野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~ 作:XX(旧山川海のすけ)
「長老様方」
まず会議がはじまって。
次女のケノが口火を切った。
「まずお聞きしたいんですが、敵のどこを攻めるべきか……そういう思案はされているのでしょうか?」
その言い方は別に長老たちを責めるものでは無く。
ただの事実確認。
だけど
「決まっている。グレーターヒューマンたちの天上界よ」
「こちらには強力な
興奮気味で言葉を紡ぐ長老たち。
積年の恨みを晴らすことができる。
その興奮で滾っている。
滾って……
気が大きくなっているようだ。
天上界ってのは、グレーターヒューマンたちの居住区域のことだ。
この世界は、グレーターヒューマンたちが住む天上界……イメージ的には煌びやかな都会。
そしてその傍に隣接する、俺たちレッサーヒューマンが住むスラム、通称「人間のクズ居住区」
その2つを中心として。
さらに周辺に点在する、鉱山、農場、狩猟場、レジャー施設……。
そういう構造だ。
そこから外の世界はどうなってるかは知らん。
情報が無いからな。
ケノは長老たちの言葉に。
顔を不快に
長老たちはそれに気づかず、すでに勝った気で。
どう恨みを晴らしてやるかでサディスティックな妄想を暴走させていた。
「アイツらの子供を親の前で殺してやる!」
「子供に自分の親を殺させてやる!」
……気持ちは分かるけど。
ここで憎悪を爆発されてもしょうがない。
それに
「落ち着いてください!」
ケノの一喝。
長老たちはその一喝で沈黙した。
驚いただけだ。
我に返ったわけじゃない。
だから
黙った長老たちの顔には不満があった。
だけどケノはそれに関しては放置で
「敵を倒す行動を起こす前に、それを成した後……つまり敵の領地を奪った後を見据えた計画が必要です」
淡々と、言ったんだ。
勝利を夢見て猛り狂っていた長老たちに対して
「食料確保、飲み水確保、居住地、武器の調達、獲得した領地の防衛……」
パッと思いつくような問題点を列挙し
最後にこう訊いたんだ。
「そういうの、考えてらっしゃいますか?」
……この辺の考え方は、俺の前世での一般常識だ。
ケノを育てる際、五十音表とカードを使って教育したんだ。
無論、俺は別に戦争した経験があるわけじゃない。
でも、そういう歴史は学校で習っていたし。
良い大人なんだから、多少「戦術」みたいなことを口に出来る程度には理解してた。
仮にも有権者だったんだから。
そうでないと、政治の話で吟味もできないし、国防の話だって鵜呑みするしかなくなる。
そういうのが嫌だから、多少理解できるようにしていただけ。
でも、それがここで生きるとはなぁ。
……話を戻そう。
長老たちはケノの問いに。
……一切まともな返答を返すことが出来なかった。
全員が悔しそうな顔をしていた。
俺はそんな彼らについて
馬鹿じゃ無いのか?
……とは思わなかったな。
レッサーヒューマンはグレーターヒューマンに苦しめられてきたんだ。
その復讐ができるとなれば、こうもなる。
彼らの狂う姿は、それ即ち仲間意識の裏返しだろ。
馬鹿にする気は、起きないな。
……そんなことを考えていたら。
隣に座るフセが、俺の背中に手を当てて撫でてくれたんだ。
妻は俺が思っていることを、感じ取ってくれたんだろうか?