野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~ 作:XX(旧山川海のすけ)
そしてその日の昼。
レッサーヒューマンの長老たちがフセを呼び出して来た。
使者が天幕に来たんだ。
「フセ様、長老方がお呼びです」
彼らはフセにそう告げて来た。
フセはそれを受け入れ、出向く準備を整える。
それは髪を鏡の前で整えたり
化粧をしたりだけど。
使ってるものは、あまり良いモノには見えなかったな。
長老たちは、集落に何個か存在する木造の建物に集まっていた。
入ってみると、横一列に並んで座っていた。
……実際に見てみると
長老、と言われて老人を想像したんだが。
見た目アラフォーかアラフィフの男性ばかりだった。
その数、4人。
彼らは
「フセよ。よく来てくれた」
「座るがいい」
そう、フセに着席を促した。
言われるままにフセは、毛皮の敷物の上に腰を下ろす。
俺はその隣に座った。
そして
「ヨースケのことは残念だった」
「代わりの男は今日中に選定し夜には派遣する」
「お前はその男を愛する努力を……」
「そのことですが」
フセはそんな長老たちの発言を遮り
「私の夫はすでに決めました。赤ちゃんももう出来ています」
そう、言ったんだ。
長老たちは動揺した。
「本当か!?」
「とうとう待望の運命の子が!?」
「誰の子だ!?」
……概ね、好印象。
怒りは無かったな。
子供であればなんでも良いんだろう。
長老たちにとってみれば。
だけど
「彼です!」
そう言ってフセが俺に抱き着いたとき、長老たちは凍り付いた。
そして
「……フセよ。お前はヨースケを心から愛していたな。辛いのは分かるが……」
「フセよ……それは駄目だ」
「クッ……!」
「どうすればいい? フセは我らの希望なのだぞ……?」
……全員、泣きそうな顔をしていた。
フセが狂ったと思ってるんだな。
気持ちは分かるさ。
俺が彼らなら、きっと同じ結論に達する……
けど
「長老様方! 私に赤ちゃんができればいいんでしょう!? 全てはそれが目的なのでしょう!?」
フセが声をあげてくれたんだ。
……彼女は弱い女ではないからな。
主張せねばならないことは、正面から堂々と主張する女性だ。
「それが出来たと言ってるんです! 喜んでください!」
だけど誰もその言葉に納得しなかった。
「フセよ。違うのだ。それはお前の妄想なのだ」
「ヒトと犬の間では子供は出来ない。これは世界の法則なのだよ」
「ヒトはヒトとしか子を成せんのだ。……ワシはグレーターヒューマンの研究資料を盗み読みしたときにその結果を知った」
「やはりそうなのかライデン!?」
……なるほど。
この世界の科学でも、そういう実験をした奴が居たんだな。
どうやったのか、少し考えたくないけれど。
フセは
「ですから! 私が彼の子を身籠ったのは本当です! 見てなさい! 半年もすれば私のおなかはパンパンに膨れて来て……」
そのとき。
俺はいい加減決断しなきゃいけないと思った。
フセの着ているワンピースの袖を噛んで、引っ張ったんだ。
それに気づいたとき
「あなた……分かりました。お任せします」
フセは俺に交渉の場を譲った。
事前に決めていたんだ。
その仕草をしたときは、役割を取り換えよう、って……