野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~ 作:XX(旧山川海のすけ)
「あの、最後にひとつ」
一通り聞き終えた後。
まだ疑問点があったのか。
ケノから最後の質問が。
それに対して
「ケノさん何かな?」
アサはそれを受けた。
何でも訊いてくれ。
そう、表情が言っていた。
「……
……ああ。
そっか。
クローンと言われても、科学技術がそこに至って無いと意味不明の言葉だから、神域かと思うわな。
そこにも疑問を持って詰めるあたり、さすがだわ。
さすがケノ。
ケノのそんな質問に対し
「……私もその疑いを持ったことはあるんだが」
言って、少しだけ躊躇って
アサは、上を脱いだんだ。
すると……
その左肩に、素人でもそうとわかる、銃創があったんだ。
「……神技のせいで嫁の選択肢が消えたので、思い切って軍に入って……」
少し悲しそうだった。
アサは俺に視線を向けながら
「そこでの訓練中、訓練兵に馬鹿がいて、そいつの流れ弾を喰らってしまった……治療の結果、能力的には健常者で問題ないところまで回復したけど……こんな感じなんだ。申し訳ない。エイト様」
身体に傷があってごめんなさい。
そう言って、俺に詫びる。
……純粋に、胸に来るものがあった。
「……なるほど。ありがとうございます。アサさん」
メモを取るケノ。
女性であるのに自分の身体の傷を他人に晒して、自分の神技の種別をハッキリさせてくれたことに対する労い。
脱いだ服をまた身に付けながら、アサの方は内心喜びを感じている風に見えた。
他の息子や娘たちとも上手くいけばいいんだが。
「次はヒールさん、お願いします」
ケノはメモを終えると、次の報告をヒールに促した。
ヒールは頷く。
そして、話し始めた。
「ウチの神技は分離。無生物限定で、混合物から特定物を分離する神技や」
なんでも。
ヒールはオレンジジュースとグレープジュースを混ぜた場合、オレンジジュースを分離することができるらしい。
使い方は、分離した物質を受け取る器を視界内に用意し。
分けたい物質を含んだものに触れ、念じる。
これでOKなんだと。
分離したい物質がその器に転送されるらしい。
「器は皿やコップでないと駄目なんですか?」
メモをしながらのケノの質問。
ヒールはそれに
「受け止めさせるというイメージが付くものであればOKや。ただ、それが生き物の場合は……その体内、を指定できへん」
つまり生き物に器の役割を求めたら、ぶっ掛けるような形になるってことなのか。
「……毒を盛られた生物から、毒の成分だけを分離するのは?」
「急性アルコール中毒になった奴から、アルコールだけ分離するのは出来たで」
テキパキと答えるヒール。
技術者らしく、返答は適切だと感じた。
「生き物の体内から、酸素を分離することはできますか?」
「……それはやったことあれへんから分からんけど……多分、できへんとおもう」
理由は、酸素はヘモグロビンと結びついているから、生物扱いになりそうな気がする。
あくまでも感覚の話だけど。
そう言う話。
……このときのヒールには、返答に滑らかさが無かった。
まぁ、殺人に繋がる神技の使用法について確認されたからだろうな。