1時間目の授業が始まった。
科目は数学。教室には、教師の単調な声と、チョークが黒板を叩く音だけが響いている。
窓から差し込む陽光、整然と並ぶ机、ノートを取る生徒たちの背中。
そこは、規律と静寂に支配された「聖域」であり、優等生・水神小夜が最も得意とするフィールドだった。
――しかし、今日の彼女は、シャープペンシルを握る指先が白くなるほど震えていた。
(……っ、んぅ……!)
小夜は背筋をピンと伸ばし、黒板を見つめるふりをしながら、机の下で必死に太ももを擦り合わせていた。
制服のブラウスの下、誰にも見えない場所で、胸の突起を挟む「魔力クリップ」が熱を帯びているのだ。
布が擦れるたびに、電流が走るような鋭い刺激が脳髄を揺らす。
ノーブラの胸は敏感になりすぎていて、ワイシャツの繊維一本一本の感触さえ拾ってしまう。
(痛い……でも、ご主人様が着けてくれた痛み……)
小夜は下唇を噛み締め、痛みを愛おしむように反芻した。
そして何より、彼女を狂わせているのは、股間に埋め込まれた異物だった。
ウィィィィン……。
微かな、本当に微かな駆動音が、小夜の直腸を伝って響いた。
数席後ろに座る柊うてなが、遠隔ローターのスイッチを入れたのだ。
最弱の振動。だが、昨夜の過酷な開発で充血しきった小夜の粘膜には、それが雷鳴のように響いた。
(あっ、はじまった……! 授業中なのに……みんな静かなのに……!)
小夜の瞳が潤み、焦点が合わなくなる。
クリトリスを直接こする無機質な振動。
それが、「貴女は生徒じゃない。ただの雌犬よ」と囁き続けているようだ。
小夜の脳裏に、昨夜アジトで流し込まれた快楽の記憶がフラッシュバックする。
あの触手の感触。うてなの視線。
中が、熱い。
下着を着けていない秘部から、愛液がじわりと滲み出し、内腿を伝って椅子を汚そうとしている。
(ご主人様……見てますか? 私、今、こんなに濡れてます……)
背徳感が、ローターの振動以上の快楽となって小夜を襲う。
彼女はそっと後ろを振り返りたい衝動に駆られたが、ぐっと堪えた。
「命令があるまで動くな」と言われているからだ。
この放置プレイもまた、ご主人様からの愛。
カチッ。
背後で、ボールペンのノック音がした。
それは、二人だけにしか分からない合図。
「振動を強くする」、そして「耐えろ」という命令。
ブブブブブブブ……!
「んっ……!」
振動が一段階、跳ね上がった。
小夜は思わず声を漏らしそうになり、咳払いで誤魔化した。
目の前のノートに書かれた数式が歪んで見える。
「微分・積分」の文字が、「服従・屈服」に見えるほど、頭の中がピンク色に塗り潰されていく。
(だめ、声が出ちゃう……! 先生に当てられたらどうしよう……)
恐怖。羞恥。
だが、ドMに堕ちた小夜にとって、そのスリルこそが最高のスパイスだった。
バレたら終わる。優等生の仮面が剥がれ、ただの変態だと知れ渡る。
――そうなってしまいたい。
ご主人様のせいで、みんなの前で潮を吹いて、社会的に死んでしまいたい。
その破滅願望が、蜜の分泌を加速させる。
「……小夜?」
隣の席の薫子(マジアサルファ)が、小夜の異変に気づいて小声で話しかけてきた。
「顔赤いけど、大丈夫? 貧血か? やっぱり昨日の疲れが……」
純粋な心配。100%の善意。
薫子の真剣な視線は、小夜の顔に向けられている。
だが、もし彼女の視線が少し下、机の下に向けられていたら?
小夜がだらしなく内股を震わせ、スカートの中が湿気と熱気でムレ返り、生々しい雌の匂いを漂わせていることに気づいただろう。
「だ、大丈夫……。ちょっと、熱っぽいだけだから……気にしないで……」
小夜は震える声で嘘をついた。
親友を騙す背徳感。
薫子は私が「被害者」として苦しんでいると思っている。
でも本当は、貴女が憎む悪の親玉にイかされているのよ?
(あぁ……薫子。貴女は何も知らない。私だけが知っているの……)
小夜は薫子に申し訳なさを感じるどころか、その無知を嘲笑うような、昏い優越感を覚えた。
嘘をつくたびに、子宮がキュンと収縮し、ローターを強く締め付ける。
(ご主人様、もっと……もっと私を、悪い子にしてください……!)
小夜は心の中で懇願した。
理性が焼き切れる寸前の、トランス状態。
その思考が伝わったかのように、後ろの席から強烈な殺気(ラブコール)が届く。
――最大出力。
ブブブブブブブブブブッ!!
「あぁっ……!!」
小夜はガタリと椅子を鳴らして、机に突っ伏した。
限界だった。
強烈な振動が脳天を突き抜け、子宮の奥が痙攣し、大量の蜜が噴き出す。
授業中、静まり返った教室の真ん中で、トレスマジアの元リーダーは、誰にも知られずに絶頂(イク)という大罪を犯したのだ。
ビクン、ビクンと身体が跳ねるのを、机に押し付けることで必死に隠す。
白目を剥きそうになるのを堪え、小夜は涎を飲み込んだ。
「水神? どうした? 具合が悪いのか?」
数学教師が心配そうに教卓から降りてくる。
クラス中の視線が集まる。
うてなの視線も、その中に混じっているはずだ。
「よくイったわね」と笑っているだろうか。それとも「我慢できなかったの?」と呆れているだろうか。
どちらにせよ、ご褒美だ。
小夜は机に顔を埋めたまま、荒い息を整え、必死に声を絞り出した。
「す、すみません……。ちょっと、目眩が……」
顔を上げた小夜の瞳は、とろとろに溶け、涙で濡れていた。
頬は上気し、唇は艶めかしいほど赤い。乱れた前髪が汗で額に張り付いている。
それはどう見ても「体調不良」ではなく「情事の後の顔」だった。
しかし、彼女の「真面目な委員長」というブランドと、「誘拐事件の被害者」という嘘が、周囲の認識を歪める。
「無理するなよ。……天川、保健室に連れて行ってやれ」
「はい! 行こう、小夜。肩貸すから」
薫子に支えられ、教室を出ていく小夜。
その足取りは、快楽の余韻でふらついていた。
立ち上がった瞬間、椅子には湿った跡が残っていたかもしれないが、小夜は素早くスカートを直してそれを隠した。
去り際、小夜は一瞬だけ振り返る。
そこには、頬杖をついて、この上なく愉しそうにニタニタと笑う、悪魔の姿があった。
うてなは口パクで、こう告げた。
『あとで、トイレに来なさい』
その命令に、小夜の子宮が再び疼いた。
まだ足りない。もっと欲しい。
(はい……ご主人様。……すぐに参ります……♡)
廊下に響く上履きの音には、ペチャ、ペチャという、太ももを伝い落ちる愛液の音が混じっていた。
だが、それを知るのは、リモコンを握る悪魔と、堕ちた聖女だけだった。
(第5話 完)