野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~ 作:XX(旧山川海のすけ)
娘たちは辛そうだった。
初めての労働だものな。
俺もそうだったよ。
……労ってやりたいけど、喋れないのが本当に辛い。
娘たちはノロノロした動きで夕食の準備をする。
買って来た野菜の、芋と白菜とモヤシ、そして豚肉で鍋を作る。
……食材少ねぇな。
しょうがないんだけどさ。
で、鍋に火を掛けて。
「父上、お待たせしました」
シノinデブが話し掛けて来た。
「……なるほど」
俺が五十音表で話す内容を、安物ノートにまとめてくれるシノ。
定期報告で集落に帰る際、ケノに引き渡す予定のメモ帳だ。
娘が俺の教えたことを実行してくれていることに、俺は嬉しくなる。
……成長してくれてる。
子供が能力を獲得して大きくなるのは喜びだよね。
俺はそのことを子持ちになって数年で実感していた。
そして大体、今日のテレビ視聴で得た情報を伝え終えた後。
「父上」
今度はシノたちが報告を開始する。
ふーん……メモ帳を携帯することを習慣化してない職場なのか。
シノは身振り手振りを交えながら、このボディの勤め先がいかにクソかを語ってくれる。
従業員はメモ帳を持ち歩かないし、使う道具類も危険なものが多い。
通路にゴテゴテと要らない物品が転がり、危ないからと片づけをすると、仕事をサボるなと注意された。
事故が起きてからじゃ遅いでしょ。
……俺はフセを通して、子供たちに、環境を綺麗にすること、外部記憶を取ることの大事さは教育して来たからな。
子供たちはそういうことが気になるようだ。
感じ入るものがあるな。
「色々侮蔑的な言葉も飛び交ってて、酷い環境でしたね」
……教育番組で出て来た職場は、ホワイトそのものな環境だったんだけどな。
でも、教育番組がそうであるってことは
それが理想である、って思ってるってことだろ?
だからまあ、社会としてはそういう状況を認めてはいないんじゃないのかと思うんだけどな。
俺がグレーターヒューマンの社会で生活してた期間は、生まれて数か月で。
その後はずっとレッサーヒューマンの社会で生きて来たから。
なんとなく、生まれて数か月で感じていた「グレーターヒューマン間での基本的人権」を俺は少し疑っていたんだけど。
今はなんか分からなくなっていた。
基本的人権を保障している状況が是なのだったら。
何でレッサーヒューマンのような被差別階級が必要なんだ?
で、それから。
土日はシノとゲンパチは勉強したり。図書館に行って調べ物をしたり。
天上界の情報集めに精を出した。
……なんかすごーく健康的で健全な生活だよね。
多分だけど、宿主の基本的な生活はこうじゃなかったんじゃないのか?
でさ、こういうのを面白がったらイカンのかもしれないけどさ……
シノのボディ、なんだか段々痩せて来てさ。
乗っ取り生活半年で、かなりまともな外見になって来て。
俺は
「やっぱこの男、普段の生活がメチャメチャだったんだな」
と。
確信するに至ったね。
シノは料理スキルあるから、口にするもの全部ちゃんと作るからね。
これはデカイよな。
まったく。
シノに乗っ取られて良かったじゃないか。
ええと……タロウ、だっけ?