野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~ 作:XX(旧山川海のすけ)
「どうしてもあと1匹、引き取ってくれる家が見つからないんだよねぇ」
しゃがみ込み、俺たちを覗き込み。
ふぅ、とため息を吐きながら飼い主。
どっちか捨てられる……。
どうしよう……?
捨て犬の未来……
食べるものが無くゴミを漁り。
保健所の職員に捕獲され、殺処分されることに怯える……!
前世の記憶から、勝手に想像する。
血の気が引く。
「どっちを捨てるか……」
そう言いながら、飼い主は俺たちを見る。
俺は喋れない。
喋れないながらも、心で叫ぶ。
俺だ! 俺を選んでくれ!
俺は人間の知能を持つ犬だぞ!
レアケースなんだ!
言葉にできないことがもどかしい。
単語のカードみたいなものがあれば、それで会話できるのに!
だけど
飼い主は後ろを振り返って
「ママー、ちょっと私、人間のクズの居住区域に行ってくるね」
「寄り道しちゃダメよ」
そう言って俺の飼い主は俺の首に首輪をつけて、縄……リードをつけてきた。
まずい! 俺が捨てられる!
待ってくれ!
俺は必死で抵抗した。
けれど
「……ああもう、3カ月過ぎたら流石に重いから、暴れられると困るんだけど……全く」
言って俺の飼い主は、俺の首に手を当てて来て
そして
バリバリッ
その瞬間、衝撃が走った。
筋肉が震えるような。
俺は動けなくなった。
……え?
驚愕と混乱。
俺は何をされたんだ……?
俺の前世の記憶では、それは電撃に思えた……。
飼い主はそんな俺に、呟くように言ったんだ。
「あんまり暴れるようなら、殺処分もアリだよね。……飼い主の責任なんだから、自分の手を汚した方が健全かもしれないし」
……そこに俺は本気を感じた。
その後、俺を捨てる準備を飼い主は進めて行ったが、俺は抵抗しなかった。
抵抗したら殺される。
それをさっきの呟きで感じたし。
……この世界、超能力が存在するのか。
それを理解してしまった。
身をもって。
俺の飼い主は確か、上級国民の試験を受けるとか言ってた気がする。
ということは、超能力のレベルとそれが無関係な可能性はさ。
それ、確率として低く無いか?
きっと関係してるよな?
だからまあ、暴れるだけマジで無駄だ。
諦めよう。
「さ、行くよ」
……その一言を発した飼い主。
いや、もう元飼い主か……
彼女の声は、硬かった。
俺を捨てることに後ろめたさを感じているのか。
「レッサーヒューマンの居住地までお願いします」
「分かりました」
元飼い主は、俺を捨てるためにタクシーを使った。
この世界のタクシー、動物を乗せて乗れるのか。
呼び止めて、乗り込んで。
運転手さんに行き先を告げて。
そして車を出させて、元飼い主は
「……まあ、恨みたいなら恨んでね。こっちの都合で捨てるんだから」
なんか、俺を捨てる理由を延々呟いていた。俺の方を見ないで
言い訳したいんかね。
「アンタを捨てる理由は、オスだからよ。……ラブリーと近親交配したら困るし」
そんな理由かよ。
去勢って手があるだろ、って思ったけど。
……うん、それは嫌かな。
だったら捨てられる方が良いかも。
去勢は絶対ヤだ。
俺はそう思い直した。
で
「……さようなら。強く生きてね」
元飼い主曰く「人間のクズの居住地」
そこに俺はリードと首輪を外されて。
置き去りにされた。
荒地だ。
ポツポツと、建物はあるけれど。
そこから去っていくタクシー。
それを俺は追ったりはしなかった。
さようなら。
俺も言っとく。
……ありがとう。
殺されたり、去勢されるよりはマシだわ。