※この作品はR-18です。

背徳の教室、堕ちた聖女の放課後   作:@レーガン

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第4話:嘘と粘膜、日常への帰還

 通学路の並木道を、春の陽気が穏やかに包み込んでいる。

 アスファルトに落ちる木漏れ日。登校する生徒たちの笑い声。遠くで響くチャイムの音。

 それは、水神小夜がずっと守ってきた「平和な日常」そのものだった。

 ――けれど、今日の彼女にとって、この景色はまるで異世界の出来事のように感じられた。

(……歩きにくい)

 小夜は、なるべく不自然にならないよう、内股に力を入れながらゆっくりと歩を進めていた。

 一見すれば、いつもの凛とした立ち姿の優等生、水神小夜だ。

 だが、その膝丈のスカートの下、清楚なプリーツの奥には、重大な秘密が隠されている。

 今朝、ご主人様――柊うてなの手によって装着された、愛玩用の拘束具たち。

 一歩踏み出すたびに、胸元で鋭い痛みが走る。

 ノーブラの素肌に直接ワイシャツを纏っているため、布地が動くたびに、乳首を強く挟み込む「魔力クリップ」が引っ張られるのだ。

 チリチリとした痛みは、すぐに痺れるような快感へと変わり、小夜の意識を強制的に胸元へと集中させる。

 そして何より、股間の違和感が凄まじかった。

 下着を穿くことを禁じられた下半身。

 そこに埋め込まれているのは、遠隔操作式のローターだ。

 今はまだスイッチが入っていない。けれど、その冷たく硬質な異物感は、歩くたびに敏感な粘膜をこすり上げ、彼女が「誰の所有物であるか」を絶え間なく主張してくる。

(んぅ……っ。擦れる……)

 小夜は頬が熱くなるのを感じた。

 すれ違う男子生徒が、挨拶をしてくる。「おはよう、水神さん」。

 彼らは知らない。

 この真面目そうな委員長が、制服の下は全裸に等しく、あまつさえ性具を仕込んで登校しているなんて。

「おはようございます」

 小夜は完璧な笑顔で挨拶を返した。

 背徳感が、脳髄を甘く痺れさせる。

 みんなを騙している。先生も、生徒も、街の人々も。

 あんなに清廉潔白だった私が、今はこんなにも汚れている。

 その事実が、小夜の秘部をじわりと湿らせた。

 校門が見えてくる。

 そこは「日常」と「非日常」の境界線。

 小夜は深く息を吸い込み、乱れそうになる呼吸を整えた。

「行きましょう。……ご主人様の待つ、教室へ」

 彼女は、堕ちた聖女の仮面(カモフラージュ)を深く被り直した。

 ◇

 教室のドアに手をかける。

 ガララ、という引き戸の音が、やけに大きく響いた気がした。

 一瞬の静寂。

 そして、爆発的な喧騒。

「小夜ちゃん!!」

「小夜ッ!!」

 悲鳴のような声と共に、二つの影が猛スピードで駆け寄ってきた。

 花菱はるかと、天川薫子。

 トレスマジアとして背中を預け合い、数々の死線を潜り抜けてきた無二の親友たちだ。

「小夜ちゃん……! 小夜ちゃん……ッ! うわぁぁぁん!!」

 はるかが勢いよく小夜に抱きついた。

 その衝撃で、小夜の胸元のクリップが強く押し込まれ、鋭い激痛が走る。

「っ……!」

 小夜は反射的に声を上げそうになり、奥歯を噛み締めて耐えた。

 痛みと共に、電流のような快楽が背骨を駆け抜ける。

「よかった……! 本当によかった……! 連絡がつかないから、もうダメかと思って……! 警察にも相談して、街中探し回って……!」

 はるかは子供のように泣きじゃくり、小夜の制服を涙で濡らしていく。

 隣に立つ薫子もまた、目元を赤く腫らしていた。気丈な彼女が、これほど取り乱す姿を見せるのは初めてかもしれない。

「馬鹿野郎……! 心配させやがって……! 本当に、無事なんだろうな!? 怪我は!? 変なことされてないか!?」

 薫子が小夜の肩を掴み、食い入るように全身を確認する。

 その必死な形相。心からの安堵。純度100%の友情と善意。

 ――かつての水神小夜なら、この温かさに涙し、謝罪していただろう。

 けれど、今の彼女の心に湧き上がったのは、ドロリと黒く濁った「優越感」だった。

(あぁ……泣いてる。滑稽なくらい必死に)

 小夜は、はるかの背中を優しく撫でながら、冷静に観察していた。

 彼女たちは信じているのだ。

 小夜が被害者であり、悲劇のヒロインであり、変わらぬ親友であることを。

(ごめんね、はるか、薫子。……貴女たちが心配している「小夜ちゃん」は、もうどこにもいないの)

