野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~ 作:XX(旧山川海のすけ)
2人のグレーターヒューマンを捕獲した。
……上手く行った。
さて、次だ。
「ここからは迅速にやらなきゃね」
長女のシノが進み出て来た。
兄弟たちが頼もし気な視線をシノに向けている。
……俺たちの最初の子。
特別高い能力があるわけじゃ無いけど、姉としては相応しい行動を取ってくれる子だ。
娘はポニーテールの髪型を揺らしながら進み出て来て。
倒れている2人の身体に触れ、自分の
スクナヒコナの能力は複数あるが、これは「回復能力」
体の不調を、病気、外傷、欠損……そういうのを種別問わずに回復してくれる。
これでまあ、さっきの「流星拳」の一撃のダメージは無くなった。
気絶はしたまんまだけどね。
そこで
「ゲンパチ」
シノが弟……3男のゲンパチの名前を呼ぶ。
「分かったよ姉ちゃん」
ずい、と進み出てくる。
男の子だから顔は狼犬。
ただ、この子は馬鹿正直で嘘を吐けず、兄弟の間で損をすることが多かったせいで、ちょっと目つきが暗い。
あとちょっと、自分に自信を持ってない。
なので俺はこの作戦にこの子を投入することに不安があったんだけど
シノが
「父上、ゲンパチは馬鹿ではありませんよ? 見くびらないであげてもらえますか?」
って言って、俺の不安に対して文句を言ってきた。
……まあ、俺はシノは信用しているから、俺が間違ってたんだろうと思ってる。
シノが投入を決めたんだから、やってくれるはずだ。
「じゃ、行くよ」
ゲンパチが意識を集中するために両手の指を組んだ。
同時に、ゲンパチの姿の輪郭が、歪む。
……ゲンパチの神技は「ヒルコ」
日本神話では、イザナギとイザナミの最初の子供で、骨のない子だったために失敗と判断され、海に流されたとされる神だ。
神技としてのヒルコは、軟体化、人体侵入による支配、そして水中適応。
……潜伏に向いた神技なんだよね。
ゲンパチは不定形の姿になり、痩せたグレーターヒューマンの男の身体に侵入する。
鼻の穴から。
同時にパチリと目を開ける痩せ。
そしてそのまま、糸を切って貰った後に起き上がり。
隣で寝ている太っちょを見下ろして。
屈んでその顔を触り、口を強引に開かせる。
そして振り返り、シノを見上げながら
「さあ、姉ちゃん」
……そう。
今、この痩せはゲンパチに支配されている。
宿主の記憶を読むことは出来ないけれど、ゲンパチは肉体操作のみならば、完璧に行えるんだ。
そして
「ありがとうゲンパチ。では私も」
そう言って、シノは太っちょの顔面を踏みつけながら
しゅるるるる……
という感じで縮小。
そのまま太っちょの顔を歩いて、ゲンパチが強引に開かせている口の中に飛び込んだ。
スクナヒコナの能力のひとつ。
それがこの「乗っ取り」
スクナヒコナの能力で、1番やばいのがこの能力だと思う。
内容はゲンパチの上位互換。
スクナヒコナでやる場合は、乗っ取った相手の記憶まで把握できるんだ。
太っちょ……中身はシノ……が目を開ける。
そして起き上がり糸を切って貰った後。
立ち上がって
「では皆、これから私たちは天上界に行って、グレーターヒューマンたちから色々調べてくるから」
そう宣言。
グレーターヒューマンの身体を乗っ取って、彼らから彼らに勝つための情報を探りに行く。
それはこの、戦いのための準備段階。
「姉ちゃん頑張れ!」
「ゲンパチ兄ちゃんも頑張って!」
兄弟たちのエールが飛ぶ。
俺はその様子が嬉しくて、感じ入っていた。
そこに
「あなた」
フセが俺をそっと抱きしめてくる。
その身体は少し震えていた。
……俺を送り出すことに抵抗があるのかもしれない。
俺も、シノとゲンパチに付いていくことになっていたからだ。
子供たちのことは信じているけど、俺がついていかないと大きなピンチが訪れたときに対処できないかもしれない。
それは困るから、行かないといけないんだ。
俺は
大丈夫だ。安心してくれ。
その意味を込めて、俺を抱く妻とキスをした。