらよかったのに」
「いやぁ、大人数で押しかけても迷惑だろ?」
「ま、それもそうか。あ、そういえば、ヤオモモが今度司に相談したいことあるって言ってたよ」
「相談?」
「うん、心当たりある?」
「……いやぁ?」
本当にないもんだから、仕方ない。
響香は訝しげな顔をした。
「マジでないぜ。てか、その時響香も一緒に居よう」
「そこまで疑ってないよ。でも、なんだろ」
謎は深まるばかりだ。
なにせ、心当たりがないのだから。
◆
「──それじゃあ、演習試験を始めていく。この試験でももちろん赤点はある。林間合宿行きたけりゃみっともないヘマはするなよ」
「先生多いな……?」
あっという間に演習の時間がやってきた。
ヒーローコスチュームに着替えた俺たちは、相澤先生、セメントス先生……合計で8人の先生の前に立っていた。
「諸君なら事前に情報を仕入れて、何するか薄々わかってるとは思うが……」
相澤先生の捕縛布がモゾモゾと動いた。
いやな予感がしてきた。
「入試みてぇなロボ無双だろ!!」
「花火! カレー! 肝試ー!」
上鳴と三奈の脳天気な声。
それを破るように、相澤先生の捕縛布から服を着た人型のネズミ──根津校長がひょこっと現れた。
「残念! 諸事情があって、今年から内容を変更しちゃうのさ!」
「校長先生!?」
「変更って……」
説明のために相澤先生の肩から降りる根津校長。
お、13号先生が手を貸している。なんて優しいんだ。
「これからは対人戦闘・活動を見据えたより実践に近い教えを重視するのさ! というわけで諸君らにはこれから、二人一組でここにいる教師一人と戦闘をおこなってもらう!」
「先生方と……!?」
「尚、ペアの組と対戦する教師は既に決定済み。動きの傾向や成績、親密度……諸々を踏まえて独断で組ませてもらったから、発表していくぞ」
相澤先生は一度そこで言葉を切って、少し口角を上げてから轟と八百万の方を見た。
「まず轟と八百万がチームで、俺とだ」
おぉ、面白い組み合わせだ。対相澤先生となると、それはもう単純なフィジカル対決になるだろう。
「んで緑谷と爆豪がチーム。で、相手は……」
「デ……!?」
「かっ……!?」
爆豪と緑谷は信じられないといった様子で顔を見合わせる。相澤先生が言い切る前に、二人の前に、一人の巨漢──オールマイトが現れた。早すぎて見えなかったぜ。
「私が来た! 協力して勝ちに来いよお二人さん!」
ここも面白い組み合わせだ。爆豪は顔を歪め、緑谷は額に脂汗を滲ませながらも、口元に笑みを浮かべていた。
「それぞれステージを用意してある。10組一斉スタートだ。試験の概要については、各々の対戦相手から説明される。移動は学内バスだ。時間がもったいないから速やかに乗れ」
そう言って、相澤先生はペアを発表していく。
俺のコンビは──
「また一緒だね!」
──葉隠透だ。
目の前で、浮いたグローブがぶんぶんと動く。
「……マジか」
正直言って、俺と葉隠の相性は良くない。
理由は単純で、戦闘時の俺は微弱な振動を全身から発生させて帰ってきた波により周辺をサーチしている。
それを葉隠が居るとこでやると、ヒーローコスチュームを着ていない彼女の身体の形をしっかりと感じ取ってしまう。
「まだコスチュームは届かないのか?」
「……あ、そっか。う、うん。私の髪を元にして作るらしいんだけど、培養? の期間がいるらしくて……」
思わずため息を吐く。対戦相手はスナイプ先生だ。
個性を使わないで勝てる相手じゃない。……そもそも、教師の中にそんな相手はいないのだが。
「……とりあえず、バス乗るか」
「う、うん。……ごめんね」
恥ずかしげに胸と下半身を押さえた葉隠は、身を小さくしてバスに乗り込んだ。
◆
「そ、そういえば、ピアス? つけてるんだね」
演習場に向かうバスの中。
俺の隣に座った葉隠は、空気を変えようと、俺が耳に着けている銀色のイヤーカフを指さした。
「これは発目に作ってもらったイヤーカフだよ。正式名称は……長いからいいか。振動で捉えたモノの形や位置を、視界に重ねて表示してくれるんだ」
まだ数回しか使ってないがこれはめっちゃ便利だ。
使用データが発目に送信されているらしく、それを元にアップデートもしてくれる。
「えー、すごい!」とか返ってくると思ったが、葉隠は黙ったままで、気まずい沈黙が落ちる。
少しして、葉隠は絞り出すような小さな声で言った。
「…………じゃあ、私も見えちゃうね」
──波乱に満ちた講習になりそうな予感がして、俺は外の景色をただ眺めた。
総合評価6000突破ありがとうございます。評価や感想、お気に入りやここ好きしてくれる皆さんにBIG感謝…!
真堂司…試練()が待っている。
葉隠透…見られちゃうじゃん!
発目明…振動エネルギーおもしれ!
八百万…真堂に何かを相談したいらしい。
スナイプ先生…気まずい。前の方の席で外の景色を見ていた。
《振動情報解析・位相識別・視覚補助イヤーカフ型ベイビー108号 Ver.2.3》
発目が製作した振動感知を補助するサポートアイテム。つや消しの銀色をしたイヤーカフ型で、中央には細い青色のラインが走っている。
個性『振動』で捉えた位置・形状・位相の情報を解析し、淡い青色の立体的な輪郭として、視界に重ねて表示する。 感覚だけで処理していた情報を視覚でも確認できるため、周囲の状況や対象の動きを把握しやすくなる。
発目「透明人間だって視覚化してみせますよこの子は!」