野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~ 作:XX(旧山川海のすけ)
オリハルコン鉱山を制圧した後。
元々の、レッサーヒューマン居住地に住んでいたレッサーヒューマンたちは、全員オリハルコン鉱山に移動して来た。
当たり前だけどな。
そのまんまなら、報復を受けるから。
この襲撃がグレーターヒューマンの知るところになったら。
だからその前に、避難しなきゃダメなんだ。
「フセ様、エイト様。ご苦労様でした」
死んだヨースケの妹・イズミが俺たちに頭を下げる。
事を起こす前は、俺の家で家政婦のような仕事を任されていた女……。
「イズミ、これから色々手伝ってもらうことになるけど、よろしくね」
フセは深々と頭を下げるイズミに、労いの言葉を掛けた。
イズミは以前、俺の五十音表を捨てたことがあり、そのせいでフセの激しい怒りを買った過去があるけど。
今はまあ、声に嫌悪感や冷たさは無い。
でも「ちゃん」付けはしていない。
あの事件が起きる前はしてたんだけどな。
「フセ様」
そして。
イズミがやって来てしばらく後。
意を決したように、訊ねて来たんだ。
「何かしら?」
フセに視線を向けられたイズミは緊張している。
自分がこれから口にすることが、主の不評を買うのでは無いかと、緊張しているのか。
強張った顔で、それでも真っ直ぐにフセを見つめて。
こう言ったんだ。
「……労働奉仕で連れていかれた男性たちはどうなるのでしょうか?」
レッサーヒューマンが生きているのはレッサーヒューマン居住地だけではない。
相当多数の男性が、天上界や農場、鉱山で働かされている。
俺たちは行動を起こしたが、そういうすでに奴隷として使役されているレッサーヒューマンは別に救出していないんだ。
というか、出来ない。
数が多過ぎるのもあるけど、我々はまだ、集団としてそこまでの力は無いんだ。
フセはその質問を受けて。
一瞬、顔を
「ケノ!」
ちょうど傍でレッサーヒューマン数人と打ち合わせていた娘を呼びつける。
「なんでしょうか母様」
母に呼ばれたケノは、こちらに駆け寄って来る。
傍に駆け付けた娘に、フセは
「イズミに教えてあげて頂戴。レッサーヒューマン居住地に居なかったレッサーヒューマンの取り扱いについて」
そう、娘に依頼した。
少し、辛そうな様子を見せながら、
ケノは母の意図を察したようだ・
イズミに向き直る。
「イズミさん」
「はい。ケノ様」
空気が張り詰める。
これから何を言われるのか。
……イズミはなんとなく察していると思うが
そこに、ケノは言ったんだ。
「積極的には外のレッサーヒューマンは助けに行きません。これは決定事項です」
イズミの顔が強張る。
ケノはさらに続ける。
「……確かに、現在グレーターヒューマンに使役されているレッサーヒューマンも同胞です。ですが、数が多過ぎます」
全てを救おうとすると、この反乱が失敗に終わる可能性がある。
「全部救うのが本道ですが、不可能なので泣く泣く諦めるんです。理解してください」
ケノの言葉を聞きながら、イズミは一言も発しない。
そこに
「……良いですね?」
ケノは念を押した。
その言葉にイズミは……
黙って、頷いたんだ。