5時間目、体育。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
女子更衣室は、着替えを済ませた生徒たちの喧騒で満ちていたが、それも次第に遠のいていった。
「小夜、先に戻ってるぞー」
「うん、薫子ちゃんたち先に行ってて。私、少し髪を直してから行くから」
薫子たちを先に教室へ行かせると、小夜は更衣室の鏡の前で時間を潰した。
やがて、更衣室から他の生徒の気配が消え、静寂が訪れる。
残っているのは、小夜と――もう一人だけ。
「……やっと二人きりになれましたね、ご主人様」
ロッカーの陰から姿を現したのは、柊うてなだった。
彼女もまだ体操服(ブルマ)姿のままだ。
「ええ。はるかさん達のガードが堅すぎて、退屈してたところよ」
うてなはニヤリと笑い、更衣室の奥にある長椅子(ベンチ)に腰掛けた。
そして、気だるげに首を回す。
「あーあ、疲れた。良い子のフリをしてる貴女を見てるのも飽きちゃったし……肩も凝ったわ」
「お疲れ様です、ご主人様。……私にお揉みさせてください」
小夜はすぐに駆け寄り、うてなの背後に回って手を伸ばそうとした。
しかし、うてなはその手を払いのけた。
「手じゃないわよ」
「え……?」
「手で揉むなんて普通すぎるわ。……貴女にはもっと役に立つ『部位』があるでしょ?」
うてなの視線が、小夜の胸元に注がれる。
体操服の上からでもはっきりと分かる、規格外のボリューム。
うてなは意地悪く微笑み、命令を下した。
「その無駄に大きな胸で……私の肩を擦りなさい」
「む、胸で……ですか?」
「そうよ。ただの脂肪の塊なんだから、クッション代わりに使いなさい。優しく、丁寧にね」
小夜の顔がカッと熱くなる。
自分の胸を、ただのマッサージ道具として扱われる。
その侮蔑的な扱いが、小夜の子宮を疼かせた。
「はい……。喜んで、クッションになります……♡」
小夜はうてなの背後に密着した。
そして、豊かな双丘をうてなの華奢な肩に押し付けた。
むにゅぅ、と柔らかい肉が変形し、ご主人様の肩を包み込む。
「ん……っ、本当に柔らかいわね……」
「ご主人様……気持ちいい、ですか……?」
小夜は身体を揺すり、胸をグリグリと押し付け、擦り上げた。
体操服の布地越しに、温かさと弾力が伝わる。
乳首には魔力クリップが挟まったままだ。それがうてなの肩甲骨あたりに当たり、チリチリとした痛みと快感を小夜に与える。
「ええ、悪くないわ。……もっと強く、体重を預けなさい」
「はいっ……あぁっ、ご主人様の匂い……」
小夜はうてなの首筋に顔を埋め、さらに強く胸を押し付けた。
もはやマッサージというよりは、求愛行動だ。
自分の最も女性的な部分を、敬愛する主に擦り付ける。
その行為が、小夜を「雌」の本能へと引き戻していく。
その時。
ガララ、と更衣室の扉が開く音がした。
「あれー? 私のゴムどこだっけー?」
女子生徒の声だ。クラスメイトが忘れ物を取りに戻ってきたのだ。
二人はビクリと体を強張らせた。
こんな体勢を見られたら、言い逃れできない。
「小夜、こっちよ!」
うてなは小夜の手を引き、近くにあった縦長の掃除用具ロッカーを開けた。
モップやバケツが置かれている狭い空間。
二人はそこへ滑り込み、内側から静かに扉を閉めた。
「んっ……!」
狭い。あまりにも狭い。
二人は向かい合う形で密着し、身動きが取れない状態になった。
暗闇の中、互いの吐息がかかる距離。
小夜の豊かな胸がうてなの胸に押し付けられ、股間と股間がぴったりと合わさる。
(ご主人様と……密着してる……)
小夜の心臓が早鐘を打つ。
薄暗いロッカーの中は、二人だけの世界。
埃っぽい匂いと、互いの甘い汗の匂いが混じり合い、脳髄を痺れさせる。
「しーっ……。声を出したらバレるわよ」
うてなが小夜の耳元で囁く。
その吐息が敏感な耳をくすぐり、小夜は背筋を震わせた。
「あ、柊さん。まだいたんだ?」
「……」
外から女子生徒の声がする。うてなの姿が見えないため、独り言のように響く。
彼女は自分のロッカーをごそごそと探っているようだ。
ほんの数十センチ先。
薄い鉄板一枚を隔てて、日常と背徳が隣り合わせにある。
そのスリルに、うてなの嗜虐心が疼いた。
彼女は暗闇の中で手を伸ばし、小夜の体操服の中に潜り込ませた。
「っ!?」
小夜が息を呑む。
うてなの指が、直に乳首を挟んでいるクリップを弾いたのだ。
パチンッ!
鋭い痛みが走る。だが、声を出してはいけない。
「んぐっ……ぅ……!」
小夜はうてなの体操服を握りしめ、必死に声を殺した。
涙目でご主人様を見つめるが、暗闇の中のうてなは楽しそうに笑っている気配がした。
さらに、うてなは太ももを割り込ませ、小夜の股間に自分の膝を押し当て、ぐりぐりと擦り始めた。
(だめ、そんなことされたら……っ!)
振動するローターの上から、ご主人様の膝が圧迫する。
逃げ場のない快楽。
小夜はうてなに抱きつくようにして体を支え、ガクガクと内股を震わせた。
「あったー! じゃあねー、お先ー」
女子生徒が足早に出ていく音がする。
だが、二人はロッカーから出ようとはしなかった。
静寂が戻った更衣室。
ロッカーの中だけが、荒い呼吸音と熱気で満たされていく。
「はぁ……はぁ……ご主人様……」
「興奮した? 小夜」
うてなは小夜の腰に腕を回し、さらに強く抱きしめた。
汗ばんだ肌と肌が張り付く。
「はい……っ、誰かに見つかるかもって思ったら……中が、きゅんきゅんして……」
「変態ね。……このままここで、サボっちゃいましょうか」
うてなは小夜の首筋にキスを落とした。
狭く、暗く、熱い鉄の箱の中。
二人は互いの体温を貪るように、深く口付けを交わした。
午後の授業を告げるチャイムが遠くで鳴っていたが、堕ちた二人の耳にはもう届かなかった。
(第9話 完)