野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~ 作:XX(旧山川海のすけ)
フセは俺の妻として、俺の目の前にカードを並べていってくれた。
並べ方に気品を感じる。
被差別階級たるレッサーヒューマンの生まれなのに、フセはこのあたりキチンとしてる。
彼女を育てたのは誰なのか知らないが、そういうことを教えられる人間がレッサーヒューマンには居るってことなのか?
今更だけど。
俺はカード……というか、メモ帳の紙に書かれた文字を前足で押さえる行為を繰り返した。
押さえたのは
『こんにちは』
『はじめまして』
最初、長老たちは
「フセ、犬の調教が凄まじいのは認めるが、だからと言って現実から逃げるのは……」
俺の行為をただの犬の芸だと思って取り合わない。
なので俺は……
もうひとつ準備したものをフセに出させた。
それは……
「……? 五十音の表ではないか」
「降霊術でもするつもりか……?」
そう。
たった今、長老連中が言った通り。
それは五十音表。
ちょうど、こっくりさんをするときに使うみたいな。
フセの天幕にあった、一番大きな紙を流用して作ったんだ。
……ちなみに、これはフセの発案なんだよな。
さすがフセだと思った。
なので俺は最初にこう言ったよ。
『ありがとう。あいしてる』
って。
するとフセは感激して俺に抱き着き、キスをしてくれた。
そんな彼女に、俺の方も愛情が高まっていく。
で、五十音表で同じ文字を指し示す行為を繰り返したら、さすがに信じてくれた。
「お前は犬なのにヒトの言葉が分かると言うのか!?」
『はい』
驚きと興奮で激しい口調でそういう長老のひとりに、俺はそう返した。
そのときの彼らの様子については、正直小気味良かった。
これまでずっともどかしい思いをしていたからね。
誰も俺の態度で発する言葉を気にしようとしてくれなかったし。
それに……
俺が人間の知能と感情を持ってることを知られたら
気味が悪いということで、殺処分される恐れすらあった気がしたし。
だって怖いだろ。
人間並みの知能と感情を持つ犬なんて。
下手に恨みを買えば、何されるか分からんし。
で、俺はフセの言うことが正しいことを彼らに伝えた。
本来は起こらないはずのヒトと犬の間の妊娠が起きたことを。
そしてその理由が俺の
「なんと! お前は神技が使えるのか!?」
『はい』
俺はカードを指し示す。
すると……
長老たちは湧いたんだ。
「ここに、神技を持つ男女が揃った!」
って。
一瞬、何で彼らがここまで湧くのか、よく理解できなかったんだが
その理由を聞いたら、嫌でも納得できたよ。
……ようはさ……
神技持ち同士の子作りは、産まれる子供がほぼ100%神技持ちになるらしいんだよ。
片方の親が神技持ちの場合は、神技持ちの子供が生まれる確率がかなり低くなるのに。
だから、まあ
「フセよ。お前の主張を認める。このエイトの子種で、希望の子をなるべくたくさん授かるのだ。頼んだぞ」
「我らの悲願は全てお前に掛かっている」
「お前の母もこのことを喜んでいるに違いない」
「楽しみにしている」
長老たちは俺をフセの夫と認めたんだ。
レッサーヒューマン全体の意志として。