※この作品はR-18です。

野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~   作:XX(旧山川海のすけ)

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最終話 そして世界はこうなった

「シルビア、良く頑張ってくれたな」

 

「トーマス、あなたのためだもの」

 

 ……気が付くと。

 また俺は転生していた。

 

 フセは?

 

 シノは? ケノは?

 ソウスケは?

 

 孫たちは……?

 

 最初色々混乱したけど

 

 色々分かって来て。

 これがある種の俺への報酬であり、罰なのかもしれないなと思った。

 前世では、仲間のためとはいえ、非道なことをいっぱいしたからな。

 モノホンの地獄には送らないけど、お前が築いた家族は取り上げる。

 

 ……そういうことなのか。

 

 産婦人科の病室で、新しい母に抱かれながら。

 俺は……

 

 父親が、犬顔獣人。

 母親が……犬耳女。

 

 ああ、なるほど。

 

 身体は良く動かないけど、なんとか日付が確認できないかと苦労して。

 1週間後くらいに、やっとわかったよ。

 

 今は……独立歴572年か。

 

 あのときから、大体500年くらい経ったんだなぁ……

 

 新天地に渡って来て。

 

 俺たちは独自の暦を設定したんだ。

 もう天上界は関係無いという意思表示で。

 

 そっか……500年経ったのか。

 あれから、世界はどうなったんだろうか……?

 

 

 

 そのまま俺は、新しい両親にキチンと愛して貰い。

 なんとか前世の家族が1人もいないことの寂しさに耐えることが出来た。

 

 そして2年で大人になり。

 学校に通うようになった。

 

 犬人間は約2年で人間年齢で言うところの20才に到達し。

 そこからゆっくりと人間のように老化していく。

 

 大人になるまでの期間があまりに早いので、学校に通い出すのが成人してからで。

 

 読み書きに関しては、学校に上がるまでに各家庭で終わらせるのがデフォ。

 そして約8年の教育期間で、おおよそ高校生クラスの知識を身に着ける。

 それがこの世界の方針だった。

 

 そこで習ったこの世界の現在は……

 

 まず、天上界はまだあった。

 滅んで無かった。

 

 ……2000年続いたのは伊達じゃないんだなぁ。

 

 なんだか、感慨深いものがあった。

 

「天上島は、我々狼人(オオカミビト)の祖先が真人(シンジン)たちに奴隷として使役されていた場所です」

 

 教室で犬耳の中年女性が黒板に文字を書いている。

 犬耳の女教師……

 

 俺たち犬人間は今は「狼人(オオカミビト)」と名乗ってて。

 天上島のグレーターヒューマンたちは、今は真人(シンジン)と名乗っているらしい。

 

 で、今はどうも国交があるようだ。

 

 ……ちょっと嬉しかった。

 500年経って、和解に至ったんだな、みたいな。

 

 かなりの数の観光客や、留学生がこの俺たちの国に来てるらしい。

 

 ただ、真人と狼人の結婚は禁止されているようだ。

 理由は……

 

 生まれてくる子が、種族としては狼人になるかららしく。

 放置していると、真人が絶滅する。

 そういう危惧かららしい。

 

 ……まぁ、そういうのは分かる。

 それがまた、確執の原因になりかねないしな。

 先手は打つだろうさ。

 

 

 

「神犬エイト様と、女神フセ様に感謝を」

 

 日曜日。

 俺は両親と一緒に神殿に来ていた。

 

 神犬教の礼拝のために。

 神殿は木造で、どこか神社の社に似ていた。

 

 ……彼らの宗教なんだけど。

 自分たちの最初の祖先である前世の俺と、フセを夫婦神として崇めるもので。

 

 神犬教って呼ばれている。

 

 天上島で奴隷の扱いを受けていた我々に、あるとき神の使いたるエイト様とフセ様が遣わされ、我々に我々のための世界を与えて下さった。

 皆、感謝するんだ!

 

 ……そういうことを説く宗教だ。

 

 正直、ちょっとむず痒いものを感じるんだが。

 

 ……メッチャクチャ、美化されててさ。

 

 俺はフセは最高の奥さんだったと胸を張って言えるけど。

 彼女だって、嫉妬で苦しんだり、憎悪を燃やしたり、甘えたりする普通の人間の部分はあったんですけど。

 

 ……でも、そういうことを言ったら多分袋叩きにされるよなぁ。

 

 熱心に社に向かって手を合わせている犬人間たちに交じりながら、俺もその振る舞いに合わせていた。

 

 

 

 そして。

 この時代に転生して来て。

 いっこだけ拭えない、すごく嫌なことがあった。

 

 その日、俺は家族で焼き肉に来ていたんだ。

 俺が転生して来たこの時代。

 前世は昭和っぽかったけどさ。

 今は平成くらいまでレベルアップ。

 

 そんな町並みの、かなり便利な世の中の、俺にとっては慣れ親しんだ焼き肉屋。

 

 そこで俺は自分のカルビ肉を網で焼きながら、テレビを見てたんだ。

 店のテレビを。

 

 テレビは、こんなニュースを流していた。

 

『本日朝6時頃、熊居住区から熊が十数頭フェンリルガーデンに入り込む事件があり、狼人軍駆除隊が出動いたしました。人的被害はありませんでしたが、近隣住人の不安の声が……』

 

 ああ……

 やっぱり、こう言うのは無くならないのか。

<了>

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