 今の私は、エノルミータの雌犬。

 貴女たちが憎んでいる悪の組織の、忠実な家畜。

 抱きしめられている今この瞬間も、私の体はご主人様の玩具で満たされている。

 その「秘密」の重みが、小夜の子宮をキュンと収縮させた。

 騙している。裏切っている。

 それがこんなにも興奮するなんて。

「……ごめんなさい、二人とも」

 小夜は演技たっぷりに声を震わせ、うつむいた。

 昨夜、ベッドの上でうてなと練習した通りの、完璧な「被害者」の演技。

「私、エノルミータに捕まって……暗い部屋に閉じ込められて……」

「っ! やっぱり……!」

「怖かった……すごく、怖かった……」

 嘘ではない。確かに捕まったし、暗い部屋にもいた。

 ただ、そこで行われていたのが拷問ではなく、甘美な調教だったというだけだ。

「でも、隙を見て逃げ出したの。……これだけを持って」

 小夜はポケットから、ある物を取り出した。

 ハンカチに包まれた、青い宝石の欠片。

 真っ二つに砕け散った、マジアアズールの髪飾り――変身アイテムの残骸だ。

 それを見た瞬間、はるかと薫子の顔色が蒼白になった。

「そ、れ……嘘でしょ……?」

「これが……砕けたのか……?」

 魔法少女にとって、変身アイテムの破壊は「死」に等しい。

 魔力の源泉を失い、二度と戦いの場に戻れないことを意味する。

「うん……。あいつらに、壊されちゃった……」

 小夜は瞳に涙を溜め、儚げに微笑んだ。

「もう、変身できない。……みんなと一緒に、トレスマジアとして戦うことはできないの。ごめんなさい、私だけ……私だけ、こんな……っ」

 ポロポロと涙を流す小夜。

 それは「悔し涙」ではなく、演技に酔いしれる「背徳の涙」だったが、二人には痛いほど悲痛な姿に映った。

「謝らないで!!」

 はるかが叫び、さらに強く小夜を抱きしめた。

「生きててくれてよかった! 変身できなくたって関係ないよ! 小夜ちゃんは私たちの仲間だし、リーダーだよ!」

「そうだぞ、小夜。お前が生きてるだけで十分だ。……戦いのことは気にするな。これからは、私たちが倍働く」

 薫子が拳を握りしめ、強い瞳で誓う。

「お前はもう戦わなくていい。エノルミータへの借りは、私たちがきっちり倍にして返してやる。……これからは私たちが、全力でお前を守るから」

 熱い言葉。誓いの言葉。

 友情の輝きが、教室を照らすようだ。

 ――だが、その光が強ければ強いほど、小夜の中に落ちる影は濃くなる。

(守る? 貴女たちが私を? ……ふふ、おかしい)

 小夜は、はるかの肩越しに、冷ややかな笑みを噛み殺した。

 お腹の奥が熱い。

 愛液が、じわりと太ももを伝いそうになる。

(私はもう、守られるお姫様じゃないの。……悪の組織に飼われる、卑しい雌犬なのよ)

 戦わなくていい?

 ええ、そうね。私はもう「正義」のためには戦わない。

 私が尽くすのは、エノルミータのため。ご主人様のため。

 貴女たちが倒そうとしている「悪」こそが、今の私の全てなのに。

「……ありがとう。二人とも、大好きだよ」

 小夜は甘い声で囁いた。

 それは友情の言葉の皮を被った、決別の言葉だった。

 ひとしきり泣いて、落ち着きを取り戻した二人。

 チャイムが鳴り、ホームルームの時間が近づいてくる。

 小夜は自分の席へ向かった。

 教室の中央、窓際。

 そして、その数席後ろには――。

 柊うてなが、座っていた。

 地味で目立たない、クラスの背景のような少女。

 スケッチブックを広げ、何やら絵を描いているふりをしている。

 だが、小夜が席に着こうとした瞬間。

 うてなが顔を上げ、視線が交差した。

 ニヤリ。

 ほんの一瞬。誰にも気づかれないほどの刹那。

 うてなの口角が、嗜虐的に吊り上げられた。

 その瞳は、教室の喧騒など意に介さず、小夜の「中身」だけを見透かしていた。

(――ッ!)

 その視線だけで、小夜の心臓が早鐘を打った。

 リモコンなど使われていないのに、条件反射で胸の先がツンと尖り、股間がキュンと疼く。

 ご主人様が見ている。

 親友たちに囲まれ、被害者面をしている「悪いペット」を、楽しそうに観察している。

 小夜は顔を赤らめ、慌てて前を向いた。

 心臓のドキドキが止まらない。

 はるかや薫子と話している時とは比べ物にならないほどの、強烈な高揚感。

(あぁ……ご主人様。……私、もうダメかもしれません)

 小夜は震える手で教科書を開いた。

 文字など頭に入ってこない。

 全神経が、背後の席に座る「飼い主」と、制服の下に隠された「秘密」へと集中していく。

 これから始まる授業。

 それは小夜にとって、勉学の時間ではない。

 誰にも知られず、声を出さず、快楽に耐え続けるという……ご主人様から与えられた「極上の任務」の時間なのだ。

 キーンコーンカーンコーン……。

 予鈴が鳴る。

 教室のドアが開き、教師が入ってくる。

 「起立、礼」。

 号令に合わせて立ち上がりながら、小夜は感じていた。

 ポケットの中で、うてなの指が、リモコンのスイッチに触れる気配を。

 日常という名の皮を被った、背徳の放課後(レッスン)が、今幕を開ける。

(第4話 完)

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