野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~ 作:XX(旧山川海のすけ)
第29話 天上界へ
「父上、この身体の持ち主の名前は私がタロウ・ゴミヤマ。そしてゲンパチ分はジロウ・クズオカです」
シノが宿主の記憶頼みで、宿主の家への道を帰りながら、話す。
この身体の持ち主の身分、境遇について。
曰く、彼らは下級国民で低所得者。
低賃金でブラックな職場で朝から晩まで働いているらしい。
一応、土日は休みらしいのだけど。
彼らは下級国民の、生活補助受給者で。
稼いでいるお金だけではまともに生活できないので、月5万円程度の補助を国から受けているらしい。
……通貨は「円」なのかよ。
それは気になるが……
こういう状況、グレーターヒューマンの社会では本当に見下される状況らしく。
その憂さを酒を飲むことで晴らすか、今日みたいに、レッサーヒューマンに残虐行為を働くことで晴らしているそうな。
……思った以上にクズだった。
まぁ、こいつらはグレーターヒューマンの社会でもクズ人間。
高確率でそうだろうなと思ってはいたけどな。
続いてシノは俺たちにとっての朗報を口にした。
「父上。父上の読み通り、こいつらには友人が1人もおりません。互いを除いて……」
よし!
思った通りだ!
レッサーヒューマンを嬲り殺しにすることを楽しんでいるような奴、皆に嫌われてるに決まってると思っていたんだ!
成り代わるには都合がいい人間だ。
友人が居ないんだから、成り代わっても雰囲気の変化を怪しむ人間が居ない、
難易度がグッと下がるじゃないか。
こいつらは自転車でここまで来たらしい。
自転車に乗り、走りにくいところは押して歩いて。
3時間くらい掛けて、天上界……グレーターヒューマンの居住区域に戻って来た。
天上界は……
町並みは、俺の前世と比較したら少し古臭く感じた。
俺も詳しくは無いんだけど、昭和の街並み。
そんなノスタルジックさを感じる。
赤い郵便ポストに、個人商店。
前世では、映画の中で見た覚えがある風景だ。
彼らの家は、そんな町の中心部から外れたところにあって。
木造2階建てのハイツだった。
それについてシノは
「この2人、相部屋です。生活補助受給者は1人部屋で生活する権利を持たない代わりに、家賃は取られず、生活インフラに掛かるお金だけ払えばよい……そういうシステムらしいです」
宿主の自宅に戻って来たとき、そんなことを教えて貰えた。
なるほどね……
社会的弱者に対する国の対応として、結構理想的なのかもしれないな。
2人部屋はうっとおしいだけで、酷く屈辱的な扱いでは無いし。
同居人がいれば、自立のための意識も高くなりそうだし。
そう、ふと思った。
で
「父上……ここ、生き物を飼うのは禁止です」
ドアを開けて入るとき。
シノにそう教えられた。
分かった。
気を付けるよ……!