野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~ 作:XX(旧山川海のすけ)
「長老様方が冷静で居られない気持ちは分かるつもりです。ですが、冷静にならないと勝つことは不可能なんです」
ケノの言葉は冷静だったけど。
長老たちへの呆れのようなものは無かった。
……事前にこういう予想はしていたから。
もしそうでも、長老たちへの敬意は忘れるなと俺は事前に教えておいたんだ。
ここで分断が起きたら、絶対に勝てなくなるから、と。
ケノは俺が一番会話して育てた子なので、8人の子供たちの間で、一番俺に懐いている子だと思う。
「ですから、まずは情報を集めましょう。どこを攻めるのが一番有用なのか、を」
ケノは冷静に続けた。
長老たちはそれには無言。
だけど
「……すまなかった」
長老の1人から、そんな謝罪が来たんだよ。
正直、期待はしていなかった。
感情に任せて、無謀なことを言い出さないようになってくれれば御の字。
ケノや俺たちに、疎ましいと思う気持ちが芽生えたとしてもしょうがない。
そう思っていたんだけど。
……伊達にグレーターヒューマンたちから逃げて来た4人の男たち、って言うだけで。
レッサーヒューマンの指導者として存在して来てはいないのか。
ケノは長老の謝罪に
「長老様方が、母を憎いグレーターヒューマンの子として殺さなかったから、今があるんです」
許します、とは言わなかった。
許すというのは、立場が下の者が言う言葉じゃないからな。
その辺、弁えてるよ。
自分の娘ながら。
「そんなことよりも、これからの話をお願いします」
謝罪を問題にせず、話を先に進めたんだ。
「グレーターヒューマンに反逆を行った場合、一番問題になるのは……」
食料の問題。
そして病気への対策問題です。
ケノは、レッサーヒューマンなら最初に気にしないといけない問題……その大きな2点の問題を口にした。
実は、レッサーヒューマンたちはグレーターヒューマンに奴隷以下の扱いを受けているが。
彼らから何も得ていないのかというと、それは違う。
……もしそうなら、一か八かこの場所から逃げればいいという話になるだろ?
ここに居るのは、レッサーヒューマンとしても他では得難い恩恵があるからなんだ。
それが……
食料供給と、医療補助なんだな。
レッサーヒューマンは草原に住んでる鹿や兎、猪なんかを食べているけど。
人間、肉だけ食べていたら身体を壊す。
なので……
余りものではあるのだが、野菜類の供給があるんだよ。
レッサーヒューマン全員が、野菜不足で苦しまないで済む量を、だ。
そして後は予防接種。
この世界での典型的疫病各種の予防接種をしてくれるんだ。
グレーターヒューマンとしても、働き盛り、妊娠適齢期になる前の男女が病気で死ぬのは損失だからな。
……だからまあ、慈悲では無いが、止められると困るものがかなりある。
そのため、まずはそこを考えないといけないんだよ。
それに対してケノは
「一応、アタシたちで対策を立てて来ていますので、お聞き願えますか?」
そう一言言い、提案する。
こちらで考えた、上記最大手の問題に対する対策を。