※この作品はR-18です。

野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第15話 歪み

 お産を終えて、娘に授乳しているフセ。

 彼女はワンピースを止め、胸を出しやすい浴衣に似た服に着替えている。

 俺の前世なら、もう少しマシな服があるんだろうな。

 

 自宅である天幕で、俺とふたりきり。

 フセは優しい顔で娘におっぱいを飲ませている。

 

 俺は

 

 五十音表を持ってきてフセの前に置き、前足で文字を指し示し

 

 ありがとう、を示した。

 

 それを知ってフセは目を潤ませてくれた。

 

「……こちらこそありがとうございます。あなたの奥さんになれて幸せです……」

 

 そして授乳しつつ、フセは俺とキスをした。

 

 

 

 一般的な男なら、育児で一番しんどい期間は旦那が奥さんのサポートをするんだろうけど。

 生憎俺は犬なので、それは叶わない。

 

 なので……

 

 俺たちの長女の名前を、長老たちが決めて連絡を寄越したとき。

 一緒に家政婦の役割を果たしてくれる女性を送ってくれたんだ。

 

 それは……

 

「よろしくお願いします。フセ様」

 

 俺たちに頭を下げる緑色の髪の少女。

 ヨースケの妹……

 

 彼が命を捨てて守った少女・イズミだったんだ。

 あのときはよく見てなかったけど。

 彼女は少し陰の入った女の子で。

 とてもまじめな印象を受けた。

 

 ……だけど何故かな。

 俺に対して向ける視線に、何故か憎しみのようなものを感じてしまったんだよね……

 

 

 

「シノ様の離乳食も私がお作り致しましょうか?」

 

 イズミはフセの食べるものを鍋で作りながら、訊ねる。

 シノは俺たちの長女の名前。

 

 生まれてから3週間経って、娘に歯が生えて来たんだ。

 早いな。

 

 なのでまだおっぱいは出るんだけど、そっちは俺との母乳プレイ用になった。

 

 シノは離乳食の段階に移行した。

 

「夫のご飯と離乳食は私が作ります。イズミちゃん、その他の家事をお願いするわ」

 

 シノを抱っこしつつ、フセは言った。

 俺は色々手伝いたいけど、犬の身では何もできない。

 

 ……もどかしいなぁ。

 

「シノ、お父様にご挨拶しなさい」

 

 フセはシノにそう語り掛ける。

 外見年齢は……まだ1才行ってないかな。

 

 だから発語はまだ無いんだけど……

 多分、発語も早い気がするな。成長が異様に早い。

 

 ……この辺も、長老たち、果てはレッサーヒューマンの願いとしても都合がいい気がする。

 俺たちの子供は、きっと救世主になるんだろう。

 

 俺は五十音表を引っ張り出して来た。

 俺に取りやすいように、籠の中に入ってる。

 

 そしてフセの前で「言葉はまだだよ」「シノに俺を教えようとしてくれてありがとう」と示す。

 

 フセはそれを喜んでくれた。

 こういう会話、俺は大切だと思うんだ。

 

 

 

 そしてある日。

 

 俺はフセにご飯のお礼を言おうと五十音表を探した。

 

 すると、籠の中に無くて。

 おかしいな、と思ったんだ。

 

 いつも使ったら元の所に戻していたのに。

 俺はその辺、ちゃんとしてるんだよ。

 

 それなのに、無い。

 

 ……何処に行ったんだ?

 

 探しまくった。

 

 で、誰かが持って行った可能性に思い当たり。

 

 容疑者、という言い方は良く無いけど。

 

 考えたんだ。

 

 この家に居る人間……

 

 フセ、シノ、そしてイズミ……。

 

 フセはあり得ない。

 フセが五十音表をどこかにやる可能性なんてゼロだ。

 それは間違いない。

 

 シノに関しても、シノのことは耐えずフセが見ている。

 なので悪戯でどこかに持っていくことは無いし、仮にやったとしても、即座にフセが新しい五十音表を作るハズ。

 

 だから、絶対ない。

 

 ……とすると

 

 俺は……犬の能力に頼ることにしたんだ。

 

 フセとは肌を合わせている関係上、彼女の匂いは知り過ぎるほど知っていたし。

 シノだって、傍で見ていたから匂いは知っている。

 

 フセとシノ以外の……籠から続くにおいを嗅いで、俺は追ったんだ。

 

 その行く先を

 

 すると……

 

 集落のゴミ置き場に到達し。

 そこにある汚れた箱の中に。

 

 丸めた五十音表が捨てられていた……。

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