野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~ 作:XX(旧山川海のすけ)
天上界のある島の、海岸線。
潮の臭いが立ち込めるそこに。
コンクリートで出来た、船着き場がある。
その場所に今、十数隻の輸送船があった。
この移民のために、急遽建造した十数隻だ。
「いよいよ、脱出ですね父様」
ここまで指揮をとってきたケノは嬉しそうだ。
そこに名残惜しさのようなものは無い。
……元々この島は、レッサーヒューマンにとっては地獄の島だしな。
「やあやあケノさん」
そこに軍服の眼鏡男……スプリス氏がやってくる。
結局、グレーターヒューマン側の窓口はずっと彼で。
最後までケノと交渉していた。
「スプリスさん、ありがとうございました」
ケノはそんな彼と愛想よく言葉を交わす。
スプリス氏は
「それではまあ、寂しくなりますが」
言葉だけは、友好的だ。
「手助け、感謝致します」
そしてそれに対してまるでまともに返さないケノ。
意思表示だな。
私たちはこの地獄の島を出ていけて嬉しいです、とは言いにくいからさ。
そしてそのまま、最後のやや不毛な会話を交わし。
俺たちが船に乗り込み、出発するときがやってきたんだ。
……大体、船で片道3時間くらいらしい。
海流の影響で多少前後するらしいけど。
それで何往復もして、この島のレッサーヒューマンを全員新天地に輸送する。
……結局、グレーターヒューマンは今後は労働奴隷にレッサーヒューマンを使うことを止めるらしい。
300年前のことだけでなく、今回のことで完全に懲りたようだ。
このままレッサーヒューマン奴隷を使い続けていると、また災厄の芽になる可能性がある。
そう思ったみたいだ。
……あと。
レッサーヒューマン女性はほぼ全てこっちにいるから、繁殖させるのが難しいのもあるんだろうな。
善意でこうなってないのがまた、人間社会あるあるだわ。
そして
「ゲンパチ兄様、ダイカク」
出港し。
大海原の船の上で。
ケノが兄と弟に、こう言っていた。
「……もし、この脱出計画が全てグレーターヒューマンの罠だった場合、命ある限り報復をお願いしますよ」
まあ、ソウスケの不運察知センサーに引っ掛かっていない以上、罠は無いとは思うけどな。
そういう気遣いは大事だ。
こういうときは、やられたらやり返さないといけないものな。
そして俺たちは、無事に新天地に到着した。
天上界のある島……
今後は天上島って呼ばれることになる島。
そこから脱出し。
どんな形なのか、どこまで広いのか。
全く分からない暗黒の大地に。
俺たちはまず、適当な場所を探して。
そして慣れ親しんだテント……大小さまざまなテントを立て。
住処を確保。
そして近場で鹿が居たので、捕獲して食事にした。
やっと、理不尽に命を奪われてしまう状況から解放された。
不満なんてあるはずが無かった。
……だけど。
その3日後あたりに。
俺たちが天上島にいたとき、危惧していたことが起こったんだ。