野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~ 作:XX(旧山川海のすけ)
人類将チフユの宣言に、こちらとしては……
ドウセツとダイカクとで、2人ずつ他の神域を連れて鉱山から出て来た。
そのメンバーは……
ソウスケとゲンパチ、ケノとフセ。
……計6人!
その6人で囲んだ。
チフユは余裕の笑みを崩さない。
じろりと見まわし、そして少し驚いていた。
……狼面と、犬耳美女が混じっていたからか。
そこに引っ掛かったような表情を一瞬浮かべたけど……
最終的に、無視したらしい。
腕を組んだまま、吠える。
「……先手を譲ってあげる。それが開幕の狼煙よ」
最初に向かったのはフセだった。
地を蹴り、一気に間合いを詰めて
彼女の武装である大金槌を振り下ろす。
チフユはそれを僅かな動きで回避する。
「動きが粗削り。ほぼ我流ね……なるほど」
一撃を避けられても2、3と繋げていく攻撃を的確に避けながら
彼女はフセを観察する。
「……右手の刺青があるということは、あなたは人間のクズなのね」
フーン、といった具合。
余裕があった。
……正しい訓練を積んだ女。
そして同じ神域。
こうなってくると、ここまで積んで来たものの差がそのまま強さの差になる……!
「何が人間のクズよッ! レッサーヒューマンという呼称も気に入らないわッ!」
チフユに連続攻撃を繰り出しつつ、フセは怒りの声をあげる。
レッサーヒューマン……直訳すると「下位人類」
「私の母はお前たちの玩具にされ、両腕を斬り落とされたのよッ! けれど死なずに私を産んでくれたのッ!」
フセは怒りをぶつけていた。
フセの怒りは深い。
夜に寝床で何度も聞かされた。
グレーターヒューマンに全てを奪われた母の話を。
自分は母の無念を晴らすためにこれまで生きて来たし、そしてグレーターヒューマンは自分の敵であるって。
それを聞かされたチフユは
「そりゃあ、災難だったわね。でもそんなこと、私に言われても困るわ……一部のクズ男がやったことでしょ? あの人たち、気に入らないことがあったらストレス発散でここで暴れるのよね」
少しだけ不快そうにしていたが、返ってきた言葉はそれで。
「そんな奴ら、天上界でも下の下よ。女の子にはモテないし、収入だって低い……ホントに見苦しいと思われてる。……それでいいじゃん」
何でそこまで怒ってるのか分からない。
そういう風に、さらに返したんだ。
フセは激昂した。
「ふざけないでッ! いいわけないでしょ! ……下位の人間はお前たちよッ!」
大ぶりの大金槌の一撃。
だけど
チフユは冷静に踏み込み、振り下ろしてきた大金槌の一撃を、右手で空手の受けの動作で捌いて。
その捌きで体勢の崩れたフセの脇腹に、左手のフックを叩き込んで来たんだ。
どむっ、という音がした気がした。
そのまま吹き飛び、地面を交通事故に遭ったダミー人形のようにブチ転がる。
フセは身体を地面に投げ出され、口を拭って立ち上がる。
武器の大金槌は手放してしまっていて、離れた位置に落ちていた。
怒りの表情でチフユを睨み据えるフセ。
チフユは……
彼女も平静ではなくなっていた。
不愉快。
不機嫌になっていたんだ。
怒りを持っている。
そして彼女は怒りを発した。
こんな言葉で
「私たちこそ下位ですって?」
信じられない、っていうふうに。
「……調子に乗ってんじゃないわよ? この人間のクズの混血種が!」