野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~ 作:XX(旧山川海のすけ)
口は災いの元。
俺はそれを最近噛み締めていた。
俺は孕ませ属性の性癖を持っていて。
学生時代からずっとそれを追い求めていた。
モノがモノだから、俺は二次元メインで追っていた。
三次元に興味がないわけじゃないけど、三次元は生きた人だ。
三次元の孕ませは責任が伴う。
だから俺が二次元メインになるのは自明の理だった。
で、ある日孕ませ属性の仲間に向けて
こんなことをポストしたんだ。
『女は孕ませると孕ませた相手を心から愛するようになる』
……無論、本気じゃない。
ただの性癖の話だ。
女キャラが妊娠した瞬間、孕ませた相手を心から愛するようになるシチュが好きだったんだよ。
俺は。
……だけど、これが炎上したんだ。
ワケが分からなかった。
こんなの性癖の範囲内だろ。
本気でそう思ってるわけじゃない。
だけど、社会は許してくれなかった。
「女性を何だと思ってるんだ!」
「最低!」
「女の敵!」
いっぱい書かれて、叩かれた。
追い詰められて、ポストを消したらさらに炎上した。
魚拓を取られてて、それを貼られた。
そしてついに勤務先まで突き止められて。
そこそこ大きな会社で働いていたのに、辞めないといけない雰囲気に追い込まれた。
……口は災いの元だな。
そう思いつつ、ハロワで新しい仕事を探したのだけど……
見つけた仕事が肉体労働のキツイやつで。
事務系の仕事しかしてなかった俺には相当きつく。
暑い、疲れる、危ない。
……この三重苦。
おまけに、長時間労働。
早朝早くから始まって、夜遅くに終了。
空き時間が結構あるけど、不定期で。
その時間に身体を休めるには、慣れが要った。
なので俺は。
平たく言うと……
かなり、疲弊していた。
だけど、長年の社会人生活で、疲弊したから仕事を辞めるって選択肢が俺には無くてさ。
雇用先に「オマエ要らん」って言われるまでは頑張ろう。
そう思って、頑張った。
そして今日も
命綱無しの木製パレットを積み重ねた高所で、ヘルメットも被らずに。
重い荷物を何度も何度も、運び出していたんだ。
運び出す荷物は金属のコンテナに入っているので、実質暖房が掛かってる状態。
今は真昼間で、カンカン照りだからね。
汗が噴き出て、ドロドロになっている。
クラクラしてくる。
「オイ! 新入り!」
現場監督の男性が俺にそう声を飛ばす。
「ハイ!」
俺は社会人だから、上下関係は絶対。
よくある「あいつは~なのに」とか「俺の方が~なんだ」みたいな。
クソの役にも立たないアホなプライドは無いので、素直に返す。
すると
「オマエ、動きが悪くなってる! 水を入れてこい!」
監督は俺に、そう言ってくれた。
嬉しかった。
ありがたい。
クラクラしてたんだ。
気を遣っていただいてありがとうございます。
この高台を降りて、水を飲んでこよう……
そう思い、台を降りようとしたときだった。
身を屈めたときにバランスを崩してしまったんだ。
そして、平たく言うと……
俺はそれなりの高さから、ヘルメット無しで。
アスファルトの地面に、頭から落下した。
そのとき。
……あ、死ぬな。
落下する瞬間、俺はそう思った。
……何故か、恐怖は無かった。