野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~ 作:XX(旧山川海のすけ)
サカザキと呼ばれた女は、お茶を飲みながら
「しかし、下の人間にも困ったものね。鉱山奪還失敗の報告を1カ月近く上げて来ないなんて」
その言葉にはウンザリした調子……心底嫌悪感を滲ませた響きがあった。
「失敗したときこそ、情報を上に上げるのが重要なんでしょ。より良い対策を練るために」
……ああ。
だから戦力の逐次投入なんて下策を打って来てたのか。
鉱山奪還作戦の仕事を任された将軍か何かが、特別ヘボだったんだな。
報連相をちゃんとしないような、論外の奴だったと。
じゃあ多分……
「まあ、彼は責任取らされて、一般兵士に降格になりましたし。彼に対する批判は止しましょう」
車の整備をしている兵士が、フォローする。
この人は、わりと優しい人なんだろうな。
グレーターヒューマンの間では。
「……確かに死体蹴りは褒められたことじゃないわね。彼は己の不始末の責任を取ったわけだし」
そう、言い終えて。
サカザキという女は、カップのお茶を飲み干した。
そして
俺に気づいた。
「あれ、ワンちゃん」
サカザキの目が優しくなる。
そしてカップをソーサーに置いて、歩み寄って来て。
身を屈めて俺に触ろうとする。
それに対して俺は……
若干警戒している振りをして、それを受け入れる。
「サカザキ様は犬がお好きなんですか?」
男の言葉に笑顔で後ろを振り返るサカザキ。
「一応、実家で牝犬を飼ってるの。狼犬」
「へぇ、何だか本格的ですね」
男が整備で車の下に潜り込みながら返答。
そして
「……この子、野良犬なのかしら? 首輪あるけど、変よね?」
そんなことを言われる。
……マズったか?
一応、俺は赤い首輪をしてたんだ。
首輪の無い野犬だと、俺のような狼犬の成犬は警戒されるんじゃないのかという疑念があったから。
襲ってくることを疑われて。
でも、首輪しといて愛想よくしておけば、人慣れした犬がどういうわけか放し飼いされてると思われて、警戒はされないだろうという読みだったんだけど。
……甘かったか?
だけど。
サカザキの顔に浮かんだのは俺への警戒じゃ無くて……
同情と……
なんだか後ろめたい気持ち。
後悔の色だったんだよ……。
だけどそれは一瞬のことで
「さて、じゃあそろそろ出撃するわ」
彼女はすっくと立ちあがった。
「行きますか、サカザキ様……ご武運を」
整備中の男は、車の下から這い出してきて、一言。
そんな彼を振り返り、サカザキは
「……ありがとう。相手は出自不明の神域持ち。……神域持ちの出現率は、100人に1人だからきっと易い相手じゃないと思う。……だけど」
そこでサカザキは自分の胸に手を当てて
「このチフユ・サカザキは全てのグレーターヒューマンの頂点に立つ
高らかな宣言をする。
「
その名乗りは……
大きな自信に満ちていた。
「だから安心して待ってて頂戴!」
そして名乗りを終えた彼女は男に「行ってくるわ」と言い残し。
鉱山の方へと歩き出したんだ。