※この作品はR-18です。

千賀家の淫らな日常   作:ユキユキコ

2 / 6
2話

『朝日の間』にはすでに、夜伽衆のほぼ全員が集まっていた。

 

 

 

俊介が足を一歩踏み入れると、談笑の声が止み、弾けるような笑みと、屈託のない挨拶が投げかけられた。

 

 

 

「おそようございます、若様」

 

 

 

濃紺の着物をまとった、銀髪の美女がくっくっくっと腹を抱えながら笑いだす。

 

 

 

「昨晩はさぞお楽しみだったのでしょうな。いや、毎晩のことでしたか。しかし、一人でお慰めになるとは寂しいではありませんか。次からはわたくしめも呼んでいただきたいものです」

 

 

 

と言うと、艶のある長い髪を耳もとにかけながら、もう片方の手でジェスチャーをはじめだす。

 

掌を丸めて筒状にすると、小刻みに振り始めたのだ。

 

「こがね様」

 

隣に座る羽夜が、たしなめるように小声でささやくが、まるで聞く耳を持たない。

 

動きがより激しさを増してゆく。フィナーレの合図なのだろう。指をわななかせると、驚いたように小さく口を開き、片目をつぶってみせた。

 

 

 

俊介が顔を赤らめ、視線をそらすと、朝食の並んだ座卓にしなだれかかったまま、こちらを見つめる少女と目があった。

 

 

 

「わーかー、おっそすぎー」

 

 

 

少女は恨めしそうに睨みつけると、両手を勢いよく、座卓に叩きつけた。いや、叩きつけたのは、二本の腕ばかりではない。

 

少女の下半身からのびる触手が、うねうねとうごめきながら、宿主の感情を代弁するかのように連打し始めている。

 

叩きつけるたびに、粘り気を帯びた水音のようなものが立つ。

 

触手の先端は、無数の吸盤が連なった楕円状となっていて、そのくぼみから粘液がとめどなく発生している影響らしい。

 

座卓の天板から触手が離れるたび、半透明な糸が尾を引いた。

 

 

 

「人化の術をかけておけと言っておいたのですが......」

 

 

 

羽夜がうつむく。

 

 

 

「堅苦しい席じゃないし、玲奈がくつろげる姿が一番だから」

 

 

 

と、俊介が答えた。夜伽衆ーー羽夜やこがねや玲奈たちーーは、本家の血筋を引く者を補佐し、護衛する役目を持つ。

 

 みだりに生の姿を晒さないことが掟とされていた。

 

 人化の術を使うことで、モンスター娘としての本性を隠し、主君に不快感や恐れを抱かさせないためだという。

 

 

 

 触手や蜘蛛足、グロテスクな長い舌.....。

 

 

 

 先祖たちは、彼女たちを異形のものとして、忌み嫌ったというが、俊介にとっては信じがたい話だった。

 

 

 

「慣れれば、こちらの姿の方が楽なのだが、玲奈殿はあいかわらずよの」

 

 

 

「まったく、若様は甘すぎます!」

 

 

 

羽夜が唇を尖らせるが、玲奈はどこ吹く風とばかりに余裕綽綽だ。

 

 

 

「ところで竜蛇は?」

 

 

 

「りゅうちゃん、お寝坊さんだから。まだまだ夢のなか」

 

 

 

俊介は、ほっと胸を撫でおろす。もしも竜蛇よりも遅く起きていたら、お仕置きを受けるところだった。

 

 

 

「はやくご飯にしようよ、わか。もうお腹ペコペコ」

 

 

 

駄々っ子のようにごねる少女の姿に、大人たちは仕方がないとばかりに首を振る。

 

 

 

「竜蛇様には申し訳ありませんが......。若様、よろしいですか?」

 

 

 

ああ、とうなづく俊介。どこに座ったものかと、きょろきょろすると、

 

 

 

「わかは、れいなの隣りだよ」

 

 

 

毎朝恒例、従者による席決めのジャンケンは、玲奈に軍配があがったらしい。

 

触手を器用にのばし、手招きをしている。羽夜がなにか物言いたげに、こちらを見つめてきた。

 

 

 

俊介もジャンケンに参加したいと訴えているのだが、男子禁制とのことだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。